仕事のモチベーションを上げる方法!やる気を下げる原因と対策を解説

更新:2023/07/28

作成:2022/06/23

東宮 美樹

東宮 美樹

株式会社ジェイック 執行役員

仕事のモチベーションを下げる原因と対策は?やる気を高める方法を解説!

社員の仕事に対するモチベーションを高めるには、まず「何がモチベーションを下げているのか」という原因を理解することが重要です。

 

原因を理解することで、モチベーションを上げるための対策ができるとともに、モチベーションの高め方も導き出せるようになります。また、モチベーションには人の欲求が深く関係していますので、欲求理論を踏まえたうえで取り組むとより効果的です。

 

本記事では、モチベーションに関する理論の紹介を交えながら、社員のモチベーションを高めるための方法を詳しく解説していきます。

<目次>

仕事のモチベーションが下がる原因と上げる方法

モチベーションが破壊されるイメージ

 

社員の仕事に対するモチベーションが下がってしまうのは、以下のような原因が挙げられます。

 

やりがいの欠如

仕事にやりがいを感じられないと、「達成感が得られない」「自己実現の欲求が満たされない」といった状況に陥り、仕事が単なる「作業」となり、マンネリ化しがちです。

 

やりがいを生み出すためには、本人の価値観やキャリアビジョンと、企業のミッション・ビジョンを紐づけ、仕事に対して意味付けをすることが大切です。

裁量権の低さ

人は「自己決定権」、つまり自分で物事を決めることで、決めた物事に対するやる気が向上します。逆に、他人に物事を決められると、それが正しいとしても、心理的リアクタンスと呼ばれる効果で、反発が生じます。

 

したがって、適切に権限委譲(エンパワーメント)して、社員に自己決定権を与えていくことがポイントです。

 

低い賃金

賃金は動機づけを考えるうえで、根幹的な内発的動機づけのポイントにはならないかもしれません。ただ、外発的動機づけを考えるうえでは大きな役割を果たしますし、また、動機づけにおける重要な衛生要因として、低い賃金と次に述べる評価への不満はモチベーションの低下につながります。

 

とくに転職が一般化している現代においては、同業界・同経験と比較した際に適切な水準になっていないと、転職を誘発させる原因になるでしょう。

評価への不満

自分の取り組みや成果が評価に反映されない状態では、社員の承認欲求が満たされず、仕事に対するモチベーションが低下します。また、評価は前述した賃金とも紐づきますので、評価への不満は賃金への不満にも直結します。

 

客観的かつ公平感のある人事評価制度・目標管理制度を導入する必要があります。なお、評価は相対的なものであり、「成果が評価されない」状態も不満を生みますが、「成果を挙げていない人が低評価されない」ことも成果を挙げてる人の不満につながりますので、注意が必要です。

 

昇進可能性の低さ

自分が思い描いていたような昇進ができないとなると、挫折感に悩み、モチベーションは一気に下がってしまいます。とくに一定の経験年数を経ている社員ほど挫折感は大きくなりやすいでしょう。

 

社員に挫折感を与えないためにも、昇進の要件を明確化したり、管理職以外の専門職ポストを用意したりするのもおすすめです。昇進昇格は、賃金・評価とも連携していますので、非常に大きな要素です。

コミュニケーションの不足

人は社会的な生き物であり、他人とつながっていないことに不安を感じる傾向があります。したがって、人間関係が悪化したり、コミュニケーションが減少したりすると、モチベーションも下がりやすくなります。

 

モチベーションを上げるためには、感情的なコミュニケーションを発生させる仕掛けや1on1の導入などが効果的です。とくにフルリモートワークになっている場合には、コミュニケーションの不足には注意が必要です。

 

仕事を通じた学び・成長の乏しさ

人は、自己実現のために成長しようとする性質があり、仕事をするうえで学びや成長が乏しいと感じると、モチベーションが下がりやすくなります。とくに優秀層や意欲が高い層ほど、成長実感が得られないとモチベーションが下がり、転職を考えます。

 

新しい能力の開発機会の提供やキャリアサポート、ジョブローテーションなどを導入して、社員が成長できる環境をつくることが大切です。

長時間労働

残業や長時間労働は肉体的・精神的に大きな負担がかかります。長時間労働が続くとモチベーションが下がるだけでなく、社員の健康にも影響をおよぼす可能性があります。

 

働き方改革が進んだなかで、長時間労働が行なわれている職場はかなり減少していますが、労働時間の短縮や多様な働き方の提供、メンタルヘルス対策の導入などが必要です。

 

不安定な雇用形態

近年は非正規社員として働く人の割合が増えています。働き方改革のなかで「同一労働・同一賃金の原則」が促進されるなか、同じ仕事をしているにもかかわらず、雇用形態の違いだけで格差が生じれば、非正規社員のモチベーションは低下しがちです。

企業や事業の成長可能性

企業の将来性や成長の可能性に不安を感じると、社員にとってはマズローの欲求5段階説でいう「安全の欲求」が脅かされている状態となります。企業の成長を社員に実感してもらうためにも、経営戦略や目標、ミッション・ビジョンを共有し、全社員に浸透させることが効果的です。

 

重すぎる責任

社員に責任感を持たせることは大切ですが、重すぎる責任はストレスや負担となり、結果としてモチベーションの低下につながります。ポジションや能力に見合った責任を負わせることが重要です。

 

なかには責任に対して過度のプレッシャーを感じ、能力を発揮できなくなるタイプの人材もいますので、特性に応じたポジションや仕事の割り振りをすることも大切です。

モチベーションとは何か?

モチベーションは、ビジネス場面において何となく「やる気」のような感覚で使われている部分もあります。しかし、本来の「モチベーション」は心理学的にかなりしっかりと分析されているものです。

 

モチベーションの定義やモチベーションに関する基礎的な理論を知っておくことは、社員のモチベーションアップなどに役立ちます。

 

そもそもモチベーションとは?

モチベーションは、「人が行動を起こすトリガー」となるもので、日本語では「動機」と呼ばれます。モチベーションは、心理学で数多く研究されているため、理論的な側面を理解することで対策しやすくなります。

マズローの欲求段階説

マズローの欲求5段階説とは、人間が持っている欲求を5つの段階に分けてピラミッド化したものです。

 

マズローの欲求5段階説

 

欲求5段階説によれば、人の欲求は生理的欲求、安全欲求、親和欲求、承認欲求、自己実現欲求の5段階から成り立っており、下位の欲求が満たされることで、人はより上位の欲求を求めるようになります。したがって、欲求は下の層から順番に満たしていくことが重要です。

 

下位の欲求、たとえば、長時間労働で睡眠不足が続いて「生理的欲求」が満たされていない、会社の将来性・存続性に不安があり自分の雇用に不安を抱いており「安全欲求」が満たされていないといった状態で、「仕事のやりがい(自己実現欲求)」に訴えかけようとしてもうまくいきません。

マクレランドの欲求理論

マクレランドの欲求理論は、人の動機を4種類に分類した理論です。

  • 達成動機(目標を達成したい)
  • 権力動機(人に影響を与えたい)
  • 親和動機(人と仲良くしたい)
  • 回避動機(危険を回避したい)

4つの動機の強さ、優先する順番は、人によって異なります。たとえば、「回避動機」が高い人は失敗することにリスクを感じますのでやったことがない施策に抵抗を示す傾向があるでしょう。

 

一方で「達成動機」が強い人は、やったことがないとしても目標達成に役立ちそうであれば新しい施策にも躊躇なく取り組むといった傾向があります。人材のモチベーションを高める、あるいは下げないためには、本人の動機づけのタイプを把握したうえでマネジメントすることが大切です。

衛生要因と動機づけ要因

動機付けの要素は、衛生要因と動機づけ要因という2つに大別されます。

 

衛生要因は、不足すると不平不満が出やすくなりますが、満たされたからといってモチベーションが上がるというものではない要素を指します。モチベーションを下げないために、衛生要因を相応のレベルまでしっかり満たすことが必要になります。

 

仕事における衛生要因とは、給与や福利厚生、職場環境などです。

 

一方、動機づけ要因は、目標達成や承認、仕事へのやりがいなど、満たされれば満たされるほど仕事に対して前向きになれる要素です。

 

衛生要因と動機づけ要因はどちらがより重要というものではなく、それぞれの性質を理解して、うまく使い分けていくことが大切です。

外発的動機づけと内発的動機づけ

人の動機づけには、大きく「外発的動機づけ」と「内発的動機づけ」の2種類があります。

 

外発的動機づけとは、給与や賞与、賞賛や感謝など、外から得られる報酬による動機づけで、「外発的」という名前の通り、外から影響することが可能で、かつ即効性があることが特徴です。

 

具体的にはインセンティブやキャンペーンなどがイメージしやすいでしょう。外発的動機づけは、耐性ができやすいため長期的に持続しない、内発的動機づけを損なうアンダーマイニング効果といった弊害もありますので、リスク面も把握したうえで適切に使うことが大切です。

 

内発的動機づけは、興味や関心、仕事自体のやりがいなど、内側から生まれる動機づけです。「内面的」な要素となるため外部からのコントロールが難しく、画一的な施策も通じない傾向があります。しかし、長期的に持続して限界もなく、給与や賞与などのコストもかからないという特徴があります。

 

したがって、外発的動機づけを適切に使いつつ、社員の内発的動機づけを促進していく取り組みを中長期にわたって実施していくことが大切です。

仕事のモチベーション向上に役立つ方法

上昇するイメージ

 

仕事に対するモチベーションを上げるためには、以下の方法が挙げられます。

 

労働環境や人事制度の整備

長時間労働の是正やオフィス環境の整備、テレワークなど時代のニーズに沿った働き方の提供、客観的な目標管理制度、人事評価制度の導入などは衛生要因に当たる部分であり、モチベーションを上げるうえでの前提となります。

ミッション・ビジョンの浸透と個人のミッション明確化

組織の存在意義であり、仕事のやりがいにつながるミッション・ビジョンを言語化して、社員に浸透させましょう。ただし、ミッション・ビジョンはあくまで「組織のもの」です。

 

したがって、個人ミッションを明確化して、ミッション・ビジョンを社員個人の願望や欲求、キャリアと紐づけることが大切です。これによって、内発的動機づけが強化され、社員の主体性や自主性が向上します。

目的・目標の4観点

目的・目標の4観点とは、目標を「自分-他者」「有形-無形」という2つの軸と、「自分」「他者」「有形」「無形」という4つの分類によって意味付けを行なうことです。

  • 自分:自分にもたらされる利益や良いこと
  • 他者:自分以外の人にもたらされる利益や良いこと

  • 有形:表彰やお金などの形ある良いこと
  • 無形:気持ちや感情などの精神的な良いこと

目的・目標の4観点は、前述した組織のミッション・ビジョンと個人の願望を重ね合わせるのと同じで、「業務上の目標」を「達成することで得られるもの」を考えることで、自分と他者にとっての価値という視点でとらえる手法です。

 

組織における「目標」は組織にとっては合理的な目標でも、個人にとっては価値がない状態になっていることがよくあります。目的・目標の4観点を使うことで、目標が「与えられたもの」「ノルマ」という意識から「達成したいもの」に変わり、モチベーションが向上します。

人材育成や研修

能力開発の機会を提供したり、成長実感を獲得できたりするような人材育成・研修の取り組みは、人が持っている自己実現の欲求を刺激します。同時に、「企業が自分を評価して、自分に投資してくれている」という実感を与えることにもつながります。

 

フィードバック

フィードバックは、動機づけの手段としても有効です。仕事ぶりに対するフィードバックを行なうことで、「気にかけてもらっている」「評価されている」といった安心感や満足感が生まれ、モチベーションの向上につながります。

権限委譲

権限委譲によって社員に自己決定権を与えることは、内発的動機づけの強化につながります。

 

ただし、いきなり権限委譲をすることは組織としてもリスクが生じますし、重荷になってしまう社員もいます。したがって、長期的な導入プランを描いていくことが大切です。

健康経営/well-being

モチベーションアップには、社員の健康に対して投資を行なうこともおすすめです。かつては個人の自己責任ととらえられていた健康投資を企業が戦略的に行なうことで、社員のモチベーションに良い影響が期待できます。

 

また、肉体的な健康だけでなく精神的、社会的に健康・良好な状態を保ち、活き活きと働けるよう支援するwell-being(ウェルビーイング)の導入なども検討してみるとよいでしょう。

 

マズローの欲求5段階説でもわかるように、心身の健康は上位の欲求ステージに入るうえでは不可欠なものであり、実務的にもハイパフォーマンスを発揮するうえで重要です。

まとめ

モチベーションは目に見えにくい概念であり、何となく“やる気”といった言葉で片付けられている場合もあります。

 

しかし、モチベーションに関する理論や、モチベーションが下がる(上がる)仕組みをしっかりと理解することで、社員のモチベーションを効果的に高めることが可能です。

 

また、いずれの対策も現場だけで実施するのが難しいものですので、組織や企業全体で取り組んでいくことが大切です。

著者情報

東宮 美樹

株式会社ジェイック 執行役員

東宮 美樹

筑波大学第一学群社会学類を卒業後、ハウス食品株式会社に入社。営業職として勤務した後、HR企業に転職。約3,000人の求職者のカウンセリングを体験。2006年にジェイック入社「研修講師」としてのキャリアをスタート。コーチング研修や「7つの習慣®」研修をはじめ、新人・若手研修から管理職のトレーニングまで幅広い研修に登壇。2014年には前例のない「リピート率100%」を達成。2015年に社員教育事業の事業責任者に就任。

著書、登壇セミナー

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