テクニカルスキル(業務遂行能力)とは?3つの種類と具体例、向上方法を解説

更新:2024/11/20

作成:2021/03/01

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック執行役員

テクニカルスキルとは?業務遂行能力 3つの種類と磨く方法を解説

テクニカルスキルとは、指示された業務をスムーズに遂行するためのスキルや知識のことで、業務遂行能力とも言われます。

しかし、業務遂行力と聞いても具体的にどんなスキルなのかイメージが湧かないかも知れません。本記事では、テクニカルスキルを理解する上では欠かせない「カッツモデル」の概要やテクニカルスキルの具体例、テクニカルスキルを向上させるメリット、また、テクニカルスキルを効果的に磨く方法を解説します。

 

 

<目次>

テクニカルスキル(業務遂行能力)とは?

テクニカルスキルとは?

 

テクニカルスキルとは、指示された業務をスムーズに遂行するためのスキルや知識の総称です。ビジネスにおける位置づけは、ハーバード大学の経営学者ロバート・カッツ氏が提唱する「カッツモデル」に照らし合わせると理解しやすいので、後ほど紹介します。

 

カッツモデルは、ビジネスに必要なスキルを3つに分け、ビジネスの階層ごとに必要な力の割合を示す理論です。ビジネスに必要なスキルには、テクニカルスキルのほかに、コンセプチュアルスキル、ヒューマンスキルがあります。

 

テクニカルスキルには、職種を横断して必要となる基礎的なビジネススキルに加え、職種ごとの業務を遂行するうえで必要な能力が含まれます。

 

<基礎的なビジネススキル>

ビジネスマナー、時間管理能力、タスク管理能力、情報収集力、計画力など

<職種ごとに必要な能力>
  • 販売・接客職 接客技術、説明力、商品知識、観察力など
  • 事務職 事務処理能力、パソコンスキル、資料作成力など
  • ITエンジニア プログラムの設計力、プログラム言語の知識など

 

テクニカルスキルを理解するうえで不可欠な「カッツモデル」とは?

カッツモデルは、マネジメント層に求められる能力を3つに大別して、階層別で必要とされる能力の割合を示したモデルです。

カッツモデル

(注記) 本来のカッツモデルは、トップマネジメント(経営者層)、ミドルマネジメント(管理者層)、ロワーマネジメント(監督者層)という表現をします。ただし、実務的にはプレーヤー層を含めてイメージしてもズレはなく、人材育成に活用しやすいことから、本資料では3つ目の階層を「プレーヤー」と記載しています。

 

カッツモデルでは、成果をあげるうえで階層が上がるほどコンセプチュアルスキルが求められる比率が高まり、階層が下がるほどテクニカルスキルの比率が増えるとしています。

 

なお、同じプレーヤー層でも、製造や現業、間接部門はテクニカルスキルの比重が増え、販売や営業のような対人業務になるとヒューマンスキルの必要な割合が増えます。また、無形商材や高額商材であれば、プレーヤー層でもコンセプチュアルスキルが必要とされるでしょう。

 

ヒューマンスキルとコンセプチュアルスキル

テクニカルスキルは、カッツモデルにおける残り2つの能力と比較すると理解しやすくなりますので、ヒューマンスキルとコンセプチュアルスキルの概念を詳しく紹介します。

 

<コンセプチュアルスキルとは?>

コンセプチュアルスキルとは概念化能力を指します。物事の本質を的確に捉えたり、組織のミッションやビジョンを言語化したり、商品・サービスのコンセプトを検討したりと、抽象度の高い概念を扱う能力です。

 

組織階層の上位になるほど、組織の方向性を示してメンバーを鼓舞し、事業の勘所を見抜いて戦略や方針を決定することが求められます。したがって、「具体的な事実」と「抽象的な概念」の間を行き来する、コンセプチュアルスキルが重要になります。

<ヒューマンスキルとは?>

ヒューマンスキルは対人関係能力のことで、他者と良い人間関係を築き、コミュニケーションを図る能力を指します。ヒューマンスキルはプレーヤー層においても必要となりますが、メンバーに動いてもらい組織の成果をあげる管理職にとっては、必要不可欠なスキルです。

 

ヒューマンスキルは「コミュニケーション能力」だけではなく、「人格」や「人間性」のような、信頼関係の基盤まで含んだものとして捉えるとより適切です。

 

ノンテクニカルスキル

ノンテクニカルスキルとは、テクニカルスキルと対比される概念であり、上記で紹介したコンセプチュアルスキルやヒューマンスキルなどをノンテクニカルスキルということもできるでしょう。

 

個人が自己成長しようとする際、分かりやすいテクニカルスキルに目がいきがちですが、ノンテクニカルスキルは、テクニカルスキルと同様に重要です。

 

たとえば、顧客や周囲と信頼関係を築いたり本音をヒアリングするコミュニケーションスキル、周囲を巻き込んだり動かしたりするリーダーシップ、タスク管理や時間管理、決断力などは、仕事内容に関わらず大切な力です。

 

職場でのコミュニケーションや問題解決能力、業務推進力などのノンテクニカルスキルが備わることで、テクニカルスキルをより効率よく生かすことができるでしょう。

 

 

3種類のテクニカルスキル

テクニカルスキル(業務遂行能力)をさらに区分すると、汎用スキル、専門スキル、特化スキルの3つに分けられます。

 

汎用スキル

汎用スキルは、業界や部署、職種を限定せず、さまざまな環境で共通して活用が可能です。汎用性が高い、つまり異動や転職しても個人が「持ち歩けるスキル」という意味で、「ポータブルスキル」や「トランスファラブルスキル」とも呼ばれます。

 

例えば、汎用スキルにはビジネスマナーや文章力、「計画・実行・振り返り・修正」のPDCAサイクルを回す力などが挙げられます。また、ホワイトカラーであれば、必須となるパソコンの基礎スキル、情報収集力などが具体的なスキルとなるでしょう。

 

また、もう少し抽象度を高めると、ポータブルスキルは、対人力・対課題力・対自分力という3つのグループに分けることもできます。

 

<対人力>

主張力、否定力、説得力、統率力、傾聴力、受容力、支援力、協調力

<対課題力>

試行力、変革力、機動力、発想力、計画力、推進力、確動力、分析力

<対自分力>

決断力、曖昧力、瞬発力、冒険力、忍耐力、規律力、持続力、慎重力

 

ポータブルスキルを磨くうえでは、各グループのなかでどこが強みかを考えて強みを伸ばすこと、成果をあげるためにボトルネックとなっている弱みを改善することが大切です。

 

以下の記事では、ポータブルスキルを詳しく知ることができます。自分の強み弱みを把握して、必要なスキルを伸ばして自分なりの活躍スタイルを明確にしましょう。

 

なお、対人力はヒューマンスキルと重複する部分がありますが、ここではポータブルスキルの一つとして紹介しました。

 

 

専門スキル

専門スキルは、部門や職種によって異なる業務遂行のための知識や能力です。部門や職種により専門性がありますが、各部門や職種内ではある程度共通してきます。

 

専門スキルの例)

  • 営業:関係構築力、ヒアリング力、プレゼンテーション力、商談スキル、商品知識など
  • 会計:簿記、管理会計、決算、キャッシュフロー、財務など
  • ITエンジニア:プログラミングスキル、システム設計、問題解決力など

 

専門スキルを身に付けるうえでは、「この専門スキルを身に付けるには、ポータブルスキルのここが基礎になる」という能力があります。

 

例えば、営業の関係構築力やヒアリング力、プレゼンテーション力を身に付けるには、対人力グループのスキルを高めることが基盤となります。ITエンジニアであれば、対課題力グループの論理性に関するスキルが必須となるでしょう。

 

汎用スキルを高めたうえで、専門スキルを身に付けていくと、各仕事での成果に直結します。また、職種で必要な専門スキルをある程度まんべんなく身に付けることで、周囲や部門の仕事をより高い視座で見通すことができるようになるでしょう。

 

専門スキルは、転職や異動すると使えなくなってしまうものもありますが、基本的には同じ/類似職種にいれば、汎用的に生かせます。

 

特化スキル

特化スキルは、ある分野に特化した技術や、際立ったプロフェッショナル性を指します。「各職種の専門スキルを細分化して磨き上げたもの」が特化スキルのイメージです。

 

例えば、マーケティング職のなかにも、CRMツールの設計・活用スキル、高度なライティングスキル、クリエイティブディレクション能力、Web広告運用に関するスキルなど、さまざまな特化スキルがあります。

 

特化スキルを磨けば、分野や職種における「専門性」が高まることになります。ただし、特化スキルは時代の流れやIT化のなかで必要とされなくなったり、汎用スキルや専門スキルを身に付けていないと組織内で活躍できなかったりするリスクもあります。

 

個人のキャリアとしては、汎用スキルや専門スキル・特化スキルとのバランスを考えながら特化スキルを磨くことが大切です。

 

また、組織マネジメントの視点で考えると、特化スキルは職種内の全員に必要なスキルではありませんが、失われると組織内のパフォーマンスに支障をきたします。したがって、組織として特定の個人だけに特化スキルが依存しないように、後継者の育成を進めたり、特化スキルに至らない専門スキルのレベルで言語化して、組織内で共有したりすることが大切です。

 

 

テクニカルスキルを向上させるメリット

テクニカルスキル向上には多くのメリットがあります。テクニカルスキルは成果をあげるために必要な専門性です。従って、テクニカルスキルを向上させることは、顧客の満足度や生産性、成果につながります

 

たとえば、新たなスキルを体得したり専門的な知識を身につけることで業務効率は向上するでしょう。また、ツールの効率的な活用や専門的な機械などを使いこなすことで生産性は一気に向上し、仕事の進捗スピードやクオリティに直結するようになるでしょう。また、クライアントの満足度にもつながります。高いテクニカルスキルを持つ社員は、クライアントのニーズに対応できる幅や品質が向上するでしょう。

 

テクニカルスキルを向上させる時の注意点

テクニカルスキルを向上させることには多くのメリットがありますが、磨くときには注意点も存在します。

 

前述の通り、テクニカルスキルがあるだけでは、大きな成果を出す上で壁にぶつかってしまいます。

 

成果をあげるにはノンテクニカルスキルや土台となるポータブルスキル、人間関係の構築能力や他人を巻き込むヒューマンスキル、コンセプチュアルスキルも必要です。これらのスキルがなく、テクニカルスキルだけでは大きな成果を出すことは難しいでしょう。

 

例えば、あるエンジニアは優れたテクニカルスキルを持っていましたが、人間関係構築やコミュニケーション能力が不足していました。その結果、顧客とのコミュニケーションが上手くいかず、プロジェクトのなかで齟齬が生じて、トラブルを起こしてしまいました。

 

このように、成長に際しては、テクニカルスキルとノンテクニカルスキルのバランスという部分が大切です。

 

テクニカルスキルは明確な知識や専門性であるため、個人が自覚しやすいものですが、ノンテクニカルスキルは意外と本人は自分のレベルを自覚しにくいものです。周囲のアドバイスも得ながら、スキルUP分野を考えていくとよいでしょう。

 

また、テクニカルスキルを向上させる際には、スキルの偏りにも注意が必要です。自分の作りたいキャリアや目標に合わせて、バランスよくスキルを伸ばすことが大切です。特定の分野に偏りすぎると、他の重要スキルが不足し、キャリアの選択肢に制約が生じてしまうこともあります。

 

そのため、ひとつのテクニカルスキルだけをを意識するのではなく、自分の作りたいキャリア、また、企業や市場の変化を踏まえながら、スキルアップを考えることが大切です。

 

テクニカルスキルの磨き方

スキルの向上を図る男性

 

テクニカルスキルは、業務遂行能力というとおり、仕事で成果をあげるうえで欠かせない力です。自分の職種や仕事内容、階層に応じたテクニカルスキルをしっかりと身に付けていきましょう。

 

カッツモデルでは、経営幹部や管理職になるとテクニカルスキルの重要性が相対的に下がるとされていますが、テクニカルスキルが必要なくなるわけではありません。テクニカルスキルは必要ではあるが、テクニカルスキルだけでは成果をあげられなくなる、と理解するのが適切です。

 

テクニカルスキルを身に付けるうえで知識は必要ですが、知識を身に付けただけではテクニカルスキルが身に付いたとは言えません。

 

“効果的なプレゼンテーションで押さえないといけないポイントを知る”ことは成長のために必要ですが、“効果的なプレゼンテーションが出来る”ようになって、初めて“プレゼンテーションのテクニカルスキルを身に付けた”といえます。

 

成果が出るまでには時間がかかりますので、テクニカルスキルを磨くために、モチベーションを維持することも大きなポイントです。

 

テクニカルスキルを磨く5ステップ

テクニカルスキルは、以下の手順で高めるのが効果的です。

 

  1. 仕事で成果をあげるためのテクニカルスキルを洗い出す
  2. 各スキルにおける自分の取得レベルを客観的に位置づける
  3. どのスキルを伸ばすのかを決める
  4. 全体像を理解したうえで、個別のスキルを学び、実践する
  5. 熟達者からフィードバックをもらう

 

まずは、自分の職務において成果を出すために、必要なテクニカルスキルを明確にすることから始めましょう。汎用スキル(ポータブルスキル)、専門スキル、特化スキルという3つの分類で考えるとよいでしょう。

 

能力向上のために、どのような能力を身に付ける必要があるかを言語化することは大切です。“自分の仕事で成果をあげるためのテクニカルスキル”を洗い出して整理するだけでも学びがあるでしょう。

 

そして、必要なスキルが明確になったら、各スキルに対して自分のレベルが今どのくらいなのかを位置づけましょう。例えば、各スキルについて10段階で、いまの自分のレベルを位置づけます。

 

上記の手順2では「客観的に」としていますが、どのスキルを伸ばすかを考えるための材料です。絶対的に正しい必要はありません。なお、レベル決めは自分でやっても良いですが、上司や周囲の人などからコメントをもらうと、より客観的な意見がもらえるでしょう。

 

そのうえで、次に向上に取り組むスキルを決めましょう。

 

取り組むスキルを決めるには、「仕事で成果をあげる」というゴールから逆算して、「強みを伸ばす」「ボトルネックになっている弱みを解消する」という、2つの視点を持つことが有効です。検討する際にも、上司などの熟達者に相談すると、良い意見をもらえるでしょう。

 

その後、伸ばすべきスキルに必要な知識の習得や実践を繰り返しながら、熟達者から定期的にフィードバックをもらいます。5つのステップを繰り返せば、確実にスキルを高めていくことが可能です。

 

モチベーションを維持することも大切

テクニカルスキルを身に付けるうえで、知識のインプットは簡単ですが、身に付けて成果へとつなげるには時間がかかることが多いでしょう。特に、ポータブルスキルは誰もが知っているものだからこそ、レベルアップは簡単ではありません。

 

モチベーションを維持できず、途中で挫折してしまう人も少なくありません。モチベーションを維持するためには、感情のコントロールやモチベーションが上がらないときの対処法を知っておくことが大切です。

 

感情コントロールができない理由には、大きく2つがあります。

  • 変えられないものに固執してしまう
  • 自分を理解していない

 

過去や他人の感情などの変えられないものに囚われたり、自分の個性や強みを客観的に見られなかったりすると、感情コントロールが難しくなります。モチベーションが下がったときも、対処方法がわからなくなってしまいがちです。

 

自分を客観的に見つめ、変えられるもの(コントロールできるもの)と変えられないものを整理しましょう。変えられるものへ力を注げば、モチベーションが上がらないときも自分で対処しやすくなるでしょう。

 

また、スキルを身に付ける際に焦りすぎたり、トレーニングの難易度を上げすぎたりすると挫折の原因になります。そうならないよう、難易度を下げる代わりに毎日実行し、習慣化を目指しましょう。

 

 

まとめ

職務の遂行に欠かせない知識や技術であるテクニカルスキルは、仕事で成果をあげるために不可欠です。テクニカルスキルは、カッツモデルに当てはめて考えると、理解しやすくなるでしょう。

 

テクニカルスキルは、どのような職種や仕事でも生かせるポータブルスキルの「汎用スキル」、各職種に必要な能力となる「専門スキル」、専門スキルをさらに細分化して磨き上げた「特化スキル」の3つで構成されます。自分の強みを踏まえながら、3つのスキルをバランス良く伸ばしていきましょう。

 

仕事で成果をあげるために必要なテクニカルスキルを洗い出して、自分の現状のレベルを位置づけます。そのうえで、どのスキルを伸ばすかを決めて取り組んでいきましょう。

 

テクニカルスキルは知識をインプットするだけではなく、実務で使うことができて、はじめて身に付けたといえます。時間がかかるスキルもありますので、自分のモチベーション管理に気を付けながら取り組みましょう。

 

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著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック執行役員

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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