採用担当者の業務量は多く、また会社からも大きな期待値と責任を負わされる仕事です。しかし、採用業務はやりがいもあり楽しい仕事でもあります。
本記事では、採用担当によく生じる5つの辛い悩みと解決策を紹介、また採用担当者として成長するための方法を解説します。
<目次>
採用担当者の現実
採用担当の仕事は、傍から見ると大変面白い仕事にも見えるでしょう。求職者からすると、採用担当者が企業の顔であり華やかな仕事に映るかもしれません。
しかし、実際の仕事は煌びやかなものばかりではありません。まずは採用担当者にはどのような仕事があるのかを確認しておきます。
採用業務とは?
採用業務は、企業の成長のために必要不可欠な業務です。企業が成長するうえでは、人材の増員と強化を避けて通るわけはいきません。
そのため、会社からのプレッシャーも大きくなりがちです。
また、間接部門の業務としては珍しく、明確に目標数値(採用人数)がある、かつ、「採用できた人材の質」という定性的な評価部分もあるという特徴があります。
ただ単に採用すればいいというわけではなく、量と質の両方を求められる業務です。
採用手法の変化
数十年前と違って、採用手法は新たな手法も多く登場し、多様になっています。
選択肢が増えたと言えますし、その分、自社に適した手法を選択する難易度は上がっています。
また、運用が必要になるダイレクトリクルーティングやSNS採用、オウンドメディアリクルーティングなどの手法も増える中で、採用担当者の工数的な負荷も増えています。
昨年はうまくいった手法も、毎回うまくいくとは限りません。常に自社に適した採用手法、新たな採用手法を模索・調査する必要もあります。
採用業務は激務?
採用担当者が面接官も担当している場合、応募者側の都合も踏まえながら面接を調整していく必要があります。
新卒採用の場合、繁忙期の忙しさは尋常ではなく、1日に5,6面接することも当たり前にあったりします。
また、中途面接の場合、応募者が在職中だと面接が夜(先方の退社後)になったりすることもあります。
面接の日程は未来のスケジュールがなかなか決まりませんので、先々の予定がなかなか決めづらいという悩みも生じます。
また、スケジュールの合間にも多くの連絡があり、常に何かしらの対応を迫られることも多いでしょう。
これは営業などでも同じですが、採用担当の場合、応募者や人材紹介会社からの連絡にスピーディーに対応することが成果につながる部分もあります。
これらを大変ととるかどうかは個々人により差がありますが、決して楽な業務ではありません。
採用担当者のやりがい
採用担当者の業務は多忙ではありますが、やりがいも大いにあります。「企業は人なり」を支える大事な仕事です。
自分が採用した人が入社してくる、活躍するなどの瞬間を見ると大きな充実感がありますし、会社の成長を支えている実感が持てるでしょう。
また、中長期の採用計画は経営方針に基づくものであり会社の経営方針に触れたり、また、人物像のすり合わせや面接調整などを通じて幹部陣との接点も多い仕事です。
採用担当者が辛いと感じる5つの悩み
採用担当者の業務は大変な部分もありますが、やりがいもある仕事です。本章では、そんな採用担当者に生じがちな5つの悩みを紹介します。
採用目標へのプレッシャー
採用担当者には採用目標が与えられることが多いでしょう。
欠員の補充なのか、成長のための増員なのかによりコミットメントの度合いは変わりますが、それが大きなプレッシャーとなり、採用担当者を悩ませます。
また、採用活動の場合、前述の通り、採用人数という定量的な目標に加えて、採用した人材の質も問われます。
量的側面、質的側面の両方を求められるプレッシャーは採用担当者を疲弊させるものです。
業務量が多い
採用担当者には、面接会場の予約、面接官のスケジュール調整、面接、その後の対応など多くの業務を抱えており、日々業務に追われています。
また、面接日程、面接の合否など、社内外が絡む調整や確認業務が多いことも採用担当が抱える業務の特徴です。
また、新卒採用はピークが集中する業務になるため、新卒採用を担当するとピーク時の忙しさは非常に大きなものとなります。
昨今では、働き方改革の影響で残業などにも制限がかかっていることも多く、業務をスムーズに回すことがかなりの負荷がかかるでしょう。
なお、新卒採用の場合、早期作用を実施していると、前年度の採用活動が終わる前に、翌年のサマーインターンシップの企画や実施をする必要もあり、一息間もなくなっているのが現状です。
面接で合格が出ない
面接で合格が出ないことも採用担当者の大きなストレスです。
とくに自分が一次面接等で通過させた人が、二次面接等で合格が出ない場合、採用担当者は非常にもどかしい思いをすることもあります。
基本的に採用担当者に、採用の決裁権はありません。最終的な合否は幹部や経営者との面接で決まります。
採用基準がうまくすりあっていない感覚がある、自分としては合格すると思って設定した人が通過しないこともあります。
内定辞退への対策
昨今ではオンライン採用の影響、また内定承諾に法的拘束力がないことが知られた影響などで、新卒採用で内定辞退する学生は増えています。
もちろん中途採用でも内定辞退は生じます。
内定を出した応募者、内定承諾した学生が辞退すると、採用担当に生じる精神的なダメージはかなり大きなものです。
何よりそこまで使った工数が無駄になってしまい、ゼロからやり直しになるという精神的なストレスです。
さらに新卒の場合には、早期採用だと3年の3月などには内定承諾を獲得することも当たり前です。
そうすると、実際の入社まで1年以上あるわけで、工数的な負荷、入社まで気が抜けないストレスなども生じます。
同じことの繰り返しがほとんど
採用担当者の業務はある程度慣れてくると、同じことの繰り返しにも感じられてきます。
求人広告の作成、エージェントとの打ち合わせ、面接調整など、同じことばかりで飽きが生じてしまうこともあります。
同じ会社であれば、採用職種もある程度類似してきますので、自分の能力が向上している感覚なども得られにくい側面があります。
採用担当者の辛い悩みを解決するヒント
前述のように、採用担当者は様々な辛い悩みを抱えがちです。
本章では悩みを解決するヒントになりそうな情報を具体的なものから概念的なものまでいくつか紹介します。
採用管理ツールを導入する
採用人数が少ないうちは、応募者の管理などをエクセルで管理している会社も少なくないでしょう。
しかし、採用人数で10名、また応募者数で1000名を超えるような規模になってきた際には、採用管理ツールなどを導入して業務効率を上げていくことも有効です。
自社に合った採用管理ツールを活用することで、ルーチン業務や日程調整の自動化、コミュニケーション工数の削減などを実現できます。
ルーチン業務がなくなると、ミスを起こしやすいポイントも減りますし、捻出できた時間で別の業務に注力することができるでしょう。
採用プロセスを見直す
採用プロセスを見直し、無駄な業務を省くことも大切です。社内での検討はもちろん、外部の採用コンサルティング会社を使うことも選択肢の一つです。
意外と“今までずっとこうやってきたから”という理由で、今までどおりのやり方を踏襲している会社も少なくありません。
採用業務に限ったことではなく、失敗したくない、面倒くさいことをやりたくないなどの理由で、人は現状維持に陥りがちです。
もちろん、過去に実施されてきた採用プロセスにはそれなりの理由があるかも知れません。一方で、今の時代や状況に本当にマッチしているかは別問題です。
採用プロセスを見直す際は自社でも出来ますが、コンサルティング会社に依頼して客観的な意見やアドバイスをもらうと効率よく進めることも一案です。
採用を外注する
採用のアウトソーシングサービスを使う会社も今では珍しくありません。
自分が行なわなくてもいい業務は外注することで業務負担を軽減する、また新たな手法などに挑戦して、採用業務を進化させていくことが大切です。
アウトソーシングには、一部業務を依頼することも出来ますし、または採用業務全般を依頼することもできます。
とくに外資系などの場合、自社オフィスに常駐してもらい採用業務の大半をアウトソースしているケースもあります。
まずは自社でやらなくてもいい業務、例えば、応募者や紹介会社への連絡、日程調整などのオペレーション業務を依頼することでコア業務に集中できるようにすることが大切です。
採用管理ツールと同じように、アウトソーシングを活用することで、業務を軽減して、新たな業務に取り組む工数を生み出しましょう。
離職を減らすための社内改革を行なう
大量離職・大量採用の状態になってしまっている場合には、まず離職を減らすことが重要です。
入社後の早期離職を減らすことで採用の負荷を押さえることができます。
どうすれば離職を減らすことができるか、いつ頃の離職が多いか、部署や上司の偏りはあるか、退職理由はどうなっているかなどを分析して、入社後の教育担当、経営陣を巻き込んで受け入れ体制の整備を進めることが大切です。
離職を減らす基本的なポイントは大きく5つ、
- 1)採用から初期教育で「入社後ギャップ」を減らす、入社後ギャップへの心構えを形成する。
- 2)初期教育で、業務スキルのみならず、「組織社会化」の取り組みをきちんと実施する(組織社会化には、組織に馴染む、歴史や暗黙知、共通言語を知るといった要素が含まれます)。
- 3)OJTを現場に丸投げにしない。テンプレートなども準備して、きちんとOJT計画をつくり、必要あればOJT担当者の教育をする
- 4)人事面談やブラザーシスター制度などで、精神面や人間関係をフォローする仕組みを作る
- 5)管理職の教育をきちんとする(OJT終了後の離職は、管理職のマネジメントやヒューマンスキルに課題があることが多くなります)
中長期施策の実行
採用活動において全体の生産性を向上させるためには中長期的な施策が大切です。
SNS採用、リファラル採用、アルムナイ採用、オウンドメディアリクルーティングなどの費用がかからず、ミスマッチも生じにくい採用手法などが軌道に乗ってくると、採用活動の負荷は大きく変わってきます。
上記のような施策はいずれも中長期的なものになってきますので、少しずつ手を打っていくことが大切です。
採用担当者に必要な能力
最後に、さまざまな業務を担う採用担当者に必要な能力を紹介します。
個人としてのスキルアップや能力開発を意識して、強みを磨き上げたり、弱みの補い方を考えていったりすると、業務にも飽きがきにくくなります。
社内調整能力
採用担当者は、各部署の責任者との調整が求められます。必要な人材の要件や面接の依頼など、様々なことを調整しなくてはなりません。
日頃から各部署とコミュニケーションを取る必要がありますし、またスケジュール管理なども発生します。
細かな業務も数多くありますが、幹部や経営陣とのコミュニケーションが多いのも採用担当者の特徴です。
オペレーション的な調整業務から、徐々に中長期計画や事業方針を踏まえた人材要件や組織方針などのすり合わせに入っていけると良いでしょう。
「事業」と紐づいた採用ができるようになってくると幹部人事からの信頼も篤くなっていくものです。
オペレーション能力
採用活動には多くのオペレーティブな業務が発生します。
オペレーティブな業務は標準化して外注する方がよいのですが、採用活動全体を統括する上では、オペレーションをキッチリと見る力は必要です。
オペレーティブな業務は、決まったことをルールどおりに運営するため、正確性が求められます。また、同時にスピード感も求められることもあるでしょう。
初めは正確性を重視し、慣れてきたらスピードも上げていきましょう。
まずは、オペレーションを動かす能力、そして、徐々にオペレーションを設計できる能力を身に付けていきましょう。
営業力
採用における志望度向上、いわゆる「口説き」部分を、面接官などとどう分担するかにもよりますが、採用担当者には応募者の入社意思を固めるクロージング能力、その手前で志望度を高める営業力が求められます。
志望度を高めるためには、相手と信頼関係を築く、相手のニーズや関心事を引き出す、自社の魅力(取り扱い商品やサービス、待遇など)を伝える、相手の本音を感じ取るといったスキルが必要です。
これは営業職が行なっている業務とまったく同じです。採用力を高めるために、営業力を高めることも必要になります。
マーケティング力
採用活動におけるターゲット設定から自社の魅力抽出、母集団形成のフェーズは、事業活動におけるマーケティングとまったく同じです。
採用に役立つマーケティング力は、例えばSTP(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)、カスタマージャーニーの作成、チャネル設計などが挙げられます。
マーケティングのノウハウや技術を採用に活用することを採用マーケティングといい、昨今注目を集めている分野です。
少子化が進んで、優秀層が取り合いになっていく中で、採用担当者にとって重要度を増している力をいえるでしょう。
採用担当者として成長するために
最後に、採用担当者として成長する具体的な方法をお伝えします。
外部研修でスキルやノウハウを習得する
間接部門の業務というのは社内に同僚や事例が少なく、社内で学ぶことが難しい側面があります。
しかし、社外に目を向ければ、採用担当者のための研修も多く開催されています。
こうした外部研修に参加することで採用担当に求められる能力を習得することができるでしょう。
上述したように、採用業務をより深くしていくためには、営業力やマーケティング力も必要になります。
自身が足りないと感じる能力を把握し、積極的に研修へ参加し能力を高めていきましょう。
書籍で知識を習得
採用に関する書籍は、数多く出版されています。自分で足りないと思うスキルがあれば、書籍を通じて理解を促進できます。
書籍は短時間で全体像や事例などを知ることに役立ちますし、安価で学ぶこともできます。
書籍を読み、気になった著者のウェビナーや研修に参加するのもおススメです。
異業種交流会などへの参加
異業種交流会では様々な職種の人と会うことができます。
他社で実施されているレベルの高い取り組みなどに触れることで、活動がマンネリ化せず、新たな挑戦テーマを見つけることができるでしょう。
人事担当、採用担当者だけのコミュニティーもいくつかあります。
どのような業務でもいえますが、自社での仕事だけに注力していると視野が狭くなりがちです。
同じ業務でも他社と比較すると、新しい発見がありますし、違う業種でのやり方に触れていくと、面白い視点で物事を考えることができるようになるでしょう。
まとめ
本記事では、採用担当者にありがちな5つの悩みと解決策、そして、採用担当者として成長するための方法を紹介しました。
採用業務は、企業の成長のために必要不可欠、かつ重要な業務です。採用業務は外から見ると華やかで希望する人も多い仕事です。
もちろん大きなやりがいはありますが、一方で、地道であったり、多様な能力が求められる大変な仕事であったりする側面もあります。
本記事が、いま採用担当者として活躍している方はもちろん、これから採用担当者になりたいと考えている方にも参考になれば幸いです。