採用活動を成功させるには、自社の企業力と採用力、採用ターゲットを踏まえて、自社に合う採用手法を選ぶことが大切です。
本記事では、まず定番からトレンドまで10の主要な採用方法を紹介したうえで、後半では自社に合った採用手法の選び方も解説しますので、参考にしてください。
<目次>
代表的な採用手法10選|特徴と向いている企業
まずは、新卒採用・中途採用における、代表的な10種類の採用手法を紹介しましょう。
総合型の求人広告(求人媒体)
業種や職種を限定せず、さまざまな企業の求人を公開する求人サイトのことです。
たくさんの求職者が登録しているため、採用広報力(知名度やブランド力、人気業種)が高い企業が利用すれば、低単価で母集団形成が可能になります。
ただし、新卒でいえばマイナビやリクナビ、中途でいえばリクナビNEXTやマイナビ転職のような大型サイトは、2万5,000社~3万社近い企業が求人掲載しています。
採用広報力が高くない中小企業やベンチャー企業の場合、求職者の目に留まりづらいでしょう。
特化型の求人広告(求人媒体)
特化型の求人広告とは、以下のような属性や志向性で登録者を絞り込んでいる求職サイトのことです。
- エリア ex)“関西就職ナビ”
- 業界 ex)“建設業界特化”
- 職種 ex)“ITエンジニアのための”
- 属性 ex)“ベンチャー就職”“女性の転職”“第二新卒者”“理系就職”など
属性や志向性で登録者を絞り込む採用手法の場合、特化している分だけ、登録する求職者数・企業数ともに、総合型より少なくなります。
一方で、特化型には、一定の属性や希望をもった求職者ばかりが登録している特徴があります。
特化型の求人広告は、採用ポジションとマッチして、マーケティング力や口説く力が強い企業には、有効な選択肢になります。
求人検索エンジン
求人検索エンジンとは、リクルートグループが運営する「Indeed」やカカクコムが運営する「求人ボックス」などです。“求人に特化したGoogle検索”とイメージするとわかりやすいかもしれません。
求人検索サイトを使うと、各社のホームページやさまざまな求人サイトに掲載されている求人情報を、横断的かつ集中的に検索できるようになります。
ただし、現状の求人検索エンジンには、求人サイトと肩を並べるほどの効果はありません。しかし、近年では、有償で自社の求人を優先的に表示させられるサービスも増えています。
ダイレクトリクルーティング
ダイレクトリクルーティングは、近年、新卒と中途の両方で急速に伸びているサービスです。
中途でいえばBizReach、新卒ならOfferBoxや、HRドクターを運営する株式会社ジェイックが運営するFutureFinderなどのサービスがあります。
ダイレクトリクルーティングは、サービス提供会社のデータベースを検索し、自社の採用ターゲットに合う求職者(匿名状態)に直接メッセージを送れる「攻めの採用手法」です。
エントリーした求職者の個人情報が公開されたあと、カジュアル面談や選考、説明会などのステップに進んでいく流れになります。
ダイレクトリクルーティングを活用すれば、採用広報力の低い中堅中小企業やベンチャー企業でも、自ら優秀な人材へのアプローチを行なえる魅力があります。
また、自社が求める人材に絞り込んでメッセージを送れます。そのため、母集団を絞り込みたい場合にも有効です。
ただし、各人材のニーズに合ったアプローチをする必要があります。したがって、一般の求人サイトを使う方法と比べて、工数は多くかかるため、注意が必要です。
また、高い効果を得るためには、求職者の心を動かすメッセージの書き方などを工夫する必要があります。
人材紹介/新卒紹介
人材紹介/新卒紹介とは、いわゆる転職エージェントのことです。人材紹介会社に登録する求職者のなかから、企業の採用ニーズや採用ターゲットに合った求職者を紹介してくれるサービスです。
人材紹介では、求人票の作成、応募意思の取得、面接日程の調整、内定承諾の確認などを代行してくれます。そのため、工数を抑えられるところが大きな魅力です。
また、ブランド力がそう高くない中小企業でも、ある程度のミドル・ハイレベルと出会える可能性もあります。
ただし、人材紹介/新卒紹介の場合、採用活動まで代行してもらえる分、求人サイトなどと比べて採用単価は高くなります。
成果報酬型が一般的になっており、新卒は“60~120万円程度の一律”、中途は採用した人材の“年収の30~35%”程度が報酬相場です。
こうした特徴から、人材紹介/新卒紹介は少人数の採用で工数を抑えたい、費用は多少高くついてもいいので手間をかけずに採用活動を進めたいといった場合に有効な採用方法です。
就職/転職フェアや合同企業説明会
就職/転職フェア、合同企業説明会は、求職者が会場内をまわり、興味がある企業ブースで会社説明などを聞くイベントのことです。
大きな就職フェアの場合、マイナビやリクルートなどをはじめとする求人サイトの運営企業が開催することが多いです。また、大学のキャリアセンターやハローワークなどの行政が実施するものもあります。
就職/転職フェア、合同企業説明会には、求職者と直接会って話せるため、魅了付けが得意、採用営業力が高い企業には特におすすめです。
ただし、大型のイベントは会場内にブランド力の高い大手企業も来ることから、業界認知度の低い中堅・中小企業の場合、求職者がなかなかブースに立ち寄ってくれない可能性もあるでしょう。
また、イベントによっては、ある程度の参加者がセグメントされていることもありますが、イベントという性質上、特定職種や特定経験の人を採用したいといったニーズにははまりにくい傾向があります。
マッチングイベント
マッチングイベントとは、就職フェアや合同企業説明会の進化版です。
マッチングイベントでは、参加企業数・求職者数の両方が絞り込まれ、イベント内で少人数のグループもしくは個別に求職者と話す時間が設けられています。
マッチングイベントには、就職フェアのように自社の説明ができるのはもちろんのこと、一次選考まで含めて実施できる特徴があります。
マッチングイベントも、採用広報力は高くないものの、魅了付けや口説く力などの採用営業力が高い企業におすすめです。
リファラル採用
リファラル採用とは、自社の社員に友人知人を推薦してもらう採用手法です。いわゆる縁故採用の進化版になります。
リファラル採用には、カルチャーフィット・スキルフィットの両方を叶える人材と出会いやすいメリットがあります。また、転職の潜在層と繋がれる可能性もあるでしょう。
さらにリファラル採用を行なうと、採用コストも抑えられます。
ただし、定期的に推薦・紹介があるとは限らないため、大量採用する、計画的に採用したいという状況には不向きです。
また、もちろん社員が「知人に自社を紹介したい」という高いエンゲージメントを持っている必要があります。
オウンドメディアリクルーティング
オウンドメディアリクルーティングとは、自社の採用サイト・ブログ・SNSなどを活用した採用手法です。
Instagram・Facebook・Twitterなどを活用するソーシャルリクルーティング(SNS採用)は、広義にはオウンドメディアリクルーティングの一つともいえるでしょう。
オウンドメディアリクルーティングの力は、自由かつ柔軟に自社の魅力を発信できるうえに、フォロワーによる拡散などで就職・転職の潜在層などにもアプローチできることです。
求人媒体や人材紹介に依存するよりも、コストを抑えられる可能性も高くなります。特にSNS採用の場合、ノーコストで運営できるでしょう。
ただし、オウンドメディアリクルーティングの場合、採用ターゲットに合ったメディア選定や運用方法を誤ったり、更新頻度が低かったりすると、求める成果が出なくなります。
また、アカウントを作っただけでフォロワーが増えるような知名度があれば別ですが、中小企業が認知度を高めていくためには、それなりの時間もかかります。
アルムニ採用(中途のみ)
アルムニ採用とは、自社の卒業生(退職者/アルムナイ)を、再雇用する手法です。
アルムナイは、自社の社風や価値観、仕事のやり方などを知っているため、即戦力になるとともにミスマッチも起こらない魅力があります。
また、社内の状況を知っているとともに、一度退職したうえで、再び自社に戻ってくるということで、定着率やエンゲージメントも高くなるでしょう。
ただし、アルムニ採用もリファラル採用と同様に、大量採用や計画的な採用は難しい特徴があります。
しかし、卒業生とのコンタクトを継続しておくことで、アルムニ採用が期待できるようになるでしょう。
なお、アルムニ採用をするには、卒業生であるアルムナイに「再び働きたい」と思う自社へのエンゲージメントがあり、また、良い辞め方をしていることが必要です。
つまり、アルムニ採用を行なうためには、大前提として良い企業づくりが必須です。
ここまで紹介した10の採用手法の概要・メリット・デメリットをまとめておきましょう。
自社に最適な採用手法の選び方
自社に合う採用手法は、採用目的によって変わってきます。本章では、以下5つの採用状況から、自社に合った採用手法を選ぶポイントを解説します。
急ぎで採用したい場合
スピード重視の採用をする場合、以下のなかで複数のチャネルを並行して使うことが有効です。
- 人材紹介:自社の求める人材を紹介してもらえる
- マッチングイベント:来場者と直接話せる仕組みが設定されている
- ダイレクトリクルーティング:企業からスカウトメッセージを送れる
マッチングイベントやダイレクトリクルーティングの場合、魅了付けや口説く力が必要となります。
また、急ぎで採用したい場合には中途採用であれば、すでに離職している人、退職日が確定している人をターゲットにする必要があるでしょう。
工数をかけずに採用したい場合
採用担当者がいない中小企業や、スタートアップなどで経営陣が直接動いて採用するなどの場合、工数を抑えたいというニーズが強くなります。
その場合は、人材紹介、マッチングイベントなどがおすすめです。
特に人材紹介であれば、求職者との条件交渉や面接日程の調整などの実務を代行してくれます。
また、リファラル採用やアルムニ採用も、声がけをしてうまく進められると、そこまで多くの手間はかからないでしょう。
採用担当者が新しいチャネルを増やしたいと考える一方で、そこまで多くの手間はかけられないといった場合は、人材紹介がおすすめです。
ただし、ダイレクトリクルーティングなどでも、たとえば、HRドクターの運営企業 株式会社ジェイックが提供する「FutureFinder」の場合、スカウトの運用代行が標準でついています。
こういったサービスなどを探すことも有効でしょう。
低予算で採用したい場合
低コストで採用したい場合は、オウンドメディアリクルーティング、リファラル採用、アルムニ採用、ハローワーク、大学就職課などがおすすめです。
オウンドメディアリクルーティングなどの方法には、内製や工夫をしながら進めることで、費用がかからない魅力があります。
ただし、オウンドメディアリクルーティング、リファラル採用、アルムニ採用などは、効果が出るまでに多くの時間や運用工数がかかったり、確実性が無かったりする側面もあります。
また、ハローワークや大学就職課などの場合、優秀層や潜在層へのリーチが難しい部分もあるでしょう。
短期的に活用するのであれば、採用広報力が高ければ総合型や特化型の求人広告もおすすめです。
また、工数を割けるようであれば、ダイレクトリクルーティングを使えば、人材紹介などと比べて採用単価が抑えられるでしょう。
そうした動きをとりながら、中長期的に上述したオウンドメディア、リファラル採用、アルムニ採用などを整備していくことがおすすめです。
新卒採用が目的の場合
新卒の場合、アルムニ採用を除く以下のような手法が使えます。なお、求人検索エンジンも利用可能となりますが、現状の新卒採用ではあまり普及していないため、あまりお勧めできません。
- 総合型の求人広告
- 特化型の求人広告
- 人材紹介/新卒紹介
- 新卒ダイレクトリクルーティング
- 就職フェアや合同企業説明会
- マッチングイベント
- リファラル採用
- オウンドメディアリクルーティング(SNS採用)
- 大学就職課
- 新卒ハローワーク
ただし、具体的にどの手法やサービスが最適かは、採用ターゲット、また、自社の採用広報力、採用営業力、そして採用人数によって変わってきます。
たとえば、企業力が高い大企業の場合、求人媒体に広告を出すだけで、多くのエントリーが集まるでしょう。
一方で、中堅・中小企業の場合は、業界認知度などの企業力が低いため、求人媒体に広告を出して待っているだけでは、母集団形成ができません。
母集団形成ができない場合、攻めの採用手法であるダイレクトリクルーティングや、マッチングイベント、新卒紹介などを選択したほうが、効率よく学生と接触できるでしょう。
中途採用が目的の場合
中途採用が目的の場合、大学就職課を除く、以下の手法を活用できます。
- 総合型の求人広告
- 特化型の求人広告
- 求人検索エンジン
- 人材紹介
- ダイレクトリクルーティング
- 転職フェアや合同企業説明会
- マッチングイベント
- リファラル採用
- オウンドメディアリクルーティング(SNS採用)
- アルムニ採用
- ハローワーク
選び方のポイントは、新卒採用と同じです。
ただし、中途の場合には、新卒よりも採用ターゲットの幅、求める経験やレベルが広く、採用ターゲットによってリーチできる採用チャネルが変わってきます。
そのうえで、自社に適した手法を選択することが大事です。
まとめ
今回は、以下10種類の主要な採用手法の概要やメリット・デメリット、向いている企業の特徴などを紹介しました。
- 総合型の求人広告(求人媒体)
- 特化型の求人広告(求人媒体)
- 求人検索エンジン
- ダイレクトリクルーティング
- 人材紹介/新卒紹介
- 就職/転職フェアや合同企業説明会
- マッチングイベント
- リファラル採用
- オウンドメディアリクルーティング
- アルムニ採用
最適な手法は、採用ターゲット、また自社の採用広報力・採用営業力の組み合わせ、また、採用スピード・工数・予算などのどこを重視するかで変わってきます。
また、費用がかからない手法の場合、以下のようなデメリットがある可能性も高いでしょう。
- リーチできる求職者が限定される
- 立ち上げるのに時間がかかる
- 手間がかかる
採用手法を選ぶときには、それぞれのメリット・デメリットを把握したうえで、計画的に組み合わせを考えていくことが大切です。