新入社員は、いつの時代も同じメンタリティや価値観を持っているわけではありません。
たとえば、2022年に入社した新卒は、ストレートに進学してきた学卒であれば、2000年前後の生まれです。Z世代と呼ばれる新入社員には、この世代ならではのメンタリティや価値観があります。
メンタリティや価値観などは、もちろん個人の違いによる部分が大きいです。しかし同時に、価値観の変化は生まれ育った時代環境に大きな影響を受けることも事実です。そのため、上司や先輩社員の価値観で新人に接してしまうと、研修や育成はうまくいきません。
企業がOJTやOff‐JTなどの研修効果を高めるには、いまどき新入社員のあるあるを知ったうえで、特徴に合った指導ポイントなどを考える必要があります。記事では、今どき新入社員の特徴あるあると指導ポイント、新入社員へのアドバイス例やおすすめの新入社員研修を紹介します。
<目次>
今どき新入社員の特徴とは?
近年入ってくるZ世代の新入社員には、以下のような傾向を持つ人材が多い傾向があります。
一人で抱え込み、報連相をしてこない
近年の新入社員に非常に多い特徴が、上司や先輩への遠慮、評価への不安から、「報連相」報告・連絡・相談をためらい、自分一人で問題を抱え込んでしまう傾向です。
この問題の背景にあるのは、上司・先輩のネガティブな反応に対する恐れです。
- 「こんな簡単なことを質問したら、怒られるんじゃないか?」
- 「こんな相談をしたら、仕事ができないやつだと思われるんじゃないか?」
- 「質問ばかりしていたら、評価が下がってしまうのでは?」
新入社員が報連相をしなければ、勝手な判断によってミスを繰り返したり、解決できない問題が放置されたりして仕事が進まなくなってしまいます。また、新人の成長機会も失われます。
指示待ちで主体性が低い
指示待ちとは、1つのタスクが終わるたびに、「次は何をしたら良いでしょうか?」と尋ねてくることです。新入社員の場合は、自分で次の業務を判断する知識などがないためにやむを得ない部分もありますが、報連相と同様に上司・先輩に過度に遠慮してしまう、また、正解がわからないと動けないといった傾向・特徴もあります。
プレッシャーに弱く間違いや失敗を恐れる
悪い意味で、“万能感”が高いまま社会人になってしまった状態です。万能感が高すぎた場合、新たな仕事・挑戦をするときに「絶対に間違えられない」という自らのプレッシャーに押しつぶされてしまいます。
また、逆に失敗するかもしれない仕事から遠ざかる傾向ともなります。誤った万能感の高さは、間違いを起こさせない学校教育などによる影響が考えられます。
万能感以外にも、前述した上司や先輩からのネガティブ評価を恐れる、正解があることへの慣れといったものも間違いや失敗を恐れる背景になっています。
また、子供のころからSNSに慣れ親しんでいる今の新人は、有名人や企業が何か起こした際の炎上や叩かれ方も目の当たりにしてきています。こうした経験も失敗を過度に怖がる要因となっているでしょう。
新入社員のうちは、仕事を完全に覚えていないので、間違いや失敗は起こして当然ともいえます。また、新入社員に限らず、人は間違いや失敗を通して成長していくものです。その意味で、間違いや失敗を恐れすぎる姿勢は成長の妨げとなるものです。
ハッキリとした正解を求める
いまどき新入社員は、生まれたときからインターネットやSNSがあったZ世代です。昔から言われる学校教育や学歴主義の弊害という部分もありますし、子どもの頃からインターネット検索に慣れていると、「検索すれば簡単に正解が見つかる」と思い込むようになってしまいます。
しかし、ビジネスにおける意思決定は正解が曖昧であることが多くあります。正解を求める、正解がないと動けないという特徴は、ビジネスにおいては妨げとなることも多いでしょう。
承認欲求が強い
SNS文化のなかで育った新入社員は、自分が何か投稿するたびに「いいね!」で承認されることに慣れています。そのため、承認されることが当たり前であり、承認欲求の強い新入社員は、上司や先輩に承認を強く求めます。一方で、承認されなければ不満になり、モチベーションやエンゲージメントが低下してしまう傾向にあります。
新入社員に対する指導のポイント
いまどき新入社員の成長や即戦力化を促すには、以下のポイントを押さえた指導や教育を行なう必要があります。
価値観を理解する
まず、上司や先輩がいまどき新入社員の価値観を頭ごなしに拒まず、理解して受け入れることが大切です。新入社員に指導する最大の目的は、新人の価値観を矯正することではなく、仕事を早く覚えてもらい活躍できるようにすることです。
いまの新入社員は、上司や先輩、会社の価値観を一方的に押し付けると強く反発する傾向が強くなっています。したがって、先述のような新入社員あるあるを理解したうえで、彼(彼女)らに合ったアプローチ方法を模索することが大切です。
もちろん、活躍してもらううえで新人に身に付けてもらうべき考え方や言動もあります。それらも一方的に「価値観」として押し付けるのではなく、何のために、なぜその考え方や言動が必要かを理性的に説明することが大切です。
承認の機会を増やす
いまどき新入社員は、前述の通り、承認欲求が高い傾向があります。そのため、SNSでの「いいね!」と同じ感覚で、上司・先輩からの承認や褒め言葉によってモチベーションが上がりやすい特徴があります。
褒めることが少ない、たとえば、「仕事は見て覚えろ」「男は黙って……」といった昭和的な組織風土の組織では、いまどき新入社員の成長・定着を促すなら、ポジティブなフィードバックを増やすなどの変革が必要でしょう。
ただし、承認する、褒めるというのは、仕事の基準を下げるということではありません。結果が出ていないのに仕事の水準を褒める、合格基準に達していないのにOKしてしまう必要はまったくありません。
姿勢やプロセス、成長に着目して、「取り組みへの姿勢」「努力」「以前からの成長」などの過程を承認する、ポジティブにフィードバックしてあげることが大切です。
なお、承認は外的報酬(外発的動機づけ)です。外的報酬に慣れすぎると、同じレベルの報酬では満足できなくなり、不満が生じやすくります。新入社員に対する承認は大切ですが、「上司からの承認」に依存してしまわないように、仕事への興味・面白さ・ワクワク感のような内発的動機づけを促す仕組みづくりも必要です。
考えさせる機会を増やす
前述の通り、ビジネスの意思決定は、明確な答えや正解はないことが大半です。そのため、「正解」を探そうとする癖が身に付くと、いつまでも答えを出せず、手が止まってしまいがちです。
いまの時代、正解が外部環境の変化にともなって変わっていくことも多々あります。こうした状況で大切なのは、自分で課題などを見て仮説を立てながら妥当解を出し、さらなる考えや上司などへの相談を通して、解決への精度を高めていくことです。また、妥当解を素早く試して結果を踏まえて修正していくことも重要です。
新入社員の仕事や意思決定については、上司や先輩社員は正解を知っているケースも多いでしょう。ただ、「正解を教えられる」ことに慣れ過ぎないように、教えすぎないことも大切です。
新入社員に「仮説思考」「考える習慣」「やってみること」を身に付けさせるために、すべての答えを教えてしまうのではなく、あえて答えを教えず考える習慣を持たせることを意識しましょう。
スケジュールにあえて空きを作る
新入社員研修やOJTなどで、上司が新入社員のスケジュールを目一杯に詰めていた場合、与えられたタスクをこなすことが仕事になってしまい、タスクがなくなったときに指示待ち新人になってしまいがちです。
先ほどの「答えを考えさせる」に通じますが、この問題を解消するには、スケジュールに空白部分をあえて設けて、自分でスケジュールを決めて進めてほしいプロジェクトやタスクなどを指示しておく方法がおすすめです。
すると、プロジェクトのスケジュールを考えたり時間管理したり不明点の相談を積極的に行なったりと、主体的な行動を増加させることができます。研修やOJT期間が終われば、自分のスケジュールを自分でコントロールして成果をあげることが求められます。こうした仕事の取り組み方を新入社員のうちから身に付けさせるとよいでしょう。
目的や理由を明確に伝える
いまどき新入社員だけに限ることではなく、すべてのメンバーの指示・指導に関係することですが、特にいまどき新入社員の指導をするうえでは大切です。
いまどき新入社員は学校教育で「キャリア教育」を必修で受け、また、社会的にもLGBTQなどのジェンダーをはじめとして多様な価値観が認められる風潮の中で育ってきました。その中で、多様な価値観を受け入れる許容度が広く、また、自分自身の価値観が認められることも自然だと思っています。
一方で、いまどき新入社員が嫌うのは、(自分が古臭いと感じる)価値観を一方的に押し付けられることです。
もちろん新入社員の個性や主体性は素晴らしいものですが、未熟な新入社員に成長して成果をあげてもらうためには、ビジネスにおける価値観や自社の常識を受け入れて吸収していってもらう必要があることは言うまでもありません。
しかし、指導する際に「これはこういうものだから……」「仕事だから……」「うちの会社ではこう決まっているから……」と目的や理由も言わずに一方的にこちらの価値観や当たり前を押し付けると反発が生まれます。
したがって、何かを指導する、実行してもらう必要がある際には、客観的に目的や理由を明確に伝える、新入社員が得られるものをきちんと伝えるといったステップが大切です。
新入社員へのアドバイス例
本章ではいまどき新入社員にアドバイスする際の例をいくつか紹介します。自社でぶつかっている課題などを解決する参考になるものがあれば幸いです。
「5分考えてわからなければ相談して」
報連相ができない新入社員向けのアドバイスです。報連相の促しでよくあるのは、「何かあればいつでも相談して!」といった声がけです。誤っているわけではありませんが、新入社員は忙しそうな上司や先輩に気を遣いすぎて、声をかけられないことが多々あります。
また、素直に相談してくれるのは良いのですが、常に周りに正解を求めるような習慣が身に付くことも将来の成長を妨げます。
そこで有効なのが、「5分考えてわからなければ……」といった形で条件を付けてあげることです。自分で考えると同時に、報連相のタイミングを決めて抱え込まないようにすることが可能になります。
5分が良いのかは任せている仕事や状況によりますが、「自分で考える」と「報連相する仕組みをつくる」を両立させることが大切です。
「まずは失敗してみよう」
冒頭で紹介したとおり、いまどき新入社員の傾向として、周囲のネガティブ評価を恐れ失敗したくない、正解を求めるといったものがあります。
しかし、ビジネスでは正解がわからない中で意思決定することが大切です。また、挑戦することで進化や成長が生まれます。
だからこそ、失敗することで顧客に大きな迷惑がかかるようなケースは別ですが、失敗を怖がる新入社員ほど初期にどんどん失敗させることが大事です。
上司やOJT指導者が、新入社員の力量や状況を見ながら許容した失敗であれば大きな問題が起こることはまずないでしょう。失敗を通じて、「失敗しても大丈夫」「失敗して振り返って学ぶことが大事」「一生懸命にやっての失敗なら上司や先輩から見捨てられるようなことはない」といったことを体験させましょう。
「あなたはどう思う?」
新人に考える習慣を付けさせたいようであれば、新人が質問や相談してきたときに「自分ではどう考えたの?」「あなたはどうしたらいいと思う?」と逆質問することも有効です。
質問するたびに「自分ではどう考えたの?(どう思ったの?)」と訊かれることが習慣になると、疑問が生じたときや壁にぶつかったとき、まず自分で考える習慣が身に付くようになります。
人材育成で有名なリクルートでは、上司などに相談すると「あなたはどうしたいの?」「お前はどうしたい?」とすぐ切り返されるともいわれます。
なお、この問いを有効に使うためにはいくつかポイントがあります。
- 相手の答えを頭ごなしに「それは違う」「間違っている」と否定しない
- 上司がいつも「正解」を示さないようにする
- 相手のレベルに合わせて質問する
上記のようなポイントを押さえずに、質問するだけしていつも相手の答えを否定する、上司がいつも「正解」を示す、レベルが高すぎて相手が答えられない質問をするといったことを繰り返してしまうと逆効果になりますので注意してください。
おすすめの新入社員研修
ここまでのいまどき新入社員あるある、指導する上司や先輩にとって課題となる少しネガティブな色合いで記載しました。一方で、いまどき新入社員は自分で考える力やデジタルネイティブのSNS情報力、フラットな人間関係を築く力など多くの強みも持ち合わせています。
いまどき新入社員あるあるが悪影響をおよぼし新人育成の課題とならないように、そして、新入社員が持っている強みを生かして活躍できるようにするには、
- ①新入社員に、いまのビジネス社会で活躍するための考え方やスキルを吸収してもらう
- ②上司や先輩が、新入社員の価値観を理解したうえで適切な指導をおこなう
の両方がポイントです。本章ではHRドクターを運営する研修会社ジェイックが提供する2つの新入社員研修をご紹介します。
『7つの習慣』をもとにした新入社員研修PRO
全世界4,000万部のベストセラー書籍『7つの習慣』をベースにしたグローバルスタンダードな研修プログラムです。新しい環境や時代のなかで求められる“プロ意識”を、徹底的に醸成する研修内容に仕上がっています。
学生時代とのギャップや課題を改善し、さらなる成長にコミットさせる内容となっています。成長意欲が高い新入社員に“プロ”としての心構えや仕事の原則を身に付けて自立して欲しいという企業におすすめです。
資料ダウンロード:“プロフェッショナル”として高い基準を身につける「7つの習慣」をもとにした新入社員研修PRO
「仕事の基礎の基礎」
お客様気分や学生気分を払拭したうえで、給与をもらう社会人としての心構えや基礎を習得させることに重きをおいた新入社員研修プログラムです。
給与をもらって教育を受けられる環境への感謝や学ぶ気持ち、そして、学び方をインプット。また、ビジネスマナーや挨拶などのビジネス基礎も実践を通じてしっかりとできるように鍛えます。
資料ダウンロード:学生から社会人へのマインドチェンジに最適!自分の殻を破る新人研修の決定版「仕事の基礎の基礎」
まとめ
新入社員の教育効果を高めるためには、普遍的な指導内容に加えて、生まれ育った世代の中で育まれた価値観にあった指導やアプローチも必要です。
たとえば、近年の新入社員には、以下のような特徴や傾向が強くなっています。
- 一人で抱え込み報連相をしてこない
- 指示待ちで主体性が低い
- プレッシャーに弱く間違いや失敗を恐れる
- ハッキリとした正解を求める
- 承認欲求が強い
上記のような傾向をもった新入社員を成長・活躍させるためには、以下のようなアプローチが大切です。
- 価値観を理解する
- 承認の機会を増やす
- 考えさせる機会を増やす
- スケジュールにあえて空きを作る
- 目的や理由を明確に伝える
新入社員の特徴を踏まえて活躍させるには、新入社員へのアプローチ、そして、上司や先輩の育成スキルへのアプローチ、双方が必要です。どちらも外部研修を利用することも検討してみてはいかがでしょうか。
HRドクターを運営する研修会社ジェイックでは、目的に合わせた下記2つの新入社員研修を提供していますので、ぜひご検討ください。
資料ダウンロード:“プロフェッショナル”として高い基準を身につける「7つの習慣」をもとにした新入社員研修PRO