対象層によってはSNSがマスメディアを超えるような影響力を持つなかで、近年では、いわゆるSNS採用に挑戦する企業が増えるようになりました。
これからSNS採用にチャレンジする場合、さまざまなSNSがあるなかで、具体的に何から始めたら良いかわからない人もいるかもしれません。
そこで、手始めにおすすめしたいのが、Twitter採用です。
記事では、Twitter採用の概要とメリット・デメリットを確認します。
そのうえで、Twitter採用を成功させるポイントと、Twitter採用の事例としてHRドクターを運営する株式会社ジェイック自身のケースを紹介します。
<目次>
Twitter採用とは?
Twitter採用とは、Twitterを自社の採用活動に役立てることです。一般的には、以下のいずれか、もしくは両方の目的で実施されます。
- 母集団形成につなげる
- 自社を深く知ってもらう
近年の大学生が利用するSNSとTwitter採用
株式会社テスティーの調査結果では、2020年時点で大学生の88.1%がTwitterアカウントを所持していることがわかっています。
Twitterアカウントを持つ大学生のうち約9割は、1日1回以上の利用となっており、若年層のかなり多くがTwitterにアクセスしていることが分かります。
出典:【若年層リサーチ】テスティー、高校生・大学生男女を対象にTwitterキャンペーンに関する調査を実施
なお、近年では、大学生におけるInstagramの利用率が急速に高まっている(東京工科大学調べ)傾向もあります。
出典:新入生の「コミュニケーションツール」利用実態調査 | 2022年のプレスリリース | プレスリリース | 東京工科大学
したがって、SNS採用に取り組むうえではInstagramの運用に挑戦することも一つです。
しかし、Instagramは画像を中心としたSNSであり、適切な画像を定期的にアップすることが難しい、また拡散性が低いといった特徴があります。
その点、Twitterは短文が中心になるため運用しやすく、拡散性も高いという特徴があります。
また、Twitterには、上記のとおり若年層~ビジネスパーソンまで、幅広い世代に多くのユーザーが存在するため、「(自社の事業が)画像との相性が非常に良い」「女性向けにアピールしたい」「エリア性が高い」といった状況でなければ、Twitter採用から始めることをおすすめします。
採用にTwitterを活用するメリット
現在はさまざまな種類のSNSがあり、近年では、先述のとおり女性の若年層を中心にInstagram人気が高まっています。
また、この1、2年で、若年層には「特定ジャンルに関してはGoogleよりもまずInstagramで検索する」「LINEではなく、Instagramのメッセージがコミュニケーションインフラ」といった傾向が出てきているのも事実です。
しかし、上述したとおり、「画像との相性が非常に良い」といった特徴がなく、広い層にアピールしていきたい場合には、まずはTwitterを採用に活用するのがおすすめとなります。
本章では、Twitter活用のメリットをもう少し詳細に共有します。
費用がかからない
多くのSNSと同様、Twitterも無料で利用できるSNSです。
そのため、求人媒体に広告を出稿する・合同企業説明会に参加する・自社の採用サイトを製作する……といった従来の採用手法と比べて、コストがかかりません。
コストの余裕がないなかでも始められますし、継続的な運用も可能になります。
中小企業やスタートアップなどが、新たな施策として実施するうえで、費用面は大切なポイントです。
コンテンツ作成の負担が軽い
Twitterの魅力は、1投稿が上限140文字のテキストと非常に短いことです。
ブログ記事を定期的に書くとなれば、ネタや構成を考えるだけでも難しく、担当者の負担はかなり大きくなります。
また、InstagramやTikTokのように画像や動画を定期的に(ほぼ毎日)投稿することは、社内に素材などが多い状況でなければ、難易度はかなり高いでしょう。
その点、たった140文字で投稿できるTwitterには、気軽に負担なく運用できる魅力があります。
ユーザーが若年層~キャリア層まで幅広い
総務省・情報通信政策研究所の「令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」によると、Twitterは20代~50代までの幅広い年齢層に使われています。
- 20代:79.8%
- 30代:48.4%
- 40代:38.0%
- 50代:29.6%
出典:令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書
20代の利用率が突出して多いですが、30代などでも5割近い人が使っていることが分かります。
Twitterユーザーの幅広さは、新卒はもちろんのこと、第二新卒や中途採用にも活用できることをあらわします。
情報の拡散力が高い
Twitterは、ほかのSNSと比べて、情報の拡散力が非常に高いです。
そのため、自社を認知していない人に存在を知ってもらう、つまり母集団形成に使いやすい特徴があります。
一方で、InstagramやFacebookなどは拡散性が低く、新規の母集団形成にはあまり向いていません。
Twitterは、拡散性を利用することで、フォロワー増⇒自社との価値観の合う人材からのエントリー増……といった循環につながりやすくなる利点があります。
また、Twitterは情報のリアルタイム性も高いため、インターンシップや企業説明会の雰囲気を発信⇒新たなエントリーにつなげる……といった採用活動の流れのなかで活用しやすい側面もあります。
潜在層にリーチできる
SNSのユーザーは、就活生や求職者ばかりではありません。
求人サイトであれば、求職者、しかも、自社の業界や採用職種で検索してくれた人にしかリーチできません。
しかし、SNSであれば、自社の分野に興味がなかった人、自社を知らなかった人、就職・転職活動をしていない人にもリーチできます。
潜在層にリーチすることで、その人たちが就職・転職活動をするときに「おもしろい企業があったっけな……」と社名が浮かぶ状態(第一想起)、また、「この企業、Twitterで見たことあるな」と親近感を持ってもらえることは採用活動における大きな優位性につながるでしょう。
Twitter採用のデメリット
Twitter採用は多くのメリットがありますが、実施するうえでは、以下の点は注意・把握しておく必要があります。
母集団形成の即効性はない
中堅・中小企業がTwitterアカウントを開設した場合、大手企業ほどの認知度がないため、そう簡単にフォロワーが増えたり投稿内容がバズったりすることはありません。
フォロワーの反応を見ながらPDCAを回し、内容を微調整しながら投稿を継続することで、採用活動への効果が徐々にでてくるものです。
したがって、Twitter採用の場合、「今年の4月に始めて、今年度の母集団形成に間に合う」などの短期的な効果は期待しにくいです。
新規の接点構築に活用するのであれば、2~3年かかると思って取り組む必要があります。
炎上リスクがある
Twitterは、SNSのなかでも特に炎上リスクが高いメディアです。
Twitterの場合、匿名で運用しているユーザーも多く、また、140文字という文字数制限のなかで意図を伝えられず誤解を生むようなケースも多い傾向があります。
特に採用分野は、「労働者の権利」といった意識や社会問題に抵触しやすく、炎上につながりやすいカテゴリでもあります。
そのため、Twitter採用をする場合には、どういったケースで炎上するのかをしっかりと見て、注意することが大切です。
炎上に気をつけて投稿をしていても、SNSの性質上、想定外の炎上につながることもあるかもしれません。
Twitter採用を始めるなら、炎上事例の収集・共有は必須ですし、万が一炎上が起きたときの対応フローも早い段階で決めておく必要があるでしょう。
Twitter採用を成功させるポイント
採用活動にTwitterを役立てるには、以下のポイントを大切にしながらコンテンツの制作・運用を続ける必要があります。
担当者の顔やキャラを見せる
Twitter採用の場合、いわゆる「中の人」である担当者の顔やキャラクターをあえて見せることで、企業アカウントの無機質なイメージから脱却することが有効です。
「中の人」の顔や良い人柄がわかると、ファン(フォロワー)の親近感・共感も高まり、投稿へのいいね!やリツイートなどもされやすくなるでしょう。
企業アカウントではなく、採用人事や経営陣の個人アカウントとして運用すると、さらに親近感は湧きやすくなります。
ただし、個人名義でアカウント運用したり、「中の人」を前に出してTwitter運用したりする場合、異動時や離職後の対応が難しくなる側面もありますので、そのあたりのバランスや自社の状況を踏まえた運用が必要です。
投稿頻度を高く維持する
アメリカの心理学者・ロバート・ザイアンスの「単純接触効果(ザイアンス効果)」というものがあります。
単純接触効果とは、繰り返し接触することで、徐々に好意や良い感情が高まるという法則です。
この法則をうまく活用するなら、まずは、良いイメージ、前向きな印象とともに「企業名」に多く触れてもらうようなことを目指したいものです。
そのためには、最低でも1日1投稿は必須になります。
内容に困ったときは、過去の投稿をリツイートしたり、リライト(内容を微調整)して新規投稿したりすることも有効です。
双方向性を意識する
Twitter採用では、一方的に採用情報を投稿し続けるのではなく、フォロワーと双方向でコミュニケーションを図ることも重要です。
いわゆる「中の人」が休みのときでもほかのメンバーが対応できるようするために、「フランクな言葉遣いにする」「リプライは◯往復まで」などの基本ルールを決めておくとよいでしょう。
採用サイトと連携させる
Twitter採用を目的とする場合、Twitterのフォロワーが増えて、バズれば良いわけではありません。
採用活動にTwitterを役立てるには、自社のことを詳しく紹介している採用サイトに訪問してもらったり、採用サイトや求人サイトからエントリーをしてもらったりすることが大切です。
したがって、Twitter採用を始めるときには、Twitter運用ばかりに力を入れるのではなく、連携させる採用サイトなどの整備やエントリーしやすい仕組みづくりも必要です。
また、既存応募者との接触頻度UPや企業理解につなげるのであれば、どこでTwitterアカウントの案内をするかなどの設計も大切になります。
つまり、前後の導線をしっかりと意識することが重要なのです。
全社的に取り組む
Twitter採用などのソーシャルリクルーティングは、中の人である人事担当者だけが頑張ってもうまくいかないことも多いです。
一人で運用していると孤独感が生じることもありますし、1つのアカウントで認知を劇的に高めていくことは難しいでしょう。
そのため、Twitter採用を成功させるには、複数のアカウントを運用することが重要です。
特に経営陣にもTwitterアカウントを開設してもらい、日々投稿してもらうことも大切になります。
自社の魅力をしっかり訴求する
採用アカウントの場合、多くのユーザーに自社の魅力を伝え、カルチャーフィットする求職者とつながり、応募してもらうことが目的です。
フォロワー増や接触頻度の向上、フォロワーとの交流や親近感アップという意味で、「今日は暑いですね!熱中症にご注意ください!」などの一般的な投稿を入れること自体は問題ありませんが、それだけでは、採用アカウントとしては機能しません。
Twitter採用では、自社の魅力を訴求し採用につなげるための投稿も定期的に実施する必要があります。
その際は、「求職者のニーズ×自社の魅力」の視点を意識しましょう。
140文字で伝えきれない場合は、採用ブログの記事や採用動画などへのリンクを貼り付けて誘導してもよいでしょう。
求人情報をしっかり投稿する
Twitter運用していると、フォロワー数の増加や交流に意識がいきがちになります。
しかし、定期的に求人情報などを発信し、エントリーに誘導することも大切です。受け皿となる自社の採用ページや応募フォームなども準備しておきましょう。
Twitter採用の事例【JAICの場合】
HRドクターの運営会社である株式会社ジェイックでは、Twitter採用を中心とするソーシャルリクルーティングに力を入れています。
Twitter経由での採用、また、採用プロセス内での情報発信ツールとしての活用が主です。
企業・サービスの公式アカウントに加えて、社員が実名でアカウント運用を行ない、約20アカウントがアクティブに活動中です。
プロジェクト開始から2年でフォロワー数は10万人以上に達しました。
定期的に社内勉強会なども行ない、継続への働きかけやノウハウ共有、交流なども実施しています。
また、Twitter運用でいくつかの条件をクリアした社員には、Twitter手当も支給しています。
こうした活動を通じて、月間のインプレッションは数100万、採用だけなく、仕事の問い合わせなどもコンスタントに生まれています。
まとめ
Twitter採用とは、自社の採用活動にTwitterを役立てることです。Twitter採用には、以下のメリットがあります。
- 費用がかからない
- コンテンツ作成の負担が軽い
- ユーザーが若年層~キャリア層まで幅広い
- 情報の拡散力が高い
- 潜在層にリーチできる
ただし、Twitter採用に取り組むうえでは、母集団形成の即効性はない、炎上リスクがあるといった注意点も押さえておく必要があります。
また、Twitter採用を成功させるには、以下のポイントを意識しておくとよいでしょう。
- 担当者の顔やキャラを見せる
- 投稿頻度を高く維持する
- 双方向性を意識する
- 採用サイトと連携させる
- 全社的に取り組む
- 自社の魅力をしっかり訴求する
- 求人情報をしっかり投稿する
HRドクターを運営する株式会社ジェイックでは、全社的なプロジェクトとして取り組み、2年でフォロワー数10万人以上、月間のインプレッション数100万、採用だけでなく、仕事の問い合わせなどにもつながる状態となっています。
時間はかかりますが、ぜひ継続して取り組んでみてください。