若手社員がコミュニケーション力を高め、周囲の人との関係性を良くするポイント

更新:2023/11/13

作成:2020/08/18

東宮 美樹

東宮 美樹

株式会社ジェイック 執行役員

若手社員がコミュニケーション力を高める 周囲の人との関係性を良くするポイント

若手社員のコミュニケーション力を高めたい…こんな悩みを持つ上司や人事の方は多いかもしれません。コミュニケーションは、社内においても、社外においても、人間関係を作り、成果を上げるために欠かせないスキルです。

 

しかし、「話す」と「聞く」、意識せずとも出来る当たり前のことだからこそ、教えるのが難しい側面もあります。記事では、若手社員にとってのコミュニケーション力の重要性や、コミュニケーションを通じて信頼関係を育む方法、コミュニケーション力を高めるポイントを解説します。

 

<目次>

良いコミュニケーションと悪いコミュニケーションの違いとは?

人間関係の始まりは全てにおいて、コミュニケーションからスタートします。挨拶、会話、雑談等、さまざまなコミュニケーションから人間関係が生まれていきます。コミュニケーションの取り方一つで、人間関係が非常に良くなることもあれば、ダメにしてしまうこともあります。違いは何でしょうか。

 

 

悪いコミュニケーションは「プレゼンテーション」

良いコミュニケーションと悪いコミュニケーションの違いを考えるうえで、「プレゼンテーション」と「会話」の違いについて考えてみます。プレゼンテーションは、発表者と聞き手がいて、基本は一方的に発表者が話します。しかし、会話においては、話し手と聞き手は変幻自在に入れ変わり、お互いにやり取りをしながら成立します。

 

実は、このプレゼンテーションと会話の違いが、「良いコミュニケーション」を考えるヒントになります。ずばり、人間関係をダメしてしまう「悪いコミュニケーション」と、人間関係を良好にする「良いコミュニケーション」の違いは、「相手との会話」を考えておこなっているかなのです。

 

もし、「若手社員の人間関係がうまくいってない」と感じるケースが多いのならば、コミュニケーションが一人よがりになっていないかを確認するといいでしょう。人間関係を構築しながら、何かを伝えるためには、相手の言い分や相手が伝えたいことも意識することが大切です。さもないと、一方的な会話となり、相手はあなたと関係を築こうとは思えません。少し例で説明しましょう。

 

Aさん『この〇〇については、なかなかうまくできていると思うんだよね』

Bさん『私はそこまでだとは思わないですね』

 

このやり取りがもし何度か続いたとしたら、Aさんは「Bさんに自分の意見を否定され続けた」感覚になるでしょう。自分が正しいという事を周囲の人に認めてもらいたいという気持ちが強い人は、自分とは違う意見の人をなんとか納得させようと躍起になりがちです。これでは、最終的に相手がもし納得したとしても、気持ちの良い会話になることはないでしょう。

 

 

良いコミュニケーションは「相手」への意識から生まれる

先ほどの会話を違うやり方で展開してみましょう。

 

Aさん『この〇〇については、なかなかうまくできていると思うんだよね』

Bさん『Aさんは、うまくできていると感じているんですね。確かに、ここの部分とかはうまくできていますよね。私もそう思うのですが、△△という点がちょっと問題ありと思っているんですよね』

 

上記の例ですと、先ほどとは違い、Aさんの意見を受け入れつつ自分の意見を言っているので、Aさんから見た印象は変わってくるでしょう。こういうコミュニケーションができるようになると、人間関係が悪くなることは少ないでしょう。

 

つまり、「相手」を意識していないコミュニケーションをとってしまうと、人間関係がダメになってしまうということなのです。これを聞いて、「そんなのは当たり前だ」と思った方もいるでしょう。しかし、実際には、「相手の事を考えていないな」と思うコミュニケーションは多くのシーンで見かけます。関係がうまくいっていない上司と部下などはその典型例です。

 

コミュニケーションの取り方で信頼関係が育まれるポイントとは?

どうすればコミュニケーションを通じて信頼関係を育むことができるのでしょうか?もちろん、前述した通り、相手の事を考えたコミュニケーションをとることは大事です。しかし、それだけで信頼関係は生まれません。では、どうすればよいかを解説していきます。

 

 

「信頼できる人」とはどんな人か?

信頼関係を作る、ということを考えるうえで、「信頼できる人」とはどういう人のことを言うのかまず考えてみましょう。恐らくコミュニケーションに関して言えば、下記のような項目が当てはまるのではないでしょうか。

 

  • どんな人も平等に扱い、相手によって態度を変えない
  • 自分の話をじっくり聴いてくれて、最後には必ず応援してくれる
  • 自分の事を理解してくれて、的確なアドバイスをくれる
  • ダメな時はダメと言ってくれるし、その上で自分に期待をかけてくれる
  • 基本的に明るく元気で、気持ち良いコミュニケーションをとってくれる

 

すべての人がこんな人であれば、そこら中に信頼関係が生まれ、人間関係で悩むことはないでしょう。しかし、実際には人間関係で悩んでいる人も多く、どうやったとしても解決しないというところまでいってしまっているケースも中にはあるでしょう。

 

 

若手社員のコミュニケーションで重要な「理解」と「win-win」の考え方

「信頼される人」の像が見えてきたところで、もう少し具体的な、コミュニケーションを通じて信頼関係を育めむ方法を見ていきましょう。ポイントは、「理解」「相手のwin」「自分のwin」の3つです。

 

「理解」、つまり相手の意見や感情を理解して受け止める、ということは、冒頭でも少し解説しましたので割愛しましょう。

 

次の「相手のwin」は非常に大事なポイントです。「相手が何を望んでいるか」「何をしたいと思っているか」、これをしっかりと見極めて、「相手のwinを実現するために自分にできることは何か」、こういうことを考えられる人は、相手から信頼を得られるでしょう。人は、本能的に「自分のwin」を大切にしたがるところがありますが、まずは相手のwinを考えるコミュニケーションを取ることで、相手との関係性は大きく変わるでしょう。

 

その上で、「相手のwin」と同じように大事なのが「自分のwin」です。考えてみてください。自分のwinを犠牲にしたうえで相手のwinを叶えようとする人が、相手と対等な信頼関係を築けるでしょうか。一種の「自己犠牲」であり、「都合のいい人」であり、真の意味での「信頼関係」を築くことは難しいでしょう。

 

特に日本人は「自分の考えていることをはっきり主張する人」が少ない傾向にあります。相手の事を察するような「阿吽の呼吸」という言葉があるように、相手が考えていることを想像して、それに対して的確な行動をとることが美徳とされているような節もあります。しかし、「相手のwin」を叶えようとするだけでは、よい人間関係は築けません。相手のwinと自分のwinを、両方を叶えようとする姿勢が、信頼関係に繋がります。

 

「理解」「相手のwin」「自分のwin」が揃うと、お互いにwin-winの関係になるために、協力関係も生まれやすくなります。お互いに「自分も相手もwinになる状態をつくる」という共通の目的が生まれ、そこに信頼関係が生じるのです。

 

若手社員のコミュニケーション力を高める3つのポイント

ここまでを踏まえて、若手社員が周囲のよい人間関係を築くために、どんな風にコミュニケーション力を高めればいいでしょうか。ここまでお伝えした「考え方」を踏まえた上で、下記の3つの「トレーニング」でスキルを磨くと良いでしょう。

 

 

1.強制的に話す機会を作る

今の若手は、生まれた時からスマートフォンがあり、友人などともSNSを通じて、顔文字やスタンプでコミュニケーションしてきた「SNSネイティブ」です。その結果、言葉によるコミュニケーションが得意ではない側面があります。単純には経験値不足なのです。それを解消するには、会議、朝礼、仕事の場などで強制的に話す機会を作ることです。そうすることで、話すということへの慣れ、経験値が溜まってくるでしょう。

 

なお、話す上では、「事実」と「意見や感想」を明確に区分けして伝えることを意識させると、ビジネス上のコミュニケーショントレーニングとして、良い機会になるでしょう。

 

 

2. 「理解」しているかを確認する習慣をつける

コミュニケーションから信頼が生まれるには「理解」が大切であることはお伝えした通りです。しかし、「理解」を本当の意味でできているのかを確認している人は意外と少ないものです。

 

上司『わかったか?』、部下『わかりました』という、ある種決まり切った儀式のような対応は、誤解や理解不足を生み、そこにコミュニケーションミスが生まれがちです。若手社員の場合、顧客とのやり取りにおいても、同じようなことが起きていることがしばしばあります。

 

やることは簡単で、話した内容について、若手に「どのように理解したか」を確認・復唱させるのです。話した内容とぴったり一致するようになれば、若手のコミュニケーション力は確実に高まっています。始めはズレが生じたり、伝え方が回りくどかったりすることもあるでしょう。

 

しかし、慣れてくるうちに、「相手の話を正確に理解する」「理解した内容を簡潔・明瞭に伝える」ことが出来るようになります。聞くだけではなく、伝えるトレーニングにもなりますので、非常におススメです。

 

 

3. 準備させる

いきなり話すことをやめさせ、どうすればきちんとした会話になるのかをしっかり準備をさせることも非常に効果的です。会話の目的は何か、どういうことをゴールにしたいのか、事実は何か、自分の考えは何か、また、それをどういう順番でどう話せば相手とよりいい会話ができるのか、事前に考えさせてから話をさせるという方法です。メモやポストイットに箇条書きで書くだけで充分です。

 

人は基本、自分のコミュニケーションがおかしいとか思いません。とくにコミュニケーションが苦手な若手社員は「何がダメなのか」、自分では分からないことも多いでしょうか。しかし、要領を得ないコミュニケーションに対して、いちいちフィードバックすることは上司も負担ですし、本人も委縮してしまいます。

 

だからこそ、「正しいフォーマット」を準備して、それに沿って準備させるのです。慣れてくるに従って、フォーマット自体が頭に入り、自然とフォーマットに沿って伝えることが出来るようになるでしょう。

 

まとめ

最近の若手社員、SNSネイティブとも呼ばれ、ネット上でのコミュニケーション、それも短文や顔文字、スタンプを使ったものに慣れており、対面でのコミュニケーション力は高い傾向にはありません。だからこそ、一方的なプレゼンテーションではなく、会話することの重要性を伝え、相手を理解して、信頼関係を築くスキルを高める必要があります。

 

コミュニケーションは知識だけで改善されるものではありません。だからこそ、伝える練習をさせる、理解した内容を復唱させる、伝える準備させる等を繰り返し行うことで、確実に経験値が積まれ、若手社員のコミュニケーション力は向上します。

 

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著者情報

東宮 美樹

株式会社ジェイック 執行役員

東宮 美樹

筑波大学第一学群社会学類を卒業後、ハウス食品株式会社に入社。営業職として勤務した後、HR企業に転職。約3,000人の求職者のカウンセリングを体験。2006年にジェイック入社「研修講師」としてのキャリアをスタート。コーチング研修や「7つの習慣®」研修をはじめ、新人・若手研修から管理職のトレーニングまで幅広い研修に登壇。2014年には前例のない「リピート率100%」を達成。2015年に社員教育事業の事業責任者に就任。

著書、登壇セミナー

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