最近、注目度が高まっている人材採用媒体のひとつに「逆求人サイト」があります。
本記事では、新たな採用手法として導入が進んでいる逆求人サイトの概要と注目を浴びている背景を踏まえた上で、逆求人サイトを利用するメリットとデメリット、また効果的に活用するためのコツを詳しく解説します。
<目次>
逆求人とは
一般的な求人(求人サイト)は、企業が提示した求人募集に対して求職者が応募する形式です。
これに対して、求職者がインターネットなどを通じて自己アピールを提示し、それを見た企業が直接求職者にアプローチする形式を「逆求人」と呼ぶことがあります。
ダイレクトリクルーティングサービスが、逆求人型のサイトに該当すると言えます。
採用イベントにおける、通常の“採用イベント(合同企業説明会)”と“逆求人イベント”と同じ構図です。
逆求人サイトが注目されている理由
逆求人サイトが注目されている理由としては、主に次の4つが挙げられます。
①少子化の中での人材確保
少子化が進むなかで、日本の労働生産人口は急激に減少傾向にあります。
大卒人数は大学進学率の上昇により減少には至っていませんが、優秀層を確保する難易度はどんどん高くなっています。
そうした流れの中で、従来型の「待つ」採用手法では優秀な人材の採用が難しくなってきたことが、企業側からアプローチする逆求人に注目が集まる大きな要因となっています。
②企業規模に関係なく採用できる
一般的な求人サイトでは、大手企業や有名企業には多くの応募がありますが、社名を知られていなかったり、安い求人プランを利用することが多い中堅中小企業やベンチャー企業への応募は少なく、思うように採用が進まないこともあります。
しかし、逆求人型のサイトであれば、企業側から興味ある人材に直接コンタクトできるので、企業規模に関わらず積極的な採用活動が可能です。
そして、送信するメッセージ等を工夫することによって、知名度や企業規模のハンディをひっくり返して採用に結びつけることもできます。
逆求人を利用する就活生や転職者は企業規模へのこだわりが少なく、自分の志向やスキルにマッチすることを重視して就職先を探す傾向が見られることも、逆求人に取り組む企業が増えている要因の一つになっています。
③様々な人材と出会える
従来型の採用では、企業側は基本的に「自社に興味・関心のある人材を待つ」というスタンスになっていました。
それに対して逆求人の場合は、自社への興味・関心が薄い人材にも積極的にアプローチできるため、これまでよりも多様な人材、求人サイトなどでは応募してもらえなかった人材と接点を持つことができます。
④求職者ニーズとの一致
逆求人型のサービスを利用する際、求職者は企業ごとにエントリーシート等を作成する必要はなく、逆人サイトのフォーマットに沿って、自己PRなどを登録するだけで使えます。
何度も書類を作って発送したり、応募企業の数だけ同じ文面を繰り返して打ち込んだりする手間がかからず、自分の経歴やPRを読んで興味を持ってくれた企業からオファーが来るという点が、多くの求職者のニーズとも一致しています。
逆求人サイトとは?
逆求人を行うためのWEBサイトのことで、「スカウト型就活サイト」「スカウト系就活サイト」また、一般的に「ダイレクトリクルーティング」と呼ばれています。
求職者がサイト上に履歴や職歴、自己PRを登録。採用企業は逆求人サイトのデータベースで採用ターゲットに沿ってスキルや経験などで検索し、マッチした相手(匿名状態)へメッセージやオファーを送れる仕組みになっています。
送られてきたメッセージを読んで興味を持った求職者が応募すれば、その時点で個人情報が企業側に公開されます。
その後は、会社説明会やカジュアル面談、面接などに進む形です。
逆求人サイトのメリット
企業側から見た逆求人サイトのメリットは下記の通りです。
①自社を知らない求職者にもアプローチできる
従来型の求人サイトの場合、知名度の低い企業の求人などスルーされてしまうことも多かったのですが、逆求人サイトなら気になる求職者に企業側からアプローチすることが可能です。
求職者側にとっても、自分に興味を持ってくれた企業からのオファーであるため、目を通してくれる可能性が高くなります。
②採用活動を効率化できる
逆求人サイトは企業側でスカウト発送などの工数が生じます。
しかし、自社で検索してメッセージを送った求職者だけが応募してくることになるので、企業側から見れば一次選考がすでに半分終わったような状態です。
質の高い母集団を作ることで、採用活動の効率がよくなります。
③欲しい人材にピンポイントでアプローチできる
求人募集して応募を待つ採用手法の場合、応募者の中からしか採用することができません。
当然、必ずしも欲しい人材が応募してくるとは限りませんし、逆に応募者の中には採用対象にならない人も含まれてきます。
しかし、逆求人サイトであれば、自社で欲しいと思える人材にピンポイントでアプローチすることができます。
逆求人サイトのデメリット
メリットの大きい逆求人ですが、デメリットついても見ていきましょう。
①運用工数がかかる
逆求人サイトは、自社で求職者データベースを検索してメッセージを送信する運用の手間が必要になります。
自社の魅力がしっかりと伝わるメッセージのテンプレートを用意したうえで、返信率を上げるためには求職者毎に文章をアレンジして送ることが必要です。
②自社を魅力的にアピールする必要がある
逆求人サイトを利用する場合でも優秀な人材を取り合う構図は変わらず、オファーをかけても断られてしまうことはあります。
企業に魅力を感じてもらえなければ、エントリーしてくれることはありません。
採用ターゲットに合わせた自社の魅力の伝え方を、しっかりと設計する必要があります。
③選考の手間が増える場合もある
逆求人サイトの利用企業が増えた中で、返信率を上げるために、選考の初回対応を「カジュアル面談」などにする企業も増えています。
カジュアル面談とは、選考ではなく面談という形で、企業説明や情報交換を行う場です。
カジュアル面談を用意することで求職者からは気軽に返信しやすく、また特別感を持ってもらうこともできますが、1対多での会社説明会を実施するよりも人事の工数は膨らんでいくことになります。
主な逆求人サイトの紹介
新卒採用向け、中途採用向けの主な逆求人サイトをご紹介します。
新卒向け
●Offer Box
約18.5万人の学生が登録する新卒向けダイレクトリクルーティングのNo.1サイト*です。
オファー開封率が89%と高く、事前に閲覧できる学生のプロフィールも項目が充実しており、動画による自己PRなど学生のパーソナリティが詳しく分かるような工夫がされています。
*新卒オファー型就活サイト<5年連続>学生利用率No.1 ※HR総研/ProFuture株式会社 2018〜2022年調査(2019〜2023年卒学生対象)
●キミスカ
登録者数15万人超の逆求人サイト。国公立GMARCH以上の学生が毎年ほぼ5割を占めています。
登録学生の詳細な情報が記載されているため絞り込みがしやすく、マッチ度の高い学生にだけアプローチできます。
また、スカウトを「ゴールドスカウト」「シルバースカウト」「ノーマルスカウト」の3段階に分けて送付できるため、学生側に企業の温度感を伝えられるのも大きな特長です。
●FutureFinder
HRドクターを運営する株式会社ジェイックが運営する学生登録数15万人の新卒向け逆求人サイトです。
学生の希望業界・職種、希望勤務地、大学・学部・専攻等だけでなく、学生の適性検査結果まで掛け合わせて検索することが可能です。
また、ダイレクトリクルーティングだけでなく、求人サイトとしての機能も持っており、自社で設定した人材像モデルと適性検査結果の一致度が高い学生に優先的に求人が表示されるというユニークな仕組みになっています。
●JOBRASS
就活生約8万人が登録しており、4割以上が上位校です。写真・PR・特徴・作品など、登録学生の多彩なプロフィール情報から求める学生を見つけることができます。
オファーの種類も、1通ずつプロフィールを見ながら送る「スペシャルオファー」、指定したターゲットに自動で送信する「マッチングオファー」、早期学生(大学1〜2年生)にアプローチする「インターンオファー」の3種類があります。
●dodaキャンパス
登録学生が多く、また、1・2年生にもアプローチが可能なことが特徴で早い段階から企業の魅力を伝える機会が作れます。
2021年には「 オリコン顧客満足度®調査 逆求人型就活サービス ランキング」で満足度総合 第1位を獲得しています。
●LogNavi
日本初の動画を軸にした就活専用アプリです。企業は最大10本の企業紹介動画を投稿できます。
動画を活用することで、文字だけでは表現できない実際の仕事内容や、会社の雰囲気などがより分かりやすく伝えられます。
また、学生の自己PR動画を見ることによって、文面だけでは分からない雰囲気や人柄などを把握した上でアプローチすることができます。
●intee
通過率10%の厳しい基準をクリアした学生だけが登録している、優秀層に特化したオファーサービスです。
学生はITプロカレッジと呼ばれる独自の教育プログラムの受講や、同サービスの担当者とのキャリア面談を経てからスカウトに応じています。
中途向け
●Bizreach
即戦力となるキャリア層を対象にした転職サービス。逆求人サイトやダイレクトリクルーティングサービスを世間に広めた存在です。
ハイキャリア層にフォーカスしており、若手でも年収500万円以上のキャリア案件が中心となっています。
●Green
IT業界にフォーカスした逆求人サイトです。企業側は約60万人の登録者データベースに無制限にアプローチできます。
20〜30代が登録者の約8割を占め、60以上のプログラム言語、100以上のスキルから人材検索が可能なため、エンジニアやクリエイターを採用したい企業向きです。
●Wantedly
個人ユーザー数300万人超の国内最大規模のビジネスSNS。
求職者と企業が知名度や年収ではなく、過去の経験や価値観などパーソナルな部分でつながりを持てる共感採用を得意としています。
ブログ投稿機能、求人掲載などの機能も充実。企業は無料で利用できますが、逆求人部分の機能を使うには有償オプションが必要となります。
逆求人サイトを使って採用を成功させるポイント
逆求人サイトを活用して採用活動を成功させるためのポイントは下記の通りです。
①求める人材を明確化する
まず重要なのは、ミスマッチを防ぐために自社が求める人材像を設定することです。
闇雲に多くの人材へオファーをしていると、採用活動が煩雑になるだけでなく、余分な手間がかかってしまいます。
②チェックすべき内容をよく理解する
逆求人サイトを利用する場合、求職者が登録した情報をよく見極める必要があります。
例えば、プロフィール内容や経歴の内容だけでなく、最終ログイン日や登録率についてもチェックが必要です。
なぜなら最終ログイン日が2週間以上も前であったり、プロフィールの登録率が低かったりする場合、活動の意欲が低い可能性が考えられるでしょう。
③送信テンプレートをしっかりと作成する
求職者に関心を持ってもらうためには自社の魅力を伝えられるスカウトメール原稿が欠かせません。
採用ターゲットを踏まえて、自社のどの部分を前面に打ち出すかをしっかり検討することが大切です。
④相手に合わせた文章をアレンジする
テンプレートをしっかりと作った上で、相手に合わせて文章をアレンジして送信することが大切です。
画一的なテンプレートを安易に一斉送信するだけでは、求職者にすぐに見透かされてしまって返信率は上がりません。
⑤日々運用する
データの検索⇒送信を日々しっかりと継続することが何より大切です。きちんと運用しなければ、逆求人サイトで結果を出すことは難しいでしょう。
⑥数字で効果検証する
サイトにもよりますが、送信したメッセージの開封率や返信率は数字で検証できるサービスが大半で、どのテンプレートを使うと返信率が高いか、どんな工夫をすると反応が良いかなどをしっかり検証して、PDCAを回すことが大切です。
⑦選考プロセスを工夫する
採用人数などによってどこまでできるかを検討する必要はありますが、前述した通り、カジュアル面談等を選考のスタートにすることがお勧めです。
いきなり会社説明会などに誘導すると応募へのハードルが高くなり、また特別感がなくなるので返信率も下がりがちとなります。
中堅・中小企業やベンチャー企業が行うキャリア採用であれば、事業責任者や経営者名義でメッセージを送り、カジュアル面談をオファーすることが有効です。
まとめ
企業側が登録人材に直接アプローチできる逆求人サイト(ダイレクトリクルーティング)は、意欲的な求職者に出会える可能性の高い求人メディアです。
知名度のない中堅中小企業やベンチャー企業にとっては、メッセージを送ることで、従来型の求人サイトでは応募してもらえなかった人材に自社の存在と魅力をアピールする場として活用できます。
使い方次第では採用活動にかかる手間やコストの削減にもつながります。
新卒向け・中途向けとサービスがありますので、記事内で紹介した主要求人サイトも参考に、自社で活用できるかぜひ検討してみてください。