ジョブクラフティングとは?目的や効果、身に着ける方法を解説!

更新:2023/07/28

作成:2022/07/21

東宮 美樹

東宮 美樹

株式会社ジェイック 執行役員

ジョブクラフティングとは?目的や効果、身に着ける方法を解説!

ジョブクラフティングとは、任された仕事を自分なりに解釈・アレンジすることで、仕事へのモチベーションや、やりがいを高める手法です。

 

ジョブクラフティングを実践すると、主体性が生まれ、やる気の向上が期待できます。組織として取り入れると、リーダー育成や才能の発掘にもつながるでしょう。

 

本記事では、ジョブクラフティングとは何か、効果や進め方、注意点などを紹介します。

<目次>

ジョブクラフティングの意味

ジョブクラフティングの意味

 

『ジョブクラフティング』とは、任された仕事を自分なりに解釈・アレンジすることで、仕事へのモチベーションや、やりがいを高める手法です。仕事をやらされている感覚を取り除き、取り組む価値を見出し、主体性を持って取り組む意識を生み出せることがポイントです。

 

注目される背景

ジョブクラフティングへの注目が高まった背景には、社会が成熟するなかで、従来のように昇給や昇格だけで社員を動機付けするのが難しくなっている点があります。

 

仕事にやりがいを求めたり、自分の強みを発揮したいといった要望を持ったりする人が増えた結果、ジョブクラフティングの考え方が徐々に取り入れられてきているのです。

 

個人の視点から見れば、与えられた仕事を受け身でこなすだけでは成果も上がりづらく、キャリアアップも見込めません。職場で任された仕事が単なる作業、やらされ仕事にならないように、自分なりにクラフト(加工)して取り組むことが大切です。

 

ジョブクラフティングは、企業と社員の双方にメリットがある手法なのです。

 

似て非なるジョブデザインとの違い

ジョブクラフティングと少し似た概念として『ジョブデザイン』という言葉もあります。ジョブデザインとは、社員の内発的動機付けや職務への満足感が高まる仕事を組織や上司が設計し、社員に割り振ることです。

 

仕事にやりがいを感じられるようにする点では、ジョブクラフティングとジョブデザインは同じだといえます。ただし、ジョブデザインは組織や上司が主体、ジョブクラフティングは社員が主体という点が大きな違いです。

ジョブクラフティングの目的は三つ

ジョブクラフティングの目的は三つ

 

ジョブクラフティングには主に三つの目的があります。

 

仕事を再定義して、意義を見出す

組織でジョブクラフティングを導入する大きな目的の一つに、社員に対して「自分の仕事に意義を見出してもらう」という点が挙げられます。目の前の仕事を単なる作業としてとらえるのではなく、作業の目的や誰の役に立っているのかなどを考えてもらうのです。

 

やりがいを見出すためには、任された仕事の意味を社員が自分なりに定義することが大切です。自分は何のために仕事をし、どんなことに喜びを感じているのかを見つめ直し、この仕事が自分の価値観や喜びと、どのようにつながっているかを確認することが大切です。

 

業務に前向きに取り組む姿勢を持つ

ジョブクラフティングで社員が仕事を再定義し、働くことに意義を見出せれば、仕事に対して前向きに取り組めるようになります。

 

業務に前向きに取り組む姿勢を維持できればモチベーションも高まり、集中力も向上するでしょう。今まで何となくこなすだけだった作業も、短時間で効率的に完了できるようになります。

 

前向きに取り組めば、創意工夫が生まれる点もポイントです。自分なりに工夫したり、提案したりした仕事は更に面白さを増し、前向きに取り組んでいけるものとなるでしょう。

 

良好な人間関係を築く

ジョブクラフティングの導入には、社員間で良好な人間関係を築いてもらうという目的もあります。仕事に対する意味付けができれば、人間関係の円滑化が期待できるのです。

 

職場の同僚をはじめ、仕事の関係者を、前向きに仕事に取り組む仲間としてとらえることで、社内外で良好な人間関係を築きやすくなります。良好な人間関係があれば、周りからサポートを受けることができ、より効率的に業務遂行が可能になります。

組織がジョブクラフティングを導入するメリット

組織がジョブクラフティングを導入するメリット

 

ジョブクラフティングを導入すると、組織にとってどのようなメリットが生まれるでしょうか。組織が得られる4つのメリットを紹介します。

 

社員が主体的に働くようになる

ジョブクラフティングによって社員が仕事へのやりがいを見出せば、社員の主体性が引き出されます。上司の指示待ちだった状況から、自ら何をすべきか考えて行動するようになるでしょう。

 

社員の働く姿勢が主体的になると、業務に前向きに取り組むようになり、結果として生産性が向上します。自分の能力をより高めたいと思う社員も出てくるため、社員個人の成長も期待できるでしょう。

 

仕事に対する当事者意識が生まれると、責任感やプロ意識も芽生え始めます。組織全体が底上げされ、強いチームが形成されるでしょう。

 

新しいアイデアが生まれやすくなる

ジョブクラフティングを導入すると、新しいアイデアが生まれやすくなります。主体性を持って仕事に取り組み始めることで、創意工夫が出てくるのです。

 

今までより効率よく業務を進めたり、より顧客満足度が高まるように工夫したり、試行錯誤を繰り返すなかで、創造的なアイデアが生まれる可能性も高まっていきます。自社商材を開発する会社なら、画期的な商品やサービスが誕生するかもしれません。

 

社員の満足度向上につながる

ジョブクラフティングを通じて、仕事の価値を見出し、やりがいを持てるようになれば、社員の満足度も向上します。仕事に対するエンゲージメントが向上すれば、離職防止などの効果を期待できます。優秀な人材の流出を防げる点や採用コストを抑えることにもつながります。

 

リーダー育成や才能の発掘につながる

社員の主体性が引き出される中で、社員の新たな強みが見つかるケースもあります。創意工夫するからこそ、社員それぞれの強みが表に出てくるのです。
また、仕事に対して主体的な姿勢を見せる社員のなかから、リーダーシップを発揮する人材も出てくるでしょう。

 

リーダー育成や才能の発掘が促進されれば組織の活性化につながり、結果的に業績アップや経営目標の達成を期待できます。

ジョブクラフティングの進め方

ジョブクラフティングの進め方

 

ジョブクラフティングの具体的な進め方について解説します。実際にジョブクラフティングを実行する際の参考にしましょう。

 

社員が「自分の価値観や強み」を見出す

ジョブクラフティングを実施するためには、社員がそもそも仕事を通じて成し遂げたいことや自分の強みなどを見出す必要があります。自分の価値観は何なのか、何にやりがいを感じるのか、自分の強みは何なのかなど、ワークを通じて見出してもらいましょう。

 

事例を使って理解を促す

自分の価値観や強みを見出せたら、ジョブクラフティングのやり方に入っていきます。その前に、ジョブクラフティングを行なうことでどんな効果を得られるかなどもしっかりと確認しておきましょう。

 

ジョブクラフティングのやり方は、まず概念を伝える、次に事例を使って理解を深める、最後に自分の仕事で試してみるという3ステップで伝えると有効です。

 

実際の仕事でジョブクラフティングを試してみる

対象にする業務を選定し、ジョブクラフティングの方法を個人ワークで考えた後、グループワークで意見交換を行なってブラッシュアップしていきます。
そのうえで、実際に試してみることが大切です。ジョブクラフティングは意味付けや取り組み方の工夫です。実務で実際に試してみるハードルはさほど高くありません。

 

試した結果を共有する

計画に基づいたジョブクラフティングを実行した後は、振り替えることが重要です。どのような形で主体性が生まれ、その結果どのような効果があったのか、個人ワークやグループワークで振り返ります。

 

思うような結果が出なかった場合は、ワークで課題を出し合って改善点を検討しましょう。結果がどうであれ、フィードバックで成果を共有することにより、さまざまな気付きを得られます。

ジョブクラフティングを成功させるには

ジョブクラフティングを成功させるには

 

ジョブクラフティングを成功に導くためには、実行のフロー以外に押さえておくべきいくつかのポイントがあります。実行前に意識しておきたい重要なポイントを紹介します。

 

ジョブクラフティングという言葉にこだわり過ぎない

ジョブクラフティングというにはあくまでも概念です。横文字に抵抗感を示す人もいるでしょう。大切なのは、社員が主体性を発揮して前向きに仕事へ取り組める状態を生み出すことです。

 

「仕事の意味づけ × 強みを生かす」といったほうがイメージしやすければ、そういった形で導入することも一つです。たとえば、HRドクターを運営する研修会社ジェイックでは、“強みを生かす”ストレングスファインダー🄬研修を提供していますが、概念としてはジョブクラフティングに非常に近いものです。

 

また、同じく原田メソッド研修で実践する「目的目標の4観点」という技法は仕事に対して自分なりに意味付けするという点では、ジョブクラフティングに類似しています。

 

このようにジョブクラフティングという聞きなれない言葉にこだわり過ぎず、本質を押さえて導入するようにしましょう。

 

主体的に働ける環境をつくる

ジョブクラフティングでは、社員が仕事を自分なりにアレンジし、主体性を発揮しながら業務を進められるようになるのがゴールの一つです。

 

社員に主体的な行動を促すためには、社員の主体性や自主性を認める環境を整備しておかなければなりません。社員の発する言葉やアイデアに対し、ある程度許容する姿勢が重要です。

 

出されたアイデアを全否定したり、組織や上司が介入しすぎたりすると、社員が主体性を発揮するのは難しくなります。社員の主体性や自主性を尊重する雰囲気作りを意識しましょう。

 

上司の姿勢が非常に大切

上司が自分の仕事へのこだわりや、やりがいを見せれば、部下の意欲をかき立てる結果につながります。仕事に対する主体性や前向きさという点では、上司は部下の模範である必要があります。
したがって、ジョブクラフティングの実施はメンバー層だけでなく、管理職層も交えて実施すべきです。

ジョブクラフティングを実践する際に気を付けるべきポイント

ジョブクラフティングを実践する際に気を付けるべきポイント

 

ジョブクラフティングを実践する際に注意したいポイントを紹介します。いくつかのリスクを想定したうえで、対策を練っておく必要があるでしょう。

 

仕事の属人化を防ぐ

ジョブクラフティングを通じて、社員が仕事を「加工する」ことで前向きに取り組めるようになることは素晴らしいことです。また、一人ひとりの強みを発揮すれば成果も上がるでしょう。

 

しかし、仕事の手順に自分らしさが出過ぎると、仕事が属人化する恐れがあります。その社員にしか遂行できない仕事になり、情報共有や引き継ぎが困難になってしまいます。

 

仕事がブラックボックス化すると、万が一の際に業務も滞りかねません。配置転換を行なったり新しい人材を採用したりする際にも、その仕事を後任者に任せにくくなります。

 

社員の主体性を尊重しつつ、仕事の手順や業務の効率化等に関しては、俗人化、進化の停滞が起きないようにきちんと目を配っておく必要もあります。

 

「やりがい搾取」にならないように気を付ける

ジョブクラフティングの概念がおかしな方向にいくと、『やりがい搾取』になりかねません。やりがい搾取とは、やりがいを盾に無理な労働を強いる、劣位な待遇で働かせることです。

 

社員が仕事にやりがいを見出すと、組織は『やりがい=報酬』と定義付けてしまい、「やりがいを感じている仕事なら報酬はいらないだろう」「多少きつくでもいいだろう」と考えてしまう恐れがあります。

 

やりがい搾取は低賃金や長時間労働につながりやすく、トラブル等も引き起こしかねません。もちろんやりがいは大切です。同時にきちんと生産性を高めて、それを待遇などに返していくことも大切です。

 

チームワークを阻害しないようにする

ジョブクラフティングは、社員それぞれが仕事を再定義し、自分なりの意義を見出すプロセスです。仕事に対する多様性の許容ともいえるでしょう。

 

個人の業務においては問題ない多様性も、同じプロジェクトに取り組む複数の社員がそれぞれ違う意味付けをしている状態になると、チームワークが阻害される恐れが生じます。

 

多様性とチームワークを両立させるためには、お互いの価値観を尊重する姿勢が必要です。相違点からイノベーションを生み出せるような、高いレベルの人格とコミュニケーションが求められます。

ジョブクラフティングに取り組む企業事例

ジョブクラフティングの企業事例

 

ジョブクラフティングの企業事例としてよく挙げられるのが、東京ディズニーリゾートのケースです。実際にどのような取り組みが行なわれているのか紹介しましょう。

 

東京ディズニーリゾート

東京ディズニーリゾートで働く清掃係は、単なる園内の清掃者ではありません。『カストーディアルキャスト』という名前が与えられ、来場者をもてなす役割を担っています。

 

バケツの水で地面にキャラクターの絵が描かれているのは、清掃係が自ら考案したアイデアです。ユーモアを交えた道案内や写真撮影の協力なども、来場者へのもてなしの一環として清掃係が自主的に行なっています。

 

東京ディズニーリゾートに行くと、清掃係が楽しそうに働いている姿を見られるでしょう。ジョブクラフティングにより、社員自らがやりがいを見出した好例です。

 

自分たちの仕事が誰の役に立つのか、どんな可能性があるのかを考えることで、同じ仕事もここまで大きく変わる可能性があるのです。

まとめ

ジョブクラフティングを導入することで、社員が主体性を持って働けるようになります。主体性を持って取り組むことで、新しいアイデアが生まれたり、満足度向上につながったりして、好循環も生まれやすくなります。

 

ジョブクラフティングの進め方や本質をしっかりと理解して、社員が主体的に仕事に取り組む環境を作っていきましょう。

著者情報

東宮 美樹

株式会社ジェイック 執行役員

東宮 美樹

筑波大学第一学群社会学類を卒業後、ハウス食品株式会社に入社。営業職として勤務した後、HR企業に転職。約3,000人の求職者のカウンセリングを体験。2006年にジェイック入社「研修講師」としてのキャリアをスタート。コーチング研修や「7つの習慣®」研修をはじめ、新人・若手研修から管理職のトレーニングまで幅広い研修に登壇。2014年には前例のない「リピート率100%」を達成。2015年に社員教育事業の事業責任者に就任。

著書、登壇セミナー

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