新入社員のリーダーシップを引き出し、自ら成長し、成果に貢献する人材にする方法

更新:2023/07/28

作成:2020/10/19

東宮 美樹

東宮 美樹

株式会社ジェイック 執行役員

新入社員のリーダーシップ 引き出し、自ら成長し、成果に貢献する人材にする方法

近年、これまで以上に、「社員にリーダーシップを発揮して欲しい」というニーズが強くなっています。産業のサービス化、変化の早さ、カスタマイズされたサービス提供へのニーズ等により、「決まったことを早く正確に実行する」だけではなく、「顧客のニーズ・変化を汲み取って、意思決定する」ことが求められていることが背景です。

 

リーダーシップの発揮は、一種の習慣です。リーダーシップを発揮しないことが求められない中で3年5年を過ごしたあと、いきなりリーダーシップを発揮するように求められても、リーダーシップを発揮するのは困難です。従って、リーダーシップを発揮する社員を必要としているのであれば、新入社員のうちから「リーダーシップの発揮」を習慣とする必要があります。記事では、新入社員にフォーカスして、どのようなリーダーシップを発揮してもらうのがよいか、また、リーダーシップを発揮してもらうためのポイントを解説します。

<目次>

新入社員にリーダーシップを発揮してもらうことがなぜ大切なのか?

“新入社員にリーダーシップを発揮してもらう“と言うと、もしかしたらこのような疑問が浮かんでくるかもしれません。

 

「新入社員にとって、リーダーシップを発揮するのは荷が重いのではないだろうか?」「新入社員にとっての“リーダーシップ”とは、そもそもどのようなものなのか?」

「自分の会社の新入社員にも、リーダーシップを身に付けてもらうのは可能なのか?」

 

こういった疑問が浮かぶこともあるかもしれません。まずはこの章では、“それでもなぜ新入社員にリーダーシップを発揮してもらうのが必要なのか”をお伝えします。

 

 

“リーダーシップの発揮”を習慣として身に付させることの大切さ

HRドクターを運営する株式会社ジェイックでは、毎年数多くの企業で、若手の採用支援や新人社員研修をおこなっています。採用や教育の支援でご縁をいただくと、経営者や人事の方から、新人や若手に期待するリーダーシップや次世代リーダーの育成についてご相談いただいたり、考えを伺ったりすることがよくあります。

 

職種や業界によって、求める行動には違いがあり、新人のうちから“自ら考えて決めて行動する”ことを求める企業もあれば、逆に、“新人のうちは、言われたことをしっかりやって吸収してくれればよい”という企業もあります。また、早期から素質を感じる新人は選抜してリーダー教育をしているところもありますし、企業によって考え方や取り組みは様々です。

 

ただ、新入社員のうちから強いリーダーシップを求めるか、入社3~5年ぐらいまでは知識や段取りを吸収することにウェイトが置かれるかの違いはありますが、どの企業でも、1人前の社員には“リーダーシップ”を求めることは共通です。

 

記事の冒頭でも紹介した通り、“リーダーシップの発揮”とは一種の習慣です。自ら考える習慣、自ら決める習慣、自らの責任を広げる習慣…それらの積み重ねが“リーダーシップの発揮”です。従って、新入社員に求める行動には会社によって差はありますが、求める範囲の中で、“リーダーシップの発揮”を習慣として身に付けさせる必要があるのです。

 

習慣形成だからこそ、“鉄は熱いうちに打つ”ことが重要

“リーダーシップの発揮”を習慣として身に付けられなかった新入社員はどうなるでしょうか。早期に強いリーダーシップを求められる会社であれば、率先垂範したり、周囲を巻き込んだり、周囲の力を借りたりすることができない新人は、徐々に放置され、積極的には相手にされなくなっていきます。そして、同期にリーダーシップを発揮して成果をあげる人が次々と出始めると、比較され、“イマイチ”“消極的”とネガティブなレッテルを貼られ、チャンスを掴みづらくなっていきます。

 

「新人の数年間は先輩や上司の仕事を見ながら、知識や段取りを覚えていけばいい」という会社ではどうでしょうか。早期に強いリーダーシップを求める会社ほど、周囲からの評価に差がつくことは少ないかもしれません。しかし、知識や段取りを覚えて、1人前になって、“リーダーシップの発揮”を求められるときに大変になります。

 

繰り返しになりますが、“リーダーシップの発揮”とは一種の習慣です。いままでなかった習慣を急に身に付ける、しかも、いままでの“リーダーシップを発揮しない習慣”を矯正して、“リーダーシップの発揮”という新たな習慣を身に付けることは非常に困難です。知識や段取りだけが身に付いて、リーダーシップを発揮できないと、“前例踏襲”、“事なかれ主義”の社員になってしまいます。

 

従って、新入社員の段階で求められる言動は会社によって差はありますが、その範囲内で“リーダーシップを発揮”する習慣をしっかりと身に付けさせることが大切なのです。

新入社員にとっての“リーダーシップ”とは?

新入社員のうちから、リーダーシップを発揮してもらうことの重要性は前の章でお伝えしました。この章では、新入社員に発揮してもらうべき“リーダーシップ”とはそもそも何か、“リーダーシップを発揮させる”ポイントを解説します。

 

 

新入社員に発揮して欲しい“リーダーシップ”とは何か?

新入社員に「リーダーシップとは何か?」と聞いても、どんな答えが返ってくるでしょうか。恐らく、「周りをリードする」「周囲を引っ張っていく人」「チームのモチベーションを上げること」など、“周囲に対して影響力を発揮する”という返答が多いでしょう。

 

確かに、“リーダーシップ“という言葉の意味をウェブで検索すると、「ビジョンを示す」や「チームを引っ張る」という定義が多く、一般的な意味としては新入社員が回答する通りです。しかし、“周囲をリードする影響力の発揮”は、新入社員に求められる役割ではありません。

 

では、新入社員に求められる“リーダーシップ”はなんでしょう?それは、“セルフリーダーシップ”であり、“自分自身の言動に対する影響力の発揮”です。具体的な言動のレベルにすると、「周囲へのコミュニケーション(報連相や質問)」「自主学習」「自分ができることを探す」の3点になります。

 

3つに共通することは、「自分発信」ということです。“自ら”コミュニケーションを取る、“自ら”学ぶ、“自ら”できることを探して行動することで、自分自身を成長させ、成果を出すのです。「考えて意思決定して、“自らを動かす”」ということが新入社員に求められるセルフリーダーシップです。

 

 

新入社員のリーダーシップを正しい方向に導くために大切なこと

2年後、3年後を見据えて、新入社員のリーダーシップを育てるためには、“セルフリーダーシップ”を発揮する2つの軸として、「成長するために何をするか?」、そして、「組織や顧客の成果に貢献するために何ができるか?」という思考の軸を持たせることが大切です。

 

「成長」と「成果」、2つの軸を持たせることが、リーダーシップの発揮が正しい方向へと導かれます。少しずつ経験を積んでいく中で、「成果に貢献するために、どういう成長をする必要があるか」ということを考えられるようになれば理想でしょう。

 

ただし、最初からそう考えられる新入社員はいません。ここには、上司や先輩からの働きかけが必要です。例えば、会議の場で議事録を取る、ということに対して、『議事録を取ることで、上司や先輩が会議に集中しやすく、また、後で決定やtodoを振り返ることが容易になる。同時に、議事録を取ることで、会議で話されている内容や意思決定の流れを理解できるようになる、また、上司やエースがどんな判断基準や思考パターンを持っているかを吸収することができる』と、「成長」と「貢献」の2軸で仕事に意味付けをするのです。

 

 

繰り返すうちに、自らができることを探す等のセルフリーダーシップを発揮する際に、「成長」と「貢献」の2軸で考えることが身に付いてくるでしょう。成長と貢献の2軸でセルフリーダーシップを発揮できるようになれば、本人の実力が高まるに連れて、影響の範囲を周囲へと広げることは容易です。

新入社員にリーダーシップを発揮させる3つのポイント

この章では、もう少し具体的に新入社員にリーダーシップを発揮させるために、上司や先輩が取るとよいコミュニケーションや指導のポイント3つを紹介します。

 

 

新入社員にリーダーシップを発揮してもらうポイント① チーム・組織内のコミュニケーションを増やす

ポイントの1つ目は、日頃からチームや組織内のコミュニケーション量を意図的に増やすことです。普段からメンバー同士でコミュニケーションを交わしやすい組織風土や関係性があると、新入社員にとって「行動する」ハードルが大きく下がります。

 

経験のない新入社員が3つのセルフリーダーシップ行動、「周囲へのコミュニケーション(報連相や質問)」「自主学習」「自分ができることを探す」を実行するには、多くの場合、上司や先輩に訊く・相談・確認するといった行動が必要になります。従って、新入社員にリーダーシップを発揮させるうえで、コミュニケーションを取りやすい環境作りが、上司や先輩社員の仕事として重要になるのです。

 

新型コロナウイルスの影響は、テレワークが導入された職場ではとりわけ重要です。リアルの職場がなくなり、お互いに顔を合わせる機会が少なくなることは、上司や先輩の想像以上に、“新人からのコミュニケーション”が取りにくい状況を生んでいます。チャット上でのコミュニケーションを活発にしたり、話す時間を定期的に作ったり、日報への変身をおこなう等をして、普段からコミュニケーションを取りやすい場作りをすることが大切です。

 

 

新入社員にリーダーシップを発揮してもらうポイント② 「上司をマネジメントする」視点を持たせる

2つ目のポイントは、「上司をマネジメントする」という視点を持たせることです。実際には、上司をマネジメントするということは、非常に難易度が高い仕事です…。ただし。新入社員であっても、“上司をマネジメントする”視点を持たせることで、セルフリーダーシップを「貢献」へと向かせることができます。

 

ここでの「マネジメント」は、“上司や先輩の仕事をよく見る”ということです。上司や先輩の目標は何か?その目標を達成するためにどんなプロセスをおこなっているのか?プロセスをスムーズに実行するために何が大事で、何が障害になるか?上司や先輩はいま何に関心があるか?上司や先輩はどんな判断基準で意思決定しているのか?といったことに興味・関心を向けるということです。

 

上司や先輩の仕事をよく見て知るからこそ、報連相や質問の質が上がり、学習の方向性がぶれなくなります。また、上司や先輩の仕事をよく見るから、その中で「自分にできる」ことを探すことができます。新入社員に「上司をマネジメントする」といっても、はじめはよく分からないかもしれません。ただ、繰り返し「上司をマネジメントする」という考え方と視点を解説してあげることで、少しずつ理解できるようになっていくでしょう。

 

 

新入社員にリーダーシップを発揮してもらうポイント③ リーダーシップの発揮にフィードバックを与える

3つ目のポイントは、新入社員が発揮したセルフリーダーシップに対して、必ずフィードバックを与えるということです。これは非常に大切なポイントです。ここで大事なことは、行動のレベルや内容へのフィードバック以上に、“リーダーシップの発揮”に対してポジティブなフィードバックを与えることです。

 

例えば、ファシリテーションに熟練した講師やスピーカーは、研修やセミナーなどにおいて、参加者から質問があると、質問に答える前に、必ず「いい質問ですね」「いい質問をありがとうございます」と、質問をしてくれたことを承認します。「質問をする」という“リーダーシップの発揮”を承認することで、次の質問が出やすくなる、他の参加者も質問をしやすくなることを分かっているのです。

 

HRドクターを運営するジェイックでも、新入社員研修においては、受講生に意見を求めて、挙手があったり、積極的に発言をした人がいたりした場合には、発言内容の正否ではなく、まずは“行動自体”を積極的に承認します。経験のない新入社員は発言の内容、行動の中身については、上司や先輩が望むものではないことも多いかもしれません。しかし、内容ではなく、まずはリーダーシップの発揮を承認することで、行動した受講者本人、また、他の受講生達は触発され、2日間の研修が終わる頃には、人が変わったように、積極性を発揮します。

 

2つの事例からも分かるように、上司や先輩の働きかけ次第で、相手のリーダーシップを発揮させることは可能です。中身の正否ではなく、まずはセルフリーダーシップの発揮をぜひ承認してください(もちろん、中身についても必要あればフィードバックします)。

おわりに

変化が激しく、産業がサービス化する中で、すべての社員にリーダーシップを発揮して欲しいと考える経営者、組織は年々増加しています。“リーダーシップの発揮”というと大層なものに聞こえますが、思考や行動、意思決定の習慣です。習慣であるからこそ、新入社員のうちからしっかりと鍛え、身に付けさせることが必要です。

 

新入社員に求められるリーダーシップとは、まずは“自分自身の言動に対するリーダーシップ”、すなわち、“セルフリーダーシップ”です。もう一段落とし込むと、「周囲とのコミュニケーション(報連相や質問)」「自らを成長させるための学び」「組織やチームに対して自分ができる貢献を探す」という3つの言動です。

 

新入社員にリーダーシップを発揮してもらうためには、「上司をマネジメントする」という視点を教えるとともに、まずはコミュニケーションしやすい環境を作ること、そして、リーダーシップの発揮に対してポジティブなフィードバックをおこなうことが大切です。記事の内容が、リーダーシップを発揮して、活躍する新入社員を育てる参考になれば幸いです。

著者情報

東宮 美樹

株式会社ジェイック 執行役員

東宮 美樹

筑波大学第一学群社会学類を卒業後、ハウス食品株式会社に入社。営業職として勤務した後、HR企業に転職。約3,000人の求職者のカウンセリングを体験。2006年にジェイック入社「研修講師」としてのキャリアをスタート。コーチング研修や「7つの習慣®」研修をはじめ、新人・若手研修から管理職のトレーニングまで幅広い研修に登壇。2014年には前例のない「リピート率100%」を達成。2015年に社員教育事業の事業責任者に就任。

著書、登壇セミナー

・新入社員の特徴と育成ポイント
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