世代間ギャップを埋めるコミュニケーション術|管理職が知っておきたい傾聴と質問のコツ

更新:2024/09/29

作成:2024/09/20

世代間ギャップを埋めるコミュニケーション術

「部下との距離を縮め、より良いチームを築きたい」と感じている管理職の方にとって世代間のコミュニケーションギャップは頭を悩ます課題のひとつではないでしょうか。

 

ギャップを乗り越えるためにさまざまな施策を取り入れている企業は多いと思いますが、実は世代間ギャップを乗り越えるカギは意外にシンプルなものです。

 

今回は、心理的安全性を高めるためのコミュニケーション術として「傾聴」と「質問」のコツを紹介します。部下の心を開きやすくし、チームの結束力や生産性がより高まる方法を学んでみませんか?

<目次>

はじめに

こんにちは。心理的安全性を生み出す専門家の小野みかです。私は、「心の通った会話がチームを強くする」をモットーに、成果につながる人間関係構築のコツをお伝えしています。

管理職が抱えるコミュニケーションの課題

今回は「世代間ギャップを埋めるための傾聴と質問のコツ」を取り上げますが、まずは管理職の方々が感じているコミュニケーションの課題から見ていきましょう。

管理職が感じている世代間コミュニケーションの課題と仕事への影響

管理職が感じている世代間コミュニケーションの大きな課題の一つが、価値観や仕事へのアプローチの違いによる衝突ではないでしょうか。些細な価値観やアプローチの違いが、最終的に生産性や協力関係に悪影響を及ぼすケースは少なくありません。

 

たとえば、若手社員はオンラインでの即時的なやり取りに慣れていますが、ベテラン社員はメールや対面での丁寧なコミュニケーションを重視する方が多いのではないでしょうか。

 

最近ではLINEのコミュニケーションひとつを取ってみても「こちらは文章で送っているにもかかわらず、部下にスタンプで返信された」「文章の終わりに句点を付けるのが当たり前だと思っていたが、Z世代の社員から威圧感を感じると言われた」など、世代間でギャップが生じる場合が多いようです。

 

世代間ギャップが生じた場合には、異なる価値観やコミュニケーションスタイルを持つ社員間のズレをうまく調整し、全体の協力体制を維持する必要があります。

コミュニケーションにおける世代間ギャップを埋める「心理的安全性」

コミュニケーションにおける世代間ギャップが生じた場合、お互いにその背景を理解し、双方のスタイルに配慮したコミュニケーションをすることが求められます。

 

その際に土台となるのが「心理的安全性」です。「心理的安全性」とは、職場やチーム内でメンバーが自由に意見を述べたり、質問やミスをしても否定・批判を受けることなく安心して行動できたりする状態のことです。

 

若手社員は「自分の意見が尊重されないかもしれない」と感じると、発言を控えがちになります。一方で、心理的に安全な状態が保たれると、メンバーは新しいアイデアを出したり、問題を率直に共有したりすることが可能です。

 

結果として、チームの生産性や創造性が飛躍的に向上するほか、互いにサポートし合い、ミスから学び成長する風土が育まれていきます。

職場での心理的安全性が生産性に与える影響

職場において「心理的安全性が大きな役割を果たす」理由は、オープンに話せる環境の確保が生産性や業績に直結するためです。

 

たとえば、あるIT企業でプロジェクト進行中にシステムエラーが発生したとします。心理的安全性が低い職場では、ミスを指摘することを恐れ、問題が放置されてしまう傾向にあります。しかし、企業に「ミスを共有することが責任感の表れ」という風土が醸成されていると、チームメンバーが即座にエラーを報告できます。

 

即エラー報告されることで、メンバー間で早期に話し合いの場を持てるだけでなく、解決策が見つかりやすくなり、プロジェクトが予定よりも早く完了したり、チームのパフォーマンスが向上したりするのです。

 

つまり、組織内において心理的安全性が高まることは、ミスの早期解決やイノベーション促進、チームワークの強化につながり、生産性も向上することが分かります。

心理的安全性を作り出すのに欠かせない「傾聴力」

職場内においてどのように心理的安全性を高めていけばいいのでしょうか?

 

心理的安全性を作るためには「傾聴」が欠かせません。「傾聴」とは、相手の話に対して積極的に耳を傾け、理解しようとするコミュニケーション技法のことです。このように書くとスキルやテクニックのように感じてしまうかもしれませんが、実際は態度や非言語に表れる態度で決まる部分が多いのです。

 

聞き手が適切な態度で話を聞いてあげれば、話し手も自分の意見や考えを伝えやすくなり、建設的なコミュニケーションができるようになります。

「傾聴」が職場にもたらす影響

職場に「傾聴」を取り入れることによって、世代間のコミュニケーションギャップを埋められると考えられる理由には3つの点が挙げられます。

 

一つ目は、傾聴によって異なる世代の価値観や意見が理解しやすくなる、という点です。しっかりと相手の話に耳を傾けて、年齢や経験の違いによる考え方のズレを把握し、共感を示すことで、相互理解が深まるようになります。

 

二つ目は、傾聴を徹底することで信頼と共感を築くための土台を築けるからです。オープンなコミュニケーションを促進し、意見交換やフィードバックがスムーズになれば、世代間の対立やギャップに対する拒否反応を示す機会が減り、協力的な関係が生まれます。

 

三つ目は、傾聴が職場環境の改善に役立つからです。互いの意見に真摯に耳を傾ければ、社員一人ひとりが「自分は大切にされている」と感じるようになり、職場や仲間にも愛着がわくようになります。

傾聴の実践方法

傾聴という言葉は聞いたことがあっても、「どのように傾聴を実践していけばよいのか分からない」「聞いているつもりになっている」という管理職・ベテラン社員の方は多いのではないでしょうか。

 

ここからは具体的な傾聴の方法をお伝えしていきます。

 

まずは、体の向きです。お臍の部分が話している人にしっかりと向いているかどうか、は傾聴する上でとても重要なポイントになります。きちんと相手の方を向いて話を聞かなければ、いくら傾聴のスキルテクニックを使ったとしても、話し手からは「ちゃんと受け取られていない」と感じられてしまいます。

 

また、大きくうなずくことも重要です。傾聴のよくあるテクニックとしてオウム返しという手法があります。オウム返しは「相手が言った言葉を自分がそのまま繰り返し伝えられるくらい相手の話を聞きましょう」という意味です。

 

しかし、言葉を理解しようとして真顔で聞いていると、相手の目には「話を聞いてもらえていない」と映ってしまうことがあります。

 

そのため、話を聞く際にはしっかりと頷きながら、相手の言葉を噛みしめるように聞くというアクションがとても重要です。聞いているときの表情も、相手がどんな内容を話しているのかに合わせて、話し手の表情と自分の表情をリンクさせるようにしましょう。

 

たとえば、嬉しそうに話してくれる話は嬉しそうに聞く、真剣に伝えていることは自分も真剣な表情で聞く、という姿勢が大切です。ただし、自分が相手と会話をしているときにどういう表情をしているかは自分ではわかりにくいものです。

 

おすすめなのが、鏡を実際に見ながら表情を確認する方法です。具体的には「相手の表情が嬉しかったら、こういう表情でうなずくのがいいかな」とか「相手が真剣だった場合には、自分はこういう表情を作ろう」といったことを自分で確認するようにします。

 

練習を積んだら、あとは実践あるのみ。求められた場面で適切な表情を表現できるように心がけましょう。

世代間ギャップを埋める「質問」のコツ

続いては、相手の考えを引き出す重要なコミュニケーション手段と言われる「質問」のコツを見ていきます。

 

世代間のギャップを埋める際に「質問」を使う場合、相手の背景や価値観を理解するための項目を聞くのがポイントです。質問の内容を工夫することで、相手が考えていることや経験していることを深く知ることができ、相互理解が促進されます。特に、オープンクエスチョンを活用すれば、相手が自由に自分の意見を表現しやすくなります。

効果的な質問を行うための3つのコツ

ここからは、効果的な質問を行うための具体的な方法について3つお伝えします。

1:「1つだけ聞く」ルール

複数の質問を一度にしてしまうと、相手が「何から答えればいいのか」と混乱する可能性があります。また矢継ぎ早に質問することで、威圧感を与えてしまう場合も少なくありません。まとめて質問せずに1つの質問に絞り、相手がじっくり考えて答えられる環境づくりを心がけましょう。

2:オープンクエスチョンを使う

「はい」「いいえ」で答えられる質問の場合、その返事だけで会話が終わってしまうケースが少なくありません。若手社員とのコミュニケーションを円滑にしたい場合、「どうしてそう思ったの?」「この方法を選んだ理由は?」といったオープンクエッションを活用すれば、具体的な回答を促し、相手の考えを引き出すことが可能です。

3:沈黙を恐れない

質問後、相手がすぐに答えられずに沈黙が生まれることもあります。質問者は沈黙があると気まずいと感じるかもしれませんが、実際には「相手が考えを整理する時間」になっている場合も多いため、無理に会話を繋げるのではなく、沈黙の時間を尊重しましょう。

傾聴と質問をスムーズに組み合わせる方法

傾聴と質問をうまく組み合わせることで、対話の質が飛躍的に向上します。たとえば、若手社員が新しい提案をしたり、自分の意見を述べたりする場面では、まずしっかりと話に耳を傾け、「何を意図しているのか」について理解を深めます。

 

そのうえで「どうしてその方法を選んだの?」とオープンクエスチョンでさらに意図を引き出すことで、会話が深まり、相手も安心して意見を表明できます。

 

傾聴と質問を通じて心理的安全性を高めることができると、会話が一方通行にならず、双方の意見が反映された建設的な対話を促進することが可能です。

世代間コミュニケーションの注意点

最後に、世代間コミュニケーションをするにあたって気を付けておきたいポイントを3つご紹介していきます。

1:プライバシーの領域に踏み込みすぎない

世代間のコミュニケーションでは、プライバシー感覚の違いに注意が必要です。特に若手社員とベテラン社員では、個人のプライベートにどの程度触れて良いのかという認識に大きな差があります。

 

例えば、ベテラン社員が部下に「週末は何をしていたの?」「恋人はいるの?」などと聞くことは、若手社員には「プライベートに踏み込みすぎではないか」と感じる場合もあるため、相手との距離感を理解したうえでコミュニケーションを取るようにしましょう。

2:SNSアカウントを無理に聞き出さない

ベテラン社員の中には自分のSNSアカウント(LINEやMessengerなど)を仕事の連絡に使っている方もいると思います。しかし、若手社員はプライベートと仕事を明確に分けたがる傾向にあり、自身のSNSアカウントを知られたくない人もいます。

 

「仕事の連絡はSNSで送るから」と言った管理職に対して「プライベートの領域に仕事の連絡を入れられるのは嫌だ」「会社の人にプライベートの投稿(写真・動画)を見られたくない」と感じる若手社員もいるようです。そのため、相手が嫌な反応を示した場合には、無理強いしないのがベターです。

3:価値観を押し付けない

企業やチームの中には「家族の話や趣味について積極的に話すこと」を推奨しているところもあります。しかし、新しく入った若手社員からは「わざわざ家族のことを話す必要はないのでは?」「それを聞いてどうするの?」と思われる場合もあるようです。

 

世代間のギャップを埋められなかったり、社内の文化に馴染むのが難しかったりすると、社員のパフォーマンス低下や離職などにもつながりかねません。もし社内で異なる考え方に遭遇した場合には互いの立場や意見の違いを押し付けるのではなく、傾聴と質問をうまく使い分けながら、双方の感覚を理解することが大切です。

まとめ:傾聴と質問を効果的に取り入れてギャップを埋める

今回は、職場での世代間ギャップを埋めるためのコミュニケーション術についてご紹介しました。世代間コミュニケーションのギャップは職場でしばしば生じる課題ですが、傾聴と質問を組み合わせることで、ギャップを効果的に埋めることができます。

 

ただし、傾聴・質問はスキルやテクニックだけで完成するものではありません。まずはコミュニケーションの土台として「心理的安全性を確保すること」、そして「聞く態度を整えておくこと」が欠かせません。今回お伝えしたやり方を通して実践を重ねていただき、世代間のギャップが少しでも軽減されれば幸いです。

一般社団法人日本心理的安全教育機構代表理事
合同会社MYGIFT 代表社員
小野 みか氏
1978年生まれ東京育ち。牧師である父親が運営するプロテスタント系教会で育つ。教会の結婚式で牧師と新郎新婦が行う「結婚教育」に豊かな人間関係の秘訣が全て詰まっていると気づき、教会の枠を超えて誰でも学びが受けられるように講演・研修活動を始める。全国35を超える地方自治体や、官公庁、上場企業の講師として全国を飛び回り活動をしている。登壇回数は600回超、動員実績はのべ30,000人を超える。参加者満足率98%と高い評価を維持し、国内最大手の結婚相談所にてマリッジアドバイザー教育、3万6千人を有する会員向け教育事業の企画プロデュース及び筆頭講師も務める。タカラトミー、出雲市などと共同で女性向け人生ゲーム「出雲縁結び人生ゲーム」を監修、女性が魅力あふれる人生の選択をゲームを通して体感できるようなイベントも開催している。

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