近年広まっている採用方法のひとつが、企業から求職者へアプローチをするオファー型採用(逆求人・ダイレクトリクルーティング)です。
オファー型採用は他の採用方法に比べて企業の知名度などに左右されにくい、企業が欲しい人材にだけアプローチできるといったメリットがあり、スタートアップや中小企業、また、優秀層や特定学科などを採用したい企業を中心に広がっています。
本記事ではオファー型採用の概要やメリットを確認したうえで、オファー型採用を成功させるコツを紹介します。
<目次>
- オファー型採用とは?概要をサクッと解説
- オファー型採用が広がる3つの背景
- オファー型採用を利用するメリット5選
- オファー型採用のデメリット・注意点3選
- オファー型採用を成功させるポイント5選
- オファー型採用で人材を獲得するまでの流れ
- まとめ
オファー型採用とは?概要をサクッと解説
オファー型採用とは、採用企業が採用条件を満たしていそうな求職者にアプローチする採用手法のことです。
従来の「求職者から企業へアプローチする」手法とは流れが逆であることから「逆求人型採用」「ダイレクトリクルーティング」と呼ばれることもあります。
採用企業は、オファー型採用サービスを提供している企業と契約すると、当該企業に登録している求職者データベースを匿名状態で検索できます。そして、自社の採用ターゲットになりそうな人にメッセージ(オファー・スカウト)を送ってアプローチすることができるようになります。
受け取った求職者がメッセージ(オファー・スカウト)を承諾すると、個人情報が公開されて、通常の採用選考に進んでいく流れとなります。
オファー型採用が広がる3つの背景
オファー型採用はこの10年ほどで普及している採用手法です。オファー型採用が広まっている背景には以下のような事情があります。
1. 求職者の支持を集めている
2. 採用競争の激化
3. 採用活動を効率化できる
順番に見ていきましょう。
1.求職者の支持を集めている
オファー型採用が広まっている一番の理由は、求職者の中で支持を集めていることです。昔と違って、さまざまな求人サイトが増えて、また、人材紹介会社を利用することも一般的になった中で、求職者は負担が少ない方法、便利な方法を選ぶことになります。
新卒の場合、従来式の採用方法だと企業ごとにエントリーシートを作成することが負担となります。また、中途採用の場合は本業が忙しいために転職活動に時間を割けない、転職意欲が上がりきっていない層も一定比率います。
しかし、オファー型採用であれば、求職者は基本的な職歴や自己PRさえ登録しておけば、関心のある企業からオファーが来るのを待っていればいいことになりますいわゆる「受け身」の状態で就活に取り組めるので、従来の方法に比べると少ない負担で進められます。
近年では、会員登録者数が10万人を超える新卒向けのスカウト型サイトも複数登場しています。利用する求職者の増加は、利用企業の増加へとつながり、普及する大きな要因となっています。
2.採用競争の激化
採用競争が激化しているために、企業側が「攻め」の採用手法であるオファー型採用を導入しているという背景もあります。
日本では、少子化によって労働人口の減少がどんどん進んでいます。じつは、新卒に関しては、少子化の一方で大学進学率が上昇することで横ばい傾向となっていますが、それも限界となり、いよいよ大卒新卒も減少する流れが始まります。
このようにまだ大卒層に関しては、実質的な少子化は始まっていないのですが、一方で、18歳人口などの母集団がどんどん減少する中で大学進学率だけが上昇している状態ですので、“優秀層”や“相対的に人数が少ない理系人材”などの取り合いはどんどん激化しています。
結果として大半の企業にとっては求人広告を出して「待つ」だけでは、優秀な人材の獲得は困難となりつつあります。しかし、オファー型採用であれば、企業が能動的に優秀な人材へアプローチできるので、従来の採用方法よりも採用のチャンスがあります。
優秀な人材を獲得したい企業にとって能動的に使える手法であることも、オファー型採用が広まっている背景です。
3.採用活動を効率化できる
オファー型採用は従来の方法よりも採用活動を効率化できることも、広まっている背景です。
前述のとおり、オファー型採用では、採用企業はスカウトサービスの登録者データベースを検索して、自社の採用ターゲットとなりそうな求職者のプロフィール(匿名状態)を確認したうえで、メッセージを送ります。
従来の求人広告による採用方法では、募集要項に条件を記載したとしても該当しない人からも応募がきます。しかし、オファー型採用であれば条件をクリアした人にだけアプローチを送れるので、エントリー後のステップ率も高く、採用活動を効率化できるのです。
なお、オファー型採用と同じように「条件に該当する人にだけアプローチできる」採用手法として転職エージェントも該当します。しかし、転職エージェントの場合、工数は削減できる一方で、採用単価はどうしても高くなってしまいます。
オファー型採用であれば一定の運用工数はかかりますが、採用活動を効率化できるだけでなく人材紹介と比較すれば採用単価を下げられるため、優秀層を採用したい企業の利用が進んでいます。
オファー型採用を利用するメリット5選
オファー型採用を利用するメリットは大きく以下の5つです。
1. ターゲット人材に直接アプローチできる
2. 企業規模や知名度に左右されにくい
3. 効率良く採用活動ができる
4. 転職潜在層にもアプローチできる
5. 採用単価を下げることができる
ひとつずつ解説します。
1.ターゲット人材に直接アプローチできる
オファー型採用を利用する一番のメリットは、ターゲット人材に直接アプローチできることです。従来の採用方法では、企業側が希望する人物像を発信していたとしても、該当する人材から応募が来るとは限りません。
しかし、オファー型採用であれば企業の希望条件を満たした人材を絞り込んだ上で、アプローチできるようになります。そのため、理想とする人材を採用できる可能性を高められます。
2.企業規模や知名度に左右されにくい
企業規模や知名度に左右されにくいことも、オファー型採用のメリットの1つです。一般的に、求職者は大手企業や知名度の高い企業を優先して応募する傾向にあります。
そのため、知名度の低い中小企業やベンチャー企業などは総合型の求人サイトでは、どうしても求人を見てもらいづらく、応募者数を確保できないことが多いです。
しかし、オファー型採用であれば知名度の低い中小企業やベンチャー企業であっても、求職者に送るメッセージを工夫することで、自社の魅力をしっかり伝えることができます。
文章の工夫次第で不利な条件をひっくり返せるので、他の採用方法よりもいい人材を確保できる可能性があります。
3.効率良く採用活動ができる
オファー型採用の特徴は他の採用方法に比べると、効率よく進められることです。前述のとおり、オファー型採用では企業はターゲットとする人材にのみアプローチします。
従って、オファーに対して承諾があった人材=書類選考は通過した状態です。当然、その後の採用選考も効率的に進められますし、対象人数が減る分、一人ひとりに対するコミュニケーション量を増やす、丁寧な対応をすることも可能になるでしょう。
4.転職潜在層にもアプローチできる
オファー型採用は、他の採用方法、求人サイトや人材紹介などと比べて、転職潜在層の登録者が増える傾向にあります。
なぜなら、求職者目線では、オファー型採用のサービスは「登録するだけで、企業からのオファーが来る」ことになるので手間がかからず、自分の転職可能性を知りたい、どんな企業からオファーが来るかを見たいなど、転職潜在層の登録も増える傾向にあります。
中途採用の優秀層が転職活動を行う場合、転職ニーズが顕在化した後は、自分の人脈やエージェントなどですぐに転職が決まってしまうケースが多くなります。従って、“転職ニーズが顕在的な優秀層”というのは非常にアプローチが難しいものです。
しかし、オファー型採用であれば、まだ積極的に転職活動をしていない優秀層にアプローチして口説いて採用できる可能性も高まります。転職潜在層の獲得には時間や手間がかかりますが、従来の方法よりも優秀層にリーチできる可能性は高いでしょう。
5.採用単価を下げられる
オファー型採用のサービスは「年間の利用料+採用時の成果報酬」もしくは「年間の利用料(採用できる上限人数の設定あり)といった料金形態になっているサービスが多くなります。
定額の利用料が50~100万円程度、採用時の成果報酬が30~60万円程度/人というのは比較的多いでしょう。
上記を見ると高いように感じるかもしれませんが、優秀層の採用で使われてきた人材紹介の場合、新卒で70~120万円程度、中途であれば理論年収の30~35%(年収500万円であれば150万円)というのが一般的です。
人材紹介会社は、完全成果報酬が一般的で、かつ人が介在することで必然的に報酬相場が高くなってしまいます。
費用 | |
オファー型採用 | 年間50~100万円+30~60万円 |
人材紹介会社 | 年収500万円の人材で150万円(理論年収の30%) |
比較すると、上記のような形になりますので、人材紹介会社を使って複数名採用している企業であれば、オファー型採用を使うことで採用単価を下げられる可能性が高まります。
オファー型採用のデメリット・注意点3選
オファー型採用には多くのメリットがある一方で、デメリットや注意点もあります。オファー型採用の導入を検討する際は、以下3つのデメリットや注意点は押さえておきましょう。
1. 定額費用が掛かるサービスが多い
2. 運用工数がかかる
3. 大量採用は難しい
ひとつずつ解説します。
1.定額費用が掛かるサービスが多い
前述のとおり、オファー型の採用サービスは「定額のみ」もしくは「定額+成果報酬」という料金形態になっているサービスが多くなります。掲載に費用が掛かる求人広告などと同じで、仮に採用できなくても費用が発生することになります。
自社の年間での採用人数、また次の運用工数を社内で確保できるかといった点をきちんと考慮して、導入を検討しましょう。
2.運用工数がかかる
オファー型採用は転職エージェントよりも採用単価は低く抑えられる一方で、成果を出すためには運用工数がかかります。
発生する作業内容は、以下の通りです。
・候補者のリストアップ
・スカウトメールの作成・送信
・求職者への返信対応
とくに成果をあげるためには、候補者を検索して、プロフィールをチェック。スカウトメールをアレンジして送信するプロセスは、ほぼ毎日運用する必要があります。
この運用工数をきちんと確保できるかが成果をあげるうえでの肝となりますので、社内で確保する、非正規社員を採用する、外注するなどの選択肢を検討して、きちんと目途を立てておきましょう。
3.大量採用は難しい
オファー型採用は優秀層や特定の職種や経験者などを採用するのに向いている手法です。一方で、未経験者の大量採用などには、あまり向いている手法とはいえません。
未経験者の大量採用などであれば求人サイトへの掲載や人材紹介会社への依頼など、従来の採用方法がおすすめです。
オファー型採用を成功させるポイント5選
オファー型採用を上手く活用すれば、採用活動にかかる工数やコストを抑えながら、優秀な人材を確保できる可能性があります。
オファー型採用を運用する際は、以下5つのポイントを押さえておくことがおすすめです。
1. 採用基準を明確にする
2. アクティブな求職者を優先する
3. 日々運用する
4. カジュアル面談やオファーを設定する
5. PDCAを回す
順番に見ていきましょう。
1.検索基準を明確にする
オファー型採用を効率よく進める上で、検索基準を明確にしておくことが重要です。
オファー型採用では、定期的にサービス登録者のデータベースを検索し、アクティブな候補者へアプローチする必要があります。この時、検索基準が明確でないとプロフィールを確認する人数が膨大となり、運用負荷が増していくことになります。
オファー型採用の検索基準は、「採用基準のなかで、定量化でできる項目」ということになります。以下のようなものが該当することが多いでしょう。
・業界経験
・職種経験
・ツールの利用経験や利用可能言語など
・年収ゾーン
なお、絞り込み過ぎてしまうとアプローチできる求職者の数は少なくなってしまいます。採用市場の相場観も考えながら、「譲れない条件」と「あると嬉しい条件」の2つに分け、融通を利かせながら求職者の絞り込みを行いましょう。
なお、上記のように「定量的な条件で検索する」のがオファー型採用の一般的な運用です。
従って、オファー型採用は、定量的な検索条件を設定できる、そこで一次選考できる採用基準の人材を募集する際に向いているといえます。ただし、新卒の場合、定性的な条件:性格や価値観などで検索できるオファー型採用サービスもあります。
2.アクティブな求職者を優先する
オファー型採用ではアクティブな求職者を優先的にアプローチするとよいでしょうオファー型採用の求職者は潜在層が多いこともあり、プラットフォームのユーザー全員が毎日ログインしているわけではありません。
従って、ログイン頻度が少ないユーザーにアプローチしたとしても、返信はもらいにくいでしょう。メッセージを見てもらえる可能性を上げるためには、アクティブな会員を中心に絞り込みましょう。
アクティブ会員の目安は「最終ログインから3日以内」です。また、「サービスに登録したばかりのユーザー」もメッセージを見てもらえる可能性が高いので、おすすめです。
3.日々運用する
検索条件を設定したら、日々運用していくことが大切です。自社に興味・関心を持ってもらうために、積極的に求職者へアプローチしてみてください。
とくに「登録直後」や「ログイン直後」のユーザーは、利用熱が高い状態です。こうした求職者にアプローチするためにも、日々運用することが大切です。
4.カジュアル面談やオファーを設定する
オファー型採用は求職者から見ると受け身でスカウトをもらえる分、知らない会社の場合、選考に進むことに対して心理的なハードルが生じます。
したがって、オファー型採用では求職者にとって「応募するハードルが低い」と感じるプロセスを設定しておくことがおすすめです。求職者の心理的ハードルを下げるおすすめの方法は、選考へ進む前にカジュアル面談を設定することです。
また、書類選考や一次面接などを飛ばした「特別選考」「ファストパス」などのオファーを提供することも、オファー型採用だからこそできる有効な方法といえるでしょう。
5.PDCAを回す
オファー型採用を成功させる上では、PDCAをきちんと回していくことが大切です。一番主要なPDCAの要素は、送るメッセージの開封率と返信率です。
日々きちんと運用してメッセージを送ることは大前提として、送信するメッセージの件名を変えると開封率はどう変化するのか、メッセージの型やオファーによって返信率は異なるのか、といったことを試行して、数字も見ながら運用・改善していくことが大切です。
オファー型採用で人材を獲得するまでの流れ
オファー型採用で求職者へアプローチしてから採用するまでの流れは、以下の通りです。
1. オファー型採用サービスと契約する
2. 検索条件の設定
3. オファーメールのテンプレート作成
4. オファーメールの送信
5. 返信への対応
6. 選考進捗
順番に見ていきましょう。
1.オファー型採用サービスと契約する
まずはオファー型採用のサービスと契約をしましょう。
契約先を選ぶ際のポイントは、以下の4つです。
・サービスのコンセプト
・アクティブ会員数
・料金体系
オファー型サービスも種類が増えてきた中で、サービスに応じてコンセプトや利用者層が異なりますので、自社の求人、採用ターゲットに適したサービスを選びましょう。
2.検索条件の設定
前述したとおり、オファー型サービスを運用する際は、一定の条件で検索して、リストアップされた求職者のプロフィールを確認して送信するという流れになります。
新卒と中途、それぞれのサービスで検索できる条件は、基本的なものは共通していることが多いですが、サービス毎に異なる部分もあります。従って、サービスを契約時に検索条件をざっと確認したうえで、契約したらまず検索条件を設定しましょう(多くのサービスで、一度条件を設定すると、新機能登録者が発生した際にアラートを飛ばしたり、1clickで検索をできるようになったりします)
3.オファーメールのテンプレート作成
検索条件を設定したら、オファーメールのテンプレートを並行します。先行して違うオファー型サービスを使っていたようであれば、既に作ったものがあると思いますが、新規で利用する場合は、テンプレートを作成する必要があります。
オファー型採用のサービスにおいて、候補者へ送るメッセージは非常に重要です。テンプレートを作る際には、以下の要素を盛り込むことが基本となります。
・オファーした理由
・企業・事業紹介
・入社後のビジョン
・ターゲット人材にとっての自社の魅力
採用ターゲットの中にも何パターンかあると思いますので、テンプレートもいくつかのパターンを作ったうえで、個別の送信相手に合わせてカスタマイズして送るのが一般的です。
4.オファーメールの送信
いよいよ実際に送信するフェーズです。なお、送信後に返信がなかったとしても放置せず、間を空けて同じ人に複数回メッセージを送ることも有効です。採用基準に満たしている人材を検索してメッセージを送る運用を、日々きちんと運用することが大切です。
継続的に運用する場合は、定期的に送信パターン毎の開封率や返信率などを確認して、PDCAを回していきましょう。
5.返信への対応
求職者から返信が来たら、メッセージをやり取りしながら、カジュアル面談や説明会、選考などの場を設定しましょう。
返信対応は、スピーディな対応をすることが最も大切です。
また、敬語などの基本は押さえたうえで、多少カジュアルなやり取りを意識してみてもよいでしょう。かしこまりすぎた文面は求職者を身構えさせてしまい、距離を取られてしまう恐れがあります。
求職者がストレスを感じることなく返信できるように、内容とトンマナを工夫してみてください。
6.選考の進捗
実際にやり取りをしてみてよさそうだと感じた人には、選考に進んでもらいましょう。
なお、繰り返しになりますが、オファー型採用サービスのユーザーは求人サイトなどに比べると、そもそもの転職意欲が低い傾向にあります。返信直後は、自社への志望動機が高まっていないことも多いので、最初はカジュアル面談から入るのがおすすめです。
はじめは心理的なハードルが低いステップを用意する、そこで自社への志望度を高めて、選考への応募を決めてもらうという2ステップで進めていくことが有効です。
まとめ
オファー型採用は、逆求人やダイレクトリクルーティングとも呼ばれ、企業から求職者へアプローチする採用手法です。
求職者が「受け身」姿勢で転職活動を進められる、また企業側も能動的に採用ターゲットとなる人にアプローチできることから、この10年ほどで一気に普及した採用手法となります。
オファー型採用は、知名度の不利などをひっくり返せる、能動的に求職者にアプローチできる、採用ターゲットとなる求職者のみで母集団を作れる、人材紹介と比べると採用単価を落とせるなど、多くのメリットがあります。
一方で、サービス契約の段階で費用が掛かることが多く、また成果をだすためにはきちんと運用しなければならないといった注意点もあります。
オファー型採用のメリット・デメリットを理解して、自社の採用にうまく取り込みましょう。
なお、HRドクターを運用する株式会社ジェイックでは新卒向けのオファー型採用サービス「FutureFinder」を運営しています。
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