管理職の対話力で組織のエンゲージメントを向上させる!

リーダーシップのリスキリングサムネ_近藤氏dec
近藤 浩充
株式会社ジェイック 常務取締役
大学卒業後、情報システム系の会社を経て、ジェイックに入社。技術者の派遣を行うIT 戦略事業部を立ち上げた後、全社のマーケティング機能を担う経営戦略室 室長に就任。2012 年よりジェイックの取締役となり、社内の人材育成、マネジメントで手腕を磨く。マーケティング開発本部長、カレッジ事業本部長、教育事業本部長などを歴任し、『人と組織のチェンジ・プロモーター』であるべく日々奔走している。

 

<目次>

マネジメントを取り巻く変化

価値観の異なる4世代

現在のビジネスシーンには、さまざまな世代の人が混在しており、異なる世代の人たちが協力して仕事を進める必要があります。世代は、大きく4つに分類することができ、それらは、時々の社会情勢等を反映して生まれる傾向があります。

 

主な社会情勢特徴傾向
第1世代世界大恐慌、wwI、電化製品の登場規律正しい家庭で育った世代。家族やコミュニティ、国家への忠誠心が強い。共同活動に献身的。上下関係を重んじる。
第2世代冷戦、月面着陸、公民榷運動、ベトナム戦争、女性解放運動、オイルショック私生活より仕事を優先する熱心な働き手。
第3世代チェルノブイリ原発事故、ベルリンの壁崩壊、日本バブル崩壊、インターネット登場、就職氷河期前世代より独立心や順応性が高くテクノロジーに精通した世代。ワークライフバランスを重視する。
第4世代9.11、イラク戦争、SNSの出現、3.11(東日本大震災)最も教養が高く、人種の多様性に富んだ世代。活動的でテクノロジーに精通し、社会意識が高い利他的。

私自身は第2世代と第3世代の中間に位置しています。第2世代は私生活よりも仕事を優先する傾向がありますが、私自身、仕事が最優先で、仕事人間だと自覚しています。

 

第3世代は、独立心や柔軟性が高く、テクノロジーに詳しく、ワークライフバランスを重視するなど、第1世代・第2世代とは異なる特徴をもっています。

 

第4世代は最も教養があり、多様性に富んだ世代です。活動的で、テクノロジーに精通しており、社会への影響力も大きいのが特徴です。ワークライフバランスを大切にしながらも、社会的な価値を追求する傾向があります。第3世代と第4世代の価値観のギャップは非常に大きいです。

 

近年、リモートワークや時差勤務、時短勤務の増加など、働き方が大きく変化していますが、こうした変化の捉え方にも、各世代の特徴が表れます。

 

例えば、「再来月からアジア地区の重要な拠点で仕事をするよう、会社に命じられた」という場合を考えてみましょう。第1世代・第2世代の人たちの多くは、会社を中心に人生を設計しているため、会社の指示に従う、すなわちアジアへの転勤を前提に考えることが多いでしょう。

 

一方で第3世代・第4世代の人たち(今の20代・30代)は、生活環境や家族の状況(子どもの学校など)を考慮した上で、そもそもこの仕事を受けるかどうかを検討し始めると思います。そして場合によっては、拒否し、転職を考え始めるかもしれません。

 

このように、第3世代・第4世代は、ワークライフバランスを重視し、柔軟な働き方を求める傾向が強いため、働き方についても、全員一律出社や厳格な勤務時間制度に対しては違和感を抱くかもしれません。第1世代・第2世代と異なり、彼らの世代には自分を中心に人生を設計する人が多いのです。

 

パフォーマンスの上げ方の変化

我々が直面する変化としては、世代間の価値観の変化、働き方の変化だけでなく、パフォーマンス(成果)の上げ方にも変化がみられます。

 
 

環境の変化

 
 

これまでは、真面目に頑張ることで一定の成果を上げられる、という考え方が主流でした。というのも、彼らの上司にあたる管理職が長年の経験から“正解”を持っており、その正解に従って目の前の仕事に真面目に取り組めば成果を出せたからです。

 

そうした“正解”や“経験”を伝承しながら前進するのが良い組織とされ、そのようにすれば売り上げが増え、企業は成長すると信じられていました。

 

しかし近年は、このアプローチがうまくいかなくなってきたと感じる人が増えています。今はイノベーションや新しい事業展開が不可欠であり、かつての方法で成果を上げ続けることが難しくなっています。

 

言い換えれば、真面目に努力しても一定の成果を出すにとどまり、会社としては成長できない可能性が高まっているといえます。会社が成長し続けるためには、かつての方法ではなく、柔軟な発想や新しいアプローチによって変革を進める必要があるのです。

 

いま管理職に求められるもの

今の管理職に求められるスキル

こうした変化の中で今の管理職に求められるスキルとは、どのようなものなのでしょうか?管理職約1,500人に行ったアンケート調査では、10年前の管理職と現在の管理職に求められるスキルについて、次のような結果となりました。

 
 

リーダースキルの変化

 
 

以前は、管理職に対して「説得を重んじる」ことが重視され、相手に対して「なぜ、それをするのか」という理由を説得できる能力が求められました。これによってチームをマネジメントすることが期待されていたのです。

 

しかし現在は「対話を重んじる」が10年前に比べて53ポイントも伸びており、管理職にとって「対話力」が非常に重要なスキルとされていることがわかります。

 

また以前は、リーダーが強い統制力を持つ「トップダウン型」が求められました。しかし現在は、トップダウンで進めるよりも、ボトムアップで進めることが求められています。

 

また、「部下に強みの発揮を求める」も、10年前と比べて51ポイントも伸びています。組織やチームがより成果を上げるために、メンバーの強みを生かした仕事の分担等を行うことが重要視されているのです。

 

管理職がアップデートすべきスキル

管理職に求められるものが変わってきていることを考えると、我々は学び直しをする必要があると思います。特に年齢が高めの管理職の方々は、リーダーシップスキルのアップデートとリスキリングを行うべきです。

 

今、求められるリーダーシップとは、相手の関心に寄り添う“対話力”であり、“ボトムアップ型のチームビルディング力”です。そして、チームビルディングが成功すると、次はメンバー一人ひとりの“強みを生かす”ことが求められます。

 
 

アップデートすべき

 
 

本稿は①の対話力の説明をメインとしていますが、②のチームビルディング力について触れておきます。

 

チームビルディング力

前述にて、これまでは管理職が“正解”を持っており、その正解に従って真面目に取り組めば成果を出すことができた、と述べました。これまでの管理職には、組織やチームの頂点に立って指示を出し、強い統制力を持って成果を出すことが期待されたのです。

 

しかしそれは、管理職が“正解”を持っている、ということを前提とする話です。変化が激しい現代においては、管理職は必ずしも明確な回答を持っているわけではありません。そこで今の管理職には、メンバーから多くの情報やアイデアが上がってくる組織文化や仕組みをつくり、それをもとに意思決定をすることが求められます。

 

今の管理職には、メンバーとコラボレーションし、主体的な行動を促し奨励する、メンバーと共に正解を見つけ出す、といったリーダーシップが求められるのです。

 

求められるマネジメント観点のアップデート

 

これからのパターン
管理と統制型から共創型へ|キーワードは『信頼と協力の文化』
 
 

そして、今、求められる組織とは、以前のような“管理統制型”の組織ではありません。管理統制型の組織では、メンバーは指示通りに行動するようになり、自主的な行動や、独自のアイデアの発想等が妨げられる可能性があります。

 

今、求められる組織とは、リーダーが組織の中心に位置し、組織全体を協力させて成果を上げる組織です。そうした組織を作る力(チームビルディング力)が、今の管理職には求められています。

 

組織におけるコミュニケーションの重要性

コミュニケーションの必要性

チームビルディングや部下の強みを生かすマネジメントの前提となるのが、“対話力“です。まずは組織におけるコミュニケーションの必要性について言及します。

 

コミュニケーションの問題が組織で発生することはよくあります。従って組織に大きな影響を及ぼす管理職は、特にコミュニケーションスキルを磨かなければなりません。

 

コミュニケーションには種々ありますが、管理職にとってとりわけ重要なのは、部下の感情や関心に寄り添い、適切な言葉をかけてモチベーションを引き出す“対話力”です。管理職が対話力を身に付けることが、組織全体の成功につながります。

 
 

コミュニケーションの必要性

 

対話と会話の違いとは?

 
“対話”と似た概念に“会話”がありますが、両者の違いは何でしょうか。この2つは、似ているようで異なる概念です。会話は、一般的に2人以上の人が気軽に情報や意見を交換する際に用いられます。

 

日常的なコミュニケーションを指すことがあり、形式や目的に関係なく使用されます。特定の目的やテーマに縛られず、新しいアイデアや情報を生み出すことを必要としません。

 

一方、対話は、より目的を持ったコミュニケーションを指します。特定のテーマや問題に基づいて、意見交換や情報共有が行われます。対話は通常、深い理解を求めたり、対立や誤解を解消しようとしたりする場合に使用されます。

 

対話は、異なる背景や価値観を持つ人とのコミュニケーションにおいて特に重要です。要するに、対話はより深い洞察や理解を目指すコミュニケーションの形式であると言えます。

 
会話は、関係性を築いたり、楽しい時間を共有したりするのに有用ですが、管理職には、さらに深い対話を通じてお互いの理解を深め、メンバーの信頼を得て、チーム全体が共通の目標に向かって協力する状態をつくることが求められます。

 

項目会話対話
意味早常的なスのスニケーションにおける取り留めのない話お互いの立場や意見の違いを理解し、そのずれをすりあわせること
目的関係性を築いたり、楽しい時間を共有したりすること理解や合意を得ること
テーマ明確なテーマがない場合が多い明確なテーマがある場合が多い
人数2人以上2人の場合が多い
方向性一方向双方向
深さ浅い深い

対話において大切なこと

 
対話においては、メンバーの考えや価値観を理解することはもちろん重要ですが、それに加え、自分の考えを適切に伝える力を身に付けることも大切です。

 

特に近年は、先に述べたとおりリモートワーク等が広まっており、「上司と部下が時間や場所を共有する機会」は減少傾向にあります。そのような中で異なる世代のメンバーと相互理解を図るためには、メンバーを理解するだけでなく、自分の考えをしっかりとメンバーに伝えられる力が不可欠です。

 

相手の感情に寄り添いながら話を聞き、それに対する自分の感情をコントロールしながら冷静に対応する。そして自分の考えを相手に伝える際も、単に情報を伝えるだけではなく、適切な伝え方をすることで相手のモチベーションを引き出し、問題解決や目標達成に向けて協力を促していく。管理職には、そのような対話をするスキルが求められます。

 

対話を通じて管理職とメンバーに信頼関係ができれば、メンバーは管理職の言葉に共感し、より耳を傾けるようになります。逆に対話力が欠けていると、

  • 上司が、部下の希望や意向を理解せず、部下の信用が得られない
  • 部下が上司や組織を信用しない結果、組織のミッションやビジョンが浸透しづらくなる
  • 部下が離職した際、その理由がわからない。ゆえに改善が難しく、離職の懸念が続く

といったことが起こり得ます。

 

部下との対話を通じて、部下が何を求め、どのような状況にあるのかを理解・把握し、それに応じたサポートや調整を行うことが大切です。対話を通じて管理職とメンバーの双方が協力し、問題を解決しやすい状況を作ることが重要なのです。

 

そして万が一、部下が離職した時などは、その理由を把握・理解して、次は事前に防止できるよう努めることが必要です。

 
 

ピラミッドのみ

 

重要なのはやはり管理職

管理職(マネジャー)が組織に与えるインパクト

 
繰り返しになりますが、管理職の役割は組織において極めて重要です。管理職の言動は、組織の文化や部下のエンゲージメントに大きな影響を及ぼし、会社の成長を左右します。

 

エンゲージメントとは、組織内での従業員の関与や参加度を示す指標です。具体的な定義としては、従業員の満足度や帰属意識が高いだけでなく、彼らが組織の目標や成果にコミットし、積極的に取り組む状態を指します。

 

エンゲージメントが高い組織では、従業員は満足しているだけでなく、自分の仕事に対して情熱や責任感を持ち、組織全体の成功に貢献しようとします。

 

管理職が部下に対してポジティブな態度で接し、組織のミッションやビジョンを明確に伝えることができれば、部下のモチベーションは高まり、エンゲージメントを向上させることにつながります。

 

逆に、管理職が否定的で、部下の目標数字や達成具合等にだけ焦点を当てた言動をしたならば、部下のモチベーションは下がり、組織のエンゲージメントも低くなる可能性があります。

 

ですから管理職は、エンゲージメントの高い組織をつくる上で、そして今の時代に求められるリーダーシップを発揮する上で、まずは“対話力”を身に付けることが必要不可欠なのです。

 

管理職(マネジャー)が組織に与えるインパクトは
とてつもなく大きい!

マネジャーが組織従業員エンゲージメントに与える影響は70%
マネジメントが不十分だと部下のパフォーマンス向上の妨げとなってしまいます。

  • 価値観が部下に投影される
  • 本人の捉え方で会社方針の浸透度合いが変化
  • 発する一言で部下のモチベーションが上下する
  • 接し方一つで部下の成長スピードが変化 etc

*ギャラップ調査による

 

リーダーシップリスキリングトレーニング導入による効果

 
エンゲージレベル

 

リーダーシップのリスキリングについては、以下の記事で詳しく解説していますので、ご興味あればご覧ください。

 

HRドクターを運営する研修会社ジェイックでは、リーダーシップのリスキリングトレーニングとして、デール・カーネギー・トレーニング、そして、7つの習慣®研修を提供しています。ご興味あれば詳細をご覧ください。

 

著者情報

近藤 浩充

株式会社ジェイック|取締役 兼 常務執行役員

近藤 浩充

大学卒業後、情報システム系の会社を経て入社。
IT戦略事業、全社経営戦略、教育事業、採用・就職支援事業の責任者を経て現職。企業の採用・育成課題を知る立場から、当社の企業向け教育研修を監修するほか、一般企業、金融機関、経営者クラブなどで、若手から管理職層までの社員育成の手法やキャリア形成等についての講演を行っている。
昨今では管理職のリーダーシップやコミュニケーションスキルをテーマに、雑誌『プレジデント』(2023年)、J-CASTニュース(2024年)、ほか人事メディアからの取材も多数実績あり。

著書、登壇セミナー

・社長の右腕 ~上場企業 現役ナンバー2の告白~
・今だからできる!若手採用と組織活性化のヒント
・withコロナ時代における新しい採用力・定着率向上の秘訣
・オンライン研修の「今と未来」、社員育成への上手な取り入れ方
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