相乗効果(シナジー)とは? シナジーを創り出す(相乗効果を発揮する)3つのポイントを解説 『7つの習慣』第6の習慣

シナジーを創り出す(相乗効果を発揮する)3つのポイント|『7つの習慣』第6の習慣

シナジーは日本語では「相乗効果」と表現され、「全体の合計が個々の総和より大きくなる」ことを意味する単語です。書籍『7つの習慣』では、シナジー(相乗効果)を生み出すことが、7つの習慣の目的であるとして、相乗効果とは何か?そして、どうやって生み出すのか?を解説しています。

 

『7つの習慣』は、全世界で4000万部、日本国内でも240万部を売り上げ、ベストセラーとして有名になったビジネス書です。同書は、多くのビジネス誌や各界の著名人も非常に影響力のある、役に立つ書籍として推薦されています。読んだことはなくても、「名前を耳にしたことはある」という人も多いのではないでしょうか。

 

書名の通り『7つの習慣』には、私たちの効果性を高め人生を成功に導くための習慣が、全部で7個書かれています。

 

第1から第3の習慣は、自分自身の効果性を高めて自立する(私的成功)ための習慣、第4から第6の習慣は、他者と良い人間関係を築き、共に成功(公的成功)を実現する習慣、第7の習慣が自らの状態を良い状態に保ち続ける刃を研ぐ習慣となっています。

 

そして、公的成功を実現する第4~第6の習慣の締めくくりであり、「7つの習慣®」で実現を目指すものこそが第6の習慣「シナジーを創り出す(相乗効果を発揮する)」です。

 

『7つの習慣』の中では、以下のように述べられています。

「ここまで学んできた習慣はすべて、シナジーを創り出す習慣の準備だったと言える。シナジーを正しく理解するなら、シナジーは、あらゆる人の人生においてもっとも崇高な活動であり、他のすべての習慣を実践しているかどうかの真価を問うものであり、またその目的である」
(スティーブン・R・コヴィー著「完訳 7つの習慣® 人格主義の回復」より引用)

本記事では、「7つの習慣®」で目指すゴールともいうべき、第6の習慣「シナジーを創り出す」をテーマに、相乗効果(シナジー)とは何か、どのようにすれば実現できるのかを解説します。

 

なお、7つの習慣の全体像にについては以下の記事で要約してご説明していますので、ご興味あればご覧ください。

 

<目次>

シナジー(相乗効果)とは?

シナジーは日本語では「相乗効果」と表現され、「全体の合計が個々の総和より大きくなる」ことを意味する単語です。

 

私たちの日常において、1+1の結果は2です。これは計算としては間違っていませんが、1+1の合計が2ではなく、3にも5にも10にもなる…というのが相乗効果です。

 

シナジー(相乗効果)とは何か、また、ビジネス分野で使われる類似する言葉、シナジー効果とは何かを解説します。

 

シナジー(相乗効果)とは?

シナジー「相乗効果」とは前述の通り、「全体の合計が個々の総和より大きくなる」、つまり、1+1の合計を2ではなく、3や5や10にすることを指します。

 

たとえば、自立した人同士が協力し合うことによって、一人ひとりがバラバラに取り組んだ合計を遥かに上回る成果を手にできる。それが相乗効果であり、1+1=2ではなく、1+1が3にも、あるいは10にも、1,000になる瞬間です。

 

学生時代、あるいは仕事において、「一人ひとりでは無理だったものが、励まし合い、お互いの強みを活かしたことで、期待を超える成果を手にした」という経験、相乗効果が発揮された体験をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。

 

このように複数の人や組織が協力し合い、個々の合計以上の成果を意図的に生み出すことがシナジー(相乗効果)です。

 

シナジー(相乗効果)は書籍『7つの習慣』を通じて一躍有名となりました。『7つの習慣』では、各習慣を実践することで得られるものこそがシナジー(相乗効果)であると言っています。

 

相乗効果を発揮することで、個人が自立して頑張って得られるもの(私的成功)よりも、はるかに大きなものを手にすることができます。『7つの習慣』では、これを公的成功(相互依存)と表現しており、第6の習慣で具体的に意図的にシナジー(相乗効果)を生み出すやり方を解説しています。

 

7つの習慣の全体像に興味があれば以下の記事をご覧ください。


本記事では、第6の習慣に基づく「意図的なシナジー(相乗効果)の生み出し方を解説します。

 

シナジー効果とは?

シナジー効果とは、ビジネス分野において、M&Aや企業グループ間、業務提携などによって生み出される組織間のシナジー(相乗効果)を指します。

 

『7つの習慣』におけるシナジー(相乗効果)は、主に個人と個人の間に生み出すシナジー(相乗効果)を扱っています。ただ、シナジー(相乗効果)は、組織と組織の掛け合わせでも生み出すことができるものです。

 

シナジー効果は、複数の企業が連携することで新たな価値を生み出す、グループ会社や部署間で業務を統合したり資源を共有したりすることでコスト削減を実現するといったことを指します。

 

たとえば、展開エリアが違う同業他社と合併することで、仕入れにおける購買力を高めてコスト削減する、同時に、サービスの提供エリアを拡大するといったイメージです。

 

また、異なる分野で優れた技術を持つメーカー同士が合併したり、自社の事業と補完的な機能を持つサービスをM&Aで手に入れるといったこともシナジー効果を狙って実施されます。

 

上述のようにシナジー効果が特に期待されるのは、企業間のM&A(合併・買収)や業務提携などです。それぞれの企業が持つ事業や顧客構造、技術や資源を掛け合わせることで、お互いの価値を高め、競争力の強化を狙うわけです。

 

なお、シナジー効果を狙ってM&Aや業務提携、部署間での資源共有などを行う場合であっても、重要なのは現場にいるスタッフ一人ひとりの行動です。異なる会社、部署の人間が否定するのではなく、お互い協力し合うことによって、より大きな成果(相乗効果)を得ることができます。

 

後ほどシナジー効果の具体的な種類についても説明しますが、シナジー効果を実現するためには、『7つの習慣』における個人間のシナジー(相乗効果)を意図的に生み出すためのやり方が参考となるでしょう。

 

相乗効果を発揮する(シナジーを創り出す)とは?

最初に、シナジー(相乗効果)とは何か、そして、シナジー(相乗効果)の具体的なイメージとなる“第三案”について解説します。

 

シナジーとは?

シナジーは日本語では「相乗効果」と表現され、「全体の合計が個々の総和より大きくなる」ことを意味する単語です。

 

私たちの日常において、1+1の結果は2です。これは数字の計算としては間違っていませんが、1+1の合計が2ではなく、3にも5にも10にもなる…というのが相乗効果です。

 

自立した人同士が協力し合うことによって、一人ひとりがバラバラに取り組んだ合計を遥かに上回る成果を手にできる。それが相乗効果であり、1+1=2ではなく、1+1が3にも、あるいは10にも、1000になる瞬間です。

 

学生時代、あるいは仕事において、「一人ひとりでは無理だったものが、励まし合い、お互いの強みを活かしたことで、期待を超える成果を手にした」という経験、相乗効果が発揮された体験をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。

 

このように複数の人同士が協力し合い、個々の合計以上の成果を意図的に生み出すことがシナジー(相乗効果)であり、公的成功が実現する姿です。

 

シナジーを創り出すことで、何を得られるのか?

シナジー(相乗効果)を創り出すことで、私達は何を得ることができるのでしょうか。

 

たとえば、職場の場面を想像してみてください。職場にはさまざまな社員がいます。仕事ができる人、できない人、大きな成果を上げている人、なかなか成果に届かない人…仕事のやり方もパフォーマンスも強みも、一人ひとり様々です。

 

しかし、どんなに大きな成果を出す人であっても、1人の人間が出せる成果には限界があります。これに対して、先ほど説明したように、1+1の合計を2ではなく、3にも5にも10にも…できる可能性を持っているのがシナジー(相乗効果)です。

 

すなわち、私達はシナジー(相乗効果)を創り出すことによって、1人では到達することのできない、大きな目標・大きな成果を手にできるのです。

 

同じ部署内だけではなく、他部署の人と、また、外部のパートナーと、さらには顧客や競合と、意図的にシナジー(相乗効果)を生み出すことができたらどうでしょうか。

 

シナジー(相乗効果)を発揮するための術を解説しているのが第6の習慣です。

 

シナジーによって、第三案を生み出す

「シナジーを創り出す(相乗効果を発揮する)」イメージは、三角形のモデル図を見ると具体的に把握しやすくなります。

第3案

 

上記の図は、AさんとBさんの2人がそれぞれ持っている案(≒個人の力)を、三角形で表現したものです。

 

Aさんの案とBさんの案、2つの三角形の外側の辺を伸ばしていくと、新しく大きな三角形ができあがります。

 

シナジーを創り出すというのは、この図のように、複数の人同士がそれぞれのアイデアや強み、発想を発揮し合うことで、一人の合計よりも大きな成果・結果を生み出すことです。

 

上記の図では、それぞれの三角形の面積を合わせたよりも大きな三角形が新しく誕生しています。新しく誕生したこの大きな三角形を、コヴィー博士は「第三案」と呼んでいます。シナジーを創り出す(相乗効果を発揮する)というのは、第三案を生み出すプロセスとも言えます。
 

 

ビジネスでシナジー(相乗効果)やシナジー効果が求められる理由

ビジネスで相乗効果やシナジー効果が求められる理由は、パフォーマンスの向上です。

 

私たちが持っているリソース(資源)、たとえば、時間、金銭には限りがあります。これはビジネスでもプライベートでも変わりません。従って、限られた資源でより大きな望む成果を得るためにはパフォーマンスの向上が欠かせません。

 

ここでいうパフォーマンスの向上とは、単純な効率化ではなく、資源(インプット)から成果(アウトプット)を生み出す効率性の向上であり、望む成果をより長期的・継続的に得続ける効果性の向上です。

 

とくにビジネスにおいては、私たちは常に他社との競争にさらされています。そして、今や消費者ニーズは多様化し、グローバル化とインターネットの発達によって、エリアや国を超えて競争が生じる、そして、業界や業種を超えて競合が現われる時代となっています。

 

その中で、社内外で異なる価値観や経験、強みを持った人とのシナジー(相乗効果)を起こし、生産性の向上やイノベーションを起こすことが求められています。

 

また、外部環境の変化が激しくなる中で、自社の経営資源のみで企業活動を行うと変化に対応できなかったり、対応が遅れるケースも増えています。企業の存続や事業成長のためには、環境の変化に対応して新規事業を展開したり、サービスを進化させたり、コスト効率を高めたりすることが求められます。しかし、自社単独では資源が不足していたり、新規事業の立ち上げにも時間が必要です。

 

そこで、自社の経営資源のみで企業活動を行うのではなく、M&Aや事業連携、パートナーシップ等を通じてシナジー効果を獲得して、存続・成長していく必要があります。

 

シナジー効果の種類

ビジネス上のシナジー効果は、大きく事業シナジー、財務シナジー、組織シナジーの3種類に大別できます。各シナジー効果を簡単に紹介します。

 

事業シナジー

事業シナジーとは、複数の企業が提携することによって得られる、直接的な事業推進に役立つシナジー効果を指します。たとえば、サービス強化、技術やノウハウ獲得、顧客獲得、人材獲得、コスト削減、スケールメリットなどが挙げられます。

 

昔から上げられる分かりやすい事業シナジーの筆頭はスケールメリットです。事業規模を拡大することにより生産量や仕入れ量を増やし、生産効率を高めたり、価格交渉力が強くしたりすることができます。いわゆる「規模の経済」などもスケールメリットのひとつです。

 

また、最近では、IT技術の発達により少数のスーパーエンジニアが圧倒的な成果を生み出すことが可能になったことに伴い、大手企業やメガベンチャーなどが人材を獲得するためにスタートアップ企業を買収するといった事例も増えています。

 

財務シナジー

財務シナジーは、企業のお金や税金に対するシナジー効果のことです。具体的には、余剰資金の獲得や節税効果などが挙げられます。

 

余剰資金獲得とは、企業のM&Aや合併・買収を通じて余剰資金を生み出し、また、まとめることで、ベンチャー企業などに投資する、人材確保のために資金を使うといったことを可能にするものです。

 

また、節税効果とは企業のM&Aを通じて、繰越欠損金などの債務を受け継ぎ、自社に計上することで黒字幅を削減し、税金の納付額を下げる節税効果を得ることです。

 

組織シナジー

組織シナジーとは、企業内の人員が連携・協力することで得られるシナジー効果です。生産性の向上、業務効率化などのメリットが期待できます。

 

組織の連携によって、異なる価値観や文化を持った人と関わることで新たなアイディアやイノベーションも生まれやすくなるでしょう。またお互いの仕事の進め方が参考となって、生産性向上などが生まれることも期待できます。

 

また、1つの組織となって業務統合やシステム統合を進めることで業務効率化やコスト削減が進む部分もあるでしょう。このあたりは事業シナジーとも重複する部分もありますが、事業シナジーは事業を推進する上での直接的なシナジー効果、組織シナジーは1つの組織となることで得られる間接的・内部的なシナジー効果という違いです。

 

シナジー効果をどれぐらい得られるかは、組織シナジー、事業シナジー、財務シナジーの順番で、人の連携やコミュニケーションに影響される部分が大きくなるでしょう。とくに組織シナジー、またスケールメリットや顧客構造など以外の人の連携によって効果性が変わってくる事業シナジーを得るためには、連携・協力する組織それぞれの従業員が、シナジー効果(相乗効果)を発揮することが重要となってきます。

 

 

反対語、アナジー効果とは

アナジー効果とは、組織や事業を連携・統合した結果、プラスではなくマイナスの効果をもたらされてしまうことを指します。

 

ビジネスにおけるM&Aや事業提携は当然シナジー効果を狙って実施されるわけですが、必ずしも成功するわけではありません。

 

例えばM&Aによる統合を行ったが、統合前よりも価値が下がってしまった、マイナスの効果が現れてしまったといったケースです。多角化経営の失敗や、システム統合が上手くいかずコストが増加してしまった、合併後のトラブルで優秀な人材や重要な人材が流出してしまったなどがアナジー効果の具体的な現象です。

 

M&Aや協業だけではなく、企業における部門間の統合などでも、組織を大きくしたことで意思決定のスピードや生産性が落ちてしまうといったこともあります。こうしたアナジー効果を避けるためには、入念なシミュレーション、また、各個人がシナジー(相乗効果)を生み出すための姿勢を持つことが大切です。

 

次章では、シナジー(相乗効果)が妨げられる、シナジー効果ではなくアナジー効果が生まれてしまう人の考え方や姿勢の要因を紹介します。

 

シナジーの発揮(相乗効果)を妨げるものは何か?

前章では、シナジー(相乗効果)の概要と、シナジー(相乗効果)を視覚的に表した“第三案”を紹介しました。私達は、お互いが協力し合うことによって、一人では成し遂げられない大きな成果、恩恵を得ることができます。

 

一方で、私たちが実際にシナジーを発揮するまでの道のりは、決して平坦ではありません。むしろ、様々な要因によって、シナジーを発揮したくても、できずに終わってしまうケースの方が多いかもしれません。

 

シナジーの発揮を妨げるものは何なのか、本章ではシナジーの実現を妨げる要因を3つ解説します。阻害する要因を理解することで、シナジーを生み出すことも容易になるはずです。

 

1.人は自分と違うものを否定的に捉えやすい

シナジーの発揮を妨げる1つ目の要因は、私たちは、自分と異なる価値観や考え方を否定的に捉えやすいということです。

 

人は、なぜ自分と違う価値観や考え方を否定的に捉えがちなのでしょうか。理由を一言で言うと“居心地が悪い”と感じるからです。自分と異なる意見や考え方に触れると、私たちは無意識のうちに、その意見が自分の考え方や価値観を否定するものであるかのように感じてしまいがちです。

 

私たちにとって、自分と異なる意見を受け入れることは、ある種の“心の痛み”を伴いますし、また自分の価値観を一旦脇に置く自制心も求められます。

 

しかし、そもそも人は皆、それぞれ違う経験をし、違う人生を生きているのですから、考え方や物の見方は違っていて当たり前です。

 

書籍『7つの習慣』では、このような一人ひとり異なる考え方や物の見方を、「パラダイム」と呼んでいます。自分の意見や価値観も、あくまでひとつの“パラダイム”=物事の見方、捉え方なのです。自分と異なる意見も、自分の意見を否定するものではなく、違うパラダイムによって物事を捉えただけなのだと言えます。

 

シナジーを発揮するうえで重要なのは、考え方が違う相手を受け入れることです。「自分と異なる意見を出してきた相手は、どんなパラダイムで物事を見て、解釈したのだろうか?」「それを理解してみよう、相手に聞いてみよう」というスタンスを持つことが大切です。

 

もし「私の意見を否定するような主張をするから、あいつは敵だ!私の意見の正しさを示してやろう!」と考えしまえば、第三案を生み出すことは叶わないでしょう。

 

2.第三案を生み出すのではなく、妥協してしまう

2つ目の要因は、第三案を生み出すのではなく「妥協」してしまうということです。

 

前章では、お互い協力して相乗効果を発揮することで、新しい大きな三角形=”第三案”を創り出せる、という話をしましたが、別のケースを考えてみましょう。

 

お互い違った考えや発想を持っているAさんとBさんですが、一方で2人の間には共通する目的や思惑もあることでしょう。

 

先述のように、違った考えや価値観を受け入れようとする時、私達は、痛みや居心地の悪さを感じてしまいがちです。その痛みや苦痛を避けようとするあまり、お互いの間で一致している目的や思惑の範囲で「それなら、とりあえずこの辺で手を打ちましょう!」と、ことを丸く収めてしまうのは、実際によくあることです。

 

しかし、これはお互いの協力によって生み出された第三案ではなく、「妥協」にすぎません。下記の図を見ると“妥協”と“第三案”の違いがイメージしやすいでしょう。

 

妥協

 

妥協とは、上記の図でいうと、お互いの一致した部分、つまり三角形の重なった部分です。もしお互いが妥協してしまえば、得られる結果は、Aさんの三角形とBさんの三角形を足し合わせたものよりも小さくなってしまいます。

 

つまり、1+1の結果が、せいぜい1.5の成果にとどまってしまうのが妥協です。妥協は、相乗効果どころか、マイナスのシナジーを生み出すものなのです。

 

3.防衛的なコミュニケーション

シナジーの発揮を妨げる3つ目の要因は、防衛的なコミュニケーションです。

 

コヴィー博士は、シナジーを発揮できるかどうかには、お互いのコミュニケーションの在り方が大きく関係していると話します。

 

相手に対する協力や信頼が少ない状況の場合、私たちが取りがちなのが、防衛的なコミュニケーションです。防衛的なコミュニケーションでは、自分の立場を守ることが優先されます。言質を取られないよう、用心して言葉を選び、万が一の逃げ道だけはしっかり確保しておく…といったものを想像するとイメージしやすいでしょう。

 

防衛的なコミュニケーションが蔓延すれば、シナジーを発揮することからは大きく遠ざかってしまいます。防衛的なコミュニケーションに陥らないためには、まず自分自身が信頼される個人となること。これが大前提です。

 

すなわち、シナジーを発揮するには個人の「自立」が不可欠だということです。私たちの自立を実現させるカギを握るのは、『7つの習慣』に書かれている第1~第3の習慣です。

 

そして、私的成功の習慣を実践した次のステップが、お互いの信頼関係を深めるということです。特定の相手に対して、信頼を積み重ねていく。『7つの習慣』では、これを信頼残高という考え方で説明しています。

 

 

 

シナジー(相乗効果)を創り出すために必要な3つのポイント

本章では、シナジーを創り出す(相乗効果を発揮する)ために大切な3つのポイントを解説します。

 

1.相違点を祝い貴ぶ

記事でお伝えしたように、相乗効果によって新しい第三案を生み出すためには、お互いの違い、つまり相違点の存在がカギを握ります。

 

もしも、AさんとBさんの間に違いがなかったら、つまり同じような発想、価値観の人だけの場合どうなるでしょうか。この場合、表面上の見解は一致し、議論やいざこざもなく物事が進みそうです。

 

しかし、このような関係・関わり方のまま物事を進めても、1+1=1という結果となり、期待するような第三案は生まれにくくなってしまうでしょう。

 

逆にいえば、AさんとBさんの相違点、お互いの発想や価値観の違いが大きければ大きいほど、得られる第三案の三角形、相乗効果は大きくなります。

 

相違点が大きいほど第三案は大きくなる

 

ただし、もちろん議論の土台が成立しなければ、下記のように第三案は生まれません。

 

お互いに相違点が無いケース

 

ここで議論の土台となるのが、お互いがきちんと自立していること、お互いを信頼してWin-Winを実現しようとすることなどです。

 

つまり、私的成功の土台がそろった時、相違点こそがシナジーを生む原動力となるのです。

 

しかし、前述した通り、私たちは無意識のうちに自分と異なる意見に対して警戒心を抱くものです。無意識の警戒心や反発に対処して、異なる価値観(パラダイム)を持っていることを受け入れる。そして、自分と相手との違いをポジティブに捉え、お互いの相違点を尊び祝うという信念を持つことが肝心です。

 

2.内面の安定性を保つ

前節でお伝えした、互いの相違点を祝い貴ぶという考え方は、概念としては分かりやすいものです。しかし、それでも人間は、“自分と違った考え方や意見に対して恐怖や居心地の悪さを感じる”という防衛本能を持っています。

 

シナジーを発揮できる人になるために、私達は何を克服すればいいのでしょうか。コヴィー博士は下記のように言っています。

「創造のプロセスに歩み出すときは、とてつもない不安を感じるものだ。これから何が起こるのか、どこに行き着くのか、まったく見当がつかず、しかもどんな危険や試練が待ち受けているのかもわからないからだ。冒険心、発見しようとする精神、創造しようとする精神を持ち、一歩を踏み出すには、確固とした内面の安定性が必要となる。居心地のよい自分の住処を離れて、未知なる荒野に分け入って行くとき、あなたは開拓者となり、先駆者となる。新しい可能性、新しい領土、新しい大地を発見し、後に続く者たちのために道を拓くのである。」
(スティーブン・R・コヴィー著「完訳 7つの習慣® 人格主義の回復」より引用)

コヴィー博士が言うように、シナジーを発揮するためには、まず、私たちの内面に確固とした安定性が備わっている必要があります。

 

優柔不断でビジョンも目的なく行き当たりばったりで行動する、優先順位を決められず常に時間に追われている…このように内面が不安定のままでいれば、他者と協力してシナジーを発揮することは到底かなわないでしょう。

 

内面の安定性は、第1~第3の私的成功の習慣が土台となって初めて実現します。相乗効果を発揮するためには、やはり私的成功の習慣を身に付けて自立することが求められるわけです。

 

3.信念を持って辛抱強く取り組む

ここまでお伝えしたように、シナジーとは、考え方や発想の違う人同士が協力することによって、これまでになかった新しいもの、一人では得ることのできない大きな成果を創造するプロセスです。

 

一方で、人間は変化を好まない側面も持つ生き物です。ですから、私たちがシナジーを生み出そうと行動する時に、その行動を妨げようとする抑止力が立ちはだかってくることも往々にしてあります。他人の批判ばかりする同僚、強引に意見を押し付けてくる上司、自己主張ばかりする友人…このような相手とも、相違点を尊重し、共に第三案を目指すべきなのかと疑問に思うこともあるかもしれません。

 

しかし、考え方や価値観の違いを断固として受け入れようとしない、あるいは、当面の妥協を選んでしまう姿勢のままでは、シナジーを生み出すことからは遠ざかってしまいます。第3案に至るためには、忍耐も求められます。

 

「私は相手との違いを尊重してシナジーを創り出せる!」と信念を持ち、辛抱強く関わっていくことで、第三案に至る道が見えてくるでしょう。

 

ポイントとなるのは、一時的な感情や苛立ちに身を任せず、自分が実現したいビジョンを見据えること(第2の習慣)です。そして、win-winだけが中長期的に良好な人間関係を維持する道だと信じ続けること(第4の習慣)、まず自分から相手を理解しようとすること(第5の習慣)です。

 

つまり、第6の習慣を実践するには、やはり手前の第1~第5の習慣まで、5つの習慣をしっかりと実践することが大切なのです。

 

 

 

 

まとめ

記事では、書籍『7つの習慣』における第6の習慣「シナジーを創り出す(相乗効果を発揮する)」を解説しました。じつは、この第6の習慣こそが、「7つの習慣®」全体の目的です。

 

しかし、記事の中でお伝えしたように、私たちの中には相乗効果の発揮を妨げる因子も存在しています。シナジーを作り出すためには、私たちの内面の安定性、個人の自立が求められます。ハードルを乗り越えた先にあるシナジーがもたらす成果、恩恵は非常に大きなものです。すべての場面でシナジーを創り出すことは難しいでしょう。

 

しかし、第6の習慣を、普段の仕事や私生活に意識的に取り入れることができれば、私たちは飛躍的に大きな成果を手にすることができるようになるでしょう。

 

株式会社ジェイックでは、7つの習慣を習得する研修を実施しています。フランクリン・コヴィー・ジャパン株式会社と正式契約しており、認定資格を取得した講師が研修を行います。ご興味のある方はぜひ以下のページよりお問い合わせください。

著者情報

宮本 靖之

株式会社ジェイック シニアマネージャー

宮本 靖之

大手生命保険会社にて、営業スタッフの採用・教育担当、営業拠点長職に従事。ジェイック入社後、研修講師として、新入社員から管理職層に至るまで幅広い階層の研修に登壇している。また、大学での就活生の就職対策講座も担当。

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