新人の教育担当が、新人の配属前後で押さえておくべきポイント

更新:2023/11/13

作成:2022/01/18

東宮 美樹

東宮 美樹

株式会社ジェイック 執行役員

新人の教育担当が、新人の配属前後で押さえておくべきポイント

昨今、少子化の影響が新卒採用市場に及びはじめ、今後の新人採用は絶対的に採用対象となる新卒が減っていく時代へと入りはじめています。その中で採用した新人をしっかり育成することはますます重要性を増しています。

 

記事では、新人を育成するうえで、配属前に新人教育で実施すべきこと、配属後の教育担当(OJT担当)が押さえておくべきポイント、また、意外と実施されていない新人教育のポイントを紹介します。

<目次>

新人教育担当が、配属前の育成で必ず行ったほうが良い3つのこと

多くの企業では、配属前の新人育成を人事中心に実施しています。本章では、配属後の育成効果を高めるために、配属前の新人育成でやっておくべき3つのことを紹介します。

 

定期的な個別面談を行う

配属前の新人教育期間は企業によって異なりますが、多くの場合は2~3か月です。配属前の教育期間に絶対に行ったほうが良いことの1つ目は、「定期的な個別面談」の実施です。

 

集合型で新人研修を実施している場合、集団の中で行動している時と1対1で話をする時で、新人の特徴が大きく異なることがあります。集団の中では元気にふるまっているが、内心では不安を抱いていることもよくあります。新人の特徴をしっかりつかんでおき、配属先に情報提供することは、配属後の新人育成をスムーズにするためにとても大切です。

 

また、新人育成のPDCAを回すためにも、個人面談は有効です。定期面談を通じて、プログラムが有効であったか、内容や方法が今の新人にフィットしているのかどうかを確認することは、教育担当にとって良い振り返りの機会でもあります。

 

個別面談の時間は、1週間に1回、20~30分程度がおススメです。1時間程度の時間を取る必要はありませんので、ぜひ個別面談を実施してください。

 

配属部署の文化や価値観を説明する

新人研修期間の中で、会社の各部署がどんな仕事を行っているのか等を各部署の代表者が伝える機会を設けている企業は多いでしょう。しかし、業務や実務的な内容だけでなく、各部署が大切にしている文化や上司の考え方、人間関係等を細かく伝えているケースは意外に少ないです。

 

新人にとって配属先は、社会人として初めて所属する部署です。配属先部署の情報を事前に知らせることで、いろいろとイメージすることができ、気を付けるべき点も理解できます。

 

育成上でも大事なポイントになるのですが、業務内容に加えて、価値観や働き方の特徴、大変さ等をしっかり伝えておくことで配属後のギャップが生じにくくなり、スムーズな育成がしやすくなります。配属前の新人教育でしっかりと部署の文化や価値観を伝える機会を作りましょう。

 

配属前と配属後のよくあるギャップを伝える

配属前と後ではギャップが生じがちです。例えば、よくあるギャップとして「配属前はみんな優しかったのに、配属後は周囲が冷たく感じる」というものです。ギャップはある意味では当然のことで、配属前は“新人育成を主業務として新人と関わっている”教育担当がいますが、配属後は“育成以外にも仕事がある社員が新人を育成する”からです。

 

従って、新人に気を配れる範囲も変わりますし、配属前と配属後で「ある種のお客様」モードから「戦力化に向けて鍛える」といったように立場が変わっている場合もあるでしょう。しかし、配属される前の新人は上記の現実を理解していないこともあります。だからこそ、ギャップを事前に伝えることでギャップを受け止める心の準備をさせることになります。

 

その他にも部門によっては、配属前に抱きやすいキラキラしたイメージと配属後の実務でギャップが出やすい場合もあります。また、職種等によって新人がきつく感じるポイントやギャップも決まっていたりします。

 

こうしたギャップは“リアリティショック”と呼ばれ、モチベーションダウンや退職の原因にもつながるものです。リスクを少しでも排除するという意味で、想定されるギャップは事前に伝えておきましょう。少し大げさに伝えるぐらいでも良いかもしれません。

配属先の新人教育担当が押さえておくべき3つのこと

前章では配属前の新人教育で押さえておくべきポイントに触れました。本章では、主に配属先のOJT担当に向けて、「配属後の新人教育」で押さえておくべき3つの点を紹介します。

 

新人の価値観を知る

「最近の新人は何を考えているか分からない」と嘆く上司や先輩は多くいます。しかし、そう言っている上司や先輩が「新人の価値観を知ろうとしているか」というと、実はしていないケースがよくあります。

 

例えば、OJT担当が人事に確認して、「配属になった新人の研修時の様子や特徴、把握している情報」を聞いていることは意外と少ないですし、新人に「なぜこの会社に入社を決めたか」「この会社でどうなりたいと思っているか」等を聞いていないケースもあります。

 

新人の価値観や特徴、ビジョンを知ることは、新人教育を効果的にするために必須の情報です。例えば、仕事を覚えさせたり、指導したりするうえでは、相手の特徴に応じた教え方やコミュニケーションスタイルが有効です。また、新人を動機付けるためには、入社理由や将来のビジョンに絡めて仕事の意味や目的を伝えることが効果的です。

 

育成プランを考える

配属後、多くの会社ではOJTを通じて新人教育を実施していくことになります。しかし、OJTを実施するうえでは、Off-JTほどしっかりと育成プランを考えていないケースも多く見受けられます。

 

何となく「一人前として一通りの業務をできるようにする」「簡単そうなもの、取り掛かりやすいものから順番に教えてく」としている場合もよくあります。

  • 一人前とはどういう状態か?
  • 一人前として成果をあげるのに必要な業務スキルは何か?
  • どんな順番で身に付けていくのが良いか?
  • いくつかのプロセスに分解するとどうなるか?
  • 各プロセスにおけるミニゴールは?
  • どこで躓きやすいか?

といったことを思考して、しっかりと教育計画を立ててから育成を始めたほうが新人は確実に成長しますし、計画と照らし合わせることで育成がうまく進んでいるかを確認できます。従って、育成プランを立てることは非常に大事です。

 

周囲に共有・依頼する

配属後の育成プランを考えたら、周囲にも育成プランを共有しましょう。どういうプランで育成するのかを周囲が知っていれば、余計なことを教えることもなくなりますし、育成方針がずれることもありません。
また、事前に共有・依頼しておくことで、新人の状況等を共有してくれるようになりますし、自分の目が届かないところを周囲がフォローしてくれるようにもなります。

 

配属後の新人育成は、教育担当が一人で全部行うのではなく、教育担当を中心にチーム全体で行うほうが効果的です。
しかし多くの現場で、新人の育成は教育担当に任せっきりで、上司すらあまり関与せず、先輩社員も何も教えようとしない…といった状況が見られます。そうならないためにも、教育担当は周囲に共有と依頼を行い、協力要請をしておくことがおススメです。

新人教育で本当は実施したほうが良い3つのこと

新人教育プログラムにおいて、本当は実施したほうが良いのに、意外と実施されていない3つのことがあります。本章では、実施したほうが良い3つのことを、実施すべき理由や効果とともに紹介します。

 

配属時に「教育内容」を共有する

まず1つ目は、配属前の教育内容を配属先の新人教育担当に共有するプロセスです。研修期間に、どういった育成をしており、何を身に付けさせているか、どういった知識を持っているかを伝えることが、現場配属後の育成をスムーズにします。

 

しかし、残念ながら、多くの企業で行われていません。「配属前の研修内容はどうせビジネスマナーとかでしょう」という現場側の考えと、「教えてもあまり意味がない」と思い込んでいる人事側、双方の考えが一致しているからです。

 

最近の新人研修は、社会人としての心構え等のマインド面や、仕事現場での困った事象に対する具体的な問題解決方法等、配属後にも非常に役立つ内容を教えていることも多いです。一方で、数か月の研修期間の中では「知識として知っているレベルのこと」と「身に付いているレベルのこと」のギャップもあります。

 

配属前にどこまで育成が完了しており、配属後にはどういう育成をするのが有効なのかを考えるうえで、配属前の教育内容を伝えることは重要なポイントです。

 

配属後の新人教育担当は、新人の時に苦労した人がおススメ

新人教育担当を決める時にありがちなのが、「仕事ができる人」に依頼をするケースです。一概にダメなわけではないのですが、「仕事ができる人は、仕事ができない人の気持ちや状況が分からない」ということが起こりがちです。

 

「仕事ができる人」を教育担当にした時によくあるのが、教育担当から新人に対して「なんで分からないんだ」という会話がされたり、教育担当自身も「なんで分からないかが分からない」となったりするケースです。仕事はできるが、育成経験が少ない人が教育担当になると、「この新人はダメ、レベルが低い」というレッテルを貼ってしまい、育成がうまくいかなくなることが起こりがちです。

 

どうすればいいのかというと、おススメは「新人の時に苦労したけど、今は頑張っている人」を新人教育担当に任命することです。新人教育の担当は必ずしも「ずば抜けて仕事ができる」必要はありません。極端に言えば、成果と仕事のレベルは普通でも問題ありません。

 

大事なことは、「新人の分からないこと」に寄り添い、解決していけるかどうかです。仕事ができる人に育成してもらい、できる新人を育てたいという気持ちも分かりますが、着実に成長させることができる「新人の時に苦労した人」を教育担当に任命すると上手くいきやすくなります。

 

ただし、新人の時に苦労した人は、新人に寄り添ったり、成長を長い目で見たりすることができますが、同時に新人に対して甘くなる傾向もあります。新人自身のためにも求める水準やレベルを妥協させないことはしっかりと確認しておきましょう。

 

教育のゴール設定と計画を作成する

教育のゴール設定は「育成プランを考える」で紹介した内容と重複するのですが、それだけ配属後の新人教育の計画を立てたり、ゴール設定をしたりしている会社が少ないのです。配属前は人事が主導して研修期間のゴールに向けて計画を立てられていますが、配属後はゴールを設けずに何となく育成しているケースは多いです。

 

しかし、他の仕事と同様、新人育成においてもゴール設定をまず行って、ゴールに向けて計画を立てて進めていったほうが良い育成ができるのは言うまでもありません。計画作成のポイントは前述した通りですので、ここでは省略します。

 

ゴールや計画設定するうえで大事なことは、ゴールと計画を新人とも共有することです。「こういう方針で、これぐらいの期間に、こういうことができるようになってもらうために、こういう教育を行う」というゴールと全体像等を新人に伝えておくと、新人は「自分がどういうふうに成長していくのか」というイメージがつきます。

 

全体像の中での現在位置が見えたり、ゴールが分かっていたりすると、新人もモチベーション高く、また安心して仕事に臨むことができます。配属後教育のゴール設定と計画作成は必須で実施しましょう!

まとめ

新人の成長と戦力化について、「新人本人のモチベーションや価値観、センス」、また「OJT担当の技量」によるところが大きいと考えている会社は多くあります。もちろん、新人の能力と意欲、OJT担当の技量は重大な要素です。

 

しかし、記事で紹介したような配属前の新人教育でしっかりとリアリティギャップへの準備をさせると共に新人の価値観を把握する、また配属後の新人教育をしっかり計画して共有しながら進めることで、新人の成長スピードを底上げすることは可能です。

 

人の育成は難しいですが、ある一定のレベルまではしっかりと仕組みを作ることでベースアップが可能です。きちんと育成を行えば、スポンジが水を吸収するがごとく、新人はどんどん成長していきます。

 

記事では、新人育成で実施したほうが良いことと同時に、多くの会社で実施されていないポイントも解説しました。記事の内容も参考に、組織の新人育成力を高めていってください。

 

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著者情報

東宮 美樹

株式会社ジェイック 執行役員

東宮 美樹

筑波大学第一学群社会学類を卒業後、ハウス食品株式会社に入社。営業職として勤務した後、HR企業に転職。約3,000人の求職者のカウンセリングを体験。2006年にジェイック入社「研修講師」としてのキャリアをスタート。コーチング研修や「7つの習慣®」研修をはじめ、新人・若手研修から管理職のトレーニングまで幅広い研修に登壇。2014年には前例のない「リピート率100%」を達成。2015年に社員教育事業の事業責任者に就任。

著書、登壇セミナー

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・コロナ禍で就職を決めた21卒の受け入れ&育成ポイント
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