営業職は、優秀な人材の採用が難しいうえに、多くの企業が人手不足を実感している職種の代表格です。
少し前のデータになりますが、エン・ジャパンが行なった調査結果では、「人材が不足している部門がある」と答えた企業に具体的な職種を尋ねると、トップ(35%)は営業職という結果になっています。
記事では、まず、営業職採用の現状と営業採用が難しい理由を確認します。確認したうえで、営業職採用の成功ポイント、優秀な営業職の見極め方、営業職採用に効果的な手法を紹介します。
出典:2019年「企業の人材不足」実態調査(エン・ジャパン株式会社)
<目次>
営業職採用の現状
雇用の動向を示す重要指標に、厚生労働省が毎月算出している“求人倍率”があります。求人倍率とは、求職者に対する求人数の割合のことであり、“新規求人倍率”と“有効求人倍率”の2種類があります。
求人倍率が「“1”を上回っているかどうか?」で、以下のことがわかるようになっています。
- 求人倍率が“1”を上回った場合:求職者よりも求人企業のほうが多い
- 求人倍率が“1”を下回った場合:求人企業よりも求職者のほうが多い
令和5年6月分の「一般職業紹介状況」を見ると、営業職業従事者の新規求人倍率は3.61、有効求人倍率は2.03であり、求職者よりも求人企業のほうが多い“売り手市場”の状況であることが見えてきます。
また、以下の表で営業職業従事者と全職業計(統計表上は「職業計」)と比べてみると、営業職を求めている企業の割合はかなり高く、営業職採用はかなり厳しいことがわかるでしょう。
《全国計》
新規求人倍率 | 有効求人倍率 | |
---|---|---|
全職業計(職業計) | 2.17 | 1.12 |
営業職業従事者 | 3.61 | 2.03 |
なお、対前年同月比でデータに目を向けてみても、新規・有効どちらの求人倍率においても、以下のように全職業の平均よりかなり高い現状が見えてきます。
《全国計・対前年同月比》
新規求人倍率 | 有効求人倍率 | |
---|---|---|
全職業計(職業計) | 0.07 | 0.03 |
営業職業従事者 | 0.27 | 0.26 |
なお、令和4年6月や令和3年6月といった過去のデータでも、営業職の求人倍率はどちらも“1”を上回っていました。
こうしたデータから見ても、営業採用の厳しさは“いま高い状況”というだけでなく、“数年に渡って上昇傾向が続いている”と考えてよいでしょう。
出典:一般職業紹介状況(令和5年6月分)について 参考統計表(厚生労働省)
出典:一般職業紹介状況(令和4年6月分)について 参考統計表(厚生労働省)
出典:一般職業紹介状況(令和3年6月分)について 参考統計表(厚生労働省)
営業の採用が難しい理由
次に、営業職採用が難しいとされる理由を、市場の特徴と企業側の事情の両面から見ていきましょう。
競争が激しい
先述のデータが示すとおり、営業職の場合、6月で見ると求職者1人に対して3.61件もの求人が来ている状況です。
近年では、営業職に求められるスキルやレベルも上がっているため、企業が優秀な営業人材を採用するには、さらに厳しい競争を勝ち抜く必要があるでしょう。
また、営業は、顧客との前線に立ってコミュニケーションするビジネスです。だからこそ、優秀な営業パーソンは、人脈も豊富になります。
結果として、優秀な営業パーソンには、“個人のネットワークで転職する”“取引先に引き抜かれる”といったケースも多くあり、優秀な営業パーソンは一般的な中途採用市場に出てきにくい傾向にあります。
ターゲットが不明確
営業採用で苦戦する企業の場合、「売れる営業パーソン」や「優秀な営業パーソン」のように、漠然としたターゲット設定で採用活動を始めてしまっている傾向があります。
ターゲットを絞らないと、採用活動において以下のような失敗が起こりやすくなります。
- 自社に合う人材がいない市場・採用手法を選んでしまう……
- 求人広告を出しても、なかなか応募が集まらない……
- 優秀な営業パーソンだと思って採用したが、自社が求める経験がなかった……
- 早期離職が多く、営業部門になかなか人材が定着しない…… など
特に営業は、前職で多くの経験年数があっても、自社で活躍するとは限りません。また、前職で成果を上げていたから、自社で成果を上げられるわけでもないでしょう。
つまり、営業という職種には、能力を定量化することが難しく、母集団形成や見極めをするにも難しい側面があります。
採用ノウハウの不足
中小企業の場合、少ないリソースのなかで優秀な人材を効率よく獲得するために、蓄積した採用ノウハウの活用や工夫が必要となってきます。
しかし、現実は、以下2つの理由から、たくさんのリソースを投入し多くの人材を獲得する大企業と比べて、採用ノウハウの蓄積が難しい実情があります。
- 専任の採用担当者がいない
- 採用人数が少ないため、蓄積・活用するほどのノウハウがたまらない
営業職を採用する際のポイント
自社で活躍し高い成果を上げる営業パーソンを採用するには、以下5つのポイントを大切にするとよいでしょう。
必要な素養を分析する
まず、自社の営業部門にどういう課題やミッションがあり、課題などを解決・達成するためにどういうスキルや経験が必要か、以下のような考え方で洗い出しましょう。
- 不動産営業の担当Aさんの退職にともなう欠員補充 → Aさんと同レベルか上回る仕事をするために必要なスキルは?
- 自社のDXサービスを全国展開するためにDX営業部門を創設 → DX営業の即戦力になるために必要な経験・スキルは?
ターゲットを明確にする
次は、スキルなどの分析結果をもとに、自社が求める人材の要件を明確にしていきます。たとえば、不動産営業Aさんの退職にともなう欠員補充なら、以下のようなターゲット設定になるでしょう。
- 30代前半、個人向けの高額商材の営業経験が1年以上、宅地建物取引士の資格を保有
ターゲットは、なるべく具体的な要件を設定することが理想です。ただ、あまりに厳しすぎる要件の場合、ハードルが上がってしまい応募自体が来なくなります。
中小企業の場合、自社の採用力に合わせて、少し要件を緩めることも大切でしょう。
未経験者の採用に取り組む
売り手市場の現状では、即戦力になる優秀な経験者は、認知度や勤務条件の良い大手企業に奪われてしまいやすいです。
こうしたなかで、中小企業が営業採用を進めていくには、未経験者や異業種などの採用競合が少ないブルーオーシャンで戦うことがポイントです。
未経験者の採用に取り組む際に大事なことは、自社の営業で成果を上げ続けるために必要な要素を洗い出すことです。
必要な要素の洗い出しをしっかり行なえれば、自社での活躍可能性が高い人材を見極めやすくなるでしょう。要素の洗い出しをするうえでは、既存メンバーに適性検査を実施することなどもおすすめです。
営業職の場合、先述のとおり“経験があるから活躍する”というわけではありません。特に売上をつくる最前線となる営業は、優秀であればいまの社内で高く評価されていることが多くなります。
したがって、同業界で転職する営業パーソンには、あまり活躍できていない層も相応に多くなります。
したがって、活躍するための素養を明確にしたうえで、活躍する素養を持った未経験者を採用したほうが入社後に活躍するケースも多々あります。
ただし、未経験者の採用をする場合、早期離職させないための工夫や、即戦力にするまでのプロセスづくり(オンボーディング)が大切です。注意しましょう。
口説ける人を面接官にする
応募してきた優秀な人材を二次面接や最終面接、内定承諾へとつなげるには、面接などで「今の企業ならキャリアアップできそうだ」や「今のメンバーと一緒に働いてみたい」などと感じてもらうための“口説く力”が必要となってきます。
“口説く力”さえ高ければ、中小企業やベンチャー企業などでも、自社に応募してくれた優秀な人材の獲得が可能となります。
口説きレベルを上げるなら、自社の経営陣に面接参加してもらうのも有効でしょう。
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自社情報を積極的に発信する
求職者に自社のことを見つけてもらうために、以下のような情報やメッセージなどを、先ほど設定したターゲットに向けて、SNSなどで積極的に発信するのも一つの方法です。
- 来年4月にソウル営業所を開設予定、韓国語ができるSIer法人営業マン10人を募集中
- 新サービスの発表にともないSaaS個人営業を大募集、営業未経験者や他業種からの転職も大歓迎 など
X(旧Twitter)やInstagramなどのSNSには、導入・運用費用などもかかりません。後述する効果的な採用手法と併せて活用してみるとよいでしょう。
優秀な営業職の見極め方
必要とされる能力は企業によって、また営業先や営業スタイルによって変わってきますが、一般的な営業職や近年需要が高まっているソリューション営業を採用するのであれば、以下のようなスキルが必要となることが多いでしょう。
本章では、営業職に必要なスキルの見極め方や質問例などを紹介していきます。
関係構築力
関係構築力は、他者との信頼関係を築く力のことです。顧客の潜在ニーズを聴き出し成約につなげるうえで、土台になるスキルとなります。
関係構築力があるかどうかの見極めは、面接でのコミュニケーションを見ていれば比較的につかみやすいです。
表情や相づち、会話など、いわゆるラポール形成や傾聴が実践できているかが一つの見極めポイントになります。
質問力
営業には、顧客から潜在ニーズや本音などを聴き出すために、高い質問力が求められます。
面接では、「初めて訪問する新規顧客」や「なかなか意思決定できない顧客」といった対象を設定し、実際に質問を考えてもらうとよいでしょう。
ただし、質問力は、面接のなかでなかなか見極めづらい側面もあります。そのため、営業経験者であれば、前職などにおける商談の成果ポイントなどをヒアリングすることも重要です。
前職の商材や自社の商材などで、商談のロールプレイングをやってもらうと、非常にわかりやすいでしょう。
ロジカルコミュニケーション
ロジカルコミュニケーションとは、端的にいえば“わかりやすい話し方”のことです。ロジカルコミュニケーション能力は、面接のなかで比較的見極めやすい部分です。
ロジカルコミュニケーションの見極めは、質問に対する回答の論理構成などを見るとわかりやすいです。
また、面接官が、「なぜ?なぜ?」の問いで、質問の答えを掘り下げていくのも一つの見極め方になるでしょう。
- 前職で最も困難だったときの状況と、最大の困難を乗り越えるために実施したことを、わかりやすく説明してください
- 弊社の新商品を月1万個売るには、どうしたら良いですか?方策を考えるうえで必要な情報がありましたら、何でも質問してください など
また、前職の商材・サービスなどを説明してもらうようなロールプレイングも有効です。
実績の説明力
営業の経験者であれば、なぜ実績が上がったか?成果を上げるために何を大切にしていたか?といった問いに対して、明確に回答できるかも大切な見極めポイントです。
また、回答を踏まえて、「自社の商品・サービスにおいて何がポイントになると思うか?」「成果を上げるためにどうするか?」といったことも質問してみるとよいでしょう。
履歴書や職務経歴書のなかで素晴らしい成果を書いていた人でも、実績を上げられていた理由やプロセスをきちんと説明できない場合、成果を再現できない可能性が高いでしょう。
ロールプレイング実施
繰り返しになりますが、営業採用の場合、面接内で軽くロールプレイングをやってもらうことがとても有効です。
経験者であれば今まで扱っていた事業やサービスの内容でやってもらっても良いですし、入社後に扱う商材・サービスでやってもらうと、ロールプレイングの過程で要点をつかむ力や質問力も見極められるでしょう。
自社のセールストークなどを実際にやってもらうことで、向き不向きや入社後のオンボーディングがどのくらい必要かのチェックも可能となります。
営業職を採用する効果的な手法
中小企業やベンチャー企業が自社に合う営業職を採用するには、以下のような手法を活用することがおすすめです。
リファラル採用
自社のメンバーに友人知人を紹介してもらう方法です。
紹介者となるメンバーは、自社の営業スタイルや社風、そして、友人知人の素質、性格などをよくしっています。
そのため、リファラル採用には、ミスマッチが生じにくく高いスキルの人材獲得につながりやすい利点があります。
リファラル採用では、紹介メンバーに賃金・給与として報酬を支払うことが一般的となりますが、報酬込みでも採用コストの大きな削減につながるでしょう。
人材紹介サービス
人材紹介会社のエージェントが求人企業と求職者のマッチングを行ない、雇用契約の成立に向けてサポートしてくれる仕組みが人材紹介です。
人材紹介サービスを利用すれば、認知度の低い中小企業やベンチャー企業でも、自社に合う人材を紹介してもらえます。
また、面接以外の以下プロセスを代行してくれるため、専任の採用担当者を置けない中小企業などにとっては、使い勝手の良いサービスになるでしょう。
- 求人紹介
- 応募意思の獲得
- 面接設定
- 志望度の確認
- 待遇面の調整
- 内定承諾の獲得 など
ダイレクトリクルーティング
企業側が求職者に直接アプローチできる“攻め”の採用手法です。
求人企業がサービス提供会社と契約すると、匿名状態の求職者データベースを検索し、スカウトメッセージが送信できるようになります。
そして、メッセージを受け取った求職者が求人企業に興味を持ちエントリーをすると、求人企業に個人情報が公開される仕組みです。
従来では一般的だった「求人媒体に広告を出す」や「合同企業説明会に参加する」などの方法は、求人企業が応募を“待つ”形となるため、認知度や業績が低い中小企業やベンチャー企業にとっては、不利になりやすい方法でした。
不利になる一方で、ダイレクトリクルーティングは、求人企業側から求職者にアプローチできるため、自社の魅了付けや口説く力が高ければ、優秀な人材を獲得しやすい方法となるでしょう。
まとめ
営業職の採用には、ほかの職種と比べて競争が厳しい特徴があります。
また、中小企業などの場合、自社の採用ターゲットが不明確であったり採用ノウハウが不足していたりするなどの理由から、営業職採用で苦戦する傾向があります。
こうしたなかで営業職採用を成功させるには、以下のポイントを実践することが有効です。
- 必要な素養を分析する
- ターゲットを明確にする
- 未経験者の採用に取り組む
- 口説ける人を面接官にする
- 自社情報を積極的に発信する
扱う商材や営業先によって必要なスキルは変わってきますがが、優秀な営業職かどうかを見極めるには、面接で以下のスキルを確認する必要があります。
- 関係構築力
- 質問力
- ロジカルコミュニケーション
- 実績の説明力
営業職の採用における見極めとしては、商談ロールプレイングの実施も非常に有効です。
営業職を採用する効果的な手法には、以下の3つがあります。
- リファラル採用
- 人材紹介サービス
- ダイレクトリクルーティング
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