本記事は、全2部構成でお送りします。Vol.1は下記よりどうぞ。
<目次>
キャリア安全性を高める3つのポイント
ここからはキャリア安全性の高め方について話していきます。
組織によって、また、その中でも部署や上司によってもキャリア安全性の高い低いが生じます。また、働く新人や若手が主体的に仕事に取り組まなければキャリア安全性は実現しませんので、問題は複合的になってきます。
ただし、間違いなく言えるのは、会社としてキャリアの支援やアドバイスができる環境を整えることが必須の時代になってきているということです。
そして、心理的安全性はもちろん大切です。しかし、心理的安全性をはき違えて“個人がワガママを言えるだけの職場”になってしまうと、結局若手は定着しませんし、組織としてもパフォーマンスが上がらないということです。だからこそ、キャリア安全性を高めることが必須なのです。
キャリア安全性を高めるうえでは、キャリア安全性がどんな要素に分解できるのか、どうすれば高められるのかを理解することが始まりです。
キャリア安全性を校正する要素は、大きく時間視座、市場視座、比較視座という3つの視座に細分化できます。
職場ごとに、どの視座が充足していて、どの点が足りてないかを振り返って、手を打っていくことが大切です。
①時間視座
時間視座は「このまま職場で働き続けたときに、キャリア形成できるか?」という視点です。時間視座の視点でキャリア安全性が低い職場と言うのは「変化やチャレンジが少ない」職場です。
たとえば歴史がある安定企業では、同じ仕事を10年近く経験しないとキャリアの変化が起こらないというケースもあるでしょう。今の時代、こういう会社では、時間軸が長すぎると感じられたり、成長できないと感じられてしまったりするということです。
また、採用段階で「こういうキャリア形成が実現できます」と面接で話していても、現場に配属されるとキャリアが見えなくなってしまうこともあります。
当然、事業やビジネスモデルによっては新人や若手のうちに大きい仕事を任せられない、昇格はできないという場合もあるでしょう。そうした場合も、2-3年ぐらいの時間軸でどうキャリア形成に向けた変化やキャリアビジョンを描けるようにするかが重要なポイントになってきます。
②市場視座
市場視座は、“市場価値”ということで「他社で通用するのか?」という視点です。
たとえば「今の仕事は、今の会社特有の経験なので、違う環境では活躍できないのではないか…」といった不安が生じるというのは、市場視座の観点でキャリア安全性が低いということです。
とくに新卒で入社した人は、入社3-4年経過して仕事に慣れたころに市場視座の不安が生じやすくなります。
なぜかというと、新卒は自分自身の市場価値やキャリアが客観視できないからです。基準がないからこそ、キャリアや成長を客観視させることが大切になります。
客観視できてないと「もっと給与が欲しい」とか「この評価はおかしい」という声が出てきてしまいます。逆に、最近は力がついているのに「自信がない」と感じている若手も増えています。自分自身のキャリアや市場価値を客観視させる機会を与えることが非常に重要なポイントです。
③比較視座
比較視座は、市場視座と少し近い概念ですが、市場価値と違うのは「自分の知り合いと比べた時にキャリア形成できているのか・・・」という視座であることです。
例えば、ゴールデンウィークや夏季休暇のタイミングは、大学の同期などと話す機会も多くなります。そこで友人・知人と比較する中で「自分はスキルが溜まっていないのではないか」と不安になって早期離職してしまう方もいらっしゃいます。
こういう場合は事業部横断で交流機会を与えた方が良いでしょう。また、他社の若手との交流、他社への出向、他社との合同研修やオープン研修への派遣なども良いでしょう。
最近は、越境留学といって他社で働く機会を与えている会社もあるぐらいで、定期的に“外”と触れ合える学習機会を与えないと、同期や同世代の話の中で誤った判断をしてしまうことも出てきます。
現在は、SNSなどを通じて“隣の青い芝生”の情報がいくらでも入ってくる時代です。市場視座と同じで、客観的な視点を持てるようにしないと偏った視座や情報だけで離職を決めてしまうこともあります。
キャリア安全性を高める具体施策
次に時間・市場・比較という3つの視座を高めるために、具体的にどんな施策をできるのかを解説していきます。下記はキャリア安全性を高めるための施策例です。
最近は、キャリア開発研修を実施する企業が非常に増えています。
Z世代の若手対象のキャリア開発研修を実施する企業はもちろん、ミドルやシニアに対して教育をやっている会社も増えています。とくに従業員の年齢構成を見た時にミドルやシニアの比率が多い会社ほど、会社として給与が高い方々にもう一段成長・パフォーマンスしてもらいたいと考えて、ミドル・シニア向けのキャリア自律を促している傾向にあります。
また、現場での創意工夫やイノベーション、ソリューション提案が求められる傾向が強まる中で、キャリア自律を通して、自身の仕事や成長に対してより主体的に考えてもらう必要があると考えている企業も増えています。
他には最近増えているケースは「若手の離職傾向が今まで少し変わってきた」「優秀層から抜けていく」といった相談でキャリア研修を実施するケースで、これは先ほどの3:Looseに近いような職場です(なお、キャリア安全性は「本人がどう感じているか?」ですので、キャリア安全性が低い職場が必ずしもキャリア形成できない職場ではありません)。
また、上司からのフィードバックはもちろん大切です。キャリア研修だけ実施しても「現場での受け皿がない」「上司が部下のキャリアについて建設的なフィードバックができない」「管理職がキャリア面談の仕方がわからない」「上司自身がキャリア自律していない」といった状況では上手くいきません。
とくに形だけ1on1の制度を導入しても、上司のアドバイスがずれていたり、業務レビューになってしまっていたりすると、逆に上司のフィードバックが「この会社ではダメだな」と転職を決意させる最後の決め手になってしまうこともあります。
また、キャリアコンサルタントによる外部のキャリア相談窓口を設けることも有効です。社内にキャリア相談をできる人事を置いたり、上司の1on1を導入したりすることも良いですが、どうしても社内だと「相談しにくい・・・」という心理が生まれます。
また、社内からのアドバイスだと「会社の人だからな。社内でキャリア形成できる、キャリア安全性があると言うよね…」と思われてしまう部分もあります。
だからこそ、社内と社外を組み合わせて、社外のフラットな視座を持った専門家に本音でキャリアの相談をできる機会を作ることが有効です。
他にもキャリア安全性を高める施策としては、スキル獲得に向けた配置・異動を促す仕掛け、自分が望むキャリア形成を実現できる機会となる社内公募制度もあります。また、資格取得などの支援も有効でしょう。
ただし、各施策がぶつ切りにならないように注意することも大切です。キャリア自律を促す仕組み、描いたキャリアビジョンを実現するための仕掛け、社内の仕掛けと社外接点の仕掛けなど、全体像を考えて複合的にやることでキャリア安全性が高まっていきます。
しかし実際には、施策がぶつ切りになってしまったり、うまく融合させたりしたデザインができていない企業もまだ多い印象です。
働きがいが高い会社の9割がキャリア自律への取り組みを実施
HR分野で働いている方であれば、働きがいのある会社研究所が「Great Place To Work®;働きがいのある会社」ランキングを発表していることをご存じの方も多いかもしれません。
弊社も何年も入賞しているのですが、「働きがいがある会社」ランキングと相関があるデータが出ておりまして、それが「キャリア自立への取り組み」を実施しているかどうかです。
「働きがいがある会社」ランキングに入賞されている企業は、9割が「キャリア自立への取り組み」を実施しています。一方で、ランキングに応募したが不認定になった会社は実施率8割となっています。
不認定の会社も自ら「働きがいのある会社」ランキングに応募する企業ですので、働きがいを生み出すための取り組みを実施している企業です。ただ、その中でもキャリア自律への取り組み実施で差が出るというというのは面白いデータです。
仕事での重要な意思決定に参画できているという実感がある、管理者層への信頼がある、仕事に対する誇りを持てている会社は、キャリア自律への取り組みを積極的に行っています。
やはり従業員が成長する場や機会を会社が与えたとしても、社員が自分のキャリアや学び、成長に対して主体的になっていないと、極端にはそれらの施策も無駄になってしまいます。キャリア安全性を高める上でも、キャリア自律は入り口になるものだといえるでしょう。
キャリア自律支援を促すキャリア研修
弊社でも多くの会社にキャリア研修を提供していますが、最近の潮流として人気があるキャリア研修が下記のものです。
「うちの会社は社内公募制度もあり、社員からも応募がどんどん入っている。キャリア支援に関する様々な支援も充実している」という会社は良いですが、実態はそんなに簡単ではありません。
異動希望を叶えられる確率が高いわけでもないし、部署や職種のバリエーションにも限界があるでしょう。
従って、「今の仕事に対して主体的に取り組んで欲しい」という働きかけをする必要があるわけですが、ただひたすら「そこで頑張れば大丈夫」と言ってもキャリアや成長をイメージできない社員が多いでしょう。そして、自信喪失やマンネリ化が生じ、キャリア安全性も低下するわけです。
その中で、「強み」にフォーカスすることで、キャリアビジョンやキャリア形成の抽象度を高め、主体的に仕事に対して取り組めるようにするキャリア研修が、いま非常に人気があります。
「強み」と言っても難しいものではなく、ストレングス・ファインダー®という世界で一番使われている才能診断を使ったキャリア研修です。
ストレングス・ファインダー®の診断結果を踏まえて、自分の持ち味や強みにフォーカスした能力開発をすることで幸福度が3倍高くなるというデータもあります。
また、生産性やエンゲージメントも高くなりますし、異動が叶わなくても、今の仕事に対して自分らしい意味や取り組み方を見出せるようになります。いわゆるジョブクラフティングの概念です。
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キャリア安全性を高めるためのキャリア面談
もう1つ、弊社が提供しているのが「Kakedas(カケダス)」というキャリア面談のサービスです。
社内での1on1や人事によるキャリア相談窓口は有効な施策です。なぜなら悩みを理解しやすく、解決策を提案しやすいからです。一方で、どうしても上司や人事や“社内の人”であり、利害関係が生じます。
キャリア相談といった時、多くの人はいきなり前向きで明確なキャリア希望が出てくるわけではなく、漠然とした不安や悩みがあり、その中に大切にしたい価値観や叶えたいキャリアイメージが混在しています。
Kakedasは、国家資格を持ったプロのキャリアコンサルタントが従業員の悩みを傾聴し、その中から前向きな価値観や意思を引き出します。
Kakedasでは、それぞれのキャリア面談、対話内容を個人が特定できない形で分析しています。それを見ると、Z世代の相談では、人間関係や「自分自身が思ったよりも成長できていないのではないか」といった悩みが増えています。
そして「社内では相談できていない」という声もかなり多くあります。
なぜ会社や上司に相談しないのかというと、悩みの対象である人間関係の中に上司が入っているケース、「上司と合わないとは社内で言えない」「ネガティブなことを言ったら評価が下がるのではないか」と悩んで抱え込んでしまうといった要因です。
繰り返しになりますが、キャリアについていきなり前向きで明確なキャリア希望が出てくる人は多くありません。大抵の場合、目の前の悩みや漠然とした不安があり、その中に大切にしたい価値観や叶えたいキャリアイメージが混在しているのです。
この時、表面的に前向きな声だけを言わせてもキャリア自律は生まれません。漠然とした悩みや感情もすべて吐き出して専門家に整理してもらうことで、前向きな意思が前面に出てきます。
また、キャリア支援をすべて現場の上司任せにしてしまうと管理職の負荷も重くなります。だからこそ、社内と社外を組み合わせて、外部の第三者に吐き出してキャリアイメージや前向きな意思が明確になった上で、人事や上司に相談することで、建設的な意見交換やフィードバックもしやすくなります。
Kakedasは、累計で国家資格キャリアコンサルタント2,700人以上が登録しており、そこから絞りこんだうえで、従業員1人1人と相性が合うキャリアコンサルタントをAIでマッチングして、自分自身のキャリアについて相談することができます。オンラインで、平日日中の業務時間内はもちろん、夜間も土日でも面談対応が可能です。
もちろん転職斡旋はしませんし、企業側には個人を特定しない形で相談内容を分析、他社との比較などを実施した組織開発の参考となるレポートを提供します。
キャリアに関する問題は、組織や上司によって違い、従業員によっても異なりますし、会社のカルチャーも影響してきます。また、悩みが表に出にくいという特徴もあり、人事や経営層からすると実態をつかみにくいという点があります。
しかし、Kakedasのキャリアコンサルタントは第三者であり、かつ守秘義務を持っており、個人がどういうご相談をしているか外部には開示されません。だからこそ各従業員が本音を話してくれるわけです。
同時に、Kakedasではすべての対話をテキスト化し、個人を特定できない形で分析してレポートにします。60分の対話の中で引き出された従業員の本音や悩みが何かを他社比較のもとにデータで解析できますので、もしご興味があればお問い合わせください。
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