メンタルヘルスとは?職場における不調の原因や兆候、対応のポイントを解説

更新:2023/07/28

作成:2022/08/01

東宮 美樹

東宮 美樹

株式会社ジェイック 執行役員

メンタルヘルスとは?職場における不調の原因や兆候、対応のポイントを解説

近年、職場で強いストレスや不安を感じ、心身に支障をきたす労働者が増えています。そのため、職場でのメンバーのメンタルヘルスケアは、多くの企業が抱える課題となっています。

 

記事では、メンタルヘルスとは何かの確認、そして職場でのメンタルヘルス不調の原因や不調の際に見られる兆候などを解説します。メンタルヘルス不調に陥ったメンバーへの対応のポイントや職場でのメンタルヘルスケアの取り組み方も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

<目次>

メンタルヘルスとは

メンタルヘルスとは

 

メンタルヘルスとは精神面の健康状態のことです。メンタルヘルスに不調が生じると、集中力や判断力の低下などが現れ、業務に支障をきたします。メンタルヘルスが悪化すると、うつ病などの精神疾患につながり、最悪の場合自殺を引き起こします。

 

心の問題は非常にデリケートな領域でなので、知識がなくて誤った対処をすると、さらに状態を悪化させる恐れがあります。

 

厚生労働省は国民の健康を守るために、継続的な医療を提供すべき疾患を指定しています。以前は“がん”“脳卒中”“急性心筋梗塞”“糖尿病”だけでしたが、2011年に“精神疾患”が加わりました。近年、メンタルヘルスを損なう労働者が増加傾向にあるため、メンタルヘルスケアの対応を取り入れる企業も増えています。

職場でのメンタルヘルス不調の原因例

  • 人間関係のトラブル
  • ハラスメント
  • 過重労働
  • 仕事の失敗や重い責任の発生

職場でのメンタルヘルス不調の原因となるのは、次のようなことです。

 

人間関係のトラブル

人間関係は、職場の心理的快適さに影響する要素として最も大きなものです。人間関係のトラブルが原因で、メンタルヘルス不調に陥ってしまう労働者もかなり多くいます。なお、職場の人間関係のなかでも、上司と部下の関係が良好であるか否かが働きやすさに大きな影響を与えます。

 

ハラスメント

職場でのハラスメントによって、メンタルヘルス不調になる労働者も多いです。職場で起こるハラスメントとしてはパワーハラスメント(パワハラ)、セクシュアルハラスメント(セクハラ)、マタニティハラスメント(マタハラ)、また、カスタマーハラスメント(カスハラ)などが主なものです。

 

2022年4月にはパワーハラスメントの防止措置法である、パワハラ防止法(正式名称:改正労働施策総合推進法)の対象が、中小企業へと広がりました。職場でのハラスメントによるメンタルヘルスの不調、精神疾患の発症は、企業にとって大きなリスクとなり得ます。

 

過重労働

過重労働も、メンタルヘルス不調の典型的な原因の一つです。特に、長時間労働に伴って労働者が十分な睡眠時間を確保できなくなることは、メンタルヘルス不調の大きな要因となります。

 

事業者には、労働者が心身ともに健康を維持できる睡眠時間を確保可能するなどの労務管理が求められています。働き方改革が進んだ中で、勤怠管理に関する世間の目は非常に厳しくなっていますので、過重労働によるメンタルヘルス不調の発生は企業イメージの悪化等にもつながるリスクがあります。

 

仕事の失敗や重い責任の発生

業務上の失敗や重い責任の発生も、大きなストレスがかかるため、メンタルヘルス不調の原因となります。ビジネスパーソンは責任を背負ったり、失敗を経験したりする中で成長する側面があることも事実です。ただし、若手や中間管理職に重すぎる責任がかからないようにしたり、ストレス耐性や負荷状況に応じてフォローを徹底したりすることが大切です。

職場でのメンタルヘルス不調に起因する症状

  • うつ病
  • 不安障害
  • 適応障害
  • 睡眠障害
  • 摂食障害
  • 依存症

職場場でのメンタルヘルス不調が悪化すると、上記のような精神疾患につながる可能性があります。メンバーが、職場が原因で、精神疾患を発症した際には、正しい対応をしなければ労災請求や損害賠償請求といった訴訟につながるかもしれません。

 

メンバーに精神疾患の兆候が出た際には、医師に診断を受けさせること、休養をとらせること、職場の労務環境に問題がなかったかを確認してすぐ改善するなどの対応が求められます。

注意したいメンバーのメンタルヘルス不調の兆候

  • パフォーマンスの低下
  • 出退勤の変化
  • 行動や言動の変化

メンタルヘルス不調による精神疾患の発症に適切に対処するためには、メンバーのメンタルヘルス不調の兆候を見逃さないことが大切です。注意しておきたいメンタルヘルス不調の兆候としては、とくに3つです。

 

パフォーマンスの低下

仕事の生産性が下がったり、ミスが増えたりするのは、メンタルヘルス不調の兆候の一つです。表情や口数、仕事のパフォーマンスなどの異変は、普段身近で仕事をしているメンバーならば気付きやすいでしょう。これまでに比べて、急激にパフォーマンスが下がったメンバーがいれば、注意が必要です。

 

出退勤の変化

急な出退勤の変化にもメンタルヘルス不調の兆候が現れます。「遅刻や早退が増えた」「無断欠勤するようになった」「突然有給休暇が増えた」といったメンバーがいればメンタルヘルス不調やモチベーションの低下、退職の可能性などをケアする必要があります。

 

行動や言動の変化

周囲とのコミュニケーションを避けるようになったり、挨拶をしなくなったりなど周囲に対しての態度の変化はメンタル不調の兆候です。「覇気がなくなった」「不平不満が増えた」などの急な行動や言動の変化が現れることもあります。

メンタルヘルス不調のメンバーへの対応のポイント

 

 □早期発見が重要
 □叱責や励ましに注意
 □傾聴を心がける
 □精神疾患と決めつけない

 

早期発見が重要

メンタルヘルス不調を悪化させないためには、早期に発見し、適切に対処することが大切です。そのためにも、メンタルヘルス不調の兆候を敏感にとらえなければなりません。

 

早めに兆候をとらえて、面談等で話を聞いたり、業務不可を調整したりするなどの対処が必要です。一度精神疾患が発症すると、回復には長い時間がかかったり退職になったりすることもあります。そのため、早めに対処することが対応の最も大切なポイントです。

 

叱責や励ましに気をつける

メンタルヘルス不調の兆候が現れたメンバーに対して、「やる気がない」などと叱責することはメンタルヘルス不調の悪化につながります。また、「頑張れ」と励ましの言葉をかけることも、頑張っているのに結果がでないメンバーを追いつめることとなる可能性があります。

 

健康状態を聞くことや解決の糸口をともに探っていく姿勢を見せることが大切です。ストレスの原因となっている業務や人間関係を解決する、一度切り離すことも有効です。

 

傾聴を心がける

メンタルヘルス不調のメンバーの話を聞く際には、傾聴の姿勢が重要です。メンバーの話を否定したり、一方的にアドバイスしたりするのではなく、相手の話を受け入れる姿勢で聞きましょう。

 

精神疾患と決めつけない

メンバーからメンタルヘルス不調を相談された際には、勝手にうつ病だと判断するなど、精神疾患と決めつけて対応しないようにしましょう。精神疾患だと一方的に解釈され扱われることはネガティブな感情を生み、症状の悪化につながりかねません。

職場におけるメンタルヘルスケアの具体的な取り組み方

職場におけるメンタルヘルスケアの具体的な取り組み方

 

 □メンタルヘルスケアの研修と情報提供の実施
 □職場環境の把握と改善
 □早期発見のための環境整備
 □職場復帰の支援

 

メンタルヘルスケアの研修と情報提供の実施

労働者がメンタルヘルスや心身の状態をセルフケアできるようになると、メンタルヘルス不調は減少します。そのためにはメンタルヘルスに関する研修や情報提供の実施が大切です。

 

レジリエンス研修やストレスケアの情報提供を通して、次のような内容を労働者に知ってもらいましょう。

  • メンタルヘルスケアに関する企業の方針
  • ストレスおよびメンタルヘルスケアに関する基礎知識
  • セルフケアの重要性および心の健康問題に対する正しい態度
  • ストレスへの気付き方
  • ストレスの予防、軽減およびストレスへの対処の方法
  • 自発的な相談の有用性
  • 社内外の相談先や利用できるサービスの情報

 

職場環境の把握と改善

職場環境にメンタルヘルス不調につながる要因がないか把握と改善を行なうことも重要です。職場環境とは具体的に、作業環境、作業方法、施設や設備、労務環境、ハラスメントの有無などを指します。

 

把握のために、ストレスチェックのアンケートの実施や1on1ミーティング、職場巡視による観察、マネージャーからの聞き取りなどを実施しましょう。現場の意見も踏まえつつ、職場環境の改善に取り組んでいきましょう。

 

早期発見のための環境整備

メンタルヘルス不調は早期に兆候を見つけて対処することが最も有効です。従って早期発見できるように環境整備することが大切です。上述のストレスチェックのアンケート(パルスサーベイ)や1on1ミーティングなどもそのひとつです。

 

また、メンバーや同僚の不調に気付いたメンバーが自ら相談を行ないやすいように環境を整備することも重要です。内部に相談窓口を設けたり、社外の相談機関の活用を図ったりすることも大切ですし、上司に業務量の調整を相談できるといった風通しのいい組織風土の構築が非常に重要です。

 

職場復帰における支援

メンタルヘルス不調により休業した労働者が円滑に職場復帰し、就業を継続できるよう、支援することも重要です。事業者側には、職場復帰支援プログラムの実施が推奨されています。職場復帰支援プログラムでは、企業と休職者が休業から通常業務への復帰までの流れをあらかじめ決め、復職までのサポートを行ないます。

職場におけるメンタルヘルスは早期発見と適切なケアが重要です

メンタルヘルス不調が生じると、集中力や判断力の低下などが現れ、業務に支障をきたします。また、さらに悪化すると、精神疾患につながり、最悪の場合は自殺等を引き起こす要因にもなります。

 

対策には、早期発見と適切なケアが重要です。メンバーのメンタルヘルス不調を早期発見するためには、不調の兆候を理解し、普段からアンテナを立てておく必要があります。

 

また、早期発見のための環境整備やメンバーが職場復帰しやすい環境づくりに取り組むことも重要です。メンバーが心身ともに健康に働ける企業を目指すことで、事業の安定的な成長や生産性の向上が見込めるでしょう。

著者情報

東宮 美樹

株式会社ジェイック 執行役員

東宮 美樹

筑波大学第一学群社会学類を卒業後、ハウス食品株式会社に入社。営業職として勤務した後、HR企業に転職。約3,000人の求職者のカウンセリングを体験。2006年にジェイック入社「研修講師」としてのキャリアをスタート。コーチング研修や「7つの習慣®」研修をはじめ、新人・若手研修から管理職のトレーニングまで幅広い研修に登壇。2014年には前例のない「リピート率100%」を達成。2015年に社員教育事業の事業責任者に就任。

著書、登壇セミナー

・新入社員の特徴と育成ポイント
・ニューノーマルで迎える21卒に備える! 明暗分かれた20卒育成の成功/失敗談~
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