新人教育の効果性を高めるコメントの力!上司が押さえたいコメントのポイント とは?

更新:2024/01/11

作成:2022/01/18

東宮 美樹

東宮 美樹

株式会社ジェイック 執行役員

新人教育の効果性を高めるコメントの力!上司が押さえたいコメントのポイント とは?

新人を迎えた多くの職場で、上司や先輩は「社会人として早く成長して欲しい!」「一人前になって欲しい」と新人たちに期待しています。

 

しかし、一方で、新人に掛けた言葉が上手く伝わらなかったり、思うように新人とコミュニケーションが取れなかったりして悩んでいる先輩や上司も多くいます。

 

記事では、新人教育の効果性を高めるコメントの力、上司や先輩が知っておきたいコメントのポイントや実践方法を解説します。

<目次>

なぜ、新人の教育にコメントが効果的なのか?

新人のモチベーションを高めたり、スキルを向上させたり、相互の信頼を深めたりするためには、コメントによるフィードバックが効果的です。本章では、新人教育に「コメント」が効果を発揮する3つの理由をお伝えします。

 

理由① コメントが新人の成長意欲に繋がる

コメントが新人教育に効果的な理由の1つ目は、コメントが新人の成長意欲に繋がることです。人材育成の世界では職場で新人が育つためには3つの条件が必要と言われたりします。

 

<職場で新人が育つために必要な3つの条件>

  • 成長することの魅力がきちんと伝えられている
  • どんな能力が評価されるのかが明確になっている
  • 周囲の期待が本人に伝わっている

3つについては、初期教育や採用活動の中で何度も伝えてきたという場合が多いでしょう。入社式や配属発表等のタイミングで経営層からも伝えていることでしょう。

 

しかし、新人に上記がきちんと「伝わる」ためには、繰り返し伝えることが大切です。だからこそ、新人と直接接する上司やOJT担当者、人事等がコメントを通じて、成長して得られること、必要となる能力、本人への期待等を繰り返し伝えることが効果的な教育に繋がります。

 

理由② 自分の見られ方を自覚する機会になる

ここ数年の新人が持つ特徴の一つとして「自分が周りからどう思われているのかを非常に気にする」ということがあります。SNS等を通じて、常に“承認”や“フィードバック”がある環境で育ってきたり、また“悪目立ちするとすぐに叩かれる”といった世界を見てきたりした中で育まれた特徴です。

 

「周囲からの見られ方」を気にするからこそ、昨今の新人は自分がどう見られているかを把握できなくなると不安になります。新人たちに安心して仕事をしてもらうためにも、きちんとコメントで承認や改善点など、現在位置を伝えることが重要です。

 

理由➂ コメントを伝えることで、新人との信頼関係が強まる

人間の信頼関係は、相手から受けるフィードバックの質と量で決まると言っても過言ではありません。フィードバックやコメントが交わされることがなければ、お互いの信頼関係は貧しくなってしまいます。頻繁にコメントや声掛け、フィードバックを与えることで、上司や先輩・OJT担当者と新人たちとの間に、強い信頼関係を作っていくことができます。

 

信頼関係が深まれば、業務や改善の指示もよりスムーズに伝達することができますし、新人も心理的安全性が保たれて自分の能力を発揮することができます。

新人教育を効果的にするコメント、3つのポイント

前章では新人の教育・育成にあたり、コメントやフィードバックがいかに重要で欠かせないものであるかについてお伝えしました。

 

本章では、新人教育を効果的にするためには上司やOJT担当はどんなコメントをすることが望ましいのか、3つのポイントをお伝えします。

 

ポイント① ポジティブなコメントをする

新人へのコメントを効果的にするポイントの1つ目はポジティブなコメントを伝えるということです。
相手が望ましい行動を取った時にポジティブ(肯定的)なコメントやフィードバックを返す、という行為は、心理学でも「正の強化(positive reinforcement)」をもたらすものとして実証されています。

 

ポジティブなコメントをする・承認するというのは、決して合格基準を下げるということではありません。新人を成長、活躍させるためにも基準を下げてはいけません。ただ、ぜひ以下を意識してコメントしてみてください。

  • 1.新人の長所、強み、素晴らしいところを意識する
  • 2.絶対値ではなく、進化や進歩した点を承認する
  • 3.結果ではなく、プロセスや努力を承認する

なお、新人にはきちんと基準達成を目指してもらう必要もあります。従って、伝え方のイメージは「ここは努力したね。前よりも〇〇が改善されているし、□□のプロセスは合格レベルだ。あとは、△△に関してはこう改善して欲しい。改善するうえでは、君のこの強みが生かせるはずだ」という伝え方です。

 

ポイント② 抽象的な感想ではなく、客観的な行動についてフィードバックする

コメントを効果的にするポイントの2つ目は、相手の言動を客観的・具体的に伝えるということです。
新人は、業務理解もビジネス経験も浅い状態ですので、ハッキリ具体的に伝えてあげないと、自分のどの行動のどんなところが評価されているのかをきちんと認識できません。

 

客観的・具体的な言動をフィードバックすることで、新人は内容を理解して、望ましい行動を継続したり、次のステップに挑戦する気持ちになったりします。コメントを伝えた時の新人の表情が、いまいちピンときていないように見えたら、コメントの内容や伝え方が客観的・具体的なものであったかを振り返るとよいでしょう。

 

ポイント③ 自分の頭で考えることを促す

会社の発展のためには、社員一人ひとりが自らの仕事を通じていち早く成長していくことが不可欠です。そのためには、自分の頭で考えるという習慣が、新人・若手を含めすべての社員に求められます。

 

しかし、新人が報告や相談に来た時、上司やOJT担当が評価や指示を返すだけでは、新人は自分の頭で考える習慣が身に付きません。従って、少しずつ成長して来たら、上司はすべてを指示したり、コメントで正解を示したりするのではなく、「あなたならどうする?」「どんな対応がいいと思う?」「これについて考えて欲しい」と言った形で、少しずつ新人自身に考えさせる習慣を持たせるようにしましょう。

日報や週報へのコメントで、新人教育を効果的にする

コロナ禍をきっかけとしてテレワークや在宅勤務を導入した企業も増えています。

 

HRドクターを運営する研修会社ジェイックでも2020年4月からフルリモートワークを導入して、2021年10月時点で出社率は20%弱を維持しています。

 

リモートワークを導入すると、顔を合わせて対話する機会はどうしても少なくなります。従って、新人教育においても日報や週報に対するテキストのコメントが重要になってきます。本章では、日報や週報で効果的なコメントをするポイントを解説します。

 

なぜ日報や週報にコメントすることが効果的なのか?

新人に日報や週報を提出させている企業は多いですが、提出された日報や週報にきちんとコメントやフィードバックを返しているでしょうか。何のコメントや返信もなければ、新人は自分の報告がどう評価されているか分からず不安になってしまいます。

 

あるいは、誰も報告をチェックしていないと勘違いして、適当に報告をあげる人も出てくるかもしれません。これでは、せっかく日報や週報を作成させても、成長への貢献度は薄くなってしまうでしょう。日報や週報に対して適切なコメントを返すことは、業務の把握・進捗管理だけにとどまらず、新人の育成・指導に良い影響を与えます。

 

日報や週報へのコメントは「自分を見てくれている」というモチベーションアップ、「きちんと見られている」という適度な緊張感、そして、コメントを通じた思考やスキルの成長へと繋がります。

 

日報・週報へのコメントのコツ① 具体的に記載する

前章でコメントのポイントを「新人の言動について客観的・具体的に伝える」と紹介しました。

 

日報や週報のコメントも「客観的・具体的に伝える」ことは大切なポイントです。日報や週報に書かれている以外の新人の言動について具体的に言及することが、新人の「見てくれている」「見られている」というモチベーションと適切な緊張感に繋がります。

 

さらに、記載する時は言動だけでなく、結果についても伝えるとよいでしょう。新人の場合、やっている仕事の価値や目的が分からないまま仕事に取り組んでいるということも往々にしてあります。日報や週報へのコメントと言う文字でしっかり残る形で、やっている仕事が何の役に立つのか、会社の事業全体でどのような位置づけや役割になっているのかを示してあげると、新人が自分の仕事の意義を認識して高いモチベーションで仕事に取り組むことに繋がります。

 

日報・週報へのコメントのコツ② 振り返りや思考の機会となるように記載する

新人が仕事をするうえでは、目標を達成できなかったり、顧客対応でミスをしてしまったりなど、失敗したり期待通りにできなかったりする場合もたくさん出てきます。成功体験を積むことはもちろん大事ですが、新人はこれらの失敗や上手くいかなかった体験を通じて成長していきます。

 

従って、新人の教育に携わる先輩や上司、OJT担当者は仕事の失敗体験が新人たちの学びや振り返り機会となるような関わり方やコメントをすることが大切です。

 

例えば、失敗してしまったという報告に対しては、「何が原因だったか?」「同じ失敗を繰り返さないようにするためにどうしたら良いか?」を考えさせるような問いかけをコメントすると良いでしょう。自分の頭で考えさせるためにも、すべての答えを示すのではなく、コーチングを意識することがポイントです。

 

また、日報や週報を通じて新人たちが取り組んでいる業務を把握したら、これから取り組む業務について目的、ゴールが何か、準備は十分か等を考えさせるようなコメントも有効です。新人たちの振り返りや思考の機会となるようなコメントができると、日報や週報が新人の成長を加速させるツールになります。

まとめ

新人教育を効果的にするために、新人の仕事や日報等に対するコメントやフィードバックが重要です。

 

成長を促進するためにコメントは、単なる批評やダメ出しであってはなりません。新人の成長意欲を高めたり、見られていることを自覚させたり、信頼関係を深めるためのコメントが不可欠です。

 

効果的なコメントは、ポジティブであり、具体的な言動への言及であり、新人自身に考えさせたりするものです。上記のポイントを押さえれば、日報や週報などへのコメントも効果的な教育機会となります。

 

なお、コメントを通じて新人のモチベーション向上やスキルアップを実現するための前提条件は、「新人とコメントする上司やOJT担当者の間に信頼関係ができている必要がある」ことです。新人との信頼関係を構築したうえで、記事で紹介したポイントも踏まえて、新人の成長を加速させるコメントを実施してください。

 

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著者情報

東宮 美樹

株式会社ジェイック 執行役員

東宮 美樹

筑波大学第一学群社会学類を卒業後、ハウス食品株式会社に入社。営業職として勤務した後、HR企業に転職。約3,000人の求職者のカウンセリングを体験。2006年にジェイック入社「研修講師」としてのキャリアをスタート。コーチング研修や「7つの習慣®」研修をはじめ、新人・若手研修から管理職のトレーニングまで幅広い研修に登壇。2014年には前例のない「リピート率100%」を達成。2015年に社員教育事業の事業責任者に就任。

著書、登壇セミナー

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