ダイレクトリクルーティングやリファラル採用が広まるなかで、中途採用にカジュアル面談を組み込む企業が多くなっています。
最近の新卒学生は、自由に話せる雰囲気をつくってくれる人事担当者に対して、好印象を抱く傾向があることもわかっています(マイナビ調べ)。
出典:マイナビ 2023年卒 学生就職モニター調査 7月の活動状況
こうした効果への期待から、近年では、ダイレクトリクルーティングの普及とともに、カジュアル面談を中途採用だけでなく新卒採用に組み込む企業も多くなりました。
本記事では、実際にカジュアル面談経由で採用している経験を踏まえて、カジュアル面談の概要と選考面接との違い、成功させるコツ、進行フローを確認します。また、企業側からの質問例や求職者からの想定される逆質問なども紹介しますので、参考になれば幸いです。
<目次>
カジュアル面談とは?
カジュアル面談とは、採用を検討する企業と求職者が“カジュアルな雰囲気のなかで面談を行ない、互いが知りたい情報を交換し合う場”のことです。
対面で実施する際、オフィスではなくカフェなどで行なうこともよくあります。また、近年では、オンラインのカジュアル面談も多く行なわれるようになりました。
カジュアル面談では、選考ではないため、求職者が参加する心理ハードルが低くなります。そのため、カジュアル面談には、以下のような効果・メリットがあります。
- まだ自社への志望度が高まっていない人でも参加してもらいやすい
- 選考ではない場で求職者の経歴や価値観・考え方を確認できる
- 求職者の不安を払拭できる
中途採用のプロセスでは、新卒採用と違って会社説明会を実施しないことも多いため、従来の中途採用は、求人サイトや紹介会社経由での応募後、いきなり“面接”から始まることも多くありました。
一方で、優秀層の採用などを狙って、ダイレクトリクルーティングやリファラル採用に取り組むようになると、まだ自社への志望度が高くない、そもそも転職意向が固まっていない層と接触することも増えてきます。接触する際に、いきなり“面接”を行なうと、参加や応募の心理ハードルが高くなり、敬遠されがちです。
また、志望度が高まっていない状態で参加してもらって、“不合格”通知をした場合、求職者の心象も悪くなります。とはいえ、中途採用の場合、頻繁に会社説明会を実施することも現実的ではないでしょう。
こうした背景から、近年では、カジュアル面談を実施して、面談のなかで個別の会社説明や意見交換などをするケースが多くなりました。
なお、従来の新卒採用では、会社説明会で求職者と初期接触することが一般的でした。一方で、近年では、新卒でもダイレクトリクルーティングの利用が増えたなかで、返信率を上げるための“特別感”として、説明会ではなくカジュアル面談を実施することが増えています。
カジュアル面談は、会社説明会の実施に比べると、個人対応になるなどの理由で手間はかかることになります。しかし、それでも、幹部候補層の採用や採用競争が激しいエンジニア採用、また、採用人数が少ないスタートアップ企業などで多く実施されています。
カジュアル面談と選考面接の違い
選考面接も、人材が企業を、企業が人材を、お互いに見極める場ですが、どうしても面接官が自社に合う人材かどうかを見極め“合否を決める場”という感覚が強くなります。
一方でカジュアル面談は、お互いの価値観や仕事のやり方を共有したり、自社の理解を深めてもらったりする“フラットな情報交換の場”にしやすい特徴があります。
カジュアル面談でも、お互いに話を聴きながら「自分(自社)に合っているか?」などの見極めをする側面はありますが、大前提として、面談の場で直接的に合否を決めるわけではありません。また、“選考ではない”という位置づけであるため、面接と比べてリラックスした場にしやすい利点があります。
なお、カジュアル面談では、履歴書・職務経歴書の受け渡しも行なわないこともよくあります。選考ではないため、服装も自由とするケースが多くなっています。
カジュアル面談の利用方法
カジュアル面談は、以下のシーンで発生することが多いです。
- 求人媒体やダイレクトリクルーティングなどのスカウト機能、SNSのメッセージ機能などを使い、企業側から求職者に打診する
- リファラル採用で紹介をもらった人との初期接点をカジュアル面談として、そこでお互いにマッチングを確認したうえで、求職者に選考に進むかを決めてもらう
- SNSや採用ブログなどで、「カジュアル面談を希望される方はDMください」などと企業側からアナウンスする など
カジュアル面談を成功させるコツ
カジュアル面談の効果性を高めるには、まず、相手に時間をもらっている感謝を忘れないことが大切です。
また、カジュアル面談は、あくまで対等の立場であり、お互いに見極める場でもあります。現段階では、自社への志望度は高まっていない、場合によっては転職意向も固まっていない状況であることを忘れないようにする必要もあるでしょう。
書いたコツの大切さは面接でも変わらないのですが、カジュアル面談の場合にはとくに重要です。
カジュアル面談の進行フロー
カジュアル面談は、相互理解の場であるため、求職者が知りたい話ができるメンバーをアサインするのが基本です。
とくに以下のような専門職種の場合、現場のリーダーなどに面談してもらったほうが、相互理解も進みやすくなるでしょう。理解を進めたうえで、本章で紹介する流れで面談を進めていくのが一般的です。
- デザイナーなどのクリエイティブ系職種
- エンジニアなどのIT職種
- その他、専門性が高い職種 など
アイスブレイクと自己紹介
カジュアル面談といっても、求職者側は多少緊張していることがよくあります。
そのため、まずは、企業側からアイスブレイクを兼ねて自己紹介するのがスムーズです。最初の5分~10分で相手の緊張をほぐし、良い雰囲気をつくることが、カジュアル面談を成功させるポイントになるでしょう。
お互いに専門職種である場合は、今までの簡単な経歴や普段の仕事などを簡単に話すことで、相手も質問しやすくなります。
選考ではないことの確認
なかには、カジュアル面談の意味がわかっていない求職者もいます。
求職者に“素の自分”を出してもらうためにも、自社の説明や質問に入る前に、「合否に関係のないカジュアル面談であること」を伝えておく必要があるでしょう。
基本的には、カジュアル面談を踏まえて、選考を希望するかを決めてもらうという流れが多いです。
必要に応じた企業や事業、仕事内容の説明
多くのカジュアル面談では、はじめに企業や事業の概略を話して、基本的な魅了付けをするのが一般的です。
ただし、カジュアル面談の場合、先述のとおり“フラットな情報交換の場”です。そのため、会社説明会ほど一方的に話すのではなく、自社の概略を伝えたあとは、求職者のニーズに応じて話す内容や質問は変えていくとよいでしょう。
質問を通じて求職者の興味度を確認する
求職者の状態(自社への関心度・就職/転職意向)によっても、効果的な魅了付けは変わってきます。
たとえば、ダイレクトリクルーティングでスカウトした優秀な人材とのカジュアル面談だと仮定します。スカウトした優秀人材の興味度が低い場合、まずは、関心を持ってもらったり、不安を解消したりする話が必要でしょう。また、そもそも相手が就職/転職意欲が固まっているかを確認する必要もあります。
一方で興味度が高い場合、相手のニーズに合わせた話をしながら、自社で働くイメージを含ませるような内容を伝え、志望度を高めていくとよいでしょう。
求職者からの逆質問に答える
カジュアル面談では、双方向コミュニケーションが大切です。そのため、企業側が一方的に質問や説明を続けるのではなく、求職者からの質問にも適宜答えていきます。
面接よりもフラットな形で、気になったことがあれば、随時質問してもらうような流れがスムーズでしょう。
選考プロセスを案内する
カジュアル面談の終盤で、求職者の興味度・志望度が良い形で高まっていれば、選考プロセスを案内します。
あまりに期間を空けてしまうと、求職者の温度は下がっていきます。そのため、カジュアル面談で興味度が良い形に高まっていれば、「ぜひとも応募してほしい」と面談の場で口説くことも有効でしょう。
ただ、相手が悩んでいる場合は、無理に押すと悪印象を与えることになります。相手が悩んでいるときには、「いつまでに返事をいただく形でどうでしょうか?」などと回答の納期を決めるのがおすすめです。
質問は相互理解を深めるチャンス
カジュアル面談の質問は、お互いを知るために行なうものです。そのため、選考面接のように「なぜ?なぜ?なぜ?」と、企業担当者が一つの話を一方的に掘り下げるのではなく、お互いに気になることを質問できる雰囲気をつくることが大切です。
そうすることで、求職者も自社のことをよく理解し、「目の前の人たちと一緒に働いてみたい」などの志望度を高めやすくなるでしょう。
企業側の質問例
カジュアル面談は“フラットな情報交換の場”であるため、普通の面接とは質問の内容・仕方が少し変わってきます。本章では、カジュアル面談で使える企業側の質問例とポイントを紹介しましょう。
経歴・スキル
●「今までもIT分野の営業をされていたんですか?」(中途)
●「大学では、どのような研究をされているのですか?」(新卒)
中途の場合、経歴の質問をすることで、仕事への価値観やキャリアの一貫性などが見えてくることもあります。ただし、堅い雰囲気になることを避けるために、ダイレクトリクルーティングサービスの登録内容などを確認していくようなスタンスで軽く質問していくのがおすすめです。
一方で新卒の場合、学部・学科や研究分野の話から、自社に興味を持ったきっかけ(研究との関連性)などに話を広げてもよいでしょう。
就職活動(転職活動)の状況
●「カジュアル面談は、弊社が最初ですか?」
自社への関心や志望度を把握する質問です。就職(転職)活動がまったく進んでいない、自社が初めてのカジュアル面談などの場合、業界分析も行なっていないかもしれません。行なっていない場合、自社の業界内での位置づけを話すのも一つです。
また、人によっては、そもそも転職意向が固まっていないケースもあります。注意しましょう。
自社に対する印象
●「弊社にどのようなイメージを持っていますか?」
自社への関心や志望度、企業分析が進んでいるかどうかを確認する質問です。
カジュアル面談の場合、直接的なきっかけは「メッセージをもらったから」であることが多いでしょう。ただ、それでも中途採用などであればある程度の企業情報は調べているでしょうし、カジュアル面談を辞退するのではなく受けた理由、興味を持った理由があるはずです。
企業選びで重視するポイント
●「企業を選ぶとき、大事にしていることはありますか?」
仕事への価値観や重要性、企業に何を求めているかを知る質問です。価値観などが一致するかどうかは、マッチングにおいて重要です。合わないかもしれない、と思った場合、率直に相手にフィードバックすることも大切です。
今後のキャリア志向
●「10年後、どのような仕事をしていたいですか?」
マネジメント志向なのか、スペシャリスト志向なのか、組織志向なのかを知る質問です。回答に対して、自社でスペシャリストのキャリアを実現している人の話をできれば、キャリアやポジションなどのイメージが膨らみ、志望度が上がりやすくなるでしょう。
想定される求職者からの質問例
カジュアル面談では、話しやすい雰囲気であることから、求職者からの質問も多くなりがちです。求職者の不安を解消し志望度を上げていくには、以下のような質問を想定し、明確な答えを出せるように準備をする必要があります。
今後の事業展開・展望
●「製品Aの第二弾は、いつリリースされますか?」
事業展開や展望は、企業秘密にあたる場合もあるでしょう。具体的な話を伝えられない場合は伝えられないと明かしたうえで、公開できる話はしっかりと伝えて、企業や事業の成長性を伝えていきましょう。
仕事内容
●「どういう形で役割分担していますか?」
●「他の仕事に携わる機会はありますか?」
自分が働くチーム形態や、チームのなかでの役割をイメージするための質問です。
とくに中途採用の場合は、質問されることが多いでしょう。プロデューサーが1人、ビジネスデザイナーが2人、エンジニアが内部2人・外注3人……などの内訳や人数を説明したうえで、「チームのなかでAさんには、利用者向けのプロダクトデザインをお願いしたいです」などの役割にも言及するのがおすすめです。
相手の質問意図を踏まえて、業務内容や実務、描けるキャリアなどを伝えて魅了付けします。ただし、オーバートークにならないように注意が必要です。新卒や未経験者であれば、不安を解消するために、オンボーディングの仕組みや教育制度の話をするのも有効でしょう。
働き方のスタイル
●「在宅勤務も可能ですか?」
就職先(転職先)を決めるうえで、柔軟な働き方を重視する人は多くなっています。
たとえば、仕事と子育ての両立を目指す女性には、ロールモデルの女性がいればロールモデルの人の話を紹介し、いない場合は、育休制度・時短制度・在宅勤務などを利用可能であると伝えましょう。
在宅勤務などの質問には、テレワークが可能かどうかを伝えたうえで、「どういう働き方を求めているか?」を逆質問するのもおすすめとなります。
描けるキャリア
単純にキャリアを知りたいだけの人と、面談をしている企業で自分の夢や目標を叶えられるかを確認する人(キャリア志向が高い人)がいます。
後者に対しては、「どのようなキャリアを目指されているのですか?」と逆質問をしましょう。そこで出てきた答えに対して、「弊社でプロジェクトマネージャーになった人は……」と詳しい話をしたり、目指す職種や資格を叶えるために自社でできるサポートを伝えたりするとよいでしょう。
配属部署の体制や雰囲気
働きやすい職場かどうかを確認する逆質問です。「上司とメンバー一緒にランチに行く」や「新人の提案も受け入れてもらいやすい」などの具体的なエピソードを伝えることで、求職者のなかに、自分も職場の組織に馴染めるようなポジティブなイメージが膨らんでいきます。
まとめ
カジュアル面談とは、採用活動をしている企業と求職者が“リラックスした雰囲気で面談を行ない、互いが知りたい情報を交換し合う場”のことです。最近では、ダイレクトリクルーティングやリファラル採用などを実施する企業で多く導入されるようになりました。
カジュアル面談は、選考面談のような“合否を決める場”ではありません。また、相手の志望度がまだ高まっていないことが普通です。中途の場合には、転職意向が固まっていないケースもあります。
そのため、カジュアル面談では、“フラットな情報交換の場”や“質問を通じて相互理解をする場”であることを意識しながら、魅了付けしていくことが大切です。
カジュアル面談では、求職者からの率直な質問も行なわれやすいです。質問への回答を通じて、求職者のキャリア志向や転職動機などを確認していき、志向や動機に応じた自社の魅力を伝えることが有効です。
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