スタートアップ企業が採用成功するために知っておきたいポイントとは?

スタートアップ企業が採用成功するために知っておきたいポイントとは?

スタートアップ企業にとって、採用活動は今後の社運を左右する最重要ミッションの1つです。まだ未成熟な事業と組織を拡大・成長させていくためには、事業の立ち上げ・運営と同じくらい、今後の事業や組織をけん引できる人材を確保する必要があります。

 

日本でも起業やスタートアップが少し身近なものとなり、事業拡大と採用に必要なキャッシュの調達もしやすくなってきたとはいえ、日本における大手志向・安定志向は相変わらず根強く、スタートアップが必要な人材を獲得するハードルは高いものがあります。

 

記事では、スタートアップ企業の採用をテーマに、スタートアップ企業で採用が難航する理由、スタートアップ企業に求められる人材の要素、スタートアップ企業にお勧めの採用手法を解説し、採用を成功させるために大切なポイントについても紹介します。

 

<目次>

スタートアップの採用活動が困難な理由

上述の通り、大手企業や有名企業と比べると、スタートアップ企業での採用は難易度が高いものがあります。最初にスタートアップの採用が難しい4つの理由を確認しておきます。

 

1.即戦力の人材が必要

事業の成長と拡大をどれだけ早く達成できるかが、スタートアップ企業の命運を握っています。したがって、ジョインして即、活躍できる即戦力人材を確保することがスタートアップ企業の採用では重要です。しかし、当然、実績やスキルを持った人材はどの企業も欲しがっており、即戦力の採用競争は熾烈を極めることになります。

 
加えて、前述の通り、日本では大手企業に就職・転職を希望する人が大半です。また、スタートアップを希望するようなチャレンジ精神が強い人は、「フリーランスでやる」「自分で起業する」といったケースも多いものです。そういった意味で、「スタートアップを希望しており、かつ即戦力」という希少性が高い人を探すという難題に挑むことになります。

 

2.採用活動に十分なリソースを割けない

事業拡大期のスタートアップは、少数精鋭で事業運営しているケースがほとんどです。まだ、組織が小さく、資金も十分でない中で採用活動のために人員を割くことは非常に困難です。

 
「Googleの創業者であるラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンと、操業して2人目に採用したのは“人事”であるヘザー・ケアンズだった」といった話はスタートアップ界隈では有名ですが、実際にここまで早期に思いきって採用のための人材を確保する、資金を投下することは簡単ではありません。限られた人員や予算の中で、優秀な人材を採用しにいかざるを得ない点も、スタートアップの採用が難しい理由のひとつです。

 

3.採用ノウハウが十分蓄積されていない

自社で活躍できる人材を安定して採用できるようになるまでは、ある程度の時間を掛けてノウハウや経験を蓄積する必要があります。しかし、スタートアップの場合は、文字通り、立ち上げから間もない企業がほとんどですから、どんな人材が自社で活躍できるのか?どういった選考プロセスで進めればいいのか?など、採用ポリシーや採用活動の仕組化が十分整ってはいない状況です。

 
大手企業のように採用ノウハウが十分蓄積されていないことから、スタートアップの採用活動では、期待する人材の採用、活躍が軌道に乗るまでにはどうしても試行錯誤を要するという課題も多くなる傾向にあります。

 

4.知名度や待遇にハンデがある

立ち上がって間もないスタートアップ企業にとって、大企業や老舗企業と比べたときの知名度も大きなハンデとなります。知名度がなければ、求人広告などを出しても求職者が詳細を見てくれる機会は少なくなります。

 
とくに安定志向や大手志向が根強い日本では、知名度の低さは、それだけで安心感や魅力に欠けると感じられることも多いものです。この点でも、スタートアップ企業が求人を募っても、思ったように応募人数が集まらない、スカウトしても知名度の高い企業のように興味を持ってもらえないといったことが起こりやすくなります。

 

 

スタートアップで活躍する人材に共通する3つの要素

スタートアップでは、メンバー一人ひとりが組織に与える影響が大きいからこそ、採用する人材に多くを期待し、採用の意思決定には慎重になることも多いものです。具体的に求めるスキルや経験は各社まちまちですが、本章ではスタートアップで活躍する人材の多くに共通している3つの要素を確認します。

 

1.成長意欲が高い

スタートアップ企業で、外部環境の変化や状況に応じて、どんどん施策を変えたり、新しいことに挑戦したりする必要があります。このような環境の中で業務を遂行し、目標にコミットするためには、社員一人ひとりの成長は欠かせません。スタートアップで活躍するためには、理想と現状のギャップを把握し、ギャップを埋めるために必要なスキルをどん欲に自己研鑽する成長意欲が備わっている必要があります。

 

2.自ら意思決定できる

スタートアップ企業にとって、圧倒的なスピードで事業の成長・拡大を実現していくことが生命線です。激しく変化する市場で、多くの競合も動いているでしょう。競合他社に遅れを取らないためには、早いスピードで意思決定することは不可欠です。楽天の“スピード!!スピード!!スピード!!”やヤフーが掲げていた“爆速”といった標語に共感を覚えるスタートアップ経営者の人は多いでしょう。

 
猛烈なスピードでの企業運営を支えるために必要なものは、メンバーひとりひとりの「意思決定」です。もちろん大きな意思決定は組織として決めていくことが大切ですが、同時にメンバーひとりひとりが現場で迅速に意思決定していくからこそ、スタートアップ企業は爆速で成長できるのです。

 
従って、スタートアップ企業では、自らの責任で意思決定できる、適切かつ前向きな判断ができる人が求められるものです。

 

3.企業理念、ミッションに共感している

会社のミッション、ビジョンに共感できるかどうかも、スタートアップの採用では非常に重要です。前述のとおり、スタートアップ企業では、自ら変化し自己成長することが求められます。朝令暮改も当たり前かもしれませんし、短期的には求められる貢献量に対して報酬が見合わないこともあるでしょう。このような厳しい環境を耐える原動力となるのは、仕事の価値や意味、会社のミッションやビジョンへの共感です。

 
大企業と比べると、先行きの不安や待遇面のハンデがあるスタートアップにおいて、前向きに仕事に取り組み続けるためにはミッション、ビジョンへの共感が必要不可欠です。スタートアップの採用では、能力や経験だけでなく、自社のミッション、ビジョンに共感する人材を確保する必要があります。

 

 

スタートアップの採用でお勧めの採用手法

前述したような難しががあるスタートアップ企業の採用活動で大手企業が同じように有名な求人媒体などを使っても、求職者に注目してもらうのは難しいでしょう。スタートアップ企業にとって効果的に人材を確保できる採用手法には、どのようなものがあるでしょうか。本章では、スタートアップ企業にとって効果の出やすい3つの採用手法を紹介します。

 

1.ダイレクトリクルーティング

知名度やブランドを持った大手企業であれば、特に採用で工夫をしなくても、多くの人材の応募を集めることができるでしょう。しかし、お伝えしたように、まだ知名度の無いスタートアップ企業の場合「待ちの姿勢」での採用活動は禁物です。知名度をハンデとしないためには企業側からアクションすることが肝心です。

 
そして、“待ち”ではなく、“攻め”の採用姿勢を取れる手法が、求職者へ直接アプローチする「ダイレクトリクルーティング」です。日本においても、中途であればBizReach、新卒であればOfferBoxやFutureFinderなどのダイレクトリクルーティングサービスがかなり浸透してきました。

 
ダイレクトリクルーティングでは、匿名データベースを検索して、会いたいと思う候補者に自社の想いを込めたメッセージを送れるため、知名度のハンデをひっくり返すことができます。

 
また、ダイレクトリクルーティングのもうひとつのメリットは、現在、就職・転職活動中の人だけでなく、転職顕在者層にもアピールできる点です。転職サイトに比べると、ダイレクトリクルーティングサービスの登録者には転職意欲がまだ低い人も混じっています。こうした層にアプローチして、カジュアル面談などを通じて自社に口説くというのも、スタートアップ企業の採用活動の定番です。

 
HRドクターでは、「新卒」「中途」それぞれの採用活動での、ダイレクトリクルーティングの基本と取り組みのコツをわかりやすく解説した記事を用意しているので、併せて参考にしてみてください。

2.リファラル採用

リファラル採用は、自社の社員から友人知人を紹介してもらう採用手法です。リファラル採用は、ほとんど費用が掛からず、また今いる社員からの紹介であるため、ミスマッチも生じづらい点が大きなメリットです。半面、計画的に採用できない、社員のネットワークにいない人は採用できないということが致命的な欠点です。

 
スタートアップ企業の初期においては、まずはリファラル採用を徹底的に推し進める、SNS活用(ソーシャルリクルーティング)なども含めて、社員のネットワークにいる人に当たり尽くす。これを日常的にやりながら、その上で、費用をかけて採用活動に取り組むというのがベースになるでしょう。

3.人材紹介サービス

人材紹介は、転職エージェントに欲しい人材の詳細を伝えて求職者を斡旋してもらうサービスです。希望する求職者が入社を承諾したタイミングで成功報酬の支払いが発生し、入社人材の理論年収(初年度想定年収)の30~35%を支払うこと一般的です。

 
採用単価は高額になりますが、「成果報酬で採用できる」「ピンポイントに欲しい人材と出会える」などの理由で、ある程度の資金を確保したうえで採用活動が急務となっているスタートアップ企業にはおすすめの採用手法です。

 
HRドクターでは、人材紹介会社をうまく使って採用を成功させるために知っておきたい「人材紹介会社の使い方」を分かり訳すまとめた資料も用意しているので、ぜひ参考にしてみてください。

 

スタートアップが採用を成功させる5つのポイント

ここまでスタートアップが採用活動をする上で直面しやすい課題、スタートアップ企業にお勧めの採用手法を解説しました。お伝えしたことを踏まえて、記事の最後では、スタートアップ企業が採用を成功させるために大切なポイントを5つお伝えします。

 

1.採用基準を明確にする

スタートアップに限った話ではありませんが、自社が求める人材をどのように見極めるかの基準を明確にすることは、採用活動において最初に大切になるポイントです。求める人材を明確にするうえでのポイントは以下の3つです。

 
1つ目は、まず必要なことは即戦力として活躍できるスキル・実績が何かを明確にすることです。例えば、営業職採用で「年間売上10億円を達成」という人がいたとしても、売上の大半はルート営業によるものかもしれません。しかしスタートアップにとってはむしろ、新規契約や販路開拓の方が重要なケースが多いでしょう。どんなスキル・実績であれば即戦力として活躍できるのかを明確にすることが大切です。現場の人も交えてしっかりと検討しましょう。

 
2つ目にポテンシャル採用の場合には、ポータブルスキルとコンピテンシーをしっかりと設定することです。採用力がないスタートアップ、とくに採用が急務となるフェーズでは、経験者採用だけにこだわらず未経験者を採用する必要に迫られる場合もあります。その際に、面接での印象だけを基準に採用してしまうと失敗するケースが多くなります。「どういったポータブルスキルやコンピテンシーがあれば、知識さえ身に付ければ活躍できるか」をしっかりと検討して設定しましょう。

 
3つ目に、カルチャーマッチの基準をしっかり設定することです。スタートアップと一概にいっても実施している事業や創業メンバーの経歴、企業のステージによってカルチャーはかなり異なってきます。仕組みが整っていないことが多いスタートアップ企業においてカルチャーが合わないと致命傷になりかねません。自社のカルチャーをしっかりと言語化して、採用基準にもカルチャーマッチの視点を取り入れましょう。

 

2.自社の成長フェーズに沿った採用戦略を考える

一口にスタートアップといっても、創業期から急成長期まで、さまざまな成長フェーズがあります。たとえば創業期であれば、創業者の右腕として何でもできる人材が必要です。一方で、組織が拡大フェーズに入れば、今後の事業成長を支えるため、マネジメントや仕組化に強い人材が必要になるでしょう。同時に、その下で働くプレイヤー層も必要となります。

 
このように、スタートアップの採用では、その時々で必要となる人材特性が大きく変わり、採用戦略も違ってきます。今現在のフェーズにおいて必要な人材がどんな人か、それに応じて採用戦略を検討することが大切です。

 

3.自社の今現在の課題も余すところなくオープンにする

繰り返しになりますが、大手企業と比べてスタートアップでは、待遇面や仕組み化が確立されていないなどの課題もたくさん存在しています。これらの課題を噓偽りなく伝え、応募者がそれらに納得した状態で入社してもらうことがスタートアップの採用では重要です。都合の悪い部分や現在の問題点を、たとえ意図せずにでも隠してしまえば、入社後のミスマッチや早期離職が発生しやすくなってしまうでしょう。

 
スタートアップにおける課題は、必ずしもネガティブなものばかりではなく、これからの伸びしろでもあります。求職者に、自社の現在の問題点、未熟な部分を伝える時は、「ぜひあなたと一緒にわが社も成長していきたい」という意思を伝えることがポイントです。このように伝えることで、求職者に今現在の課題に納得してもらい、当事者意識を持たせて入社させることができるでしょう。

 

4.全社を巻き込んだ採用活動にする

人的リソースの限られたスタートアップでは、何事も全員が主役で取り組むことが不可欠です。採用においても同様に、全社員を採用活動に巻き込むことを考えましょう。

 
分かりやすい例として、テックベンチャーがITエンジニアを採用するケースが挙げられます。CTOに面接同席してもらうのはもちろんのこと、他にも、採用サイトに「技術ブログ」を連載すれば、どのくらいのスキルや水準が求められるのか?入社後どんな業務が待っているのか?を求職者に具体的にPRできるでしょう。

 
事前に業務の細かいことなどもオープンにすることで、求職者も具体的に質問を用意できるので、面接も盛り上がるに違いありません。

 
もちろん、ただでさえやることが山積みのスタートアップでは、なかなか他のメンバーの協力を引き出すのは大変でしょう。しかし、上記のように、現場メンバーだからこそ協力できることはたくさんありますし、結果的に良い採用が実現できれば、全員に恩恵が生まれるのです。スタートアップの採用では社員を巻き込んで協力を引き出せるように動くことが大切です。

 

5.ストックオプションを活用する

スタートアップの採用では、ストックオプションを提示することも方法の1つのです。記事でも触れたように、スタートアップは待遇面では大手企業にはかなわないケースが多いでしょう。ストックオプションを活用することで、求職者に対するマイナス要素になりやすい待遇面の課題を解消できることもあるでしょう。

 

 

まとめ

スタートアップの採用活動は、即戦力として活躍してくる人材が求められる一方で、待遇面で大手にかなわなかったり、知名度がないため母集団を集められなかったりと難しさが付き物です。大手企業などと同じフィールドで戦うのではなく、ダイレクトリクルーティングやリファラル採用、人材紹介などを活用しながら採用活動に取り組むことが大切です。

 
また、採用活動においては、自社の魅力や可能性をアピールするだけでなく、自社の未整備な部分や課題もオープンにすることが大切です。求職者に「ぜひあなたと一緒にわが社も成長していきたい」など、ともに自社の未来を作っていきたいと言う意思を伝えることで、スタートアップならではの魅力を実感してもらうこともできるでしょう。

 
今回の記事が、日本の未来を作りだすスタートアップ企業が採用活動に取り組む参考になれば幸いです。

 

著者情報

稲本 太郎

株式会社ジェイック|シニアマネージャー

稲本 太郎

新卒で入社してから一貫して、新卒・中途の採用コンサルティング、キャリアカウンセリング、マネジメントを経験。計15年以上に渡って、採用支援の第一線で活躍している、社内でも有数の経験豊富な現役採用コンサルタントでありながら、自社採用の面接官も兼任。新人賞、トップセールス賞、MVT、社長賞、特別賞、ベストプラクティス最多ノミネートなど数々の受賞実績有り。

著書、登壇セミナー

・「厳選採用時代」にターゲットから選ばれるブランディングとは? ・明日から役立つ!「WEB面接での見極め精度を高めるポイント」 ・【23卒の採用戦略】新卒採用プロの20人から学んだ60時間を1時間に短縮】 ・インターン経由の採用を成功させるコツを徹底討論 ・ハイブリット採用が当たり前になる中でHR Techはどのように進化するのか?どう活用して新卒採用を進化させるべきなのか? ・成功企業がやっている!辞退を防ぐ採用プロセス ・学生から敬遠されがちな業界や小規模企業の採用成功事例から学ぶ新卒採用を成功させるポイント

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