最近、採用活動にマーケティング手法を取り入れる企業が増えてきたことで、オウンドメディアリクルーティングという採用手法に注目が集まっています。
本記事では、オウンドメディアリクルーティングの概要と取り組む効果やメリットを確認します。
加えて、オウンドメディアリクルーティングに取り組むポイント、オウンドメディア構築の選択肢、オウンドメディアリクルーティングの事例も紹介しますので参考にしてください。
オウンドメディアリクルーティングを含む新卒採用の手法は、以下の記事にまとめています。
<目次>
- オウンドメディアリクルーティングとは?
- オウンドメディアリクルーティングを実践する効果とメリット
- オウンドメディアリクルーティングに取り組むポイント
- オウンドメディア構築の選択肢
- オウンドメディアリクルーティングの事例 4選
- まとめ
オウンドメディアリクルーティングとは?
オウンドメディアリクルーティングとは、「自社のメディア」(=オウンドメディア)を運営・発信することで、自社が求める人材を採用する手法です。
従来の採用活動では、たとえば、求人サイトへの出稿や合同企業説明会への参加のように、他社の採用サービス・イベント・仕組みのなかで求職者とつながることが主流でした。
一方でオウンドメディアリクルーティングでは、自社のオウンドメディアを使って情報発信を行ない、母集団形成や志望度アップなどにつなげていきます。
そもそもオウンドメディアとは?
オウンドメディア(Owned Media)とは、企業が自社でもつメディアです。
広義には、採用パンフレットなどもオウンドメディアに分類されますが、オウンドメディアリクルーティングの場合、ホームページや自社ブログなどWeb上にあるものをオウンドメディアと位置づけます。
ただし、必ずしもサイトを独自運営することが必須という訳ではありません。たとえば、noteを使ったり、Wantedlyを充実させたりすることもオウンドメディアリクルーティングの一種といえます。
また、TwitterやFacebook、InstagramなどのSNS上でしっかりと自社の発信をしていくソーシャルリクルーティングも、広い意味ではオウンドメディアリクルーティングといえるかもしれません。
オウンドメディアリクルーティングが注目される背景
オウンドメディアリクルーティングの登場には、インターネット環境の発達やスマートフォンなどの普及が大きく関係しています。
⇒大きなお金をかけなくても自社サイトを構築したり、SNSを開設・運用したりして、情報を発信することが容易になった
⇒自分のスマートフォンを使って、求人サイト以外でも検索エンジンやSNSを使って企業の情報を収集できるようになった
また、近年では“お金を払って掲載する”という求人サイトの仕組みが広く知られ、また、口コミサイトなども普及したなかで、「求人広告」に対する信頼性が落ちている側面もあります。
現在でも、求人広告が自社の存在を知ってもらうきっかけとして有効なことは変わりません。
しかし、求職者が求めるよりも多くの情報、雰囲気や実態などがわかる情報を伝えるためには、求人広告だけでは不足しつつあると考えられます。
そういったことから注目されているのが、企業が自社の保有メディアを使ってしっかりと情報発信し、求職者との接点を作っていくオウンドメディアリクルーティングです。
オウンドメディアリクルーティングで使う媒体
オウンドメディアリクルーティングでは、以下のような媒体を活用します。
- コンテンツ管理システム(CMS)を使った採用サイト
- noteなどのブログサービス
- 各種SNS(Wantedly、Twitter、Instagram、Facebook など)
オウンドメディアリクルーティングを実践する効果とメリット
オウンドメディアリクルーティングを行なうと、以下の効果やメリットが得られます。
中長期的に求人媒体依存を避け採用コストを抑えられる
求人媒体や各種サービスに依存すると、採用単価を落としていくことが難しくなります。
しかし、オウンドメディアリクルーティングでサイトを見てもらう導線をうまく作り、オウンドメディア経由で採用できるようになれば、中長期的に採用コストを抑えることができます。
詳細かつ豊富な情報提供で入社後のミスマッチを防ぐ
自社の採用サイトやSNSには、求人媒体のような文字数の制限がありません。
写真や動画も使いながらオウンドメディアで豊富な定性情報、また継続的に情報を提供することで、入社後の「こんなはずじゃなかった!」などの想定外のミスマッチが起こりにくくなります。
企業独自の魅力や価値を伝える
求人媒体の場合、決まったフォーマットのなかで自社の魅力を表現する必要があります。
一方でオウンドメディアの場合、たとえば、文字数や形式の制限は緩いので、テキストに加えて、デザイン、写真、イラスト、動画なども使って、自社の魅力や事業価値、独自の制度や社風などを発信しやすくなります。
特に社員の顔を見せたり、社内の雰囲気を伝えたりするような定性面での魅力付けは、オウンドメディアリクルーティングが得意とするところです。
コンテンツが積み上がり資産になる
採用活動のために書いたブログ記事や動画などは、すべて未来の資産になっていきます。
たとえば、「◯◯部門の紹介」や「営業職の一日」などのコンテンツは、一度作れば翌年以降も使い回せるでしょう。
コンテンツが積み上がっていくことで、手間をかけずにどんどん濃い情報を発信できるようになります。
SNSなどを通じて転職潜在層にもアプローチできる
転職の潜在層などに情報を届けられることも、オウンドメディアリクルーティングの大きな魅力です。
たとえば、TwitterやFacebookなどのSNSに、採用イベントや求人情報を投稿すれば、転職潜在層にアプローチすることができます。
オウンドメディアリクルーティングに取り組むポイント
オウンドメディアリクルーティングに取り組むポイントを紹介します。費用が掛からないSNS系の媒体を使うようであれば、以下の流れをすべてきっちり進める必要はないかもしれません。
一方で、費用をかけてサイト構築をする場合、以下のポイントを大切にしながら、しっかりと考えて取り組んだほうがよいでしょう。
魅力の言語化
まずは、以下4Pの視点で自社の魅力を整理・言語化しましょう。
- Philosophy 理念、目的
- People 人、風土
- Profession 仕事、事業
- Privilege 待遇、特権
初めに魅力の言語化をしておくことで、発信するコンテンツにブレがなくなります。
利用チャネルの選択
採用サイト、noteなどのブログやTwitterなどのSNSのうち、どのチャネルを使っていくかを考えます。選ぶ基準として大切になるのは、採用ターゲットに親和性があるチャネルかどうかです。
また、自社の事業や魅力、発信できるコンテンツやリソースを考えたときに、InstagramやYouTubeなどの画像や動画がいいのか、Twitterのようなテキスト系のSNSがいいのかといった視点も大切です
なお、近年の王道は、コンテンツ蓄積の基盤となり応募に直結する採用サイトと、採用サイトなどへの導線を作ったり更新しやすかったりするSNS系の組み合わせです。
運用方針の作成
以下のような運用方針を考え、関係部署・関係者とも認識の共有をしておきましょう。
- 社員の名前や人物を前に出すのか?
- 退職時などの対応はどうするか?
- 緩い感じにするのか?公式として固い雰囲気にするか?
- どのくらいの頻度で情報更新していくか?
- 誰と誰が情報の更新を担当するか? など
運用方針を考える際には、媒体との相性も大切です。
たとえば、Twitterでは顔が見えない企業の公式アカウント、かつ、硬すぎる運用だと、なかなかフォロワーを増やしたり、拡散したりすることは難しいでしょう。
自社で許容される範囲と媒体の特性を掛け合わせて検討していきましょう。
継続運用
運用方針を踏まえて実際にオウンドメディアを運用していきます。
運用時は、以下のような数値データも踏まえて、採用ターゲットへのアプローチなどの成果が出ているかどうかの検証を定期的に行なうことも大切です。
- PV(ページビュー)やユーザー数
- コンバージョン率
- オウンドメディア経由のエントリー数 など
また、定量視点以外に「応募者がオウンドメディアを見ているか?」「面接で言及されるか?」といった定性的な視点も大切です。
思うような成果が出ていない場合、運用方法やメディア自体を変えるなどの対応をすることも必要でしょう。ただし、オウンドメディアリクルーティングで成果を出すには、時間も必要です。
オウンドメディアリクルーティングの場合、単年度で成果を判断することは難しいため、2~3年ぐらいのスパンで検討することが大切です。
オウンドメディア構築の選択肢
自社サイトなどのオウンドメディア構築には、以下2つの選択肢があります。本章では、各々のポイントを紹介しましょう。
制作会社に外注する場合
制作会社に依頼すれば、社内の業務負荷が軽減して、高い品質で自社サイトなどを構築できます。一方で、制作会社を利用する最大のデメリットは、コストがかかることです。
制作にかかる費用相場は以下のようなイメージですが、依頼するオウンドメディアの規模や制作会社によって大きく異なります。
- 設計費:10~100万円
- デザイン+コーディング費:30~500万円
WordPressなどのCMS(コンテンツマネジメントシステム)を使って、まずは簡易なものを作るのであれば数十万円で作れますし、社員のインタビューや写真撮影などもしてデザインもしっかり作って……となると数百万円ぐらいかかることもあるでしょう。
なお、制作会社に運用まで依頼した場合、以下の費用もかかることになります。
- サーバーやドメイン費用:年間数万円程度
- 保守と改善・改修費用:月額5万円~数十万円
- コンテンツ制作費:2万円~10万円/個 など
自社で内製する場合
自社での内製は、外注化より金銭コストが抑えられることがメリットです。ただし、社内に必要なスキルを持つ人がいない場合、きちんとしたサイトの構築が難しくなります。
また、内製化をした場合、セキュリティ対策やハード・ソフトウェアのアップデートなども自社で行なう必要があるでしょう。
費用相場は、極端な話、自社サイトを含めたオウンドメディアの構築から運用までを社内で行なえる場合、運用に携わるメンバーの工数程度になります。
ほかには、サーバーやドメイン費用として、年間で数万円かかる程度でしょう。
なお、Wantedlyやnoteなどの既存サービスや、TwitterなどのSNSを使えば、ノースキル・ノーコストでも始められます。
こういった既存サービス・ツールは、人事部門でも運用しやすいですし、露出もとりやすくなります。
オウンドメディアリクルーティングの事例 4選
オウンドメディアリクルーティングを行なう企業の事例を4つ紹介します。
下記の事例はいずれもしっかりとサイト構築している事例ですが、サイトのデザイン性等よりもコンテンツを更新・発信するところに重きを置いていることが見てとれます。
メルカリ
メルカリでは、「メルカン」という自社のことを伝えるメディアを運営しています。メルカンが大事にしているのは、会社のカルチャーや人となりが伝わることです。
求職者がメルカンの内容に共感している場合、採用面接での話もスムーズに進むメリットがあります。
オウンドメディアリクルーティングの効果性を高めるために、メルカンでは、以下3つのポイントを大切にしています。
- 高い更新頻度を保つ
- 経営陣がコミットする
- 採用部門で勝手に運用しているものではなく、“社員みんなのメディア”という意識を作る
ミクシィ
ミクシィでは、グループ内の魅力がまるわかりできるメディア「ミクシル」を運営中です。ミクシルでは、「会社のコト」と「働くヒト」を中心に以下のような情報発信をしています。
- プロダクトやサービス開発の想い
- 社内のカルチャーや制度が生まれた背景
- メンバーの働き方や仕事内容 など
ハッシュタグやランキングなども取り入れており、求職者も自分の求める情報を見つけやすいメディアとなっています。
ドーミーイン
ドーミーインでは、2017年より「ドーミーインこぼれ話」という採用オウンドメディアを運営しています。ドーミーインこぼれ話の魅力は、求職者が働く人に親近感を持つコンテンツが豊富なことです。
また、「ホテルスタッフの24時間」などの記事もあるため、業界研究にも使えるサイトになっています。
コンテンツに登場する外国人スタッフの割合が突出して多いのも、ビジネスホテルチェーンならではといえるでしょう。
DMM
DMMの採用オウンドメディアは「DMM inside」というもので、テクノロジーとカルチャーという2つのページを軸に運営されています。
テクノロジーの魅力は、「基盤チームの働き方」や「アジャイル開発の現場」などのIT人材向けのコンテンツが充実していることです。
カルチャーのページには、新卒社員へのインタビューや入社式レポートなど、企業の雰囲気がわかる記事が掲載されています。
まとめ
近年、求職者に対してより詳細な情報や社内の風土などを発信するうえで注目されているのがオウンドメディアリクルーティングです。
最近では、自社の採用サイトやSNS、ブログなどを使って採用活動を行なうオウンドメディアリクルーティングに取り組む企業が増えるようになりました。
オウンドメディアリクルーティングには、以下のようなメリットがあります。
- 求人媒体依存を避け採用コストを抑える
- 詳細かつ豊富な情報提供で入社後のミスマッチを防ぐ
- 企業独自の魅力や価値を伝える
- 採用に関するコンテンツが積み上がり資産になる
- 転職潜在層にもアプローチできる
ただし、オウンドメディアリクルーティングで効果を出すには、数年間はかかります。
また、当然のことながら、自社の採用サイトを作っても、アクセスしてくれるユーザーがいなければ、大きな成果にはつながりません。
なお、オウンドメディアの構築を制作会社に外注した場合、当初の制作だけで50~500万円ほどのコストはかかってきます。
一方で、Wantedlyやnote、Twitterなどの既存プラットフォームを使って始めれば、ノーコストで始められますし、運用や改善のPDCAも回しやすくなるため、おすすめです。
ただし、将来性を見据えるのであれば自社のコンテンツをきちんとした形で蓄積し、エントリーにも直結させられる採用サイトやWantedlyなどは基盤として準備したほうがよいでしょう。