求人広告は、いまも昔も採用活動で中心的なツールのひとつです。
たくさんの求人がある中で、自社の求人の魅力を伝え、来て欲しい人材に一人でも多く応募してもらえるかどうかは、求人広告の書き方次第といっても過言ではありません。
現在は求人方法も多様化し、求人サイトや求人誌を使わないケースも増えています。
しかし、いずれの媒体・方法を使うにしても「魅力的な求人内容を作成する」という求人広告の書き方に通ずるノウハウは採用したい人材に応募してもらううえで大切になります。
本記事では、求人広告を掲載するまでの流れや求人広告の失敗事例、書き方のポイント、またコンプライアンス違反をしないための確認点を解説します。
<目次>
- 求人広告を掲載するまでの流れ
- 応募が集まらない求人広告の特徴【失敗事例】
- 来て欲しい求職者に応募してもらうための、求人広告の書き方のポイント
- 法律で定められた求人広告への記載義務事項および記載禁止事項
- まとめ
求人広告を掲載するまでの流れ
記事では最初に、求人広告を掲載するまでのおおまかな流れを確認しておきます。
求人広告媒体の選定
求人広告を出すにあたっては、まず、どの媒体に広告を掲載するのかを決めるところからスタートします。
採用活動で利用できる求人広告には、多くの媒体・種類があり、媒体によって強みや特徴も様々です。
募集するのが新卒社員なのか、中途なのか? 正社員なのか、アルバイトなのか?…などによって使う媒体の種類は当然変わります。
その上で、自社の採用力、また、採用ターゲットを踏まえて効果が期待できる媒体を選定することが大切です。
下記の記事で、主要な求人広告媒体の特徴や選び方のコツを解説していますので、ご興味あればご覧ください。
問い合わせ・申し込み
掲載したい媒体が絞り込めたら、求人サイトや求人誌の運営企業に問い合わせをします。
有料媒体の場合、申し込みから実際に広告が掲載されるまで、ある程度の期間がかかります。それを見越して、余裕をもって早めに問い合わせることが必要です。
掲載料金やプランの詳細、キャンペーンのタイミングなども随時変わる可能性があります。
問い合わせの段階で、細かい掲載条件等についても念入りに確認しておきましょう。
求人原稿の作成
広告に掲載する原稿を用意します。応募が集まるかどうかは、求人広告の書き方がカギを握っています。
採用したい求職者が「応募したい」と思えるような内容を用意することが大切です。
原稿を用意するにあたっては、自分一人ですべての内容を考える必要はありません。
有料媒体であれば、求人広告に精通した担当者から応募が集まる原稿のアドバイスをもらえたり、広告に掲載する動画や写真撮影を実施してくれたりするケースも多いでしょう。
また、ある程度の金額になると、広告作成も代行してくれることが増えてきます。
来てほしい人材が応募したいと思えるような魅力的な求人広告を作るためには、求人広告の担当者のサポートを上手に活用することも大切です。
求人原稿の書き方のポイントは後程詳しく紹介します。
出来上がった原稿の確認、および入稿
出来上がった求人原稿は、入稿する前に少し時間をおいて確認する(一度“寝かせる”)、もしくは、他の人に見てもらうことをお勧めします。
一生懸命に書いていると、頭の中に原稿がしみ込んで、新鮮な目で見れず、誤字や脱字を見落としてしまったり、分かりにくい表現が入ってしまったりします。
また、事実と異なる表現や誤解される表現やコンプライアンス上の問題がないかもチェックして入稿しましょう。
入稿後は、求人媒体側で審査をしたのちに公開されます。
一度公開された後の修正が可能かどうか、また、修正のフローがどうなっているかは媒体や広告会社によって違うので、事前に確認しておくようにしましょう。
応募が集まらない求人広告の特徴【失敗事例】
費用と手間をかけて求人広告を作って掲載したのに「応募がない」「応募があっても、来て欲しい人材が全然いない」となってしまっては何の意味もありません。
本章では、反面教師として応募が集まらない求人広告の特徴を紹介します。
1.求人“広告”であることを忘れている
失敗の1つ目は、求人“広告”であることを忘れて、純粋な求人票として作ってしまうケースです。
ハローワークや学校求人などを中心に採用活動をしている中小企業などであるケースです。
ハローワークや学校求人などの場合、求人原稿の文字数制限が限られていますし、ハローワークやキャリアセンターの職員、カウンセラーなどを通じて求人紹介されることも多くなります。
こうした形に慣れていると、求人票としては必要な情報を網羅しており、仕事内容や待遇等もきちんと書かれているが、文章が事務的で、最低限の情報しか掲載されていないような求人になっているケースがあります。
ハローワークや大学求人と違い、求人サイトなどに掲載して応募されるためには、検索結果の一覧ページなどで表示される数十件、場合によっては数百件の求人情報から「選ばれる」ことが必要です。
従って、必要な情報を記載することに加えて、求人“広告”として応募者に興味を持ってもらう、魅了するということが、求人広告では必要です。
当たり前の話ですが、求人“広告”は、応募者に自社と仕事の魅力を伝えて応募の意思決定をしてもらうためのものです。それを前提に作成する必要があります。
2.ターゲットが明確でない
続いて期待する人材が集まらない求人広告でよくあるのが、誰に向けた広告なのかというターゲットが明確になっていないケースです。
「採用のターゲットは誰ですか?」という質問に対して、「優秀な学生に来て欲しい」「即戦力で働ける人が欲しい」といったぼんやりしたターゲット像しか返ってこないことは意外とよくあります。
マーケティングや広告作成における鉄則ですが、「誰に向けたメッセージなのか?」が曖昧になると、「何を伝えればいいか?」もあいまいになり、結果的に誰にも刺さらないメッセージになってしまうものです。
また、誰に向けた広告なのかが明確でないと、応募者のなかでミスマッチな人材が増えることにもなってしまいます。
3.安心して応募できるだけの情報が書かれていない
転職に関するアンケートによると、「95%の求職者は転職にリスクを感じている」という結果が出ています。
また、「どんな点にリスクを感じているか?」の質問では、「思っていた仕事内容と違う」と回答した人が66%と最多となっています。
【参考】エン・ジャパン「転職のリスク」意識調査(2020年4月)
大半の求職者にとって就職や転職は不安なことであり、その中でも最も不安なのが「仕事内容が思っていたものと違う」なのです。
だからこそ、応募者は応募前にしっかりと求人広告を見て、企業情報や仕事内容、待遇など念入りに確認したうえでエントリーを決めています。
もし応募するかどうか決断できるだけの情報が求人広告に掲載されていなければどうなるでしょうか。
多くの求職者は、「この会社のビジネスモデルはよく分からない」「もしかしたら、ブラックな職場じゃないだろうか」など不信感を抱いてしまい、「不安だからやめておこう」「ほかにも求人はたくさんあるし、リスクをとる必要はない」と考えて応募を躊躇してしまうでしょう。
つまり、求人広告を見て仕事内容や待遇などで不明瞭な部分がると、求職者が応募を見送ってしまう大きな要因となるのです。
「求職者が知りたい情報は何か?」「どんなことが書かれていれば安心して応募できるのか?」「応募者が知りたい情報が具体的に書かれているか?」など、求職者の気持ちになって考え、しっかりと求人広告に盛り込むことが大切です。
もちろん文字数の制限がありますので、すべてを盛り込むことは難しいでしょう。ただ、なるべく具体的に不安を解消することを念頭に置いて書きましょう。
4.内容を雑多に詰め込み過ぎて、決め手となる情報が伝わらない
上記とは逆に、あれもこれもと内容を詰め込み過ぎることも、応募を遠ざける要因になります。
採用担当者は往々にして、自社の求人が求職者の目に少しでも留まればと思うあまり、思いつく限りのPRポイントを盛り込んでしまうことがあります。
失敗のふたつめ「ターゲットが明確でない」にも通じますが、思いつく限りのPRポイントを盛り込んだ求人広告は、メッセージが曖昧となり、結果的に相手の心に響かなくなってしまいます。
PRポイントが多いこと自体は素晴らしい職場である証ですし、しっかりと盛り込むことは大切です。
ただし、「誰に向けたメッセージか?」という軸にそって、優先順位をつけて載せることは忘れないようにしましょう。
5.良いところしか書かれていない
中小企業やベンチャー企業、スタートアップなどの場合、会社の良いところ、魅力的なことしか書かれていない求人広告も、求職者が応募をためらう要因になりえます。
企業側は「たくさん応募が来て欲しい」「優秀な人材に応募して欲しい」と思い、自社の良い部分、求人の魅力的な部分だけを広告に載せたくなるものです。
もちろん応募してもらうためには、求人の魅力をしっかりと伝える必要があります。
ただ、どんな会社にも、良いところもあれば悪いところもあるものです。
とくに中小企業やベンチャー企業、スタートアップなどの場合には、やはり大手企業と比べて社内制度や組織の体制などで整っていない点もあるでしょう。
これは応募する人材側も承知していることです。
従って、魅力を伝えようと思って、過度に良いところだけを押し出しすぎると、応募者から逆に“うさん臭く”見えてしまうことがあります。
アルバイト求人などであれば、さほど気にする必要はないでしょうが、しかし、正社員の応募であれば、人材側も真剣・慎重に考えています。
だからこそ、会社の良いところや求人の魅力はしっかりと盛り込んだうえで、1割程度は「どういう部分が未整備か、それを入社して一緒に整備していってほしい」というメッセージを盛り込むことがお勧めです。
とくにWeb媒体などで記入できる文字数が多い場合、また自社の将来性やビジョンなどの想いなどを訴えるコンセプトの求人サイトなどの場合には、上記のように未整備の所なども見せておくことで、人材に「正直」や「誠実」といった印象を持ってもらうことができますし、採用ターゲットになり得る人材が応募してくれることにつながるでしょう。
来て欲しい求職者に応募してもらうための、求人広告の書き方のポイント
前章では、応募が集まらない求人広告の特徴を解説しました。
本章では、前章の内容も踏まえて、来て欲しい求職者に応募してもらうための求人広告の書き方のポイントをお伝えします。
1.タイトル・キャッチコピー
タイトルやキャッチコピーは、求職者を求人広告へと誘導する最初の入り口です。
とくに多くのWeb媒体の場合、応募者は職種や勤務地などの条件で検索 ⇒ 検索結果の一覧ページを見ながら、タイトルやキャッチコピーなどの検索結果画面で表示されている情報で比較して、興味を持った求人をクリックして、詳細情報を見るという流れになります。
したがって、「検索結果画面で表示される項目」というのは、求人情報のなかでも最も力を入れて作成すべき部分です。
タイトル・キャッチコピーを考えるうえでのポイントは、繰り返しになりますが、まず求人のターゲットを明確にすることです。
そのうえで、ターゲットとなる求職者にとって何が魅力かを考えることです。
何がメリットになるかは、実際に職場で働いているメンバーが分かっていることでしょう。
募集する人材と同じ職場、業務のメンバーに「なぜ応募したか?」「この仕事で何が良いか?」などを訊いてみると良いでしょう。
2.職種名
職種名は求職者が必ず見る情報です。どんな仕事なのか一目でわかるよう具体的に記載しましょう。
例えば「営業」の仕事でも、個人営業なのか法人営業かで大きく違いますし、法人営業でもルート営業なのか新規かで内容は異なるでしょう。
営業職の例でいえば、「食品用梱包材の法人営業(主に既存顧客を担当)」というように、誰を相手にどんな商品サービスを扱うのか、簡潔に仕事内容が伝わる表記にすることがおすすめです。
なお、最近はカタカナの職種名なども増えて、自社独自の職種名を使っているケースも増えました。
ただ、求人広告に関しては、応募者にとってイメージが湧く職種名で記載する方がお勧めです。
前章で紹介したように応募者は就職活動に「リスク」を感じる傾向にあります。人は知らない、分からないものに対しては不安をいだきます。
応募者にとって「何かよく分からない職種名」の求人にならないように注意が必要です。
3.仕事内容
仕事内容は求職者が応募を決めるうえで最も重視する情報であり、いわば求人広告のコア部分です。
待遇など他の条件がどんなに良い求人でも、やりたいと思える仕事でなければ応募しないでしょう。
求職者がやりたいと思える魅力的な仕事内容にするためには、「具体的に自分が働いている姿をイメージできる」よう記載することがポイントです。
書けるボリュームは出稿する媒体などによっても変わってきますが、
- 1)仕事内容が具体的にイメージできる
- 2)仕事のやりがいが分かる
- 3)自分が活躍できると感じられる
という3つのポイントを意識して作成しましょう。
仕事のやりがいを感じられる場面を紹介する、とあるメンバーの1日の動きをスケジュールに沿って紹介する、などの書き方はよく見かける定番です。
4.求める人物像
求める人物像の項目では、「どういう人材を求めているのか?」を記載します。
この項目は、求職者に求人が自身にマッチしているかの判断をしてもらい、ミスマッチも減らすための項目でもあります。
求める人物像は、定量的な経験やスキル面、また、定積的な部分、それぞれで、なるべく明確かつ具体的な表現にするとよいでしょう。
ただし、注意したいことは、定量的な条件、例えば、「法人営業経験3年以上」と書くと、当然、法人営業経験がない人、また、法人営業経験が2年の人などは一気に応募しにくくなります。
その条件が本当にMUSTの条件であり、応募者を絞り込みたい場合には、定量的な条件をしっかりと記載した方が良いですが、応募者を広げたい場合には、「必須経験」と「歓迎経験」などに区分して書いたり、「*上記の条件はあくまで目安です。上記に満たない人が入社して活躍しているケースも多々ありますので、ご興味あればご応募ください」といった注意書きを付記したりすると良いでしょう。
5.写真
現代の主流となっているWeb上の求人媒体では、写真を掲載できる場合が殆どです。
写真は求人検索結果などで表示されることも多いですし、求職者にとって、目に入りやすく文字だけでは表現しきれない情報を伝えてくれるツールになるので、写真選びは大切なポイントです。
求人広告に掲載する写真は、職場でスタッフが働いている場面などがお勧めです。
とくに若い世代にとっては、職場の雰囲気や人間関係は仕事内容と並んで気になる情報です。
求人広告に掲載された写真を通じて、「どんな人たちが働いているんだろう」「馴染めなかったらどうしよう」といった不安を和らげる効果が期待できるでしょう。
法律で定められた求人広告への記載義務事項および記載禁止事項
求人広告を作成するにあたっては、法律などで定められていることをしっかりと守って、コンプライアンス違反にならないように注意する必要があります。
有料の求人広告の場合などは求人サイト側でも確認してくれることが大半ですが、自社HPに掲載する場合には要注意です。
記事の最後では、法律で定められている、求人広告への記載義務事項および記載禁止事項について確認しておきます。
法律で記載が義務付けられている項目
求職者は、求人広告に記載された内容を見て応募するかどうかを判断しているため、求人広告には可能な限り正確な情報を記載することが求められます。
職業安定法では、以下の項目について求人票への記載を義務付けています。*
*職業安定法が求人票への記載を義務付けているのは、ハローワークや人材紹介会社を利用する場合です。
ハローワークなどを利用せず、求人サイトや求人誌などに求人広告を掲載する場合は、上記の項目を記載する法律上の必要性はないとされています。
しかし、求職者にとって有益な情報を提供するためにもこれらの項目は最低限記載することが推奨されています。
法律で記載が禁止されている条件
上記では、法律で求人票に記載が義務付けられている項目について解説しました。
反対に、求人票には法律で記載が禁止されている条件などもあるので以下で確認しておきましょう。
1)性別を限定するような表現
男女雇用機会均等法で、求人広告で性別を限定して募集することは禁止されいます。
したがって、求人情報には「女性歓迎」など、一方の性別のみを優遇するような表現はNGです。
また「看護婦」や「ウェイトレス」などいずれかの性別を連想させる名称の記載も違法であるとされています(現在では、例えば保母 → 保育士、看護婦 → 看護師といった形で名称変更も行われています)
(参照元)厚生労働省「男女均等な採用選考ルール」
2)年齢を制限する表現
平成19年10月の雇用対策法改正により、事業主は労働者の募集及び採用について、年齢に関わりなく均等な機会を与えなければならないとして、年齢制限の禁止が義務化されています。
したがって、求人票において募集要項に年齢制限を記載することは原則としてNGです。ただし、いくつかの例外事由もあります。詳細は参考ページ等をご覧ください。
(参照元)厚生労働省「募集・採用における年齢制限禁止について」
3)最低賃金以下の給与
最低賃金法で、使用者は最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないと定められています。
当然、求人票においても、最低賃金を下回る給与の記載は禁じられます。最低賃金は数年に一回改定されています。
また、ご存じの通り、都道府県によって異なります。
この10年ほどでは物価の上昇などもあり、都市部を中心に最低賃金はかなり上昇しています。
従って、「今まで採用していたのと違うエリアでパートを募集する」「久しぶりにアルバイトを募集する」といったケースでは、自社の待遇が最低賃金を上回っているかは確認したほうが安全です。
なお、最低賃金というと、アルバイトやパート社員の時給をイメージすることが多いですが、もちろん正社員も最低賃金の対象です。
(参照元)厚生労働省「最低賃金制度とは」
まとめ
記事では、求人広告の書き方をテーマに、掲載まで流れや求人広告の失敗事例、成果を上げる書き方のポイント、およびコンプライアンスに違反しないための注意点をお伝えしました。
求人広告を作る際は、求職者にとって明確でわかりやすいことに加え、応募するメリットがあること、自分が活躍できるイメージを持ってもらうこと、働くメリットなどを具体的にアピールすることが大切です。
他社の求人広告と比較しながら求職者にとってより訴求力のある内容にすることで、より多くのエントリーを促すこともできるでしょう。
本記事が、求人広告を作成する参考になれば幸いです。