新卒採用の担当者にとって、内定辞退をいかに減らすかは重要な課題です。
採用目標を持って活動している担当者からすると、採用の最終フェーズにおける内定後の辞退は、採用活動の計算を大きく狂わせてしまる困りごとです。
さらに近年では新卒の場合、「内定承諾後の辞退」も増加しており、どのように内定者をフォローしていくかは新卒採用における大事なポイントです。
内定承諾後の辞退増加、またオンライン採用が普及した中で、導入企業が増えているのがオンラインの内定者フォローツール、また付随して作成する内定者サイト・コミュニティです。
ツールをうまく使いこなせば、内定辞退を減らし、また、内定者フォローを効率化することができます。
記事では、内定者フォローツールの導入企業が増える背景や具体的なツールの機能、お勧めサービスや効果的な運用のポイントを紹介します。
<目次>
内定者フォローツールの近況
近年、今まで以上に内定者フォローに力を入れる企業が増えています。
とくに増えているのが内定者フォローツールを導入して、内定者サイト、オンラインコミュニティーを作ってケアするやり方です。
内定者フォローツールの具体的な機能紹介などをする前に、なぜ内定者フォローツールが必要とされているのかを確認しておきます。
内定者フォローの重要性
新卒採用は、中途採用と比べて、そもそも内定期間が長いという特徴があります。
中途採用であれば、内定承諾から入社は離職中も人材であれば1か月未満、在職中でも2~3か月程度です。
しかし、新卒採用になると、標準的なスケジュールで4年生6月に内定を出したとすると、翌年4月入社するまで10か月間もあります。
これだけ長く、内定者期間が続くわけですから、たとえ内定承諾をしたとしても、不安がわき上がってきてしまう人、そして、不安が高まるタイミングが必ず出てきます。
内定者が感じる不安の具体的な内容としては、「周囲の人とうまくやっていけるだろうか」や「自分の能力でやっていけるだろうか」といった不安があります。
また、入社日が近づくにつれて、「もっと自分に合った会社が、他にあったんじゃないだろうか」という気持ちになって落ち込んでしまうということもあります。
こうした内定者の不安は“内定者ブルー”とも呼ばれ、入社日が近づく、つまり徐々に“選択肢がなくなっていく瞬間”が近づくにつれて、以下のような感情や要素とのかけ合わせで生じるものです。
- ネット上の悪い口コミや周囲の意見
- 自分よりも“良さそうな会社”に内定を獲得した友人との会話
- 内定式や内定者イベントで接した同期や先輩との相性
- 社会人として働くことへの不安
- 就活を終えたに生じる時間の余裕
こうした感情や要素によって「本当にこの会社で良かったのか?」という答えのない不安が募り、就職活動を再開したり、内定辞退したりすることにつながります。
こうした不安は結婚式前の“マリッジブルー”と同じで、生じることはある種やむを得ない側面もあります。
しかし、その不安が閾値を超えて、就職活動の再開や内定辞退につながらないようにフォローすることが求められます。
新卒採用の早期化やオンライン採用による影響
内定者フォローの重要性が増している背景には、近年における3つのトレンドもあります。
ひとつ目は、内定承諾後の辞退増加です。一般に採用企業は、内定を出した応募者に対して内定承諾書の提出を求めることで、内定承諾の意思を確認してきました。
しかし、近年内定承諾書には法的拘束力はないという理解が就活生の間で浸透してきたことで、承諾後の辞退が増加する傾向にあります。
ふたつ目が、新卒採用の早期化です。
優秀な人材を早めに確保しようと採用活動が前倒しになっていった結果、現在は3年生のサマーインターンからの早期採用が増加しています。
早期採用となると、3年生の1~3月に内定承諾することも珍しくはなく、そうすると内定者期間は1年間を超えることになります。
当然、内定者期間が長くなれば、迷いが生じることも増えるでしょう。
最後が、コロナ禍によるオンライン採用の浸透です。2020年から感染対策の一環としてオンラインでの説明会や面接が急激に普及しました。
オンライン採用は感染対策以外にも、効率性や利便性という意味で採用企業と就活生にとってメリットがあります。
しかし、一方で今までの就職活動と比べると、会社とのリアルな接点は減少することになります。
結果として、志望度が上がりきっていなかったり、“この会社で働くイメージ”が十分わいていなかったりするまま内定承諾をしてしまっているケースが増え、これも内定後辞退の増加につながっています。
こうしたトレンドにより、近年では内定者フォローの重要性がこれまで以上に増してきています。
コロナ禍による導入増加
先ほども紹介した通り、新型コロナウイルスの感染防止施策、新卒採用の多くがオンライン化しました。
オンライン化の浸透は採用活動だけでなく、内定後のフォローにおいても同様です。とりわけ影響が大きかったのが、数十名以上の新卒採用をしている企業です。
感染リスクを抑えるため、対面での内定者イベントが出来なくなった結果、オンラインで内定者フォローを行う必要性が増したのです。
結果として、採用数が多い大手や中堅企業を中心に、内定者フォローツールの導入事例が増加しています。
コロナを機に導入が進んだオンライン採用やオンラインでの内定者フォローは、企業側にとってコスト削減や業務の効率化メリットがあります。
そのため、行動制限などが緩和された後も、オンラインでの採用活動、そして、オンラインでの内定者フォローは今後も継続すると考えられます。
内定者フォローツールの主な機能と活用のメリット・デメリット
内定者フォローツールには、内定者をサポートするための様々な機能が備わっています。
利用を検討するうえで、さまざまなツールに共通する主な機能や、ツールを利用するメリット・デメリットを押さえておきましょう。
主な機能
殆どの内定者フォローツールに共通して備わっているのは、メッセージ機能や掲示板機能といった採用担当者と内定者がやり取りするための機能があります。
反応が薄い内定者がいた場合にアラートを出して知らせてくれるという機能も多くのツールで備わっており、重点的なフォローに役立ちます。
また、課題の提出管理やファイルの共有、アンケートの作成や集計といった機能が備わったツールも多く、採用担当者の管理の手間を省くのに役立ちます。
内定者フォローツールを利用する3つのメリット
内定者フォローツールのメリットとしては、以下の3点があります。
メリット① 内定辞退の防止
当然ですが、導入目的であり、最大のメリットとなるのは内定辞退の防止です。
内定者フォローツールを使うことで、企業側からのこまめな声がけ、個人情報を管理したうえでの内定者のつながり形成、また、入社に向けた課題や情報提供、さらに内定者の不安や質問への回答などをスムーズに進めることができます。
当然、コミュニケーション頻度の増加や情報提供、また、ツールの機能を活用して内定者から担当者への質疑応答などが気軽にできれば、内定辞退の防止に効果を発揮するでしょう。
メリット② 採用活動を効率化できる
メッセージ機能やカレンダー機能といったものを使えば、内定者とのやり取りやスケジュール管理が楽になり、採用担当者の業務を効率化できるでしょう。
提出物管理機能を使えば、課題の提出もれなども防ぐこともできます。
内定者フォローツールの導入背景として紹介した通り、新卒採用が早期化・長期化し、サマーインターンの実施なども増える中で、人事担当者の業務負荷は大きくなる一方です。ツールを使って、業務を効率化することはとても大事です。
メリット③ 入社意欲を向上させることができる
入社前から内定者用のSNSを通して良好な人間関係を築けていれば、早く会っていっしょに仕事をしてみたいという意欲が高まります。
また、社会人としてやっていけるか不安だという内定者に対しても、ツール上での課題実施やオンライン学習などを通じて、成長実感の獲得や不安解消できれば、入社への意欲を高めることができます。
考慮すべき3つのデメリット、注意点
内定者フォローツールの導入を検討するうえでは、以下のような注意点は考慮しておく必要があります。
デメリット① 内定者への負担増加
内定者は、内定を得た後で卒業論文の執筆で忙しかったり、残された学生生活の中で今までできなかったことにチャンレンジしていたりします。
そのような中で、過剰な連絡や課題の提出を求めてしまうと活動を阻害してしまい、かえって入社意欲を削いでしまうリスクがあるため注意が必要です。
デメリット② コミュニケーション疲れになる可能性がある
SNSでのやり取りとなると、人間関係の距離感をつかむのが難しくて疲れてしまうという内定者も一定数でてきてしまいます。
やり取りの中でトラブルが起こってしまうと雰囲気が悪くなってしまい、入社意欲が削がれてしまうので、担当者としてはこのあたりにも注意が必要です。
デメリット③ 監視されていると感じてしまう
内定者の投稿や課題の提出状況などを見ることができるのは、採用担当者としては便利な機能です。
その一方で、内定者からみると、これらの機能は監視されているように感じてしまうことがあります。
内定者フォローツールを活用するうえでは、内定者におかしな印象を与えないように注意する必要があります。
タイプ別に見た内定者フォローツール
内定者フォローツールには、内定者に対してどのようなサポートを行うのかによって、いくつかのタイプがあります。
ここでは以下の4つに分類し、代表的なツールの特徴などについてご紹介していきます。
*なお記事内で言及している特徴や料金は、2023年1月時点でWeb上に公開されている情報です。最新のものについては、リンク先よりご確認ください。
SNS型
SNS型フォローツールは、オンライン上でのコミュニケーションを通して、企業と内定者だけでなく内定者同士のつながりも強くすることに主眼をおいたツールです。
いわゆるオープンなSNS、TwitterやFacebook、LINEといったものもありますが、情報管理や運用を考えると、紹介するような専用の内定者ツールは非常に優れています。
入社前に会社の雰囲気をつかんだり、同期との人間関係を構築したりできれば不安も解消し、入社後にスムーズに組織になじめるようになります。
SNS型の内定者フォローツールの代表的なものとして、以下の2つがあります。
●エブリONE
エブリONEは、エブリ株式会社が提供する内定者フォローツールです。
- 内定者SNSでは初のスマートフォンアプリ化
- サークル機能で地域ごと、男女別などグループ別の情報配信も可能
- 完全自社開発で強固なセキュリティ対策
- 共有ファイル共有リンク機能により、ファイルの共有が簡単にできる
初期導入費用は、無料
基本料金10,000円+利用料金300円/アカウント
●Chaku2 NEXT
URL: https://www.chaku2.jp/function/
Chaku2NEXTは株式会社サーフボードが提供する内定者フォローツールです。
- SNS投稿機能により、社内の雰囲気がつかみやすい
- お知らせ・アンケート機能がついていて、集計作業も簡単にできる
- 先輩社員の顔とプロフィールを確認でき、共通点のある先輩を見つけることで会社への関心を高めることができる
料金は要問合せ。無料トライアル可能
eラーニング型
eラーニング型フォローツールは、名前の通り、内定者向けの学習コンテンツの提供、課題提出などを通じて、内定者のスキル面での不安を解消する、また、入社後の戦力化に役立つものです。
代表的なeラーニング型フォローツールとしては、以下のようなものがあります。
●サイバックスUniv.
URL: https://www.cybaxuniv.jp/
サイバックスUniv.はリンクモンスター株式会社が提供する内定者フォローツールです。
- 定額で受け放題の会員制サービス
- 研修ポータルシステムで研修情報を一元管理
- 定額制と従量制で選べる料金体制
会費制サービス・・・入会金50,000円+月額60,000円~
従量制サービス・・・年会費12,000円+1,000円~/1コース・1人
●Schoo for Business
株式会社Schooが提供するeラーニングツールです。
- 国内最大級の更新数で、最先端の知見が学べる
- 講師だけでなく、他の受講者の質問やコメントからも学ぶことができる
- 受講完了・レポート提出を簡単に把握できる
初期費用は無料で、1IDあたり1500円/月で受け放題
SNSとeラーニングの混合型
入社前の雰囲気作りと研修を同時に行い、内定者を多角的にフォローしたいという場合には、SNSとeラーニングの混合型のツールもあります。
以下のようなツールです。
●エアリーフレッシャーズクラウド
EDGE株式会社が提供する内定者フォローツールです。
- 内定承諾前から入社後のOJTまで、時期に合わせた充実の機能
- 内定者への連絡業務時間が1/4になる、業務効率化につながる管理機能
- 金融機関や大学法人、公的機関にも利用されるセキュリティと運用基準
- はじめて利用する方でも安心のカスタマーサクセス担当
- 累計5,500社以上、40万人以上の利用実績に裏打ちされた使い勝手と運用ノウハウ
要問合せ
●内定者パック
URL: https://www.naiteisha.jp/
株式会社プロシーズが提供する内定者フォローツールです。
- 内定者向けeラーニングが受け放題
- 連絡、情報共有SNS、アプリなどコミュニケーションツールが豊富
- 内定ブルー解消やフォロー業務の効率化のための機能がそろっている
初期費用25,000円
内定者1人あたり5,000円~(利用期間:内定~翌年6月末)
●Any See
URL: https://sys-evo.co.jp/anysee/
システム・エボリューション株式会社が提供する内定者フォローツールです。
- 管理者側は、お知らせ通知で既読確認や開封状況を瞬時に把握できる
- 未読の内定者への再送信も簡単に操作できる
- 日程調整アンケートの集計結果から、イベントの日程などを簡単に調整できる
初期費用22,000円
年間費用5,500円/人
採用管理ツール(ATS)
採用活動全体の情報管理を行うのが採用管理ツール(ATS)です。
採用活動全体を管理するためのツールであり、内定者フォローに特化した機能はありませんが、内定者への一斉連絡や、ツールによってはLINEを使ったコミュニケーションなど、一般的な内定者フォローには十分な機能が搭載されています。
ATSとしては、例えば、以下のようなものがあります。
●採用一括かんりくん
URL: https://www.career-cloud.asia/
HRクラウド株式会社が提供する採用管理ツールです。
- LINEとの連携で通知を見てもらいやすくなり、返信もしてもらいやすくなる
- Zoomとも連携でき、システム内でWEB面談の日程を調整すればスムーズに面談を行える
- 全体の数字進捗状況と候補者ごとの採用選考進捗ステータスを一目で把握できる
無料お試し可能
機能プランで利用料金が決まるようになっており、要問合せ
●MOCHICA
URL: https://www.neo-career.co.jp/humanresource/mochica/
株式会社NEO CAREERが提供する管理ツールです。
- LINEを用いてメッセージを送るため、反応率が向上する
- オプションとしてメニュー画面のカスタマイズや送付画面の作成が可能
- 無料のチャットサポート体制があり、専任担当へチャットで質問・相談ができる
応募総数300人までのライトプランは、月額25,000円
応募総数に制限なしのスタンダードプランは、月額65,000円
内定者フォローツールの運用で注意したいポイント
内定者フォローツールを活用して、望むような効果が得られるようにするためには、注意しておきたいポイントがいくつかあります。
トラブルを回避し、企業と内定者が気持ちよく入社の日を迎えるためのポイントを3つご紹介します。
内定者同士の距離感
SNS型のフォローツールを使う場合は、特に人間関係のトラブルに気をつける必要があります。
内定者が普段使っているSNSのように、嫌な相手がいるからといってブロックするというわけにはいきません。
いずれ同じ会社で働くことになる仲間なわけですから、苦手だと感じる相手との距離感には、非常に気を遣ってしまいます。
また、チャットでのやり取りになると、微妙なニュアンスや雰囲気が伝わりづらいものです。
ちょっとした勘違いによって気持ちのすれ違いが起ってしまい、人間関係にひびが入ってしまうということにもなりかねません。
内定者が人間関係で疲れてしまっていないかということは、担当者が注意深く見ておく必要があります。
一方で、仲の良い内定者同士で集まってグループが形成されることもあります。
その場合に注意したいのが、そのグループの中の一人が内定辞退してしまうと、他のメンバーまで影響を受けて連鎖的に抜けられてしまうリスクがあるという点です。
連鎖的な内定辞退を防ぐためにも、内定者の中にグループができた際には、その中に何か問題を抱えた人がいないかどうかは注意が必要です。
ツール選びの基準
内定者フォローツールには、様々なタイプのものがあるため、自社の内定者に合った適切なものを選ぶということが重要になってきます。
内定者が入社後の人間関係や会社の雰囲気になじめるかといったことに不安を抱えているようであればSNS型、仕事についていけるかというスキル面での不安を抱えているようであればeラーニング型といった具合です。
ツールを選択する前に、自社の内定者はどんなことに不安を抱える傾向があるのか、どんなモチベーションやどんなことに動機を感じるタイプかということを把握しておきましょう。
その上で、人材育成方針や採用担当者として内定者には入社日までにどうなっていて欲しいのかといったイメージを加味し、適切なツールを選択しましょう。
エンゲージメントを高める工夫
内定者が入社前に抱えている、人間関係やスキル面での不安を解消するのは、内定者フォローツールの重要な役目です。
しかしながら、内定者の中には、「監視されているようで嫌だ」、「残りの大学生活を謳歌させて欲しい」という人もいますので、あまりコミュニケーションをとりすぎたり誤った使い方をしたりするとエンゲージメントを下げてしまう場合もあります。
内定者の不安を払拭しつつ、内定者フォローツールのデメリットが出てしまわないようにするためにも、最適な頻度で利用するよう心掛けましょう。
内定者の入社意欲を高めるためには、エンゲージメントを高めることが欠かせません。
まとめ
新卒採用の早期化に伴う内定者期間の長期化、また、コロナ禍によって対面での内定者イベントが開催を控えるようになった、さらにオンライン採用によって内定先で働く実感がわかないまま内定承諾してしまう内定者が増えたといったことを背景に、オンラインの内定者フォローツールを導入する企業が増えています。
内定者フォローツールは、非公開の内定者サイトなどを使いながら、コミュニケーションを深めるSNS型、また、オンライン学習や課題提出などの機能が充実したeラーニング型、両者をミックスした混合型、採用管理ツール(ATS)を内定者フォロー目的でも活用するといったパターンがあります。
自社の内定者の状況やタイプ、また、内定者期間に感じやすい不安なども考慮しながら、自社に適した内定者フォローツールを選びましょう。
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