若手の成長を加速させる3つの育成ポイント

更新:2023/11/13

作成:2022/01/22

東宮 美樹

東宮 美樹

株式会社ジェイック 執行役員

若手の成長を加速させる3つの育成ポイント

入社して2~3年の若手社員に関して「成長が鈍化している」「期待通りの伸びていない」と悩まれる管理職や経営層は多くいらっしゃいます。

 

じつは若手の成長を加速させるためには、「今どきの若手社員」の仕事に対する考え方の変化を踏まえて育成することが大切です。

 

記事では、「今どきの若手社員」の特徴と、若手社員の特徴を踏まえたうえでの関わり方、成長を加速させる3つの育成ポイントを紹介します。

<目次>

最近の若手社員の特徴とは?

HRドクターを運営する株式会社ジェイックは研修会社ですので、多くの人事や経営層から若手社員の育成に関する相談を数多く受けます。

 

そのなかで増えているのが、「もっと自分で考えて仕事してほしい」「受け身ではなく、当事者意識を持って取り組んでほしい」といった主体性に関する相談です。

 

主体性に関する悩みは、ある意味では普遍的に存在する悩みです。私自身も若手だった頃、上司や先輩に「もっと考えて仕事しろ」「当事者意識を持て」とよく言われたものです。

 

一方で、以前より若手社員の主体性に関する相談が増えているのも事実です。本章では相談が増えている理由と最近の若手の特徴を紐づけて紹介します。

 

特徴1 効率的に仕事がしたい

デジタルネイティブ世代といわれる今どきの若手は、ITの力を駆使し、仕事を効率的にしたいという気持ちが強くなっています。

 

例えば、ある上司は「話を聞くときはメモをとるように」と指導したところ、指導していた若手社員はスマートフォンを取り出して「わかりました。録音します!その方が聞き漏れもないですし」と言われたそうです。

 

昭和世代の上司からすればおかしいと思うかもしれませんが、若手の言い分も一理あります。たしかに効率的で、聞き漏れはなく、後になって「言った、言わない」の議論にもなりません。若手にしたら録音するほうが効率的なのです。

 

便利なITツールやアプリに囲まれて成長して、働き方改革などの意識も浸透しているなかで、今どきの若手が持つ「最小限の努力や工数で合格点を取りたい」「効率的に仕事をしたい」という意識は非常に強くなっています。

 

この特徴を知らずに「いいからメモを取れ」「量をこなすなかでわかるものがあるんだ」「決まったやり方なんだからいいからやれ」といった指示をすると、若手はしぶしぶ実行するかもしれませんが、心の中では「古い仕事のやり方を押しつける上司は尊敬できない」「この会社はダメなんじゃないか」と思いがちです。

 

特徴2 自分の時間を大切にしたい

2016年に日本生産性本部が実施した若手社員向けの意識調査(※1)で、「残業が少なく帰宅後に自分の時間を持てて趣味などに費やせる職場が良いか」とたずねた質問では、実に86.3%の人がそうだと回答しました。

 

それまで過去15年ぐらいは65%前後を推移していましたが、2015年に80%を突破し、急増しています。

 

出典:2016年度 新入社員 秋の意識調査 | 調査研究・提言活動 | 公益財団法人日本生産性本部

 

特徴1でもコメントした働き方改革やワークライフバランスの概念が浸透した影響が大きいといえるでしょう。最近は「成果」や「成長」と同じぐらいの重みで「自分の時間を大切にしたい」という欲求が強くなっている傾向があります。

 

特徴3 失敗したくない

誰だって失敗することは避けたいものです。これは若手に限らず、ベテランでも同じです。しかし、最近の若手は昔以上に失敗を恐れる傾向があります。

 

それゆえ、本当にやらないといけない状況が差し迫っていても、「失敗が恐い」という理由でやらないという選択をする若手も増えています。

 

周囲から見たら「なぜ、やらないのか?」と思う状況でも、「失敗したくない」という心理で行動を起こさないことがあります。

 

失敗を恐れる傾向が強まっている理由は「周囲からできない人間と思われたくない」という心理です。この心理は承認欲求の裏返しです。

 

また、今どきの若手はSNSなどで芸能人や有名人が失言や失敗を叩かれて炎上している姿を見て育っていますし、学校やコミュニティの中でも怪我につながるような“危ないこと”や“挑戦”から遠ざけられて育てられている傾向もあります。

 

失敗した経験が少ない、失敗して叩かれている姿を見た経験、承認欲求の強さといった掛け合わせが、「他人の目を気にし過ぎて、失敗を恐れる」という傾向につながっています。

 

なお、上司が、失敗を恐れる若手の姿を「面倒くさがって仕事をやらない」「主体的に欠ける」と誤解しているケースも珍しくはありません。

若手の特徴を踏まえた関わり方のポイント

前章では「効率的に仕事したい」「自分の時間を大切にしたい」「失敗したくない」といった若手の特徴を紹介しました。こうした若手を成長させるためにはどのように関われば良いか、2つの基本的なポイントを紹介します。

 

ポイント① 若手の特徴を受け入れる

若手の踏まえた関わり方のポイントで、まず大事なことは「若手の特徴を受け入れる」ことです。受け入れるとは、考え方を100%許容して好きにやらせるという意味ではありません。

 

ただし、まずは特徴として理解することが大事です。

 

多様性が認められる社会で育ってきた若手は、価値観を押し付けられることを嫌います。「自分の考えや価値観を認めてもらえない」ことに反発を示します。

 

「お前の考え方は間違っている」と頭ごなしに否定して、上司が思うあるべき考え方を押し付けると、その場は表面的に受け入れても、心の中では反発して信頼関係は失われていきます。

 

また、「効率的に仕事したい」「自分の時間を大切にしたい」「失敗したくない」といった価値観自体は別におかしなものではありません。

 

日本における過去のビジネス社会の価値観とは異なるかもしれませんが、人間としては自然な心理ともいえます。

 

したがって、彼らの特徴は受け入れて尊重したうえで、価値観自体を直すとか強制するとかではなく、状況に応じて取るべき行動とその理由を丁寧に指導していきましょう。

 

ポイント② 若手の話を聞く

次に大事なことは、「若手の話を聞く」ことです。「部下の話はよく聞いている」という上司がいますが、部下に確かめると「あの人は全然話を聞いてくれない」と言われるケースは多くあります。

 

すれ違いが生じる理由は聞く側の上司が「自分が知りたいことしか聞いていない」ことです。

 

この状況では、上司は話を聞いていると思っているので言動を変えることはありませんし、若手は聞いてもらってないと思っていますので、お互いの心理的な距離は離れ、信頼関係は壊れる一方です。

 

まず上司としては「聞けていない話がある」という前提に立ってみましょう。

 

実際に業務進捗以外のこと、例えば、仕事の進め方、指示の出し方、マネジメント、キャリアや成長、人間関係などについて、上司が聞けていない若手の意見や考えは思っている以上にたくさんあります。

 

若手の話を聞くときは感情を配慮してフォローしたり、失敗したときも怒らずに適切にフィードバックしたりしましょう。年功序列が当たり前だった時代は、若手の考えを聞かなくてもマネジメントできたかもしれません。

 

しかし、今は違います。若手が何を考え、何を望んでいるのか、若手の欲求や価値観をどう仕事に結び付けてモチベーションを高めるか、親身になって考える必要があります。

若手の成長を加速させる育成ポイント

本章では前章で紹介した基本的な関わり方を踏まえて、今どきの若手の成長を加速させる3つの育成ポイントを紹介します。

 

育成ポイント① 成長実感を持たせる

若手社員の成長を加速させるカギは「成長実感」です。自分がしている仕事が成長につながっているかどうかは、自分自身でも意外とわからないものです。また、今の若手は自信がない人が多いので、成長を感じられないと悩んでいる方も多くいます。

 

さらに、いまの若手は「成長」にはどん欲です。前提として会社は自分を守ってくれないと思っており、自己成長だけが自分自身を守ってくれると感じているからです。したがって、成長実感を得られないと、モチベーションは下がりますし、会社や仕事へのエンゲージメントも落ちていきます。

 

一方、成長実感があると、成長欲求が強い若手のモチベーションは高まり、さらに成長しようと頑張ります。成長しているポイントをしっかり観察してフィードバックしてあげることで承認欲求と成長実感を満たすことに繋がります。

 

また、日報や週報、節目のタイミングで、自ら「何が成長したか」「どのような新しいことに取り組んだか」を振り返ってもらうことも大切です。

 

成長実感を持たせるコツは、ステップを細かく分解し、かつ相対的にすることです。具体的には「営業として1人前の成果をあげる」ことだけを成長基準にしているとなかなか成長実感を持たせたり、成長のフィードバックをしたりすることはできません。

 

そうではなく、例えば「アポイントが取れた」「前回よりも会社説明がうまくなった」「商談内でこの質問は良かった」といった形で、細かなプロセスや進歩にフォーカスすることで、細かく成長実感を持たせましょう。

 

ポイント② 考える機会を与える

若手を成長させるうえでは、自分で考える機会を与えることが大事です。もちろんまったく知らない業務などに取り組むうえでは、上司が指示命令する、教えることが必要です。

 

ただ、指示命令や教えられることに慣れすぎると、若手は自ら考えずに受け身や指示待ちの姿勢が強くなり、成長も鈍化します。じつは受け身の若手を作っているのは、「教えすぎる」「指示しすぎる」上司なのです。

 

若手に考える機会を与えることで、成長が加速します。仕事を指示する際、やり方を自分で考えさせたり、質問された場合は逆に意見を求めたりすることを繰り返し行なうことで、自然に考える癖がついて成長が加速します。

 

ポイント③ キャリアプランを立てさせる

キャリアプランを立てるというと、大変なイメージを抱くかもしれませんが、簡単なもので構いません。壮大なものではなく、「1~3年後にどうなりたいか?」「どのような力を身に付けたいか?」「誰のようになりたいか?」といったもので十分です。

 

若手にキャリアプランを立てさせることは、いわばゴールや目標の設定です。ゴールや目標があると、人の脳は自然にゴールや目標にたどり着くことを考えます。

 

また上司とメンバーで成長のゴールや目標を共有できれば、成長の道筋を示したり、フィードバックしたりすることも容易になります。

 

例えば、ある若手社員は「2年後にリーダーになりたい」というキャリアプランを立てました。成長目標を共有したことで、上司や先輩から若手へのフィードバックは「リーダーだったらどう振舞うか」という高い視座で行なわれるようになりました。

 

一貫して「リーダーだったら」という視点で考えたり、フィードバックを受けたりすることで、その若手は周囲から群を抜いた成長ぶりを見せ、社内表彰の対象ともなりました。

 

キャリアプランを立てて、成長目標を共有することは若手の成長を加速させるポイントです。

おわりに

今どきの若手は「効率的に仕事したい」「自分の時間を大切にしたい」「失敗したくない」といった傾向が強くなっています。若手の特徴を頭ごなしに否定して価値観を押し付けるのではなく、特徴を受け入れて話を聞きながら関わっていくことが大切です。

 

また、上記のような特徴も踏まえて、若手の成長を加速させるためには、「成長実感を持たせる」「考える機会を与える」「キャリアプランを立てさせる」ことが大切です。

 

若手社員の成長度合いは、会社の将来を左右します。当の若手自身も成長することを願っています。リクルートキャリアが実施した調査「就活生の入社予定企業の決め手」(※)によれば、就活生が入社企業を決めた理由の第1位は、「自ら成長できる」ことです。

 

つまり、会社も若手も成長を願っているのです。

 

参考:リクルートキャリア調べ「就活生、入社予定企業の決め手」

 

コミュニケーションや理解のすれ違いが問題となっているだけで、チューニングして成長の軌道に乗せてあげることでWin-Winな関係を築くことができるでしょう。若手社員の成長を促進するうえで、記事が参考になれば幸いです。

 

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著者情報

東宮 美樹

株式会社ジェイック 執行役員

東宮 美樹

筑波大学第一学群社会学類を卒業後、ハウス食品株式会社に入社。営業職として勤務した後、HR企業に転職。約3,000人の求職者のカウンセリングを体験。2006年にジェイック入社「研修講師」としてのキャリアをスタート。コーチング研修や「7つの習慣®」研修をはじめ、新人・若手研修から管理職のトレーニングまで幅広い研修に登壇。2014年には前例のない「リピート率100%」を達成。2015年に社員教育事業の事業責任者に就任。

著書、登壇セミナー

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