中堅中小企業で採用に悩む声をよく伺います。事業・組織運営における対応と同じで、課題を明確にして、施策を打たないと採用活動が好転することはありません。
これまでは景気の変動で自然と採用課題が解決することもありました。しかし、多くの方が認識していませんが、2022年からいよいよ採用市場における「少子化」が本格スタートします。(じつは、これまでは大学進学率の上昇と少子化が釣り合って、採用市場において「少子化」の影響はあまり出ていませんでした)。
中長期的に見ると、採用難易度は絶対的に上がり続ける時代が始まります。採用課題を解決できないと、思うような人材を獲得することは出来ず、経営が行き詰まることになるでしょう。
記事では、多くの企業で起こっている採用活動の課題と解決法を解説します。採用力を高めるための本質的な方法も解説しますので、ぜひ参考にしてください。
<目次>
採用活動の課題を整理!課題の明確化が問題解決の第一歩
採用活動における課題は大きく4つに整理できます。自社の課題を明確化することが、問題解決の第一歩となります。
採用の目標人数を採れない
採用活動における課題のほとんどは「採用の目標人数を採れない」ことでしょう。「1人も採れていない」ということもありますし、「20人の目標に対して15人で終わっている」という場合もあるでしょう。「採用の目標人数を採れない」原因は、さらに以下の4つの状況に分解できます。1つもしくは複数の組み合わせで課題が生じています。
⇒当たり前の話ですが「会えない」ことには採用活動はスタートしません。母集団形成に課題を感じている企業は最も多いでしょう。
⇒新卒採用の場合にある課題です。求人応募から説明会、説明会から選考へのステップ率が低いというケース。改善は比較的容易です。
⇒ターゲット層にリーチが出来ていない、ターゲット層に響くメッセージを送れていないという状態です。採用チャネルやメッセージを変更する必要があります。
⇒中小企業や不人気業種に比較的多い課題です。「選ぶ」ことに意識が行き過ぎているケースもありますし、多くのケースで「口説く力」をてこ入れすることが必要です。
採用したい目標人数を確保するためには、どこが課題かを明確にして、適切な手を打っていくことが必要です。
人数は採れているが質に不満がある
「母集団の数は集められているが内定が出せない」に近い課題ですが、「内定を出せるレベルではあるが、もっと質を高めたい!」という状態です。
「そもそも採用したい優秀層の応募が少ない」のか、「応募してきているが途中で離脱させてしまっている」のかで対策が変わってきます。
じつは「どちらが原因か?」把握できていないことも意外が多いです。把握できていない場合には、「採用したい優秀層」を定義して、選考の初期段階から「採りたいレベルの優秀層」の人数をちゃんと追っていける採用管理を行う必要があります。
入社後のミスマッチ
入社後のミスマッチも採用活動で発生する課題の1つです。入社後のミスマッチは大きくは2つ、「入社後のGAPが原因で早期退職が発生している」ケースと、「入社してみたら思うようなパフォーマンスをしてくれない」ケースがあります。
入社前後のギャップ(応募者が想像する職場・仕事イメージ、企業が判断する応募者のパフォーマンス)を100%なくすことは不可能です。
しかし、採用時の情報提供、選考手法の改善、入社後の受け入れなどの対応で、どちらのケースも改善可能です。
採用活動のリソース(人手・工数)不足
多くの会社で採用の実務者が悩んでいる課題は“リソース(人手・工数)不足”です。
中途採用は年間を通じての取り組みになるので工数が平準化されやすいのですが、日本の新卒採用は活動時期が偏っていますので、繁忙期のリソース不足が生じがちです。経営層はこのギャップを理解できていないことも多いでしょう。
採用に必要な月次工数を洗い出して可視化したうえ、経営層に交渉してリソースを確保する。そのうえで、ITツールを使って効率化を図ることが必須です。
<課題別>採用活動を成功させるための課題解決法
採用活動を成功させるために、整理した課題にどのような解決方法があるかを確認していきます。
「採用の目標人数を採れない」時の解決法
「採用の目標人数を採れない」という課題を解決する思考の原則を見てみましょう。採用活動で「採用できた人数」は以下の計算式で表すことが出来ます。
= ①母集団の人数 × ②選考への応募率 × ③選考での内定率 × ④内定の承諾率
- 母集団の人数 : 「個人情報を採れた応募者数」です
- 選考への応募率 : 「一次選考(書類選考、ES提出、グループ面接etc)に進んだ人数」÷「母集団の人数」です。
- 新卒採用の場合には、プロセスの中で「説明会の参加人数」というプロセスを挟むことが多いでしょう
- 選考での内定率 : 「内定を出した人数」÷「一次選考に進んだ人数」です。
- 考え方としては「選考で落とした応募者」と「選考中に離脱/辞退した応募者」に分かれます
- 内定の承諾率 : 「内定の承諾者」÷「内定を出した人数」です。
- あまり複雑しないために「内定承諾後の辞退」なども含めて考えてみてください。
採用に携わっている方であれば、当たり前に感じる計算式だと思います。
ただ、採用できた人数が目標数に届かないということは、上記のどこかに課題があります。
従って、課題のあるステップを明確にして、対策を講じていくことが必要です。
各プロセスにおける対策をもう少し詳細に見ていきましょう。
母集団を確保できていない原因は、「会社規模や業種・職種の人気度など会社自体の人を集める力」、「応募者への露出チャネル」「求人原稿の魅力度」などの要素があります。
会社自体の人を集める力は規模や知名度、業種・職種の人気に左右されますので、各企業で短期間に変えることは難しいでしょう。応募者へ露出チャネルや求人原稿の魅力度に手を打っていきましょう。
応募者への露出チャネルに関しては、ハローワークなどのそもそも人を集めることが難しいチャネルしか使っていない、大手求人サイトなどで大手企業と同じ土俵で戦っている、そもそも露出が少ないといったケースがあります。応募者を集めるための方法には近年多様化しています。
求人サイトも様々な種類がありますし、人気業種・企業ではない場合には就職イベントやダイレクトリクルーティングなどで“接近戦”を挑んだ方が良い場合もあります。人材紹介会社を使うことも1つでしょう。まずは「会う」チャネルを模索しましょう。
採用方法の種類については、以下の記事でも詳しく紹介しています。
採用ノウハウの蓄積が少ない中堅中小企業の場合、求人原稿が作りこまれていないこともよくあります。募集要項を箇条書きで書いてあるような求人票のイメージです。例えば新卒採用でいけば、大手ナビ媒体の掲載社数は25,000~30,000社。業種や職種、勤務地などで絞り込んで検索しても50~数百社は表示されています。
就活イベントなどでも20~4、50社ぐらいは普通です。その中で「選ばれる」企業にならなければ、応募者と会えませんし、採用できません。従って、求人原稿のブラッシュアップは非常に重要です。
求める人物像を明確化して、自社の魅力を言語化する、応募者が惹きつけられる写真やキャッチコピーを掲載する、採用競合との差別化を意識する、採用競合と待遇などが著しく劣っていないかをチェックするなどの対応を行いましょう。
求人にエントリーして個人情報を獲得できた応募者が、スムーズに選考に応募していない場合、「説明会への参加率が低い」「応募者に連絡が取れない」「説明会に参加してから選考への応募率が低い」といった状態があるでしょう。
状況に応じて、いくつかの対策が考えられます。
・スピード対応:
基本的なことですが、ステップ率を変えるうえで最も効果がある解決方法です。マーケティングの世界では、webサイトなどで登録があった人に電話をかけた際の通電率は分単位で急激に落ちていくことがよく知られています。人力ですべて対応することは難しいかもしれませんが、応募者を「待たせない」ために何が出来るかは重要なテーマです。
・ハードルを下げる:
例えば、ある会社では「応募者に履歴書を郵送してもらう」ことをやめただけで、母集団から選考へのステップ率が格段に上がったという事例があります。自社がよほどの人気企業でないならば、「説明会に参加する」「選考に応募する」ことのハードルは極力下げましょう。「本気の応募者しか会いたくない」と言う方もいますが、求人原稿を見た段階、説明会に参加した時点で、「本気」の応募者は殆どいません。
説明会や選考を通じて「本気」にしていくのが選考側の仕事です。特に採用チャネルのweb化が進んでいる現在では、「履歴書で得られる情報」は応募段階で獲得できていることが大半です。
・説明会の見直し:
会社説明会に参加してからの応募率が80~90%を切っている場合、会社説明会の内容や運営方法を改善した方が良いでしょう。応募者は、時間を割いて会社説明会に参加している時点で「基本的には応募してみよう」と思っています。“会社説明会で離脱させている”と考える必要があります。
会社説明会の内容でいくと、企業側は企業理念や業界の説明、自社の製品・サービス、採用スケジュールなどを伝えることが重要と考えがちです。しかし、応募者は入社後のキャリアモデルや入社後の待遇、社風、社内の雰囲気などに興味があることもあります。また、一方的かつ淡々とした説明、文字を箇条書きしただけのスライドなどで応募者を惹きつける、また自社のイメージを伝えることは困難です。
会社説明会を運営するにあたっては、段取りや雰囲気も重要な要素です。例えば、スタート前に、参加者に声をかける、参加者同士で自己紹介してもらう、などの和やかな雰囲気を作ることは非常に重要です。応募者からすると、説明会の雰囲気=会社の雰囲気になりますのが、説明会の会場をいかに「いい空気」にするかが重要です。
また雰囲気を作るうえでは、会場の明るさ、また、席数に対する参加率(がらがらの説明会だと応募者は「人気がない企業」に感じます)なども重要な要素です。
「内定を出せていない」という場合、「内定を出せる人を集められていない」場合と、「内定を出したい人に離脱されている」ケースがあります。なお、「最終選考に内定レベルの人が上がってきていない」からといって、必ずしも前者の課題だとは限りません。説明会や手前の選考段階で離脱されてしまっているケースも多々あります。実態をしっかり確認しましょう。
自社の採用ターゲットに合致する人が少ないため、内定を出せていないという場合には、母集団形成を見直す必要があります。自社がどのような人材を採用したいのか、採用ターゲットを明確にすることが重要です。経験や知識、能力などだけでなく、キャリアの志向性や価値観、性格までを含めて検討することが必要です。
採用ペルソナの設定に関する記事が参考になりますので、ぜひご確認ください。
当然、採用方法は、採用ターゲットに適したチャネルを選ぶことが大切ですし、採用原稿も採用ターゲットを意識して作成する必要があります。
流行の採用方法が、必ずしも採用ターゲットの動員に適しているとは限りません。採用ターゲットを明確化して、採用ターゲットに合致した採用方法を選びましょう。
内定を出したい人に離脱されている場合には、選考スピードや採用プロセス内でのコミュニケーションを見直してみてください。
自社で「採りたい」と思う人は他社からも“採りたい”と思われています。優秀な人ほどスピード感が遅い企業は避けたいと思います。
また上から目線で「選ぶ」選考になっていたり、面接官のレベルが応募者の満足いくレベル(優秀な人ほど誰と働くかを気にします)ではなかったりするケースもあるでしょう。
内定承諾率が低いということは、説明会~選考を通じて十分に魅了付けできていない、他社の魅了付けに負けている状態です。選考プロセスを「魅了付けのプロセス」と位置付けて、一人ひとりの応募者に合わせた情報提供や魅了付け、面接官のアテンドを出来ているか見直してみてください。
説明会などは、あくまで“一般論”での情報提供になります。しかし、面接は、応募者の会社選びの軸、価値観、コミュニケーションスタイルなどが分かりますので、応募者一人ひとりに合わせた“個別の情報提供”が可能です。
また、社内的に可能であれば、面接官を誰にするかの調整も有効です。応募者から見たときの企業イメージは、多くの部分が面接官に左右されます。応募者のキャリア志向やコミュニケーションスタイルに合わせて面接官をマッチングすることは、内定受諾率を高めるうえで効果的です。
また、内定を承諾してから辞退される場合には、承諾後のフォロー、コミュニケーション頻度を見直すことが有効です。採用企業や人事の立場では、どうしても内定承諾してもらうまでに意識がいってしまい、承諾後のコミュニケーション頻度が落ちてしまうことは自然な心理です。
しかし、応募者側からすると、「釣った魚に餌をやらない」ではないですが、承諾後のコミュニケーションが落ちると不安が募ります。「承諾するまでに聞かされた魅力的な話も入社してみたら嘘なんじゃないか……」と疑心暗鬼にも陥ります。一種のマリッジブルーのような状態です。
これらはコミュニケーション頻度を上げることで解決できる側面が大きいです。
「人は採れているが満足いく質ではない」時の解決法
究極論にはなりますが、「自社のレベル以上の人は採れない」のが採用活動の前提です。
自社のレベルには、ミッションやビジョン、事業内容、成長性、待遇、社員の質といった様々なものが含まれます。従って、採用レベルを上げていくには究極的には自社のレベルを上げていくことが必要です。
ただ「“自社のレベルとして採れるレベル”だが、“採用市場の中でも上位層、また人数がそこまでいない層”が採用ターゲットだ」というケースは成長企業やメガベンチャーではよくあります。
「採用したい優秀層の応募が少ない」のか、「応募してきているが途中で離脱させてしまっている」のかを把握して、採用方法の変更や訴求の変更、選考プロセスの修正などをしていく必要があります。
優秀層の応募を増やすためには、「採用ターゲットの明確化」および「ターゲットに合った採用方法を選択する」ことが重要です。特に採用ペルソナを作成して、「顧客はどこにいるのか?」というマーケティング的な思考を徹底して行うことが重要です。
考えていくと、必ずしも採用チャネルの選択だけではなく「リファラル採用」であったり、「オウンドメディアリクルーティングなどの手法で、就職・転職の顕在層になる前にリーチする」などの方法であったり、「ビジネスコンテストに出資して起業志向の学生に接触する」であったり、施策の幅が広がっていくでしょう。
「入社後にミスマッチが判明する」に対する解決法
冒頭で紹介した通り、採用後のミスマッチは「入社後のGAPが原因で早期退職が発生している(応募者から見た時のミスマッチ)」ケースと、「入社してみたら思うようなパフォーマンスをしてくれない(企業から見た時のミスマッチ)」ケースがあります。
応募者から見た時のミスマッチは往々にして、「採用したい」という企業の気持ちがいき過ぎて、「企業にとって都合がいい、きれいな部分しか見せていない」ことが原因です。会社説明会や面接などで自社のメリットのみをアピールしたり、話を盛って伝えていたり、といった状況です。給与や勤怠などの待遇に関する虚偽は論外ですが、「きれいに見せたい」心理自体は否定できるものではありません。
基本的には会社説明会や選考前半ではきれいな話で興味付けしつつ、選考の中盤・後半では、「大変なところ」「完ぺきではないところ」もしっかり伝えていきましょう。応募者から「隠さない」「信頼できる会社」と思ってもらえるようにすることは内定承諾にも効果的です。
自社の業界や仕事、事業において、「応募者のイメージと入社後の現実でどんなところにギャップが生じやすいか」も把握して対策することも大切です。
企業から見た時のミスマッチという視点では、経歴や成果だけを見て内定を出してしまうケースや、面接スキルの不足で応募者のパフォーマンスをしっかり見抜けないケースがあり得ます。自社の社風や価値観、働き方などの定性面とのマッチングは、しっかりと見ないとギャップが生じやすくなりますので注意した方が良いポイントです。
面接スキルという点では、面接で生じやすいバイアス(面接官の思い込み・評価の偏り)やSTAR法などの構造的な面接手法を学ぶことも重要です。
なお、どれだけ工夫しても入社前後のギャップを100%なくすことは不可能です。
また、経験者層の中途採用では、採用企業が即戦力化に対して過剰な期待を持ちがちです。オンボーディングなどの受け入れ手法を整備することで、応募者側・企業側、双方のギャップを解消して、即戦力化を促進させることが効果的です。
オンボーディングの詳細は以下の記事で詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。
「リソース不足」に対する解決法
採用の実務者を悩ますのは、リソース(人手・工数)不足です。特に新卒採用は活動時期が偏るために、繁忙期のリソース不足が生じがちです。採用管理ツールを使った自動化、アウトソーシングの活用で解消していきましょう。
意外と見落とされがちなのですが、採用を成功させるポイントは「内定を出せる応募者に対して、きっちりと魅了付けとフォローの工数を使う」ことです。日本の場合、「面接重視」の採用スタイルが、面接時間・日程調整などで工数を圧迫していることが多々あります。
従って、「早期で内定層を効率的に見抜いて絞り込む」方法を考えることで、リソース不足を解消できた事例は多くあります。
早期で内定層を見抜くには、適性検査を使うことも1つのやり方です。面接と適性検査の妥当性(入社後のパフォーマンスをどれだけ予測できるかの精度)はさほど変わらないという研究もあります。
また、グループ面接等で「迷って通した」層が内定までたどり着いているのかを確認するのも1つです。迷った層を落とすと、必要な面接工数は大きく減るはずです。
また、大手企業ではAIを使って書類選考を効率化しているケースもあります。採用分野におけるAIの精度はまだ“非常に高い”というレベルではありませんが、例えばAIとテキストマイニングの技術で、エントリーシートを「通すべき」、「判定に迷う」、「落ちる可能性が高い」という3グループに出来れば、書類選考の工数は大きく圧縮できる計算です。
いずれにしても、膨大な工数が発生する選考の初期段階をどう効率化するかがポイントです。
採用は中長期における企業経営を支える非常に重要なテーマですが、一方でコストセンターであることも事実です。従って、経営陣を「忙しい」「手が足りない」という定性的なニュアンスで動かすことは難しい場合が多いでしょう。月次での必要工数を洗い出して可視化したうえで交渉することも重要です。
採用では、予算を抑えたければ必要工数が増える、逆に工数を抑えたければ予算を増やす必要があるというトレードオフが成り立つことが多いです。経営陣とどういう配分にするか交渉する必要もあるでしょう。
「採用力」を強くするヒント!「採用力 = 企業力 × 採用スキル」
採用力を中長期的および短期的に、どのように強化していけるのかのヒントを紹介します。
中長期的に採用力を高める方法
企業の採用力は「 企業力 × 採用スキル 」と表現できます。
“企業力”とは企業自体の認知度やステータス、事業の魅力、働く社員のレベルやモチベーションなどです。応募者を集めるうえでは認知度や上場の有無、事業の魅力が基盤になりますし、応募者を魅了付けは社員のレベルやモチベーションに左右されます。
“採用スキル”とは採用への協力体制、明確な採用戦略、採用戦術のレベル・ノウハウです。例えば、面接官(口説く役割)に経営陣や優秀な社員をアテンドできるか、数値のPDCAを動かして振り返りと翌年の計画への反映をしているか、自社の魅力抽出して求人広告や説明会に落とし込めているか、といった点です。
採用力は「 企業力 × 採用スキル 」ですので、中長期的に採用力を高めるためには、「良い企業にすること」が必須です。身もふたもない結論で恐縮ですが、間違いない事実です。
この10年ほど、口コミサイトの利用率が非常に高まっています。OpenWork(オープンワーク)や転職会議のような「退職者/在籍者による口コミサイト」や、就職会議やみん就のような「新卒採用に関する口コミサイト」が完全に普及しました。
従って、口コミサイトに悪評が書かれていると、採用への悪影響は避けられません。(同時に、口コミサイトに何が書かれているかを把握し、選考プロセス内で対策を打つことも、今や欠かせない採用スキルの1つです)。
語弊を生む表現かもしれませんが、「自社に都合がいいことだけを表に出して採用活動を行う」ことは、もはや不可能です。選考プロセスや企業の内情は隠しようがなくなっています。
また、認知度やステータス、事業の魅力、待遇等がずば抜けていない限り、選考プロセスで差別化要因となるのは「選考途中で会う社員」です。
面接官となる社員、応募者が説明会や面接に来た際にすれ違う社員がどれだけイキイキとしているか、求職者から見てロールモデルになり得るか、同僚にしたい存在かが、「採用力」に繋がります。従って、自社を「働く人にとって魅力ある企業」にすることが、中長期的に採用力を高める本質です。
短期的に採用力を高める方法
採用力のうち「企業力」を高めるためには、中長期的に取り組むしかありません。しかし、採用への協力体制や明確な採用戦略、採用戦術のレベルなどの「採用スキル」は、短期的に高めることが出来る要素です。
社内の協力体制を動かすことが出来るのは経営陣です。また採用戦略や採用戦術のレベルが低いと感じるようであれば、採用コンサルタントなどを使いながら、グッと引き上げていきましょう。採用スキルは具体的には下記のような要素があります。
- 数値をベースにして採用計画の立案、リアルタイムの現状把握、振り返りが行われているか?
- 計画と現状のGAPに対して、スピーディに―に手を打てているか?
- 計画と結果のGAPに対して、「数値で把握して、定性的に考察して、施策を打って、数値で検証する」プロセスが回っているか?
- 採用ペルソナは設定されているか?
- 採用ペルソナに対する自社の魅力は整理されているか?
- 自社の魅力は求人原稿や会社説明会で表現されているか?社内で共有されているか?
- 採用競合は明確か?競合情報は十分に把握しているか?
- 応募者の情報管理がしっかりと出来ているか?(書類・データ管理のレベル)
- 内定候補者の情報管理は十分か?(会社選びの軸、自社への志望度、競合状況の把握etc)
- 内定候補者一人ひとりとのコミュニケーション頻度は十分か?
- 経営者や現場のエースが面接や面談に協力してくれるか?
- 必要なリソースが確保されているか?
- 採用が経営陣の関心事になっているか?
なお、求職者が就職/転職先を選ぶに際して「給与や待遇」は重要な判断材料です。給与や待遇で魅了付けする必要はありませんが、同業や同職種などの競合求人と比べて、著しく負けているポイントがあると、採用活動は苦しくなります。改善する必要があるでしょう。
まとめ
採用活動の課題は「採用の目標人数に届いているか」「採れている人材の質は満足いくものか」という2つの視点で整理できます。
採用課題に対して適切な手を打つためには、課題を明確化することが重要です(数に関する課題は、採用プロセスを数値で分解することで、課題があるプロセスが明確になっていきます)。
課題を明確化して、それぞれの課題を考察、PDCAサイクルを回しながら、解決していきましょう。課題の明確化、解決方法の立案に関して、時には外部の力を借りることも有効でしょう。