「個別化」は、クリフトンストレングス®(ストレングス・ファインダー®)における34資質のひとつです。個別化は、一人ひとりに合った対応が必要となるような場面において、強みを発揮できる資質です。
価値観が多様化している現代、個別化の資質は、メンバー一人ひとりと向き合うことでチームの生産性を最大化することで強みを発揮していけるでしょう。
記事では、個別化の資質を詳しく解説するとともに、個別化の資質を活かせる文脈や個別化の資質を持った人がリーダーシップを発揮していくための考え方を紹介します。
<目次>
- ストレングス・ファインダー®の資質「個別化」とは?
- 個別化のメリットと「強み」とする行動
- 個別化が「デメリット/弱み」になってしまうパターン
- 個別化を「強み」として活かせる時代背景や文脈
- 個別化の強みを活かすうえで役立つSL理論
- ストレングス・ファインダー®の活用に関するお勧めサービス
ストレングス・ファインダー®の資質「個別化」とは?
まずはクリフトンストレングス®(ストレングス・ファインダー®)の資質、「個別化」がどんなものかを理解しておきましょう。
「個別化」とは
「個別化」は、一人ひとりの違いに目を向け、相手に一番合ったアプローチをしていける資質です。一人ひとりが持っているユニークな個性に興味を持ち、人を一般化したり類型化したりせずに相手と向き合い、相手が持っている本来の力を引き出すことができます。
「個別化」資質を持った人が、チームのマネジメントでリーダーシップを発揮すれば、各個人の強みに基づいた配役等により、チームの生産性を最大限に引き出すことが期待できます。
個別化の資質が発揮しやすい仕事
個別化の資質は、カウンセラーやアドバイザー、教職、セールス(営業・販売)といった個別のケースに対応する必要がある仕事で強みを発揮するでしょう。
上記のような仕事では、相手が置かれている状況や相手の価値観、能力、悩みを考慮しない一律の対応では過不足が生じやすく、満足のいく対応を受けられなかった人からは不満が出てしまったり、満足度が上がらなかったりするでしょう。
一人ひとりに合った対応をすることで高い満足感を引き出していくような仕事では、個別化の強みを発揮しやすいでしょう。
個別化のメリットと「強み」とする行動
個別化の資質がどのような強みにつながるかを見ていきます。
一人ひとりに応じた的確な対応ができる
「個別化」の資質を持った人は、一人ひとりの違いを汲み取って、的確な対応ができるという点が大きな強みとなります。これは、「公平性」の資質を持っているが誰に対しても平等に接しようとするのと、ある意味では対比的なものです。
組織の中で、一定の規則やルールに従って動くことが大切です。しかし同時に、人によって、状況を汲み取って個別の対応をしたり、個別のフォローが必要になったりするケースも出てきます。
また、ストレングス・ファインダーの前提となる考え方ですが、相手の価値観や強みを生かして、仕事を割り振ったり、動機づけたり、マネジメントしたりすることはとても重要です。
こうした個別対応が必要な状況で、一律の状況ばかりしていると、その人はモチベーションダウンしたりパフォーマンスを発揮したりできない状態に陥るでしょう。
個別化の資質を持つ人は、偏見を持たずに一人ひとりの状況をよく見て判断することができます。これにより、相手からの不平や不満が出にくくなります。
個別化の資質を持つ人は、相手に合わせた的確なフォローをすることによって、こうした個別のフォローが必要なケースへの対応ができます。
人材の潜在的な能力を見抜いて引き出していける
個別化の強みを持つ人は、一般化や類型化によって相手を理解することをしません。洞察力や観察力が鋭く、一人ひとりが持つ個性や才能を見抜くことができます。
同じ業務をするにしても、ある人によっては簡単にできたり、別の人にとってはうまくできずに成果が出せなかったりということがあります。
個別化の資質を持った人が上司となることで、それぞれの部下の状況や強みに合った仕事を割り振ることができるでしょう。こうすることで、仕事のレベルが低すぎると不満を漏らしたり、過度な負担がかかって潰れてしまう人が出てしまったりといったトラブルも防ぐことができます。
相手の持つ能力に応じて、的確に業務を任せたり指導したりすることで、個別化の資質を持つ人は、人材開発で力を発揮していけるでしょう。
多様性を受け入れ、チームの力を最大化することができる
個別化の資質は、周囲にいる個人の潜在的な力を引き出すのに役立つだけでなく、チーム全体の力を引き出すのにも役立ちます。
他者に遠慮することなく主導権を握り強力にチームを引っ張っていこうとする「指令性」の資質を持つ人は、トップダウン的なやり方でチームに対して同じやり方を求めます。
このようなチームマネジメントでは、目標に向かってメンバーを強力にけん引できる一方で、やり方に反発する人や、ついてこられずに脱落してしまう人が出てくるリスクがあります。
一方で、個別化の資質を持つ人は、一人ひとりと向き合い、チーム全体でバランスが取れるようなボトムアップ型のマネジメントが得意です。多様なメンバーの強みと弱みを考慮し、各自の強みが最大限に活かされ、弱みをうまくカバーし合えるようにすることで、チームの生産性を最大限に引き出すことができます。
また、今の時代に大切になってくるダイバーシティ&インクルージョン、多様な価値観を持ったメンバーを受け入れ、違いを活かすマネジメントも個別化の強みとなるでしょう。
個別化が「デメリット/弱み」になってしまうパターン
次に、個別化の資質が、弱みとなってしまうパターンを見ていきましょう。どの素質も強みとして発揮できる使い方と、弱みになってしまうパターンがあります。自分の資質を把握したうえで、弱みになってしまわないように意識が必要です。
目標達成力に課題が生じやすい
個別化の資質は、メンバーの一人ひとりを大事にできる一方で、集団を引っ張っていく力が弱くなってしまいがちです。
個別化の資質を持つ人が陥ってしまいやすい状況と対策について、参考になるのがPM理論と呼ばれるリーダーシップ論です。
PM理論とは、リーダーシップを目標達成行動(P:Performance function)と集団維持行動(M:Maintenance function)の2つの軸から分類したもので、社会心理学者の三隅二不二教授によって提唱されました。
集団の統率力があり成果を上げられるようにするためには、このPとMのバランスが取れているという状態が理想です。
目標達成行動を発揮できている状態をP、できていない状態をpとし、同様に、集団維持行動を発揮できている状態をM、できていない状態をmとすると、理想的なリーダーシップの状態はPM型となります。
目標達成行動が発揮できていて、集団維持行動が発揮できていないPm型は、「黙って俺についてこい」という昭和の熱血上司のような状態です。力強く目標達成を実現していける一方で、部下の中には仕事の進め方に反発する人や、ついてこられずに脱落してしまう人も出てきます。
一方、個別化の資質を持った人は、目標達成行動が発揮できておらず、集団維持行動が発揮できているpM型になりやすくなります。
チーム内が友達の集まりのような和気あいあいとした雰囲気になり、一人ひとりの満足度は高く脱落者も出にくくなります。一方で、チーム内の緊張感は緩みがちになり、力強く目標を達成していくというのが難しくなります。
強みを生かしてチーム内の信頼関係や強み発揮をうまくパフォーマンスにつなげる、自分の意識ではなく仕組み等で目標達成を意識できるようにする、チームのNo.2やメンバーと役割分担をするといった工夫を通じて、PM型を目指すことがポイントになるでしょう。
一部のメンバーを贔屓していると思われやすい
一人ひとりをよく観察して個別に対応することは、1対1の関係では相手にあったフォローができる一方で、問題点も出てきます。
どのような組織やチームにおいても、一人ひとりが持つ能力や置かれている状況は差異があります。ほとんどフォローしなくても大丈夫な人もいれば、入念なフォローが必要な人も出てききます。
個別化の資質は、こうした状況を踏まえて、適切なフォローをすることが可能です。一方で、一部の人にリーダーのサポートが集中してくると、他の人たちは不公平を感じる、不満を抱えてしまうリスクもあります。
特定の人ばかりを贔屓しているのではないかと受け止められてしまうと、リーダーとしての信頼にも関わってきます。メンバー全員に納得してもらえるように、フォローが少なくなるメンバーに配慮することが重要になります。
優柔不断で自信が無いように見えてしまう
個別化の資質を持つ人には、一般化や類型化によって人や状況を判断しないという特徴があります。これは強みにつながる一方で、最終的な判断を下すまでに時間がかかってしまい、周囲から優柔不断である印象を持たれてしまうことがあります。
また、個別化という資質により、偏見にとらわれてしまう心配がない一方で、断定的な表現をするということがありません。個別化の資質を持った上司から「人(状況)による」という曖昧な言葉を聞かされた部下は、「自分の判断に自信が無いんだろうか?」と感じてしまうケースもあるでしょう。
強力なリーダーシップを発揮していくためには、判断への自信を示すことも大切です。個別化の資質を持っていると、素早い判断をしたり、断言したりということのハードルが上がりがちです。
しかし、リーダーの仕事は不十分な情報のなかで意思決定することである、という側面もあります。自分なりの意思決定やリーダーシップのスタイルを構築することも大切になるでしょう。
個別化を「強み」として活かせる時代背景や文脈
以下のような時代背景や文脈も押さえておくと、個別化の資質を強みとして発揮しやすくなるでしょう。
「正解無き時代」への対応
かつての一定の正解が見つけやすかった時代は、トップが強力なリーダーシップを発揮して組織を正解の方向へ引っ張っていき、標準化されたやり方で誰でも同じように成果を出せるようにすることが効率良いやり方でした。
しかし、現在はVUCAの時代と言われる通り、外部環境も激しく変動します。また、「価値観の多様化」や「個性の尊重」といったことが言われるようになり、顧客の嗜好性や従業員の価値観も多様化しており、誰にでも当てはまるような絶対的な正解や価値が減少しています。
こうした中で、多様化した顧客の嗜好を的確につかんで提案したりすることに個別化の資質は活かせるでしょう。組織内でも昇給や昇進を提示するだけでは部下のモチベーションを引き出すことは難しくなっており、お金よりも社会貢献やライフワークバランスを重視する人も増えています。
このようにサービスに求めるもの、仕事に求めるものが多様化している状況の中で、個別化の資質は、一人ひとりの価値観を満たしていけるように対応することに強みを発揮していけるでしょう。
優秀な若手人材の流出防止
人手不足が深刻化する中では、いかにして優秀な若手人材を集めて定着・継続的に活躍させるかは、多くの企業にとって重要な経営課題となっています。
終身雇用が崩壊した中で、自分のキャリアについて漠然とした不安を抱えている若者は増えており、「キャリア安全性」といった言葉も浸透しつつあります。一方で、このあたりも当然、望むキャリアプランによって異なります。
こうした価値観や不安と個別に向き合い、早期に成功体験を積ませてキャリアを構築できるようにサポートしていくことが重要になります。
個別化の資質を持った人がマネジメントすれば、部下の潜在的な可能性を見抜いて伸ばしていき、若手人材が抱えるキャリアへの不安を払拭している可能性もあるでしょう。
終身雇用制度が崩壊した今の時代、転職のハードルは低くなり、とくに優秀人材はいつでも転職できる状態です。
自分の力を最大限に発揮できる環境を求めている優秀な人材は、自分の力を活かしきれていないと感じてしまうと、より力を発揮できる環境を求めて転職してしまいます。
そうした人材の流出を防ぐためにも、一人ひとりの力を最大限に引き出すことができる個別化の資質は活かすことができるでしょう。
イノベーションの創出
環境変化と業種を超えた生き残り競争を勝ち抜くには、イノベーション創出により、新たな価値を生み出す必要があります。
イノベーションを生み出すためには、今までに無かった新しい組み合わせを考えることが有効です。異なる価値観や強みを持った人同士がアイデアを出し合うことで、今まで考えつかなかった商品やサービスを生み出すことが期待できます。
個別化の資質は、異なる価値観や強みを持った人材が組織内に共存する、協働することを助けます。それぞれのメンバーの強みが引き出され、お互いの強み同士がうまく掛け合わされるようになることでイノベーションが生み出されやすくなるでしょう。
個別化の強みを活かすうえで役立つSL理論
個別化の資質を持った人がどのようにしてリーダーシップを発揮していけばいいのかという点で、前述した「PM理論」と併せて「SL理論」も参考になります。ここではSL理論の概要や活用方法を紹介します。
SL理論とは
SLはSituational Leadershipの略であり、SL理論とは「相手の状態(シチュエーション)に応じた適切なリーダーシップがある」という考え方です。
SL理論は、リーダーシップの発揮方法には絶対的な正解は無いと考えることが特徴です。これは、一般化や類型化により決めつけたりせずに個別に判断をする個別化の資質を生かすことにもつながります。
先ほど紹介したPM理論と似ていますが、PM理論は「リーダーとして目指すべきゴール」、SL理論は「一人ひとりのメンバーに対するマネジメントやコミュニケーション方法」を示すものです。
SL理論では、部下の成長や状況、スキルの習熟度合いによってリーダーシップ発揮の仕方を変えることが有効であると考えます。個別化の資質を持った人がSL理論を学ぶことで、リーダーシップをうまく発揮していくことができるでしょう。
SL理論の注意点
SL理論を実践すると相手に応じた個別の対応をすることになります。一部の人ばかりをフォローしていると、その人を贔屓しているかのような印象を周囲に与えてしまうリスクがある点は前述の通りです。
また、部下一人ひとりに対応していると、それだけ上司の負担が増大してしまうという問題点も出てきます。上司への負担が増えすぎてしまうと、上司自身が疲弊してしまう、また、組織の成果をあげることに十分な思考を割けないことにもなるでしょう。
また、個別に対応していくにあたっては、上司側に、柔軟性や施策や関わり方、コミュニケーションの引き出しといった対応力が必要になってくるという点も注意が必要です。このあたりのスキルを身に付けないと、ある種の八方美人的な状況、pM型のリーダーになってしまいます。
SL理論における2つの行動と4つのリーダーシップスタイル
上司の部下に対する業務上の関わり方は、「指示・命令」といった指示的行動と「コーチング・委任」といった援助的行動に大別できます。
SL理論ではは、指示的行動と援助的行動という2つの軸の組み合わせで、S1~S4まで4つのリーダーシップの型があります。
- 指示的行動が多く、援助的行動は少ない。仕事への習熟度が低いメンバーに対するリーダーシップの発揮方法で、ティーチングが中心のマネジメントです。
- 指示的行動と援助的行動の両方が多い。ある程度仕事を覚えてきたメンバーに対するリーダーシップの発揮方法で、意欲や経験はそれなりにあるが、まだ完全に自走できる状態ではない社員に対して有効です。
- 指示的行動が少なく、援助的行動が多い。仕事に対する知識や経験は十分身についているものの、まだ自分の力だけでは全ての意思決定をできないメンバーに対するリーダーシップの発揮方法です。ここまでくると自立できるように促す段階であり、マイクロマネジメントは特に避ける必要があります。
- 指示的行動と援助的行動の両方が少ない。仕事の目的だけを伝えれば、あとはメンバーが自分で考えて行動できるという場合のリーダーシップの発揮方法です。上司としては部下を見守り、トラブルや問題が生じた時にフォローやアドバイスを行います。部下から「放置されているのではないか」と思われてしまわないようには注意が必要です。
このように、個別に対応していくうえで、相手の習熟度に応じた4つのリーダーシップを知っておくと、スムーズなコミュニケーションが取れるようになるでしょう。
ストレングス・ファインダー®の活用に関するお勧めサービス
HRドクターを運営する研修会社ジェイックでは、「資質」を「強み」に変え、ハイパフォーマンスを発揮していくために、以下のような研修サービスを提供しています。
ストレングス・ファインダー®|読み解きワークショップ
ストレングス・ファインダー®を受検した後、自分や周囲の人の上位5つの資質を知っただけで終わってしまい、資質を強みに変えられていない人も多くいます。
資質を持っているだけでは成果にはつながりません。資質に基づいた学びやトレーニングをすることで、強みとして力を発揮していけるようにすることが重要です。
「ストレングス・ファインダー®|読み解きワークショップ」では、資質をどのようにして強みに変えていけばいいのかという「強みの方程式」、才能を開花させるためのステップを踏まえたうえで、自分や参加メンバーの上位5資質の組み合わせ結果、特徴を読み解きます。
個人の結果だけでなく、参加メンバーのチームの傾向、強みと注意ポイントも学ぶことで、お互いに強みを出し合いながら協力し合えるようになるでしょう。強みを生かした人材育成とマネジメントの入り口となるワークショップです。
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ストレングス・ファインダー®研修
「ストレングス・ファインダー®研修」は、組織に本格的に強み活用の考え方とやり方をインストールするための研修です。研修では、ギャラップ社認定コーチのもと、実際にストレングス・ファインダー®の資質を活用してどう強みを身に付けていくかを学びます。
また、一般社員向けに加えて、管理職向けのプログラムを実施することで、強みを生かした人材マネジメントのやり方を学び、メンバーの資質を見ながら関わり方を考えていくことが出来ます。
個別化の資質を持つ人にとっては、自身の資質を強みに変える方法を学べるとともに、部下や同僚の強みを知ることで、どのようにしてチームの力を最大化させればいいのかの参考になるでしょう。
強みを活かしたキャリア自律支援プログラム
強みを活かしたキャリア自律の考え方をインストールするのが「キャリア自律支援プログラム」です。
キャリア自律支援プログラムは、ストレングス・ファインダー®を基にした強みを生かすキャリアデザイン研修と、キャリアコンサルタントによる個別面談を提供するキャリア相談プラットフォームのKakedas(カケダス)を組み合わせたもので、個別のフォローを受けながら強みを活かしたキャリア構築ができるようになります。
ストレングス・ファインダー®ベースのキャリア研修で、いまの仕事をジョブクラフティングすることにもつながる抽象度の高いキャリアプランを描き、さらに、資質を強みに変えていくプロセス、キャリア形成に向けた行動実施をキャリアコンサルタントが伴走することで実現します
さらに、個別面談によって得られた本音は、個人を特定されない形でレポートにまとめられ、組織にフィードバックされます。これにより組織側は、従業員が強みを発揮する上で障害になってしまっているものを取り除いたり、より強みを発揮しやすい環境の構築のための施策の立案につなげたりすることが可能です。
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