インターネットとスマフォの発展に伴って新卒採用の手法はこの数十年で大きく多様化しています。
従来の手法だけで新卒採用をおこなっていると、自社の採用したい人材が応募してこない、採用した人材が自社とうまくマッチングせずに辞めてしまう、といった問題に悩んでいる企業もあるでしょう。
自社にとって最適な手法、また中長期的な視点で各手法のメリット・デメリットを把握して採用活動をおこなうことで、効率と質の良い新卒採用を実現できます。
本記事では、基本からトレンドまで新卒採用の主な手法を網羅的に解説しますので、ぜひ参考にしてください。
<目次>
新卒採用の基本手法10選
まずは、新卒採用において基本となる10の採用手法を紹介します。
総合型の就職サイト(求人広告)
就職サイトは、就職サイトの運営会社に掲載料金を支払い、求人広告を載せるスタイルです。
とくに総合型の就職サイトはマイナビやリクナビなど、業界業種を横断した求人が掲載され、就活生の多くが登録する形になります。
したがって、多くの就活に対して告知することで母集団形成がしやすいというメリットがあります。
ただし、掲載される求人の数も数万件となり、自社の求人が他の求人に埋もれてしまいがちなのがデメリットです。
例えば「東京×IT業界」だけでも1,000件を超えるような求人があり、上位表示のオプションや上位ランクの契約をしないとなかなか検索結果の上位に表示されることは困難です。
従って、大きな広告費を投下できない中堅中小企業やベンチャー企業は、膨大な数の求人のなかで求職者に見つけてもらいにくい可能性があります。
また、昨今では新卒採用の手法が多様化したなかで、総合型の就職サイトのみに頼る学生も減っています。
総合型の就職サイトが王道の手法であることは間違いありませんが、他の採用方法との併用も検討してみると良いでしょう。
特化型の就職サイト(求人広告)
特化型の就職サイトは、掲載する業界業種や職種を特化したり、また登録者の属性などを特化させたりした就職サイトです。
たとえば、広告業界、クリエイター、ベンチャー、医療、外資系企業といった形で求人を特化したり、逆に、理系専用、体育会系専用、修士博士課程の大学院生特化といった形で登録者を特化させたりしています。
なお、特化型の就職サイトも掲載料金を支払って、求人広告を載せる点は、総合型の就職サイトと共通です。
特化型の就職サイトは業種や業界が絞られているため、その業種や業界に興味を持っている就活生、また自社の採用ターゲットになる就活生からの閲覧を増やせる点がメリットです。
また、対象が絞られているからこそ、さらに細かなセグメントができるのも特徴です。
たとえば、ITエンジニアであれば言語や分野まで詳しく絞り込んだり、理系であれば専攻で絞り込んだりすることができるでしょう。
特化型の就職サイトは、総合型に比べて登録者の数は少なくなりますが、自社に興味を持ってくれる可能性が高い人材、内定につながる可能性が高い人材の確保、いわば質の良い母集団を期待できます。
ダイレクトリクルーティング
ダイレクトリクルーティングとは、自社の採用基準にマッチする人材を検索し、ダイレクトにアプローチできる採用手法です。
ダイレクトリクルーティングサービス会社と契約して、データベースに登録されている就活生(匿名状態)に対して、自社からメッセージを送ります。
求職者がエントリーすると、個人情報が見えるようになり、面談や選考に進んでもらう形になります。
ダイレクトリクルーティングは、就職サイトのように求人広告を出して「待つ」だけでなく、企業から検索してメッセージを送れることから「攻め」の採用手法ともいわれます。
中小企業やベンチャー企業でも、メッセージを工夫することで優秀な人材を獲得できる可能性も十分あり、低コストで高い効果が得られます。
また、自社で検索して、自己PRなどをみたうえでメッセージを送りますので、応募後の選考ステップ率、内定率は高く、効率のよい採用活動を行うことができます。
ただし、スカウトメールの作成、求職者の検索、文面のカスタマイズ、メッセージの送信といった日々の運用をきちんとしないと成果はあがりませんので、運用工数をきちんと確保することが必要になります。
ただし、最近ではスカウトなどの送信代行をしてくれるダイレクトリクルーティングサービスもあります。
HRドクターを運営する株式会社ジェイックが提供する新卒ダイレクトリクルーティングFutureFinderも標準で運用代行がついているサービスです。
「ダイレクトリクルーティングを試したいけど、運用工数まではとれない…」という企業はぜひ一度資料をご覧ください。
関連サービス:FutureFinder
人材紹介(新卒紹介)
人材紹介とは、転職エージェントなどの人材紹介サービスに自社のターゲットを伝え、該当する人材を紹介してもらう手法です。新卒向けの場合、「新卒紹介」と呼ばれることもあります。
エージェントが企業紹介、応募者の獲得、面接日程の調整、志望度の確認、内定承諾などを代行してくれる、また、応募者の一次的なフィルタリングをしてくれるため、企業は工数を大幅に圧縮できるのがメリットです。
また、人材紹介(新卒紹介)は完全成果報酬が一般的であり、採用に繋がらなければ費用は発生しません。
かつ、内定承諾後の辞退であれば100%返金、入社後の早期退職に対しても一定の返金保証がつくことが一般的です。
ただし、こうした費用リスクがなくなる分、採用が成立した場合の採用単価は高くなる傾向があります。
通常の人材紹介は入社人材の年収の30~35%というのが報酬相場ですが、新卒紹介の場合は60~120万円/人程度の固定費用になっているケースが多いでしょう。
就職イベント(合同企業説明会・マッチングイベント)
就職イベントは、合同企業説明会、マッチングイベントといった形でおこなわれる就職関連のイベントの総称です。
合同企業説明会は、複数の企業が自社ブースを設置して、ブースに集まった参加者に会社説明会などを実施するスタイルで、就職サイトの運営企業や大学などが主催するケースが多いでしょう。
なお、大型の合同企業説明会は数多くの企業と求職者が集まるため、認知度が低い中堅中小企業やベンチャー企業、不人気業種などはブースに人が集まりづらいデメリットがあります。
これに対して、マッチングイベントと呼ばれるものは、より小規模で総当たり型の就職イベントです。
確実に学生にアピールできるため、中小企業やベンチャー企業に向いています。また、その場で一次選考できるようなイベントも多く、うまく活用すれば採用効率を高めることができます。
なお、就職イベントは求職者と直接対話できることが特徴であり、対面での営業力が強い会社や担当者にとっては有効活用できるでしょう。
なお、コロナ禍前は基本的に対面での開催が基本でしたが、コロナ禍を経てオンラインでの開催も一般的になりました。
SNS採用(ソーシャルリクルーティング)
SNS採用とは、Twitter、Instagram、TikTokなどのSNSを活用した採用手法です。
継続的に発信したり、動画や映像を活用したりすることで、定性的な魅力やメッセージを伝えやすいのがSNS採用の魅力です。
また、SNSは費用も掛かりませんので、中堅中小企業やベンチャー企業にとっては、うまく活用できれば非常に魅力的な手法になります。
フォロワーを増やしていくことで、新卒であれば他業界の志望者、中途であれば転職潜在層などにもアプローチできるでしょう。
SNS採用には上記のようなメリットがありますが、一方で注意したい点もあります。まず母集団形成で使う場合、多くの求職者に自社のSNSを見てもらうためには、フォロワーを増やさなければなりません。
そして、フォロワーを増やすためには魅力的、かつ継続的なコンテンツ投稿が必要です。
効果を得るまでには数年ぐらいの時間が必要となることも多いでしょう。さらにSNSは炎上のリスクもありますので、運用に注意も必要です。
リファラル採用
リファラル採用とは、自社の社員に人材を紹介してもらう採用手法です。社員の知り合いや友人など、実際に自社をよく知っている人を通すため、入社後の定着率が高いのメリットです。
また、人間関係は「近い属性の人」のなかで結ばれることが多いものです。
従って、自社の社員の周囲には自社の社員と似た人が集まっている可能性が高く、内定候補になり得る確率も高いでしょう。
リファラル採用には基本的に費用がかからず、社員へ紹介料や活動費用を支払ったとしても、通常の採用にかかる費用よりも安いです。
一方で、計画的に進めることは難しいため、大量採用には向いていません。ある程度長期的に進めることが大切です。
オウンドメディア
オウンドメディアによる採用とは、自社が運用するサイトやブログなどで情報発信をおこなう手法です。
求人広告やSNSと異なり、スペースや形式の制限がありませんので、自社の魅力や社風を思う存分に伝えることができ、企業理解の向上や志望度UP、ミスマッチの防止に役立ちます。
一方で、オウンドメディアの効果を出すためには就活生にオウンドメディアを見てもらう導線をきちんと設計することが必要ですし、継続的な投稿・運用が欠かせません。
この点はSNS採用と似ています。
大学キャリアセンター
大学キャリアセンター(就職課・就職指導課・キャリアサポートセンター等)は、学生の就職活動を支援する大学の機関です。
キャリアセンターの活動内では、大学に寄せられた求人を学生に紹介して、企業に推薦するという一種の人材紹介的な動きなどもしてくれます。
また、大学が主催する合同企業説明会などを運営しているのもキャリアセンターです。
企業はキャリアセンターにアポイントを取り、求人を紹介して学生への紹介を依頼します。
キャリアセンターが開催する大学の合同企業説明会や個別企業紹介セミナーに参加させてもらったり、キャリセンターの面談内で企業を推薦してもらったりすることもできるでしょう。
キャリアセンターを経由して採用することができれば、費用がかからないことはメリットです。
しかし、当然、キャリアセンターを使う学生にしかリーチはできませんので、キャリアセンターの利用学生が自社の採用ターゲットに一致するかが大切です。
また、良い学生を紹介してもらうためにはキャリアセンターとの関係構築や定期的な訪問が必要になるため、さまざまな大学に依頼する場合、企業担当者にとって工数などが必要になってくる側面もあるでしょう。
ハローワーク(新卒ハローワーク)
ご存じの通り、ハローワーク(公共職業安定所)は国が運営する就職活動の支援機関です。
ハローワークでは、新卒に特化した「新卒ハローワーク」を運営しており、大学のキャリアセンターと同じように、無料で求人を掲載してもらったり、就活生を紹介してもらったりすることができます。
あまり知られていませんが、じつは新卒ハローワークでは非常に多くの大学にカウンセラーを派遣しているため、キャリアセンターへの依頼を考えるようであれば、同時に新卒ハローワークにも求人を出しておくことがお勧めです。
新卒採用手法の最新トレンド
新卒採用の手法にはたくさんの種類があり、時代の中で大きく変化もしています。ここでは、新卒採用手法における最近のトレンド3点を紹介します。
ダイレクトリクルーティングの普及
先ほど紹介したダイレクトリクルーティングは、この10年ほどで急激に普及している手法です。
求人広告を掲載後、就活生からの応募を待つような「待ち」の手法ではなく、「攻め」の手法である点が企業に普及している大きな理由です。
ダイレクトリクルーティングはスカウトメール等を工夫してしっかり運用すれば、企業の知名度などがなくても優秀な学生を採用できる可能性があります。
また、企業側で検索した人だけを母集団にすることができるため、選考の効率化にも役立ちます。
SNS採用(ソーシャルリクルーティング)の復活
いまの若者は、テレビよりもYouTubeやTikTokとの接触時間のほうが長いことは周知のとおりです。
広告費において、インターネットがテレビを抜きさったことはご存知かもしれませんが、インターネットのなかでも学生が多く接点を持つのがSNSです。
SNS採用は10数年ほど前に一瞬流行りましたが、この数年、再び取り組む企業が増えています。
今回は、取り組む企業数なども明らかに多く、10数年前のブームと比べると、学生への普及度等を考えても定着するものと考えられます。
気軽に発信できる、また社風や人柄などを発信しやすいSNSは、ユーザーとの接触頻度を増やしたり、定性的な魅力を伝えたりしやすいのが特徴です。
採用におけるSNSの活用は、新規の母集団形成、また、一度接触した就活生への接点づくりや志望度醸成にも効果的です。
採用マーケティング
この数年で取り組む企業が増えているのが「採用マーケティング」です。採用マーケティングは、事業マーケティングの考え方を採用分野に取り入れる考え方をいいます。
具体的には、採用ペルソナの作成やオウンドメディアの構築、また、採用難度が高い中途採用分野などでは、マーケティングオートメーション(Marketing Automation)を採用サイトに組み込んでいる企業、また、WEB広告を活用する企業なども出てきています。
自社に合った新卒採用手法の選び方
新卒採用の手法は、自社に合ったものを使うことが非常に大切です。
自社に合った採用手法を選ぶ上では、まず大切なのは採用ターゲットと自社の採用力です。
当たり前の話ですが、採用ターゲットがいる採用メディアを使わなければ採用成功は難しくなるでしょう。
また、総合型の就職サイトや就職イベントのところで紹介した通り、採用手法によっては知名度がある企業が有利になる、逆に知名度はなくてもいいので営業力が大事になるといった特性もあります。
また、各手法で効果をあげるのに必要な工数や時間軸を考慮しておくことも大切です。
例えば、SNS採用は費用もかかりませんし、定性的な魅力を発信できるため、中堅中小企業やベンチャー企業にとっては非常に有効な手法です。
一方で、結果が出るまでには時間がかかりますし、効果を計算できる状態になるには更に時間が必要です。
どの採用手法にもメリット・デメリットがありますので、しっかり比較することが大切です。また、採用手法を一つに絞るのではなく、複数の手法を組み合わせた採用活動をおこなうと良いでしょう。
また、短期の施策を打ちながら、SNS採用やリファラル採用のような計画しにくい手法、時間がかかる手法を徐々に立ち上げていくことも大切です。
採用手法を決める前に準備したいこと
ここでは、採用手法を決めていくまでの基本的な流れ、採用計画の考え方を紹介します。
採用活動を始めようと思うと、いきなり採用手法の選定に目が行きがちですが、上述の通り、採用ターゲットや自社の採用力をきちんと検討する流れが大切です。
求める人材像の明確化
まずは採用ポジションと各ポジションの人数を洗い出し、また各ポジションにおける採用基準を検討しましょう。
どの企業でも「優秀な人材」を採用したいのは当然ですが、自社、そのポジションにおいて、どのような人材が優秀なのかを明確にする必要があります。
漠然と考えていると抽象的な基準になりやすいので、実際に紙などに書いて言語化していくことが大切です。
採用基準を考えていくと、理想の人物像が出来上がっていきます。次に自社にとっての必須(MUST)と希望(WANT)を区別して整理することが重要です。
必須条件があまりにも多いと、現実的に採用できない、“その人が自社を選ぶ理由”を考えられなくなります。必須条件と希望条件を切り分けて、整理しておきましょう。
用課題の洗い出し
採用ポジションと人数、採用基準の決定と並行して、自社が抱えている採用課題を洗い出しておくことも大切です。
分かりやすい事例でいけば、「採用できている人物の質に不満がある」場合には、優秀層にリーチできる特化型の就職サイトやダイレクトリクルーティングなどを検討する必要があるでしょう、また、「採用担当者の負担を減らしたい」ことの優先順位が高いのであれば人材紹介(新卒紹介)の利用を検討しても良いでしょう。
また、中堅中小企業やベンチャー企業で知名度に課題があるようであれば、SNS採用やリファラル採用に早めに着手しておくことが大切です。
このように、自社の採用課題によって適切な手法は変わってきますので、短期また中長期の視点で課題を洗い出したうえで手段を選択することが重要です。
まとめ
新卒採用の手法はさまざまで、近年はとくに多様化が進んでいます。
最近では、就活生に直接オファーを出せるダイレクトリクルーティングや、自社の仕事内容や人の魅力などの定性的な情報を発信しやすいSNS採用が注目を浴びています。
自社の採用ターゲットや採用力によって適した新卒採用手法は変わってきます。
また、それぞれの新卒採用手法でメリットもデメリットもあるため、自社に合った採用手法を見出していくことが非常に重要です。
本記事も参考にしながら、ぜひ試行錯誤して、自社に合った採用手法を見つけて下さい。