従業員のキャリア自律の促進による人的資本経営の実現や、キャリア安全性を高めることでの離職防止といった流れがある中で、社内にキャリア相談窓口を設置する大手企業が増えています。
一方で、社内相談窓口だと、「社内相談だと心理的安全性が確保されない」という問題により設置した窓口が使われないという課題、また、企業規模が大きいと人事の工数が圧迫されるといった問題もあります。そこで、最近は「社外のキャリア相談窓口」を選択、また、社内と社外を併用するケースも増えています。
記事では、社外キャリア相談窓口の有効性や、社外キャリア相談窓口のメリット・デメリット、そして、社外キャリア相談窓口の設置サービスを紹介します。
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<目次>
- キャリア相談窓口を設置/検討する企業が増える背景
- 社外キャリア相談窓口が求められる背景
- キャリア相談だけではない社外相談窓口の役割
- 社外キャリア相談窓口のメリット
- キャリア相談窓口は社内と社外の組み合わせが有効
- 法人向け社外キャリア相談窓口サービス「Kakedas」
- 個人向けキャリア相談サービス「Kakedasキャリア相談」
キャリア相談窓口を設置/検討する企業が増える背景
個別でのキャリア相談に対応できるように、キャリア研修の実施だけでなく、社内にキャリア相談窓口を設置する企業も増えています。この背景を確認します。
一番大きな背景は、時代変化です。経済が右肩上がりで終身雇用が当たり前だった昭和の時代には、安定した将来を捨ててリスクの高い転職や独立といった選択肢を取ることは考えづらいものでした。一度就職してしまえば将来は約束されており、ある意味で「キャリアを会社に丸投げ」することができました。
企業側としても高度経済成長・大量生産の時代にはピラミッド型の組織を構築してトップダウンで指揮・監督を行うやり方が、最も効率よく成果を出せる方法でした。そのため、終身雇用と年功序列を保証する代わりに、会社が強い人事権を持ち、誰をどこに配置するのかを決めていく仕組みが効率よい状態でした。
一方で、大手企業でもM&Aが当たり前となり、仕事の分業化、IT化・DXが進む中で、終身雇用と年功序列は完全に崩壊しました。組織もピラミッド型のトップダウン組織から戦略はトップが決めつつも、現場の裁量やイノベーションを重視する価値共創型に変わりつつあります。
現在は、人間の寿命は延びる一方で企業のライフサイクルは短くなり、一生のうちに転職を経験するのは当たり前となりました。一つの会社が個人のキャリアの面倒を見るのは困難となり、労働者個々人が主体となって自らのキャリアを切り開いていくことが求められます。
こうした時代変化を背景に企業がキャリア自律を促進する動きが生じています。背景には以下のような事情があります。
この中で、「キャリアの悩みは価値観やライフステージの変化に伴って生じるものであり、数年に1回のキャリア研修やキャリア面談では、各個人が必要とするタイミングに応えられない」という課題があり、キャリア相談窓口を設置する、設置を検討する企業が増えています。
社外キャリア相談窓口が求められる背景
キャリア相談窓口を設置、また設置を検討する中で、「社外キャリア相談窓口」という選択肢を取る企業が増えているのは、以下のような理由があります。
社内窓口は心理的安全性の確保が難しい
キャリア相談窓口の設置は、キャリアへの不安払拭やエンゲージメントの向上といった目的があります。しかし、こうした目的で社内にキャリア相談窓口を設置したものの、利用率が低迷してしまうケースがよく見受けられます。
なぜなら、キャリアへの不安や不満というのは、裏返すと「現在の職場や働き方への不満」という要素を含んでいることが殆どだからです。その結果、「社内では相談しにくい」という意識が生まれます。
もちろん直属の上司よりも人事の方が相談しやすいことは間違いありません。一方で、直接の利害関係や評価者ではない人事といえども、「会社の人」であり、上司以上に「人事や評価に近い人」です。
そうなると、会社や仕事に対する愚痴や不満になるようなことは言いづらくなります。また、実態はどうあれ、相談者には「人事は会社の人であり、相談しても結局は会社にとって都合の良い方向に誘導されてしまうのではないか」といった心理も生まれがちです。
社内にキャリア相談窓口を設置したときに利用が低迷するのは、こういった心理が背景にあります。安心してキャリア相談するためには、心理的安全性の確保が非常に重要です。そのため、中立的で安心して相談できる場所として社外のキャリア相談窓口という選択肢が取られることが増えています。
なお後述しますが、社外のキャリア相談窓口は心理的安全性を確保できる一方で、社内の人事制度やキャリアパスを把握しておらず、直接的なキャリ支援はしにくいという欠点があります。社内と社外で優劣があるわけではなく、メリット・デメリットを踏まえて組み合わせることが大切です。
人事の人的リソースの限界
社外キャリア相談窓口が検討されるもうひとつの理由として、人事の人的リソースの問題もあります。大手企業であれば、従業員のキャリア相談窓口に専任のリソースを割くことも可能かもしれません。
しかし、数十名~数千名規模の企業では、キャリア相談窓口は組織開発担当の人事などの中で、キャリアコンサルタント資格等を持っている人が兼務で対応する形になりがちです。そうすると、どうしても相談に対応できる件数に限界がありますし、従業員側も「あの人たちも忙しいし…」と気を使ってしまうことも生じます。
また、運用側もキャリア研修や新人や決まった年次へのキャリア面談など、固定的な業務が優先となってしまい、キャリア相談窓口の利用促進にはなかなか手が回らないということになりがちです。
こうした問題の解決につながるのが、外部の専門家を活用することです。外部の専門家にキャリア相談窓口を委託することで、人事は企画や効果検証、社内だからできる施策に集中しやすくなります。また社内で専門家を育成する手間も省け、負担を減らすことができます。
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キャリア相談だけではない社外相談窓口の役割
キャリア相談窓口の設置目的は、主に従業員のキャリア自律を促すことですが、キャリア相談窓口で相談されるテーマは、意外と「キャリア相談」だけではありません。
ハラスメントに関する相談
パワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)により、大企業は2020年6月から、中小企業は2022年4月からハラスメント相談窓口の設置が義務化されています。従って、基本的にはほぼすべての会社にハラスメントの相談窓口はあるはずです。
一方で、社内窓口でのハラスメント相談は、守秘義務を明示していても「相談したことが知られてしまうのではないか」「結局は役職者に甘い/有利な判断になるのではないか」といった猜疑心が働くものです。そのため、相談したくてもしない、自分事ではないので見逃すといったケースが意外と発生します。
社外窓口であれば、相談内容を知られる心配がなく、中立の立場で話を聞いてもらえます。そのため、相談者は安心して利用することができます。
実際にある大手企業では、社外キャリア相談窓口を契約して面談を実施したところ、「個人が特定されないなら…」「絶対に匿名でお願いしたいが、ぜひ人事に伝えてほしい」とパワハラに関する相談が複数寄せられたケースもありました。
このように「社内窓口」は、どうしても「組織の一員」と見られてしまい、意外とハラスメント等の相談が届かないケースもあります。
人間関係の相談
昔から離職につながる大きな要因の一つとして、職場の人間関係があげられます。キャリア形成に関しても、描いたキャリアプランの通りにキャリア形成できるかどうかは、スキルや経験だけでなく、職場の人間関係にも影響を受けます。
しかし、今の時代は価値観や考え方も多様化しており、認識のすれ違いが多く発生するようになっています。とりわけ昭和世代と令和世代には大きな価値観のギャップがあり、考え方や意見が食い違うということも出てきます。
上司側は指導のつもりでも、部下はパワハラと捉えているケースもあります。そして、最近は、逆に上司側が「パワハラになるとまずい」と積極的な指導を控えてしまい、部下が「この職場でこのまま働いても成長できないのではないか」「もっと指導して欲しい」と思っている場合もあります。とくに大手企業×優秀層ほど、上記のようなケースが生じがちです。
社外キャリア相談窓口では、このような人間関係に関する相談に客観的なフィードバックを返すことで、組織内のコミュニケーションが円滑になるようにする役目も担うことができます。
従業員のメンタルケア
仕事のストレスによるメンタル不調も、離職にいたる大きな要因です。完全にメンタルダウンしてしまう前に従業員の異変に気づき、適切なケアをすることが重要です。
業務のIT化に加えて、生成AIがビジネスの世界に普及してきた中で、一人がより多くの仕事をこなす必要があるだけでなく、仕事に求められるレベルも高く、高度な知識や感情労働が必要になっています。その中で、従業員が抱える精神的なストレスは非常に大きなものです。
メンタルに不調を抱える人が増えれば、個人的なパフォーマンスの低下のみならず、職場全体の士気の低下も招きかねません。企業としても、組織全体のパフォーマンスにも悪影響を及ぼす可能性が出てきます。
「潰れてしまう前に相談しに来て欲しい」と思っている上司も多いかもしれません。しかし、部下は上司に「相談したい」とは思っても、評価者である上司には直接言いづらい面があります。
また、日本人は真面目で責任感が強い傾向があり、負担を減らしてもらうように上司に相談するのは責任を果たせていないと感じてしまう人も多くいます。「周囲に迷惑をかけるわけにもいかない」と誰にも相談できずに一人で抱え込んでしまうようなタイプです。上司や管理職が、仕事の量や質について従業員がどう感じているのかを正確に把握するのは困難です。
こうした職場のストレス状況の把握にも、社外キャリア相談窓口が役に立ちます。守秘義務を持った第三者である専門家が、相談者の本音を受け止めて気持ちを整理してくれます。辛さの感情を吐き出せる場所があることでメンタル的な負担が軽減し、気持ちを前向きに切り替えやすくなります。
組織の側も、個人を特定しない形で面談結果をレポートにまとめてフィードバックしてもらえれば、従業員のストレス状況などを知ることもでき、メンタルヘルス施策につなげることができます。
プライベートの悩み
キャリア相談窓口で意外と多いのが、プライベートに関連する悩みです。たとえば、女性であれば結婚や出産などのライフイベントとキャリア形成、また子育てと仕事の両立といった悩みが生じがちです。しかし、こうした悩みは上司には相談しにくいものです。とくに上司が男性の場合には「相談してもムダ」と思われがちです。
また、若手であれば、漠然としたキャリア不安や、キャリアビジョンがないことによる不安の相談に加えて、昔ほど単身赴任や転勤をすんなり受け入れる時代ではなくなった中で、自身やパートナーの転勤予定等に伴う転職相談といったケースも増えています。
ミドルになると、性別を問わず、家庭や子育て、介護などの相談が出てきます。さらにシニア層などの場合には、役職定年や定年までの期間が具体的に見えてきた中で、年収低下に伴う不安や時間の使い方、定年後の人生相談といったテーマも意外と生じます。
社外キャリア相談窓口のメリット
ここまでに言及した点をまとめると、社外キャリア相談窓口を設置するメリットは以下のような点です。
心理的安全性が確保しやすく話しやすい
相談の有効性を高めるためには、何でも素直に話すことができる心理的安全性をいかに確保するかが大事です。感じていることや思っていることを全て吐き出して整理することができる環境であるかどうかは、相談の満足度を左右します。
同じ社内の人が相談相手だと、社内の文化や制度、考え方といったバックグラウンドの共有ができているため話が通じやすくなります。社内の事情にも精通しているため、細かく話す必要もありません。一方で、身内であるがゆえの言いづらさが出てきます。
キャリア相談のテーマは現状の組織・働き方・待遇・人間関係への不安や不満」といったものから始まることが大半です。そこで感情的なものも含めて本音を話すことで、理性的、また前向きに考えることが出来るようになります。しかし、感情的な不満等を押さえて表面的な話だけをしていると、内製が深まらず、気づきや理性は生まれません。
社外キャリア相談窓口では、守秘義務を持った第三者が相談相手となることで、抱え込んでしまった愚痴や不満を安心して吐き出すことができます。キャリアコンサルタントがメンタル面でのケアをするとともに感情の言語化をサポートしてくれることで、自己理解を深めることが可能になります。
生き方やライフプランまで幅広く相談に乗ってもらえる
「会社の仕事を優先して人生を過ごす」という時代と異なり、価値観が多様化した今の時代にはワークライフバランスを重視するという人が増えています。結婚、育児、介護といったライフステージの変化や、社会人としての経験を積んでいく中で「このままで本当に自分は幸せなのか?」といった疑問がわいてくることもあります。
仕事とプライベートのバランスを取るにしても、仕事量や人員の調節を必要とするような相談内容は、どうしても社内では相談しづらいものです。自分の評価に悪影響が出ることへの恐れや「周囲に迷惑をかけるのは申し訳ない」という気持ちが出てきてしまいます。
また、「独立して起業したい」といった要望に対しても、社内での相談では引き留められる可能性が高くなります。利害関係のない第三者が相談相手となることで、気持ちや感情を歪めることなく言語化して整理することができます。そうしてあるがままの自分と向き合うことで自己理解が深まります。
転職を前提としないキャリア相談
企業としてキャリア相談窓口を社外に設置する場合、当然その窓口は転職が前提となるものではなく、フラットな立場で相談に対応します。
一方で、個人がキャリア不安を抱えて、「この職場でいいのか?」「このまま過ごしても成長しないのではないか?」「自分の市場価値はどれぐらいなのか?」と考えた時、無料で使えるキャリア相談は、多くの場合人材紹介会社が提供しているものです。
人材紹介会社が悪いわけではありません。但し、人材紹介会社は転職支援の成果報酬を収益とするビジネスモデルであり、無料のキャリア相談は求職者登録の促進策であることも事実です。どうしても「転職することでキャリアビジョンが叶う、待遇が向上する、キャンセルを得られる」という方向に話が行きがちです。本当にフラットな立場でキャリア相談に乗れるのは、高い職業倫理と見識を持ったエージェントに限られます。
キャリア不安を抱いた従業員が人材紹介会社に登録して、気づいたら転職する方向に話が進んでいるというケースはかなり発生しています。企業として使いやすい社外キャリア相談窓口を設置することで、人材紹介会社に相談に行く前、本当にフラットな立場でのキャリア相談を提供することができます。
キャリア相談窓口は社内と社外の組み合わせが有効
キャリア相談窓口は、社内と社外の両方を組み合わせることで、従業員の選択の幅を広げるだけではなく、併用による相乗効果を生み出すことができます。
社外窓口には、相談しやすい、本音を話しやすいといったメリットがあります。こうしたメリットがあることから、迷った時には積極的に活用しやすいものです。本音を話せることで自分の気持ちと向き合えるようになり、正しく自己理解を深めることができます。「自分と向き合って考える」機会としては、社外窓口が有効です。
しかし、メリットの一方で社外窓口は社内の実情や人事制度を十分理解できていないという欠点があります。そのため、実務的な解決支援を提供することは難しく、あくまで本人の行動を促すまでに留まります。
これに対して社内窓口は、相談するまでの心理的なハードルや心理的安全性の課題はありますが、人事制度や実情を把握しており、直接的な解決支援も期待できます。
同じキャリア相談窓口でも社外窓口と社内窓口は、強みと弱みが異なります。ニーズに合わせて適切な方を選べるようにすることで、利用者の満足につながる相談を実施しやすくなります。「社外の相談窓口で自分の気持ちを整理してもらってから、解決支援を望む人は社内窓口で対応する」という位置づけにすることで、リソースを押さえながら社内だからできるキャリア支援を実施することが可能になります。
法人向け社外キャリア相談窓口サービス「Kakedas」
HRドクターを運営するジェイックグループでは、法人向けに社外キャリア相談窓口サービス「Kakedas」を提供しています。
Kakedasには3,040人(2024年10月1日現在)の国家資格キャリアコンサルタントが登録しており、日本トップレベルのキャリア相談プラットフォームです。面談対応するキャリアコンサルタントは、国家資格有資格者であることは前提として、十分な面談経験を持ち、Kakedasの審査を通過した人のみです。多様な業界や職種、また役員やマネジメント経験者、海外駐在、育児経験者、独立起業経験者など、様々な経験を有したキャリアコンサルタントが登録しています。
Kakedasでは、こうした多種多様なキャリアコンサルタントの中から診断テストに基づき、AIが相談者に相性の良いキャリアコンサルタントの候補を提案してくれます。相談者は提案された候補の中からプロフィールを見て自分が相談したい人を選ぶことも、経験業界や職種・キーワードなどで検索してキャリアコンサルタントを指名することもできます。
相性の良いキャリアコンサルタントが寄り添って気持ちや思考の言語化をサポートしてくれることで、キャリアに対するモヤモヤを解消したり、不満を受け止めて気持ちを楽にしたりしてくれます。
Kakedasでは、相談者へのアンケート、キャリアコンサルタントのレポート、対話内容を分析して、個人を特定しないレポート形式で企業にフィードバックします。レポートを参考に、職場環境の改善につなげたり、従業員が抱えるキャリアの課題を把握したりすることも可能です。
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個人向けキャリア相談サービス「Kakedasキャリア相談」
社外の人に仕事の愚痴や不満を聞いてもらいたいと思っても、会社では社外キャリア相談窓口が設置されていないということもあります。そのような人に対して、転職を前提とせず、1回からでも使えるキャリ相談サービスが「Kakedasキャリア相談」です。
「Kakedasキャリア相談」は、法人向けの社外キャリア相談窓口を提供する「Kakedas」の個人向けサービスです。登録されているキャリアコンサルタントは法人向けサービスと同じであり、様々なバックグラウンドを有するキャリアコンサルタントを任意で選んで指名できます。
キャリア形成であれば同業界や同職種のロールモデル、子育てと仕事の両立であればワーキングマザーの経験者、マネジメントの悩みであれば役職経験者など、テーマに応じて適したキャリアコンサルタントに相談したいものです。Kakedasキャリア相談ではそれが可能です。
自分の悩みを利害関係の無い第三者に本音で相談することで、気持ちを言語化して整理でき、今後どうしていけばいいという方向性を掴むことができます。
面談は回数に応じたチケット制になっており、1回から利用可能です。まずは試してみるなら1回、キャリアプランを描いて実行までつなげるところまでサポートしてもらいたいのであれば3回といった形で、ニーズに応じて相談回数を選ぶことができます。
担当するキャリアコンサルタントが転職を前提に相談を受けるということはなく、今の会社で頑張る、転職する、独立するといった様々な可能性を相談者とともにフラットに考え、「100%相談者のためのキャリア相談」を提供するのがKakedasキャリア相談です。
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