怒りを抑える方法とは?イライラ感情の正体とコントロール方法を解説

更新:2023/09/26

作成:2022/09/03

東宮 美樹

東宮 美樹

株式会社ジェイック 執行役員

怒りを抑える方法とは?イライラ感情の正体とコントロール方法を解説

「怒りを抑えたい」ときや「イライラが止まらない」ときに行うべき最初のステップは、「自分はなぜ怒るのか?」という怒りの正体を知ることです。

 

近年、知識労働や感情労働のウェイトが増えた結果、仕事におけるストレスを感じている人は増加しています。ストレスとうまく付き合うためには、怒りを含めたネガティブ感情のマネジメントをうまく行なうことが大切です。

 

とりわけパワーハラスメントなどに対する価値観も変わったなかで、管理職層には怒りをマネジメントするスキルは必要不可欠になっています。

 

記事では、怒りの感情に関する基礎知識を確認したうえで、怒りの感情に支配されず適切に「怒り」をマネジメントする方法を解説します。

<目次>

「怒り」の感情に関する基礎知識

頭を抱える女性社員

 

実は「怒り」自体は悪い感情ではありません。怒りは行動のエネルギーになったり、自身や他人を不当な攻撃から守ったりするために欠かせないものでもあります。

 

しかし、感情のままに怒りを表出していては、人間関係が壊れ、周囲との良好な関係を築けなくなるでしょう。したがって、ビジネスシーンなどでは、怒りの感情を適切に扱う必要があります。

 

特に近年では、ビジネスにおける怒りの表出は、パワハラなどにも容易につながります。そのため、管理職やマネジメント層は、怒りを適切にマネジメントするスキルが必須です。

大切なのは「怒りを抑える=怒らない」ことではない

怒りは、自然な感情、生理反応です。そのため、怒り自体をなくすことはできません。怒りを抑圧したり無視しようとしたりすると、問題は解決せず、むしろストレスの要因となります。

 

じつは怒りを抑える=怒らないというアプローチは間違っているのです。大切なのは、怒りの正体や原因を理解して、周囲や自身に悪影響を与えない形で怒りを処理する方法を習得することです。

 

ちなみに、怒りの正体や原因を理解して適切に処理する方法、つまりアンガーマネジメントの方法を身に付けると、徐々に怒りを感じること自体も減ってきます。この辺りの構造は先の章で詳しく解説していきます。

怒りの感情に支配されず、適切にマネジメントする

アンガーマネジメント

 

そもそも、怒りという感情が何なのかを知らなければ、怒りのマネジメント(アンガーマネジメント)はできません。この章では、アンガーマネジメントの具体的なスキルやテクニックを紹介する前に、怒りという感情を、もう少し詳しく掘り下げて解説します。

 

怒りの正体を知る

アンガーマネジメントの第一歩は、「自分はなぜ怒るのか?」という感情の正体を知ることです。そして、「怒り」の感情の正体を知るとは、自分自身の価値観を知る作業でもあります。

 

たとえば、小さなことでもイライラしてメンバーを怒ってしまう上司Aがいたとします。上司Aは、もともと優秀なプレイヤーでした。そのため、上司Aには、怒りにつながる以下のような価値観があります。

  • 1.K社へのヒアリングはもっと細かく丁寧にすべき
  • 2.L作業は時間をかけず迅速に終わらせるべき
  • 3.Mくんは報連相の頻度を上げるべき など

1~3に共通するのは「~すべき」という価値観です。

 

上司Aの怒りの感情は、メンバーが自分の「べき(価値観)」に反した行動をとったときに生じます。一方で、チームメンバーの能力や価値観は十人十色であり、優秀な人材であっても上司Aの「べき」に完全に合わせることはできません。

 

だからこそ、そこに上司Aが思う「あるべき姿」と「現実」にギャップが生じて、怒りを生み出すのです。

 

そのため、上司Aがチームメンバーを頻繁に怒ってしまう問題を防ぐには、「~すべき」と考えてしまう範囲を減らし、メンバーを受け入れられる器を大きくすることが大切です。理性で器を拡げるためには、まずは自分の「~すべき」という価値観を認識することが大切になります。

 

怒りの原因である一次感情を適切に処理する

「怒り」は自分の「~べき」という価値観に反する行為に対して生じるものであると解説しました。本章では、別の視点、怒りは「二次感情」であるという視点から怒りについて解説します。

 

怒りが二次感情であるとは、怒りの手前に、何らかの一次感情があるということです。一次感情とは、たとえば、以下のような感情を指します。

  • 悲しみ
  • 寂しさ
  • 苦しみ
  • 虚しさ
  • 恐怖
  • 不安
  • 後悔
  • 心配
  • 疲れ など

心のなかに、ネガティブな気持ちが溜まるコップがあるとしましょう。たとえば、上司から何度も叱責されていた場合には“悲しみ”や“悔しさ”、プロジェクトから外されるかもしれないという状況があれば“不安”などの一次感情がコップのなかに溜まっていきます。

 

コップにたくさんの一次感情が溜まっているとは、つまり、感情的なストレスが溜まっている状態です。そして、一次感情がコップの容量を上回って溢れそうになったとき、二次感情の怒りが引き起こされます。

 

逆にいえば、コップに入った一次感情を適切に解消していくことができれば、コップはこぼれず、怒りの衝動が生じることは少なくなります。一次感情があふれる問題を解消していくためには、以下のようなやり方があります。

  • 一次感情と原因を紙に書き出してみる
  • 一次感情を生じさせる人や場面から距離をおく
  • 「そういう言われ方をされると悲しい」「こういう不安があります」など、一次感情を適切に表現する

怒りを抑える有効なテクニック

アンガーマネジメントには、怒りを抑えるさまざまなテクニックがあります。今回は、身体と認知への代表的なアプローチ方法を紹介しましょう。

 

身体へのアプローチ

身体へのアプローチとして、アンガーマネジメントの基本となる6秒ルール、また、その他の方法を紹介します。

 

・6秒ルール
怒りの感情は、6秒でピークに達し、長続きしないものであるといわれます。逆にいうと、6秒さえやり過ごせば、メンバーにイライラをぶつけてしまうなどの対人トラブルを回避できます。

 

したがって、大切なのは6秒をやり過ごすことです。たとえば、自分の意見を伝える前に頭のなかで6秒カウントする、トイレなどを理由に現場から離れるなど、とにかく時間を空けることが大切です。

 

・深呼吸、タッピング、表情の変化など
6秒ルールとほかの身体的アプローチを併用するとさらに効果的です。たとえば、6秒カウントしながら深く呼吸をすると、次第にイライラが落ち着いてきます。

 

ほかには、指先のはらを使って、身体の各部位を左右交互にトントンとタッチするタッピングや、あえて笑顔をつくる方法などもおすすめです。身体的なアプローチをすることで、時間も稼げますし、他のことに感情が向きやすくなるのです。

 

認知へのアプローチ

認知へのアプローチとは、以下のことを客観的に見る・分析することです。

  • 状況の客観視(怒りを感じている自分を第三者的視点で観察:メタ認知)
  • 価値観の客観視(怒りの素になっている価値観は絶対か?合理的か?怒るべきことなのか?)

怒りの原因となる価値観、自分の「~べき」を認識すれば、理性で器を拡げられるようになります。また、理性を使うことで、そもそも怒りの情動に飲み込まれづらくなります。

 

また、認知へのアプローチも、考えている間に時間が経過するとことで、自然と6秒ルールを実践できるという利点があります。

場合によっては専門家や医師の判断を仰ぐ

特に理由もなくイライラしやすい、怒りが湧きやすいといった場合は特定の疾病などの可能性もあります。そうした傾向が疑われるなら、素人判断はせず、専門家や医師に相談しましょう。企業としても、職場のストレスチェック、メンタルヘルスサポートの体制を構築しておきたいものです。

まとめ

怒りの感情自体はすべてが悪いものではありません。しかし、怒りの感情を周囲にぶつけてしまうと、信用を失ったり、人間関係が壊れたりすることになります。

 

したがって、上司や部下、チームメンバーと協働・共創をしていくには、各自がアンガーマネジメントを行ない、怒りの感情に支配されないようにする必要があります。アンガーマネジメントの第一歩は、怒りの正体につながる自分の価値観を知ることです。

 

また、実は怒りとは、一次感情と呼ばれるネガティブな感情が溜まった結果として生み出される二次感情です。したがって、悲しみや悔しさ、不安などの一次感情をうまく表現・解消すれば、二次感情の怒りは生じにくくなるでしょう。

 

怒りの感情は6秒でピークに達し、そう長続きしません。そこで6秒ルール、また、深呼吸やタッピングなどの身体的アプローチ、自分のどのような価値観に抵触したのかを考えてみる認知的アプローチなどを実践することで、時間を空けることが有効です。

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著者情報

東宮 美樹

株式会社ジェイック 執行役員

東宮 美樹

筑波大学第一学群社会学類を卒業後、ハウス食品株式会社に入社。営業職として勤務した後、HR企業に転職。約3,000人の求職者のカウンセリングを体験。2006年にジェイック入社「研修講師」としてのキャリアをスタート。コーチング研修や「7つの習慣®」研修をはじめ、新人・若手研修から管理職のトレーニングまで幅広い研修に登壇。2014年には前例のない「リピート率100%」を達成。2015年に社員教育事業の事業責任者に就任。

著書、登壇セミナー

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