アンコンシャスバイアス研修の目的や必要性、実施のポイント、関連研修を紹介

更新:2024/11/13

作成:2024/03/05

東宮 美樹

東宮 美樹

株式会社ジェイック 執行役員

アンコンシャスバイアス研修は、誰もが無意識的に持ってしまっている偏見に自ら気づけるようにする、また無意識の偏見に基づく行動や発言が出てしまいそうになった際に適切に対処できるようにするための研修です。近年は、ダイバーシティが強化され、また、ハラスメントに対する社会的な位置づけが変わった中で、アンコンシャスバイアス研修に力を入れる企業が増えています。

 

本記事では、アンコンシャスバイアス研修を導入する企業が増える背景や研修の必要性、メリット、さらに効果的な研修実施のポイントについてご紹介していきます。

 

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<目次>

アンコンシャスバイアス研修とは?

最初にアンコンシャスバイアス、およびアンコンシャスバイアス研修の概要を解説します。

アンコンシャスバイアスとは

アンコンシャスバイアスとは、私たちが気づかないうちに持っている無意識の先入観や偏見を指します。アンコンシャスバイアスは、過去の経験や知識・価値観などを通じて、他者に対し偏った判断をしてしまう心理現象であり、多かれ少なかれ誰にでも存在しています。

 
例えば「男性なら定年まで働くのは当たり前」「子供ができたら女性は育児に専念すべき」「男性は“男性らしく”」といった考え方はアンコンシャスバイアスの代表例です。

 

アンコンシャスバイアス研修の概要

アンコンシャスバイアス研修は、個人や組織が無意識に持っている無意識の偏見や先入観の存在を自覚し、アンコンシャスバイアスが行動や意思決定にどのように影響を与えるかを認識することで、アンコンシャスバイアスによる悪影響を理性的に防ぐことを目的とした研修プログラムです。

 
研修は、アンコンシャスバイアスの定義や影響を学び、自覚を促し、行動変容を目指す内容で構成されています。具体的には、「アンコンシャスバイアスの存在を知る」「自分自身のアンコンシャスバイアスを自覚する」「アンコンシャスバイアスによる弊害を避けるためのスキルやノウハウを習得する」といった流れで行われます。
 

アンコンシャスバイアス研修の導入企業が増える背景

本章では、アンコンシャスバイアスに対処しようとしている企業が増えている背景を確認します。

 

ダイバーシティ経営への対応とハラスメント防止

現在は、個人の価値観が多様化したことに加え、ダイバーシティ経営の推進により女性、障害者、外国人材といった多様な人材を抱える組織も増えてきています。似たような価値観を持った人同士で集まっていた昔の組織と比べると、「暗黙の了解」や「説明しなくても分かる常識」をベースに仕事を進めていくということは難しいという状況です。

 

多様性が増し、価値観や常識の共有度が減少すると、無意識の偏見によるコミュニケーションのトラブルが起きやすくなります。トラブルが深刻なものとなれば、ハラスメント等として取り上げられることもあるでしょう。

 

また、アンコンシャスバイアスは、自分は相手に対して配慮したつもりでも、相手にとっては差別的な扱いだと受け止められてしまうケースもあります。例えば、「積極的に仕事をしたい」という子育て中の女性従業員に対して、「子育て中は無理をさせてはいけない」と本人の意向に反して簡単な仕事しかさせない慈悲的差別もアンコンシャスバイアスの一つです。

 

そうしたネガティブなものはもちろん、ある種の善意によるものも含めて偏見を取り除き、多様な人材が活躍できる組織にしていくためには、アンコンシャスバイアスに対応できるようにしていく必要があります。

 

価値観の多様化と世代間ギャップ

現在は、性別や国籍といった属性の多様化に加え、内面における価値観の多様性も許容される方向で社会が変わっています。また、この2,30年は終身雇用、雇用関係、働き方などが大きく変わり、個々人の仕事や雇用に関する価値観も変化・多様化しています。

 

とくに上記の変化を受けて、雇用や仕事に関しては世代間で考え方に大きな隔たりが生まれやすい傾向にあります。とりわけ昭和世代と令和世代には価値観に大きなギャップがあり、摩擦が生まれやすくなっています。

 

とくに職場で管理職になっていたり、先輩であったりする昭和世代のアンコンシャスバイアスは、令和世代に対するコミュニケーションのすれ違いや若手のエンゲージメント低下等にも発展しやすくなります。

 

たとえば、ある専門商社では、昭和世代の経営者や幹部の旧態依然とした価値観に若手が反発した結果、社内評価が高い若手ばかりが一気に離職して大きな問題となりました。優秀層ほど今の時代に適用した価値観を持ち、かつ、行動力があるため、「この会社の上層部とは相いれない」と思うと一気に転職を決める傾向がありますので注意が必要です。

 

もちろん過度に個人にすり寄るようなマネジメントは必要ないでしょう。組織として守るべき規律や価値観はあって然るべきです。ただし、一方的な押し付けや思い込みによって若手人材を離職させてしまわないようにするためにも、自社や自分たちどんなバイアスを持っているかに気づき自覚する。そして、必要あれば修正する、自制すること不可欠です。

 

イノベーションの促進

女性活躍やダイバーシティ経営などの動きは、少子化やグローバル化に伴うものでもあり、同時にイノベーションの創出等を意図するものでもあります。多様な価値観や意見を掛け合わせる、また、常識を疑うことが、イノベーションにつながります。

 

しかし、その中で意思決定を担う経営幹部や管理職が、前例主義やアンコンシャスバイアスにとらわれてしまっていたのでは、イノベーションの芽も潰されてしまいます。

 

イノベーションによって新たな価値を生み出し、企業の競争力を高めていくためにも、アンコンシャスバイアスに気づけるようにするというのは重要になってきます。

 

アンコンシャスバイアスを発生させる4つの要因

アンコンシャスバイアスは多かれ少なかれ私たちの誰にでも存在しています。本章ではアンコンシャスバイアスを生み出す4つの要因を解説します。

 

過去の経験と学習

過去に経験したり学習したりしたことは、私たちが普段行っている判断や行動に大きな影響を与えます。過去の経験が、無意識に「正しい」あるいは「間違っている」といった基準を形成し、新しい情報や状況に対する反応を決定するフィルターとして機能します。

 
例えば、ある文化や環境で育った人は、その文化的な価値観や行動様式を「普通」と捉え、他の文化的背景を持つ人々を誤解する可能性が高いでしょう。

 

今でこそ、そんなことはありませんが、数十年前には「生魚を食べる日本の料理は遅れている」といった偏見が欧米にあった時代も存在していました。このように過去の経験に基づく判断は、多様性を受け入れる上での障壁となり得ます。

 

自己防衛反応

自己防衛反応とは、人が不安や脅威から自己を守るために備えている心理的メカニズムです。私たちは、未知のものや変化に対して不安を感じ、それを避けることで安心感を得ようとする心理を持っています。

 
自己防衛反応は、恐怖や不安、リスクから私たちを守ってくれる一方で、新しい考え方や異なる視点を拒絶する反応にもつながります。その結果として、無意識の偏見や排他的な行動が生まれます。たとえば、新しいテクノロジーや異文化に対して感じる抵抗感は、自己防衛反応の一例です。

 

社会的ステレオタイプによる影響

社会的ステレオタイプとは、特定の集団に対する一般化された信念や期待のことです。社会的ステレオタイプは、メディアや教育、文化的伝承を通じて形成され、個人の意識に深く結びつきます。

 
例えば、性別や年齢、学歴や職業といった固定観念は、相手に対する期待や評価を歪め、不公平な扱いを正当化する根拠にもなりえます。実際に、こうしたステレオタイプな見方や固定観念は、職場での評価や昇進の機会に影響を与えることは少なくありません。

 
たとえば、「学歴フィルター」や「女性は出産のタイミングで退社する」といった考え方は、過去の統計的には正しい側面があるかも知れません。しかし、そのフィルターに囚われて、目の前の「個人」を見なくなれば大きな弊害を生み出すでしょう。

 

集団内の同調圧力

同調圧力とは、一定の集団内において「周囲を同じように振る舞え」という無言の圧力が生じる、また個人が圧力を感じることを指します。同町圧力があると、個人は集団の中で受け入れられるために集団の規範や行動に従う傾向が生じます。同調圧力は、個人が自分の信念や価値観に反する行動をすることに繋がりやすく、結果として無意識の偏見や差別的な行動を助長します。

 
例えば、ある集団が特定の社会階層や性別に対して否定的な価値観を持っている場合、その集団の一員である個人も、そのような態度を取ることが期待されがちです。

 

たとえば、「課長になるのは30代になってから・・・」という常識がある組織において、上司が「もう推薦できる」と思っているのに「また20代ですから、ちょっと早いですかね」と言ってしまうのは同調圧力の一種でしょう。このような同調圧力は、個人の自由な、本来意識による意思決定を妨げ、多様性の尊重を阻害する大きな要因となります。

 

アンコンシャスバイアス研修の必要性

アンコンシャスバイアスは日常の中で自覚することは難しい側面もあり、適切に対応できるようにするためにはアンコンシャスバイアス研修の実施が有効です。その理由を解説します。

 

無意識下に働くバイアスを意識できるようにする

バイアスの概念が広く世に知られるようになったのは、行動経済学の研究が進み、行動経済学でノーベル経済学賞を受賞する人も出てきたことです。

 

それまでの経済学においては、「人間は常に合理的に物事を考え判断を下す」という前提がありました。しかし実際の人間は、不合理な判断を下してしまうことが多くあります。なぜそのような意思決定をしてしまうのかを解明し、注目されるようになったのが行動経済学です。

 

行動経済学によると、人間の思考の大部分は、無意識下で処理されているとされています。人間の無意識に存在しているもののひとつがバイアスです。バイアスは、少ない時間と労力で決断が下せるように存在するものであり、人間の進化と共に生み出され、太古の昔から残っているものです。バイアスには様々なものが存在しています。
 


 
バイアスは、人類の、そして自分の過去の知識や経験等に基づいて少ない労力で素早い決断ができる反面、ある種「決断を精査する過程」を飛ばすものです。従って、目の前の現実をちゃんと精査した意思決定ではないため、間違った判断につながってしまうケースが出てきてしまいます。

 

バイアスは、人類の進化の歴史において変化や競争の激しい自然界において生き残っていくために身についたものであり、誰にでも存在するものです。バイアスに素早い意思決定が可能になった一方で、時代変化や状況に合わない決めつけや思い込みによって判断ミスも生じます。

 

こうした間違いを防ぐためには、自身のバイアスを自覚して、意識的に考えることが必要になります。

 

人類が自然界における生存競争を乗り越えるのに役に立ったバイアスですが、いまの時代に即した判断の正確さにおいては問題が出てきます。組織の上層部や管理職になるほど、誤った意思決定が周囲に与えるネガティブな影響は大きいものです。バイアスによって歪められた判断によって問題を引き起こしてしまわないようにするために対策が必要になります。

 

しかし、上述してきたようにバイアスは無意識下で動くものだからこそ、日常生活では意外と気づきにくいものです。だからこそ、Off-JTでの研修を通じて、知識を身に付けて「気づく」ことが大切になります。

 

判断の合理性をメタ認知できるようにする

無意識下での感情や思考は、私たちの意思決定に大きな影響を与えます。

 

人間は、脳への負荷の大きい理性的な思考よりも、脳への負荷の小さい感情的な思考に流されやすいということが知られています。そのため、感情的に決めつけてしまうということが起こりやすいのです。じっくり考えて検討することを避けて、なんとなく雰囲気や好き・嫌いで決めてしまったりするのが感情的な思考で決めてしまう一例です。

 

感情に飲み込まれてしまうと、理性的な思考が働かなくなっていってしまい、合理的な判断は困難になります。

 

感情や無意識の思考に飲み込まれないようにするためには、自分の感情や思考をメタ認知できるようにすることがポイントです。これも研修を通じて、メタ認知の概念と感覚をつかんだうえで、トレーニングしていくことが有効です。

 

学びを実践できるようになるまでサポートが必要

アンコンシャスバイアスは、無意識下で反射的に働くのです。だからこそ、日常から離れた研修でまず気づく必要があります。そして、研修を通して気づいたとして、一回学んだ程度では行動のすべてを是正することは難しいものです。

 

これまで無意識的にやってしまっていた思考や意思決定のクセを直すには、何度も繰り返しトレーニングして定着させる必要があります。

 

トレーニングしては、まずは「必ず気づける」レベルまで到達することが大切です。気づくことが出来るようになれば、不適切な行動や発言が出そうになった時に、うまくブレーキをかけることができるようになるでしょう。

 

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アンコンシャスバイアス研修を実施するメリット

アンコンシャスバイアス研修を通して、自身が無意識下でどのようなバイアスを持っているかに気づき、意思決定や思考の歪みを意識的に修正できるようになります。アンコンシャスバイアス研修を実施することが、どんなメリットにつながるかを確認します。

 

人材の定着率が高まる

離職が生まれる大きな要因の一つが、人間関係のトラブルです。

 

アンコンシャスバイアスに適切に対処できるようになることで、思い込みによってコミュニケーションの行き違いが生じてしまうのを防げるようになり、人間関係のトラブルを減らせるようになります。

 

「上司は、私のことをちゃんと理解してくれていない」「この上司の下では働き続けられない」となると、エンゲージメントは下がり、自分を理解してくれる人を求めて転職してしまうことにもなりかねません。

 

とくに管理職の無意識におけるバイアスは、部下に大きな影響を与えます。最近はこんな偏見は減ってきていますが、たとえば「子育て中の女性には重要な仕事は任せられない」「愛社精神があればサービス残業はするものだ」「プライベートよりも仕事を優先するのが当たり前」といった無意識の偏見を持っている管理職がいれば、いまの若手はかなりの確率でエンゲージメントが低下する、離職するのではないでしょうか。

 

偏見に囚われず、フラットに物事を見られる管理職が増えれば、人間関係のトラブルが減ることはもちろん、チームの心理的安全性も高まるでしょう。

 

エンゲージメントや生産性の向上

人間関係が良くなる、また、心理的安全性が高まると、周囲を信頼して自分の意見や懸念を素直に言えるようになります。自分の意見を忌憚なく発言する、また、それが取り入れられると、エンゲージメントも高まっていきます。

 

また、バイアスの存在は意思決定の負荷を減らし、効率を高めるものです。たとえば、良く知られるバイアスに「自分と共通点が多い人には親近感を感じやすい」「人は機会の可能性よりも損するリスクに敏感である」といったものがあります。

 

これらは、太古の時代に敵味方を識別したりリスクを回避したりするためには効率的な意思決定基準でした。しかし、ビジネス上の意思決定、たとえば、パートナー選定や採用、人事評価、施策の判断などがこうしたバイアスに左右されていたらどうなるでしょうか。

 

メンバーが忌憚なく意見を発言できる、管理職がバイアスに左右されずに意思決定をできれば、意思決定の質は高まり、生産性は高まっていくでしょう。

 

採用力の向上

ここでの採用力向上は、母集団形成などだけでなく、「採ってはいけない人を落とす」「採るべき人を合格させる」「優先順位を誤らない」といった見極め精度の向上です。

 

たとえば、人材を採用する際、「自社に馴染む人材か?」を意識するあまり、どうしても似通った人材ばかりを採用してしまうということになりやすいものです。そうなると異なる考え方をもった人材を入社させてイノベーションを創出していくことは難しくなってきてしまいます。

 

また、先ほど少し紹介した「自分と共通点が多い人には親近感を感じやすい」などのバイアスも採用の合否判断を誤るもとになります。採用においてバイアスが与えるネガティブな影響や存在するバイアスの種類は下記の記事で紹介しています。
 


アンコンシャスバイアス研修を通して、自分が持っているバイアスに気づけるようになることで、面接等の合否精度が高まり、採用力の向上につながるでしょう。

 

サービス改善やイノベーションの促進

無意識下での思い込みに気づけるようになることで、今まで考えつかなかった新しいアイデアを生み出せるようになります。

 

常識や前例、慣習といったものは、生まれた当初はビジネスを円滑に進めるうえで役にたったものですが、時代が変わると、適切ではない部分が必ず出てきます。そうした「従来の当たり前」に囚われなくなることは、サービス改善やイノベーションにつながっていくことが期待できます。

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アンコンシャスバイアス研修を効果的にするためのポイント

アンコンシャスバイアスは無意識下で働くため、単に知識を教え込むだけの研修では効果が出にくい側面もあります。効果的な研修とするためにはどういった点を意識していけばいいのかを紹介します。

 

自社の課題を事前に整理する

まずアンコンシャスバイアス研修を実施する前に、「自社はどんなバイアスの課題を抱えているか?」ということを明確にしておくことが大事です。

 

研修を企画する側がある程度把握しているものもあるかもしれませんが、現場のコミュニケーション、また受け取り手の感覚は意外とブラックボックスです。

 

たとえば、経営層や管理職のコミュニケーションでどこに課題があるか?は、発信側に聞いても分かりません。受け取り手に丁寧にヒアリングしてみないと分かりません。

 

事例を交えた実践的な内容のものにする

内容があまりにも一般的なものだと抽象度が高いため、実践する上で「実際にどう対応したらいいのかわからない」という場面が出てきてしまいます。また、自社で研修するのであれば、前述した通り、自社で起こっている課題に基づいた研修をすることが効果性を高めるためには大切です。

 

HRドクターを運営する研修会社ジェイックが、ある大手企業でアンコンシャスバイアス研修を実施した際には、事前に対象者の部下に「キャリア面談」という形で外部1on1を実施。そこで見えてきた管理職のコミュニケーション、アンコンシャスバイアスの課題を踏まえて、ケーススタディを作成。そのうえで、ケーススタディとディスカッション、レクチャーを実施することで研修の効果性を高めました。

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経営層や管理職から受講を進めていく

アンコンシャスバイアスによる意思決定やコミュニケーションの影響が大きいのは、まず組織の上層部、そして、現場の意思決定やコミュニケーションを担う管理職です。

 

組織の上に行くほど、組織に与える意思決定の影響は大きくなり、判断には正確さが求められるようになってきます。また、メンバーのエンゲージメントを左右する要素の70%は管理職(上司)が担っているとも言われます。そうした点を踏まえて、バイアスによるネガティブ影響を最小限にするためには、経営層や管理職から優先的に研修を実施していくことが重要です。

 

上の人が変わっていくことで下の人もそれに影響されて変わっていくようになり、組織全体の意識を変えていくことにつながります。まずは上層部や管理職にアンコンシャスバイアス研修を実施したうえで、中堅社員や若手に展開していくとよいでしょう。

 

受講者の反応や意見をフィードバックとして取り入れる

アンコンシャスバイアス研修を効果的に行うためには、受講者の反応や意見をフィードバックとしてプログラムに取り入れていくと効果的です。

 
研修プログラム改善のために、受講者からのフィードバックが重要であることは、他の研修にも言えることです。しかし、アンコンシャスバイアス研修の場合は「無意識の偏見」を扱うものだからこそ、研修内での受講者の反応や意見は、社内で発生しているアンコンシャスバイアスの実態や内容を明らかにするものです。だからこそ、受講者の反応をしっかりと確認して、研修内容に反映していくことが大切です。

 

継続的な学びとフォローアップの仕組みを整える

アンコンシャスバイアス研修の成果を最大限に引き出すためには、継続的な学びとフォローアップの仕組みも大切です。研修終了後、アンコンシャスバイアスに対処するためのサポートやフォローの仕組みを提供するとよいでしょう。

 
前述のように、アンコンシャスバイアスの要因となる過去の経験や学習は、私たちの物の見方や価値観に深く結びついています。ですから、一度の研修だけで、こうした無意識の偏見を完全にリセットすることは非常に困難でしょう。ただ、大切なのは「アンコンシャス(無意識)」だったものに「気づく」ことです。気づくことができれば理性による対処が可能です。そして、それを繰り返すことで、アンコンシャスバイアスをなくしていくことができます。

 
そのためにも、研修後の定期的なミーティングやOnline上での共有等を通じて、受講者が学んだ内容を振り返り、また実践における気づきを共有する機会を提供することが効果的です。このようなフォローアップの取り組みがあると、アンコンシャスバイアス研修に限らず、研修の効果を最大化することにつながります。

 

アンコンシャスバイアス研修に役立つサービス

HRドクターを運営する研修会社ジェイックでは、アンコンシャスバイアス研修も提供していますし、また、以下のようなアンコンシャスバイアス研修に役立つサービスを提供しています。

 

感情への洞察力やマネジメント力を高めるEQ研修

感情に流されてしまうとアンコンシャスバイアスの影響を大きく受けてしまいます。自分、そして相手の感情に振り回されず、自分はバイアスにかかっていないかを客観的に認識できるようにするには、感情をマネジメントする力を身につけることが重要になります。

 

また、相手の感情に対する洞察力を高めることも、自分のバイアスにとらわれずに相手を理解できるようになる上で大事になってきます。

 

感情をマネジメントする力を身につけ、また相手の立場に立って相手の感情を理解できるようになるために役立つのが、EQ研修です。

 

EQ研修では、EQが生まれた歴史的背景から基本的な部分から学ぶことができ、EQについての理解を基礎から固めることができます。また、EQPI®というEQの発揮状況を測定する診断によって自分のEQマネジメント力を可視化し、どこに課題があるのかを明確にすることで行動変化や成長を促します。

 

自分に合わせた行動計画を策定し、2ヶ月間にわたって実践していくことで確実にEQを向上させていくことができます。

 

デール・カーネギー・トレーニング(リーダーシップ&コミュニケーション研修)

バイアスにしばられて一方的な決めつけをしてしまうと、部下と上司の信頼関係は崩れ、自分の言うことを全く聞いてもらえなくなったり、距離を取られたりしてしまうといった状態になりかねません。

 

そのような状態に陥ってしまうのを防ぎ、相手をポジティブな感情にして動かすことができるようになるのがデール・カーネギーのリーダーシップ&コミュニケーション研修です。

 

研修では、デール・カーネギーが長年教育の現場で培ってきた「人間関係の30原則」をワークと実践を中心に学びます。人間関係の30原則の中にある「人を動かす原則」には、「盗人にも五分の理を認める」「人の立場に身を置く」というものがあります。

 

こうした原則を身につけることで、相手の事情も考慮せずに一方的な押しつけになってしまうのを防ぐことができます。相手に寄り添えるようになることで良好な信頼関係を構築でき、コミュニケーションも円滑になります。この他にも、「議論を避ける」「誤りを指摘しない」という「人を説得する原則」を身につけることで、バイアスにしばられて自分は絶対的に正しいと思い込んでしまい、相手を傷つけてトラブルになってしまうのを防ぐことができます。

 

今までの一方的な命令や圧に頼ったマネジメントから脱却し、相手をポジティブな感情にしていくことで、エンゲージメントを高めていくことができます。

 

異なる価値観や意見を受け入れ相乗効果を生み出す「7つの習慣®」研修

アンコンシャスバイアスを克服した先にあるものが、多様な人材が互いに協力し合いながら成果をあげ、異なる考えを掛け合わせることでイノベーションを創出していくことです。意図的な相乗効果の発揮が可能な組織にしていくために役立つのが、「7つの習慣®」研修です。

 

7つの習慣®研修では、まず「パラダイム」という自分のバイアス、フィルターに気づくトレーニングを行います。アンコンシャスバイアス研修と掛け合わせることで、アンコンシャスバイアス研修の効果が高まります。

 

また、7つの習慣®の中にある「第4の習慣 Win-Winを考える」「第5の習慣 まず理解に徹し、そして理解される」という習慣を身につけると、相手の立場や要望を理解するコミュニケーションが徹底されるでしょう。

 

さらに、「第6の習慣 シナジーを創り出す」を学ぶことで、互いの違いを受け入れて、相乗効果を発揮するためのスキルが身に付きます。

 

「イクボス」教育プログラム

女性に対する差別や偏見が根強く残っている組織では、女性人材が活躍していくのが難しくなってしまいます。女性人材が活躍していけるようにするためには、ワークライフバランスに配慮し、女性のキャリアを応援してくれる上司である「イクボス」の存在が欠かせません。

 

また少子化などの流れもあるなかで、女性活躍できる組織を作ることは従業員の介護対応などにも通じます。

 

「週5日×8時間プラス残業を、プライベートよりも仕事優先でこなす人が偉い」といった画一的な価値観から離れ、多様な部下のプライベート状況や個性を尊重したうえで、組織をパフォーマンスさせられるイクボスを育成するのが、「イクボス」教育プログラムです。

 

カウンセリングによる実態調査に基づいて対応すべき課題を明確にし、研修で課題に基づいたケーススタディやロールプレイングなどを通して、イクボスとしての考え方やコミュニケーションの取り方を学んでいきます。

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外部1on1プラットフォームKakedas(カケダス)

アンコンシャスバイアスは無意識下で働くため、本人は気がつきにくいものです。周囲の人が気づいて指摘しようとしても、気を遣ってしまって言い出しづらいということも多くあります。そんな時にお勧めなのが、キャリア相談プラットフォームのKakedas(カケダス)です。

 

Kakedasでは、守秘義務のある外部のキャリアコンサルタントとの1on1を通して、相談者は仕事での悩みについて本音で話すことができます。モヤモヤした気持ちをキャリアコンサルタントにサポートしてもらいながら言語化することができ、メンタル面でのフォローも受けることができます。

 

面談で得られた相談者の本音は、本人を特定されない形でレポートとしてまとめられ、上司や組織にフィードバックされます。そのレポートをもとに、自社のアンコンシャスバイアスの課題や状況を把握して、効果的な研修の実施へとつなげていくことができます。

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まとめ

記事では、無意識の偏見(アンコンシャスバイアス)を理解、また自覚して、アンコンシャスバイアスが行動や意思決定に与える影響を認識し、対処法を学ぶプログラムである「アンコンシャスバイアス研修」について紹介しました。

 
アンコンシャスバイアスは、私たちの過去の経験や自己防衛反応、社会的ステレオタイプ、集団内の同僚圧力など、さまざまな要因によって生じます。ダイバーシティ&インクルージョンが求められ、またD&Iをイノベーション創出等につなげていく必要がある現在、マネジメント層がアンコンシャスバイアスの影響を受けていることは組織に悪影響を与えます。

 
アンコンシャスバイアス研修を通じて、管理職が偏りのない公平な判断力を身につけることができれば、ダイバーシティ経営の促進やハラスメント防止、イノベーション創出など、組織にもさまざまなメリットが期待できるでしょう。

 
アンコンシャスバイアスは“無意識”のものだからこそ、まずは研修を通じて、存在を知り、自分が持っているバイアスに気づくことが最初のステップです。気づくことができれば理性による対処が可能です。そして、それを繰り返すことで、アンコンシャスバイアスをなくしていくことができるでしょう。

 

HRドクターを運営する研修会社ジェイックでは、アンコンシャスバイアス等を含めたヒューマンスキルやリーダーシップ分野のトレーニングを得意とする研修会社です。管理職のリーダーシップやコミュニケーション能力、社内のマインドセットやチームワークを向上させることにご興味あれば、ぜひジェイックが提供する研修・組織開発サービスのラインナップをご覧ください。

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著者情報

東宮 美樹

株式会社ジェイック 執行役員

東宮 美樹

筑波大学第一学群社会学類を卒業後、ハウス食品株式会社に入社。営業職として勤務した後、HR企業に転職。約3,000人の求職者のカウンセリングを体験。2006年にジェイック入社「研修講師」としてのキャリアをスタート。コーチング研修や「7つの習慣®」研修をはじめ、新人・若手研修から管理職のトレーニングまで幅広い研修に登壇。2014年には前例のない「リピート率100%」を達成。2015年に社員教育事業の事業責任者に就任。

著書、登壇セミナー

・新入社員の特徴と育成ポイント
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・コロナ禍で就職を決めた21卒の受け入れ&育成ポイント
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