社内発注の仕組みで働き方が変わる!モチベーションと生産性向上の秘訣

更新:2025/01/14

作成:2025/01/09

<目次>

社内発注とは?

社内発注という言葉は、聞き馴染みがない方も多いかと思います。どのような仕組みかと言いますと、文字通り、同じ社内で仕事を発注し合う仕組みです。

 

一般的に、同じ企業の中でも直接お客様と接する人たちとそうではない人たちが存在します。環境の違いは、お客様に対する認識の違いやプロ意識、スピード感のズレなどに繋がりかねません。

 

また、一度対応のズレ等が発生すると、会社側として双方の言い分を聞いたり、定期的に双方が話し合うミーティングを開く必要が生まれたりと、新たな仕組みを構築する必要が出てきます。こうした課題を未然に防ぐのが社内発注の仕組みです。詳しい仕組みを次章で紹介します。

 

社内発注の仕組み

売上の分配

例えば、営業職が100万円分の案件を獲得してきたとします。しかし、多くの場合、この100万円分の案件は営業職のチカラだけで獲得できたわけではありません。メーカーであれば、商品を作った部門があるでしょうし、サービス提供事業者であれば、受注の後に実際のサービス提供部門が存在するかもしれません。

 

社内発注の仕組みでは、例えば受注後にサービス提供が発生する場合、100万円の案件を営業職が獲得した後に、サービス提供部門に50万円を渡します。そうすると、営業部門が50万円、サービス提供部門が50万円という売上計上になります。

 

このように、社外から入ってきた売上を関係する部署にきちんと分配していく、というのが社内発注の基盤となる考え方です。

 

従来の業務分担方法との違い

わざわざ売上を分配しなくても、業務分担をしっかり取り決め、各部署でしっかり所定の業務をやれば良いではないかというご意見があるかもしれません。
 

弊社で導入している社内発注の仕組みでは、社外から入ってきた売上を関係する部署にきちんと分配し、原則、社内のほとんどの部署に売上が計上されます。そして、各部署に計上された売上の所定のパーセンテージをボーナスとして支給します。

 

例を用いて説明します。先ほど、営業部門が受注した100万円分の売上のうち、サービス提供部門に50万円を分配しました。サービス提供部門ですが、より早く正確にサービス提供を行えば、1ヶ月間などの所定期間で担当できるクライアント数は増えます。

 

つまりは売上が増えます。仮に、売上の5%がボーナスとすると、1社への提供であれば25,000円だったのが、業務効率を改善してもう1社担当することで50,000円になります。

 

「自分たちの部署の担当業務をしっかりするように!」と声をかけるのと、「このクライアントをいつまでに納品できたら今月もう1件担当できて、ボーナス増えるぞ!」と考えている社員がたくさんいる状況を作るのと、どちらがマネジメントしやすいでしょうか?

 

社内発注の仕組みで解決される課題

社内発注の仕組みを導入すると、通常の企業経営で陥りがちな課題が自然と解決されていきます。具体的に紹介していきます。

 

引き継ぎの曖昧さ

営業部門から次の部門に仕事を発注する際、お金と一緒に仕事が動きますので、均一な引き継ぎがされないと発注される部門からクレームが出ます。具体的には、「Aさんはしっかり引き継いでくれるけど、Bさんはそうではない。同じ金額の仕事でこれは不公平だ。」というような状況です。

 

スーパーやデパートに並んでいる商品が、「値段が同じであれば品質も同じである」と期待されるように、社内発注でも定価を決めることで、引き継がれる仕事、またその後に納品される仕事も含め、担当者の“性格”や“仕事の丁寧さ”などで片付けられていた品質のバラつきが統一されていきます。

 

責任の曖昧さ

お金が動くことで、「あの仕事頼んでなかったっけ?」「いや、聞いていませんけど」という事態もなくなります。社内発注の仕組みでは「仕事を頼む=お金が動く」、ということなので、双方に強く認識が残るからです。

 

また、もし発注した仕事がきちんと実行されていない事態が起こった場合、社内発注では取引をキャンセルすることも可能です。つまり、相手への発注をキャンセルして、発注した金額も回収するのです。キャンセルされると、ボーナスが下がりますから、受注を受けた人はしっかり自分の仕事を管理するようになります。

 

モチベーション管理

「みんなでお客様のために頑張ろう!」「営業部門が頑張っているから、私達も貢献しよう!」といった声がけで、やる気になる社員もいます。

 

ただ、全員が“お客様のため”や“連帯感”でモチベーションが上がるかというと疑問ではないでしょうか。社内発注を導入すると、真剣にやらない人はその人の売上が下がり、ボーナスが下がる、という状況になるので、自分の待遇を向上したければ、仕事を頑張る(社内受注を増やす)というシンプルな流れが浸透します。

 

社内発注の仕組みがもたらす好影響

次に、課題が解決されるというマイナスをゼロにする話ではなく、社内発注を導入することで、これまで難しかったことができるようになるという、ゼロからプラスの点をご紹介します。

 

成長度合いの把握

従来、同じ仕事をやっているメンバーが一定数以上いる場合、誰がどれだけ成長しているか、定量的に判断できる職種は営業職くらいでした。

 

しかし、社内発注を導入することで、お客様と接することのない業務を行っている社員にも売上をつけることができます。それぞれの業務に定価をつければ、売上が多い人ほどよりたくさんの業務を捌いていることが簡単にわかり、誰の成長度合いが高いかということも定量的に把握できます。

 

上司と部下での納得感の高い目標設定

社内発注では、品質が低い仕事をすれば、キャンセルによる返金および担当者変更、また「そもそもあの人には仕事を任せたくない」という発注控えも起こります。

 

つまり、社内発注の制度が社内で成熟するほど、それぞれの仕事の細部に至るまでしっかりやりきらなければ社内受注での売上が上がらなくなっていくわけです。

 

これにより、上司と部下との目標設定では、従来の「〇〇ができるようになろう」というスキル習得を重視した細分化された目標を設定しなくても、「社内売上○○円を目指そう」といった社内売上の目標を設定するだけで、その目標が細部の成長まで促す包括的な目標になります。

 

社内受注の売上目標を掲げるだけで、売上を達成するために必要な各個人の役割や課題が明確になり、自然と様々な課題に包括的に向き合うことが求められるようになるのです。

 

人間関係のトラブルが発生しにくい職場環境

人間関係のトラブルは、お互いの価値観や相性が合う・合わないという認識から発生することが大半です。

 

価値観や相性が合う・合わないという判断をさせなければ良いのですが、社内発注という仕組みがない場合、仕事に「定価」がないため、仕事の引き継ぎの仕方、責任の境界線、納品物のクオリティなどの品質が担当者によってバラつきが生じやすくなります。

 

そして、「あの人はこの程度の仕事しかできないのか?この後の私の業務負荷を考えていないのか?」「あの人はいい加減だ。私とは合わない」といった感情認識や疑心暗鬼などが生まれ、人間関係のトラブルになっていきます。

 

社内発注を導入すると、様々な業務に「定価」がついて、期待される品質が平準化していきます。そうすると、極端な例でいうと「ランチタイムで話した感じで深く知っていくと合わなそうだけど、仕事上は決められた手順通りで話せば良いから安心」くらいのところで人間関係のトラブルを食い止めることができます。

 

導入する際のステップやポイント

では、どのように社内発注を導入すれば良いのか、順を追って説明していきます。

 

部署間の業務の境界線を明確にする

ある業務をA部署もB部署も行っていたら仕事の引き継ぎがありませんし、業務を平準化していく時に2種類のやり方が生まれてきてしまいます。よって、まずはある業務を担うのは原則1つの部署という考え方ですべての業務を部署に紐づけていきます。

 

業務内容の洗い出し

業務の境界線が明確になったら、それぞれの業務内容を洗い出します。いうならば、お品書きを作る工程です。ここでしっかり洗い出しておかないと、値段がついてない業務が後々に見つかり、混乱が生まれます。

 

定価の決定

洗い出した業務内容に対して定価をつけます。社内発注の定価に正解はありませんが、1ヶ月などの所定の評価算定期間が終了した際に、きちんと業務をおこなっていれば売上が月給の2~3倍くらいになることが理想です。

 

あまりに低いと意識しても仕方がないという雰囲気になってしまいますし、逆に高すぎると営業部門からもらいすぎの可能性が高く、営業部門という外から売上を持ってくるメンバーへのリスペクトが損なわれる恐れがあります。

 

間接部門への展開

ここまでは営業部門と隣接する部門の社内発注を想定しました。しかし、企業には、管理部門やマーケティング部門、人事部門といった間接部門があります。これらの部門にも社内発注を適用していきます。

 

具体的には、「マーケティング部門から商談をパスされたら営業部門は1件あたり2万円払う」「管理部門には会社のインフラを担ってくれているので全社の売上の◯%をつける」といった形です。

 

管理部門の社内売上の単価設定は少し変則的です。全社のインフラを担ってくれる部署ですから、社員一人当たり◯円を自動的に一人ひとりの社員から差し引くのもありでしょうし、全社売上の◯%をつけるのもありだと思います(この場合はどこかの部署から売上を差し引く形ではなく、完全に評価項目としてのみに使用する数値になります)。

 

どのような売上の付け方がベストなのかは各社の実情に合わせて修正していく良いでしょう。

 

ボーナスパーセンテージの決定

社内発注で売上がついても、給料に反映されなければ売上を伸ばしていくインセンティブはなく、社内発注制度はやがて形骸化してしまいます。

 

よって、想定されるそれぞれの社内売上にどれくらいのパーセンテージをかけたら程よいボーナス額になるかシミュレーションし、決定します。その際、全社同じパーセンテージである必要はありません。部署ごとや、部署の中でも役職ごとに変更しても良いです。

 

運用する際の注意点

最後に、実際に運用を始めるときの注意点を説明します。

 

現場の声には真摯に耳を傾ける

社内発注を導入するには、業務の境界線を決めたり、定価を決めたりと、現場の状況に精通したうえでの意思決定が求められます。

 

そのため、トップダウンで押し切り、仮に決めた中身が現場の実情と食い違ってしまうと、社内は大混乱に陥る恐れがあります。現場の声には真摯に耳を傾け、うまく機能していないと思ったらすぐに軌道修正する意識を持つことが重要です。

 

ボーナスパーセンテージは慎重に決定する

ボーナスパーセンテージを高めに設定してしまってボーナスが過大に払われるようになると、経営にとっては大きな負担です。加えて、設定したボーナスパーセンテージを下げることは、社員の不満を生み、離職を招く恐れがあります。

 

ボーナスパーセンテージを導入する際には、売上が非常によかった場合のシナリオも含めて検討し、“絶対に経営を圧迫しない、けれども現場が喜ぶ”という絶妙なラインでのパーセンテージを探ってください。

 

当社では、直接顧客と接する部門は個人売上の3%、接しない部門は7%を設定しています。設定背景として、それぞれの部門のボーナス額平均値を年額換算して、定期ボーナスとして設定されることが多い、月給の4ヶ月分程度になるように計算しています。

 

社内発注の仕組みを導入した後の「現場の変化の速さ」を認識しておく

例えば、社内発注制度を開始しようと思った時、何かしらの事項がまだ運用に耐えられない状況だとします。そのとき、「どうせ社内発注の仕組みに対応して社員が動き始めるにはしばらく時間がかかるだろうから、その間に解決しよう。」とは思わない方がよいでしょう。

 

経験上、自分の給料に関わる社内発注制度には、社員一同驚くべき速さで順応し、これまでとは全く違った働き方をみせます。人事制度を変える場合は準備万端な状態で行ってください。

 

よく頂くご質問

最後に、社内発注制度を紹介した際によく頂くご質問について回答して終わりにしたいと思います。

 

担当者が1人しかいない(他の人に発注できない)場合も有効か?

結論から申し上げると、有効です。他の人に発注できないので、競争が起きず、成長が遅めにはなりますが、定点観測で自分のパフォーマンスが可視化されると、よりよい数値(社内売上)を求めるのは人間の性です。

 

そして、社内売上の金額が給料にも連動してきますので、社内発注制度を導入しないよりもパフォーマンスが上がることは間違いありません。

 

短期業績(売上)につながらない仕事が疎かにならないか?

社内発注制度を導入することで、全社員が自分の売上に目が行くようになりますので、売上に繋がらないような仕事を敬遠しがちになります。

 

しかし、これは逆に、会社として責任の所在が曖昧だった仕事のあぶり出しに繋がります。このようなあぶり出された仕事をまとめて担当する人・部署を作り、そこに発注単価を決めることで、しっかりと責任を持って仕事が進められるようになります。

 

すべての仕事に定価をつけられるのか?

すべての仕事に定価をつけると考えると途方もない作業のように思われますし、実質的に不可能と思えるかも知れません。しかし、結論としては可能です。

 

仕事には得てして、その仕事の前後にも工程があります。よって、些末で定価をつけるのが難しい仕事は前か後ろの工程に組み入れ、その上で定価をつけてしまいます。こうすることで、すべての仕事に定価をつけることが可能になります。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?社内発注は導入まではエネルギーを要するかもしれませんが、丁寧に取り組めば必ず導入できる仕組みですし、導入に成功すれば大きなリターンが得られる仕組みです。

 

ここまで読んでみて理にかなっていると思われたら、ぜひ導入に向けてチャレンジしてみてください。

 

株式会社エッジコネクション
代表取締役社長
大村 康雄
1982年生まれ。宮崎県延岡市出身。慶應義塾大学経済学部経済学科卒業後、米系金融機関であるシティバンク銀行(現SMBC信託銀行)入行。2007年、株式会社エッジコネクション創業。ワークライフバランスを保ちつつ業績を上げる様々な経営・営業ノウハウを構築、体系化し、多くの経営者が経営に苦しむ状況を変えるべく各種ノウハウをコンサルティング業、各メディア等で発信中。1500社以上支援し、90%以上の現場にて売上アップや残業削減、創業前後の企業支援では80%以上が初年度黒字を達成。東京都中小企業振興公社や宮崎県延岡市商工会議所など各地で講師経験多数。2024年7月には、「24歳での創業から19期 8期連続増収 13期連続黒字を達成した黒字持続化経営の仕組み」を出版。

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