近年、大企業~中堅中小企業、ベンチャー企業まで、幅広い企業の間で再度注目されているのが、SNSを通じて自社の認知度を高めたり魅力を伝えたりして採用に生かすソーシャルリクルーティングです。
ソーシャルリクルーティングは、10年ほど前に“SNS採用”として一時的なブームになりました。
ただ、この数年、SNSがマスメディアを上回る存在感を持つようになったなかで、改めて活用されるようになりました。
記事では、ソーシャルリクルーティングの概要やメリット、よく使われる媒体などを確認します。
また、自社でソーシャルリクルーティングを実施している経験も踏まえて、ソーシャルリクルーティングを成功させるポイント、SNS運用のコツ、ソーシャルリクルーティングの注意点、おすすめの事例も紹介しますので、参考にしてください。
<目次>
- ソーシャルリクルーティングの基礎知識
- ソーシャルリクルーティングのメリット
- ソーシャルリクルーティングを成功させるポイント
- SNS運用のコツ
- ソーシャルリクルーティングの注意点
- ソーシャルリクルーティングの事例
- まとめ
ソーシャルリクルーティングの基礎知識
まず、ソーシャルリクルーティングの基礎知識として、概要やよく使われる媒体を確認しましょう。
ソーシャルリクルーティングとは?
ソーシャルリクルーティングとは、TwitterやInstagram、FacebookなどのSNSを活用した採用方法の総称です。
総務省の「平成29年度版 情報通信白書」によると、2016年時点で20代の97.7%がいずれかのSNSサービスを使っていることがわかっています。
このデータは、特に若年層の採用において、SNSは採用ターゲットにアプローチしやすいツールであることを意味します。
こうしたなかでSNSを活用したソーシャルリクルーティングが誕生し、近年では、多くの企業が実施するようになりました。
ソーシャルリクルーティングでよく使われる媒体
ソーシャルリクルーティングでは、採用活動に以下のような媒体を活用します。
- TikTok
- YouTube
- LINE
- YOUTRUST
ソーシャルリクルーティングのメリット
ソーシャルリクルーティングには、以下の効果・メリットがあります。
無料で始められる
各SNSでアカウント開設をする場合、基本的に費用はかかりません。
そのため、ソーシャルリクルーティングは、採用コストをあまり多く割けない中堅・中小企業、ベンチャー企業でも始めやすい採用方法です。
ただし、一部のSNSでは、通常アカウントは無料でも、採用用のオプションなどは有償の場合もあります。
こうした有償オプションは、SNS上でつながっていない人にもメッセージを送信できる機能など、ソーシャルリクルーティング×ダイレクトリクルーティングを実施するためのものです。
自社に共感する人材からの応募が増える
ソーシャルリクルーティングには、SNS上での発信を繰り返していくなかで、自社の社風、定性的な魅力、ミッションやビジョンなどを訴求しやすい特徴があります。
したがって、自社の定性的な魅力に共感してくれた人材からの応募を生み出しやすいところが、ソーシャルリクルーティングの魅力です。
たとえば、社長や社員紹介などのおもしろいYouTube動画が注目され、いわゆるバズる状態になれば、「自分もこの人と一緒に働いてみたい!」「この企業のインターンシップは楽しそうだ!」などの共感から応募につながるでしょう。
上記までいかなくても、日々の投稿で接点が増えるなかで、短期的な求人広告では伝えられない社風や雰囲気を伝えることができます。
転職潜在層にリーチできる
たとえば、求人広告や人材紹介の場合、リーチできる登録者の多くは“今すぐ転職をしよう”と考えている転職顕在層です。
これがダイレクトリクルーティングになると範囲が少し広がって、“転職を選択肢に考えている”ような層も含まれます。
一方で、ソーシャルリクルーティングでは、そもそもSNS自体が転職者向けのメディアではありません。
そのため、いまの時点ではまったく転職を考えていない人、自社の業界や職種への転職を選択肢にしていない人にもリーチすることができます。
転職が当たり前になっている中で、長いキャリアの中で何かのタイミングで転職を考える労働者は多いです。
そのときに、自社を思い出してもらう、自社が頭に浮かぶことになれば、ソーシャルリクルーティングの効果は大きいといえるでしょう。
企業の知名度をひっくり返せる
SNSの場合、企業公式アカウントとして運用することもあれば、企業公認の個人アカウント(○○社の人事□□)で運用することもあります。
大手企業であれば、当然のことながら、知名度の高さがソーシャルリクルーティングにも良い影響をもたらします。
ただし、SNSの場合、コンテンツの面白さや共感性、また、きちんとした更新が重要です。
大手であっても、発信するコンテンツがつまらなかったり投稿頻度が低かったりすれば、ソーシャルリクルーティングでの成功は難しくなります。
逆にいえば、知名度がない中小企業やベンチャー企業でも、しっかり運用を継続できれば、ソーシャルリクルーティングで多くのフォロワーを集めることができます。
ソーシャルリクルーティングを成功させるポイント
ソーシャルリクルーティングで自社が求める人材を採用するには、以下のポイントが重要です。
位置づけを決める
ソーシャルリクルーティングを成功させるには、まず、自社の採用活動におけるSNSの位置づけ(目的)を考える必要があります。
なお、一般的なソーシャルリクルーティングの目的は、大きく分けると以下の2つです。
- 接点を持った求職者にSNSを案内して継続接点を持つ、深く知ってもらう
- SNSで集客する
どちらかだけに限定する必要はありません。ただ、前者であれば、しっかりと採用選考フローのなかで案内するプロセスをつくる、また、その前提でコンテンツを設計しましょう。
また、後者の場合、そもそもターゲットに認知してもらうための運用が必要になるといった形です。
「求職者のニーズ×自社の魅力」の視点でコンテンツを考える
ソーシャルリクルーティングで作成するコンテンツは、自社が伝えたいことの押し付け・求職者のニーズ、どちらかに偏りすぎてはいけません。
なお、ソーシャルリクルーティングの位置づけによっても、コンテンツは大きく変わってきます。
たとえば、接点を持った求職者にSNSを案内して継続接点を持つ、深く知ってもらうことを意図するのであれば、以下のようなコンテンツになるでしょう。
- 女性でも活躍できるか知りたい×多様な働き方を導入 → テレワークで働くママ管理職の一日を紹介するYouTube動画
- 肉体労働に不安がある×筋肉質で健康な社員が多い → エクササイズと仕事内容を組み合わせたYouTube動画
- ◯◯業界に真面目で暗いイメージがある×個性が強くおもしろい若手社員が多い → ユーモラスな文章を書ける若手をSNSの「中の人」にする など
一方で、「SNSで集客する」ことを意図する場合には、上記のような採用情報の延長線上にあるような情報だけを発信しても多くの人に見てもらうことは出来ません。
SNSでの集客に力を入れる場合、媒体の特性や特徴に応じて拡散される、フォロワーが増えていくコンテンツを考えていく必要があるでしょう。
ソーシャルならではの双方向性を活かす
企業が一方的にコンテンツを投稿するだけでなく、動画や記事を通じて求職者とのコメントやいいね!のやり取りができるところも、ソーシャルリクルーティングの大きな魅力です。
たとえば、「女性の管理職はどのくらいいるんですか?」と質問コメントが入った場合、その場で「今は4人です!」と即答するほかに、以下のように、次につながる返答の工夫もできるでしょう。
- 来週、女性管理職の紹介動画をアップします!ぜひ視聴してくださいね!
- 8月のオンラインセミナーは、女性管理職のAさんが担当します!お時間ありましたら、ぜひエントリーしてみてください! など
上記は露骨な採用への誘導になりますが、これ以外にも、SNSの運用ではフォローやコメントしてくれた人との交流を楽しむような姿勢が重要となります。
明確に求人を発信する
SNSを運用していると、コミュニケーションやフォロワーの拡大などに意識がいきがちです。しかし、定期的に求人情報などを発信して、採用に誘導することも大切になります。
なお、使う媒体にもよりますが、SNSで詳細な求人情報を発信するのは、あまり妥当ではありません。
そのため、受け皿となるような求人詳細を記載した自社ページ、応募を受け付けられるフォームなどをきちんと準備しておくことが大切になります。
継続する
ソーシャルリクルーティングでは、定期的な更新を続けながら、コンテンツとフォロワーを増やすことが大切です。
続けるなかで、いいね!・シェア・コメント内容、インプレッションなどのアクセスデータから、次第にターゲットのニーズもわかってきます。
ソーシャルリクルーティングを成功させるには、運用を続けながら、コンテンツの質や運用方法のPDCAを回すことが大切です。
SNS運用のコツ
ソーシャルリクルーティングの目的は、あくまでも自社の求める人材の獲得につなげることです。
そのため、ソーシャルリクルーティングを成功させるには、SNS運用でも、以下のポイントに注意をする必要があります。
各SNSの特徴を押さえる
SNSの特徴は、以下のようにサービスによって大きく異なります。たとえば、以下のようなものです。
- Twitter:若者から上の世代まで、登録層はとても幅広い。情報の拡散力が高く、運用もしやすいため、認知を広げることに向いている。ただし、匿名アカウントが多く、炎上のリスクも一番高い。
- Instagram:10代~20代の女性が中心、おしゃれな写真や動画が好まれる。採用ターゲット、また自社の商材やコンテンツと合致すれば有効。ただし、シェア機能などがなく拡散性は低い。「エリア×キーワード」等で検索ツール代わりに使う若者も増えており、地域性があるキーワードなどでは狙い目。
- LINE:利用者の年代が幅広く、アクティブユーザー数も高い。ただ、スタンプ作成と配布を通じて友だちを増やすなど、資金を投下しないとゼロから新規ユーザーを集めることは難しい。コミュニケーションツールとして浸透しているため、既存接点からの誘導先としては有効。
- Facebook:30代~50代がメインで、面識のある仕事関係や友達とのつながりで使われることが多い。したがって、最近では、若手向けのソーシャルリクルーティングに向かなくなってきた側面が強い。一方で、キャリア層などには有効。
自社の採用ターゲット、投稿するコンテンツの内容、運用可能かどうか……などの視点から、自社に合うSNSを選定することが大切です。
コンテンツのトーン
コンテンツのトーンとは、「どのような語り口で情報を発信するのか?」です。与えたい企業イメージ、また、媒体の特性から逆算して以下のように設定します。
- 30代~40代のリーダー人材に向けたコンテンツ:きちんとした丁寧語
- 学生に親近感を持ってもらうためのコンテンツ:フランクな言葉でもOK など
投稿コンテンツ
SNSの位置づけに応じて、以下のように、どのようなコンテンツを発信するか大枠を決めましょう。
- 自社を深く知ってもらうためのコンテンツ:業界No.1の理由、話題の新製品のこだわり、社長インタビュー など
- SNSで集客するためのコンテンツ:オフィスの雰囲気、自社で働く魅力、メンバーの人柄がわかるもの、仕事のやりがい など
投稿頻度
140文字までのテキスト情報であるTwitterと、キラキラした写真が必要なInstagram、動画が必要なYouTubeやTikTokなど、媒体によってコンテンツ作成に必要な手間は変わってきます。
すでに接点を持っている人向けの継続接点として位置付けるのであれば、そこまで高頻度に更新する必要はないかもしれません。
一方で、SNSで新規エントリーを集めようと考えるのであれば、媒体特性に応じた一定の投稿頻度が必要となります。
コメントなどの返信ルール
SNS運用を続けるには、一人の「中の人」にすべてのコミュニケーションを任せるのではなく、属人化を防ぐために、以下の運用方針をあらかじめ決めておくことが大切です。
- コメントを確認する頻度
- 返信のタイミング
- 返信する際の文章のスタンス
- トーン など
こうした返信ルールと複数人の担当者を決めておくことで、たとえば「中の人」が休みや出張中でも、迅速なコミュニケーションが可能になります。
気長に継続する
最初のうちは反応が薄くても、焦らずにコンテンツ作成・投稿を続けます。
そして、ある程度のフォロワーが増えてきたら、インプレッション数やエンゲージメント数を分析し、コンテンツの内容や投稿頻度、時間などを見直していきます。
新規接点の構築として考えるのであれば、2~3年かかると思って取り組んだほうがよいでしょう。
ソーシャルリクルーティングの注意点
ソーシャルリクルーティングを行なううえで最も注意すべきなのは、「炎上」です。特に匿名アカウントが多いTwitterは、炎上が多い傾向があります。
ソーシャルリクルーティングを成功させるには、炎上事例の収集・共有も大切になるでしょう。ただし、SNSの性質上、それでも炎上する可能性はあります。
炎上トラブル時に担当者がパニックになったり、おかしなコメントで火に油を注ぐ状態になったりするのを防ぐには、対応フローをあらかじめ決めておくことが大切です。
ソーシャルリクルーティングの事例
HRドクターを運営する株式会社ジェイックでは、複数チャネルでSNSマーケティングを実施しています。そのなかでも、ソーシャルリクルーティングは、Twitterが中心です。
具体的には、企業やサービスの公式アカウントに加えて、社員が実名でアカウント運用しています。
約20アカウントがアクティブに活動し、プロジェクト開始から2年でフォロワー数は10万人以上に到達しています。
Twitter経由での採用、また、採用プロセス内での情報発信ツールとしてTwitterを活用しています。
まとめ
ソーシャルリクルーティングとは、以下のようなSNS媒体を活用した採用方法です。
- TikTok
- YouTube
- LINE
- YOUTRUST
ソーシャルリクルーティングの場合、求人サイトやダイレクトリクルーティングなどとの併用でも相乗効果を期待できる点が魅力です。なお、ソーシャルリクルーティングには、以下3つのメリットがあります。
- 無料で始められる
- 自社に共感する人材からの応募が増える
- 転職潜在層にリーチできる
ソーシャルリクルーティングを成功させるには、以下5つのポイントを大切にする必要があります。
- 位置づけを決める
- 「求職者のニーズ×自社の魅力」 の視点でコンテンツを考える
- ソーシャルならではの双方向性を活かす
- 明確に求人を発信する
- 継続する
また、SNSの運用では、各サービスの特徴を押さえたうえで、コンテンツの内容やトーン、投稿頻度に気をつけることも大切です。
なお、HRドクターを運営する株式会社ジェイックでも、Twitterを中心にソーシャルリクルーティングを実施しています。
自社の採用力を高めたいと考える人は、自社に合うSNSを選ぶところからソーシャルリクルーティングを始めるとよいでしょう。